素浪人ばなし(月影の巻四)

見れぬなら、読んでみよう「素浪人シリーズ」のあらすじ。
月影の巻一・四・ / 花山の巻 / 天下の巻 / いただきの巻 
みなさまの記憶に頼るという、管理人お得意のパターンで行く予定です。
こんな話があった、このへんだけ覚えてる、ここ違うかも、何でも結構です、
多少の間違い、不安は物ともせず、掲示板に書き込んでくださいませ。
ちょっとだけご注意:引用文の場合は、著作権の関係から、全文書かないでね。部分引用はOK。
みなさまご自身の言葉で語る場合は、何でもOKです。
Merci beaucoup!
お名前の後の(NC)は、ノンクレジットで出演者として紹介されてない俳優さんです。
キャスト表については、中村半次郎さまのご協力をいただきました。

 各お話に出てきたが、タイトル横に貼り付けてあります。(相談屋さま、きざくら&ようめいしゅさまのご提案)


「顔に書き初め書いていた」 (第二シリーズ 第53話)

流行作家の亀屋西北を泥棒の親分と間違えた半次。


「飲まないうちから酔っていた」 (第二シリーズ 第56話)

とある峠を通りかかった半次は、突然あらわれた百姓風の男女数名に生き仏とばかりにすがられた。
この峠で仏に会うというお告げで旅をしてきたという仙右衛門らは、半次から離れようとしない。
手を焼いた半次は、やけ酒を飲み酔っぱらってしまう。やがて気がつくと、村の名主武右衛門方に運び込まれていた。
介抱してくれたお咲という女の語るところにっよれば、村を流れる川がはんらんするというので、生き仏さまの力で川を治めてくれというが、それはできないと半次は目を白黒。そこへ仙右衛門が現れ、いけにえが必要だと勝手に言いだし、その役に人のよい武右衛門を指名した。
名主の座を狙う仙右衛門が、悪徳役人と組んで、でっち上げた狂言だった。(ひろちゃんさま 2002月2月20日)


「同期の桜が泣いていた」 (第二シリーズ 第57話)

ある宿場にやってきた半次は、放れ駒一家と名乗るやくざと出入りを起こした。ところが、彼らの親分というのが二本差しの武士。
浦辺勘左衛門と名乗るめっぽう腕の立つ男である。浦辺に打ちすえられた半次はスノコ巻きにされ、川へ落とされて危機一髪。
折良く通りかかった兵庫に助けられたが、半次の腹の虫がおさまらない。そこで、兵庫を助っ人に放れ駒一家になぐりこみをかけた。
ところが、現れた浦辺を見て兵庫はびっくり。昔、江戸の道場で同じ釜の飯を食べた同僚だった。久しぶりの再会に、二人は大喜び。
半次をすっぽぬかして酒を酌み交わした。しかし、飲むうちに兵庫は浦辺のあまりの変わり様に驚く。
酒も飲まない堅物だった浦辺が今やチンピラヤクザの親分にまで落ちているのだ。
親友の根性をたたき直すために剣をふるうべきか兵庫は迷う。浦辺から決闘が申し込まれた。
コメント:この話は何となく覚えています。子供心にドキドキハラハラして見守りました。(ひろちゃんさま 2002月2月18日)

ススキの茂った原っぱですさまじい決闘をくりひろげますが、相手が兵庫の親友だったという設定なので、子供心にもちょっぴり後味の悪さが残りました。(キンちゃんさま 2003年2月24日)

このとき兵庫は勘左衛門の事を(カンダ)と呼んでいた記憶があります。名前からすると(カンザ)だったのかもしれません。
最後の闘いのまえに兵庫は「ゆくぞ勘左」と言って剣を握りむかっていきました。勘左を切った後、兵庫は泣きながら、「俺が切られるつもりだった。」と半次言っていたのが印象的でした。(清貴さま 2004年2月26日)

昔の友と戦うはめになり、その友を倒した後、 兵庫は泣きながら、半次に背を向けて、「あいつは、友でいいやつだったのに、こんな事になってしまった。」と、後ろでおろおろしている半次に、決して振り返らず、しかし苦しい胸の内を聞いてほしいと言った感じで泣き声まじりの長いせりふをしゃべっていました。半次も、「だんなにとって大切なお人だったんだね。」と言い、兵庫も「ああ、ああ、そうだとも。」と2人の絆を感じたシーンでした。これは、昭和45年ごろ、夕方再放送していて、当時小学生だった私が次の日学校へ行くと、みんなが「昨日の兵庫みたか?男泣きしとったやろ。」と話題になってました。  
あと、別の話かも、この話かも忘れましたが、道が途中で2つに分かれてて、その場面が、劇中何度も映って、最後の決闘シーンで、兵庫が「どっちの道から来るか・・」と言っていたのもありました。(久米仙人さま 2005年5月30日)

(↑の久米仙人さまのカキコにお返事)
たしか、兵庫と同門の男青木義郎)が、今は落ちぶれて悪の片棒をかつぐ身に成り下がっているのを、兵庫がなんとか立ち直らせようと努力するのですがかなわず、二人ははからずも対決するはめになる、ってな内容でしたっけ。私が印象に残っているのは、兵庫が半次に、男の暗い過去を説明する場面です。兵庫が語る想い出話を聞いた半次、ついいつものクセで、茶化してしまいます。すると、兵庫が「おい!半次!お前何が
言いたいんだ!」と、真剣な表情で半次をキッと睨みます。そこで初めて半次はその男が兵庫にとって大切な人物であることを悟るのです。
半次は決して茶化すつもりなど毛頭ないのです。半次には侍の世界が理解できなかったのです。辛い話であっても、それを笑いとばして生きていくのが渡世人である半次流のやり方なのです。兵庫に怒鳴られたときの半次の困惑した表情が忘れられません。そして、ラスト、久米仙人さまの仰るとおり、半次にも、たった今切り捨てた男の死体にも背を向けて、独り寂しそうに立ち去る兵庫の後ろで、半次は確かに「おろおろ」してました。旦那の涙を始めて見た半次。ただでさえ涙もろい半次のこと、慰めの言葉をかけてやりたい、しかし、渡世人である自分にはなんと言って慰めていいやら分からない。この場面は、あれほど対等であると思えた兵庫と半次の間に、やはりギャップが、壁があるのか、ということを、チラッと考えさせられた場面だといえます。しかし、壁やギャップがあるからこそ、久米様の仰るとおり、兵庫と半次の絆が強いのだと思います
二人の対決シーンは、迫力満点でしたよね。ススキの原で決闘するのですが、夕陽の逆光線をうまく生かした撮影で、二人の剣が打ち合う度にススキの綿毛(っていうんですか?)がきらきら光りながらパッパッと飛び散る、それをバックに火の出るような立ち回り。シリーズ中、VS戸上城太郎(用心棒が待っていた)に次ぐ名勝負でした。ただ、青木が、自棄的に、兵庫に斬られて死ぬことを選んだので、コドモゴコロにも少し後味が悪いなと思いました。
「どっちの道から来るか。」と、兵庫が戦法を練る場面ですが・・・。うーん。記憶にございません。すみません。しかし、久米様のご記憶どおり、
「同期の桜が・・・」の一場面ではないかと推測します。というのも、兵庫が戦いの前に、相手の手を探りながら作戦を立てるのは非常に珍しいからです(それだけ強いってことなんですが)。この場面、相当に緊張感のあふれる場面のようですね。これから闘おうとしている相手は、兵庫と同じくらいの遣い手か、もしくはそれ以上。しかも、何となく兵庫にとっては意に反した勝負に臨もうとしている気配が読み取れます。以上のことから判断して、この場面も「同期の桜が・・・」からのものであると断定(しちゃっていいのかな?)します・・・・・。(キンちゃんさま 2006年5月30日)


「狸の尻尾はヘマだった」 (第二シリーズ 第58話)

狸に憑かれた男を利用して強盗をたくらむ悪辣な修験者を懲らしめる。

そういえば、おからと握り飯以外のものを食べているシーンというのは、「素浪人シリーズ」では案外少ないものです。「たぬきの尻尾はヘマだった」で、めずらしく屋台のそばを食べるショットがあります(「あなたと呼べない仲だった」では、注文するだけで実際に食べるカットはなし)。すっかり冷めているらしく湯気ひとつ立てていないそばを、兵庫は半次と会話しながら完食します。近衛さん自身もまだこのころは胃腸のほうもご丈夫だったのでしょうね。以前、どなた様かが「煙草を喫んでいる場面が珍しい」とカキコされていらっしゃいましたが、リアルタイムで見たとき、このそば完食シーンもたいへん斬新な(?)印象を受けたものです。(キンちゃんさま 2009年5月10日)


「全くついていなかった」 (第二シリーズ 第59話)

兵庫と半次は、40年以上父の仇を追い続けているという男、佐渡島太郎左衛門に出会う。かつて四国丸亀藩に仕官していた父を切り出奔した上杉主水をたずねて放浪の旅を続けているという。
とある町で兵庫と半次は、今は町家の隠居に落ち着いた主水を見つけだした。彼は娘おぬいと孫娘の3人暮らしで、ささやかな料亭を経営しているという。この知らせをうけた太郎左衛門、仇を討とうとするが、幼い娘を抱いたおぬいを見ては、その決心もグラつく。
やがて対決の日が決まり、兵庫を立会人に決闘が始まる。(ひろちゃんさま 2002月2月18日)


「だました奴が泣いていた」 (第二シリーズ 第61話) (←がいると兵庫にだまされる)

<キャスト> 鶴見丈二=五本松の弥太郎 岸本経子=おさき 菅井一郎=良庵 出光憲司=疾風の喜八郎 小田部通麿=竜巻の丑五郎 宮谷春夫=

<スタッフ>  プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=荒井岱志
<大筋>
たちの悪いゆすりから渡世人の五本松の弥太郎を助けた兵庫と半次は、この一風変わった男と仲良しになる。弥太郎は余命一年と宣告され、存命中に強盗団・疾風の喜八郎一味をつかまえようと懸命。そろそろその一年が迫ってきた。
<あらすじ>
半次は街道筋で自分から酒代を強請ろうとした竜巻の丑五郎たちを懲らしめようとしたが、相手に常というバカ力がいて思いの外大苦戦、とうとう腕を斬られて絶体絶命のところを、折良く通りかかった兵庫に助けられる。傷の割に大げさに痛がる半次に文句を言いながらも肩を貸した兵庫が、たどり着いた茶店でオヤジに医者の所在を訪ねると、ちょうど店の奥で良庵という医者が一服していた。
早速傷を見てもらおうとする半次だったが、良庵は「命を粗末に扱う者が何より嫌いじゃ、嫌いな者からは高くとる」と言い、治療代として有り金全部を要求する。それを聞いて、医者が好き嫌いで病人に接していいのかと反対に問う兵庫、「なるほど、この男はヤクザだ、やたらに売り出して命を粗末にする嫌いも確かにある。だがこいつは、悪事やゼニもうけのために売り出したりは決してせん男だ」「医者ならゼニはともかく、まず手当をしたらどうだね」その言葉に、「お前さんはなかなか面白いお武家じゃな・・」と笑顔になった良庵は、結局只で半次の治療をしてくれたのだった。
さて、その後宿場に着くや否や、兵庫の「今日は兄さんも軽い傷ですんだし、目出度い日ではないか」という矢の催促に、「命の恩人風吹かされねぇうちに飲ませりゃいいんだろ・・」と諦めた半次が2人して入った居酒屋には、先客として良庵がいた。
共に飲み出す3人、ところが半次は治療の礼として飲み代を全て持つよう言われ、そのくせ傷口が膿むからと良庵に止められて自分は一滴も飲めず、することがないなら酌をしろと兵庫に言われて散々、仕方なく文句を言いつつ付き合う羽目に。そんな半次を尻目にご機嫌の2人だったが、そのうち良庵は、自分はある人物を探してこの宿場にきているのだと兵庫に話す。そこへ良庵の知り合いらしい旅姿のおさきという娘があらわれるが、どうやらその娘も同じ人物を捜しているらしかった。
2人が兵庫達を残して先に帰った後、更に酒を要求する兵庫にとうとう堪忍袋の緒が切れた半次が、もう一滴も飲まさねぇとやり合った挙げ句、2人して居酒屋を出て道を歩いていると、前方で喧嘩に出くわす。そこでは、五本松の弥太郎という旅人と、先ほどの丑五郎一味が争っていた。形勢不利の弥太郎を助け、丑五郎と常を斬る兵庫。それを見て、これで地獄の鬼にいい語りぐさができたと喜ぶ弥太郎は、自分は病気で今日明日死ぬ身だという。死にたくない・・とその場にうずくまってしまった弥太郎をほっておけず、丑五郎の一件を役人に届け出る兵庫を残して、一足先に旅籠で話を聞いた半次は同情のあまり大泣きし、後からきてその様子を不審がる兵庫に、涙ながらにことの次第を語る。
それによると、弥太郎は半次と同じ一本独鈷の渡世人だったが、丁度1年前に胃の腑に出来物ができ、このままでは1年の命だと医者に宣告され、それなら死ぬ前に一花咲かせようと、その頃近在を荒らし回っていた凶悪な押し込み強盗、疾風の喜八郎一味を斬ろうと決心して、好きあった娘も故郷も捨てて旅にでたものの、肝心の一味には出会えずじまいで、今日がまさにその1年目に当たるらしい。
ところで、2人に会ってなんだか元気が出てきたという弥太郎は、この世の飲みおさめに付き合ってくれと言いだし、飲めや歌えの大騒ぎをはじめる。その様子を見て、弥太郎が嘘を言っているとは思わないが、この話はどうもおかしいと不審がる兵庫。やがて弥太郎は満足して眠ってしまい、その大鼾のあまりの五月蠅さに2人が眠れないでいると、ふと兵庫の耳に微かな物音が。それは旅籠に押し入った疾風の喜八郎一味だった。
ほどなく兵庫達の部屋にもやってくる一味、動じない兵庫はまだ鼾をかいている弥太郎を起こす。「念願の口が来たようだぞ。起きてみろ」これぞ神の引き合わせだと長脇差しを手に有り難がる弥太郎に、半次と兵庫も加勢する・・・。
晴れて喜八郎を倒した弥太郎に、余命1年と宣告した医者の名を尋ねる兵庫。すると返ってきた答えは「良庵」だった。規則正しい生活を送れば治るかもしれないと言われたものの、そんな生活を送るくらいならばと飛び出したが、死期が近づくにつれて、惚れあったおさきちゃんと堅気になって生き延びたかったと後悔が募る、と話す弥太郎に、兵庫は全てを了解する。
翌朝、弥太郎を連れて良庵の家を訪ねる2人。「先生、先生の探している男を連れてきたよ」実は良庵は弥太郎の叔父で、余命1年というのは真っ赤な嘘、全ては弥太郎に堅気になって欲しいおさきが、良庵に頼んで仕組んだことだった。まさか弥太郎が故郷を飛び出すと思わず、2人でずっとその後を追ってきたんだと話すおさきに、最初反発していた弥太郎も、元はと言えば自分の極道からおこったことだと、きっぱり足を洗うことを約束する。そしてひしと抱き合う2人。
「だ・・旦那、こ、こんなバカな・・・俺は一生懸命同情したのに、こんな仕組みになってるなんてよ、俺はどたまにきて口もきけねぇ」「まぁそう怒るな、弥太郎兄貴とおさきちゃんにとっちゃ、文字通り命の縮む思いの1年だったんだぞ、そっとしといてやれ」
まだ納得がいかず、2人を睨んだままの半次に、笑顔でそう答える兵庫だった。(南まさとさま・台本より 2009年11月22日)
<見どころ>・・というか見たいところ(^_^;
案外痛みに弱い半次。丑五郎一味が退散したあとも木の根元に横たわったまま。
「どうした、しっかりしろ」「もういけねぇ、もう・・」「旦那・・旦那には今日まで、いろいろ世話になったなぁ・・・身分違いのこの俺とわけへだてなく付き合ってくれて・・恩にきるぜ・・・俺は一足先にあの世にいくが、必ず後から来てくんなよ・・いい席とっとくからな」「いい席だと、このバカ、呆れた奴だなお前は」「旦那、臨終前にそうそう呆れないでくんな」「なにが臨終だ、お前はな、腕を斬られただけなんだぞ、こんな傷は、かすり傷に毛の生えたようなもんだ」「気休めはたくさんよ、俺にはわかってるんだ、こう血がたくさんでちゃいけねぇ、もう俺の身体には五勺の血も残っちゃいめぇ」「バカもいい加減にしねえか、さあ、立て」「た、立てって・・いまわの際のこの俺に、そんな、切ねぇ」「お前、何時まで寝言言ってるつもりだよ・・おい、お前の頭の横に大きなクモがいるぞ」「く・・くも、わ〜っっ、た、助けてくれ・・だ、旦那・・・は、早く何とかしてくれっっ」と、飛び上がる半次。もちろんこれは兵庫のウソで「お前があまり大袈裟なことを言うから起こしてやったんだよ」と大笑いする兵庫の前にネコが・・。「は、半の次、い、いかん、ネコ」
せっかくの居酒屋なのに酒も飲めず、酌だけさせられて面白くない半次が「こんなついてねぇ晩は生まれて初めてだ・・」などとぶつくさ独り言を言っているのを聞いた兵庫、「先生、気にすることはないよ、こいつは元々愚痴っぽい奴でな、なにかと言うと平家ガニが泡ふくみたいにブツブツブツブツ愚痴るやつなんだ」「や、野郎、平家ガニが泡ふくとは、なんてことぬかしやがんでぇ」
良庵がおさきと帰った後、お開き前にもう5、6本空けて帰ろうという兵庫にキレる半次「だ、黙りゃがれ」「なんだよお前はドラ声張り上げやがって、みんなが見てるじゃねぇか」「見ようが見まいがかまうこっちゃねぇやい!やいやいこの旦那野郎、俺はな、一滴も飲まねぇで酌だけさせられてるんだぞ、その上、この極上酒の払いはみんな払わされるんだぞ」「だからどうだと言うんだよ」「だからどうだと。冗談も休み休み言いやがれ、いいか、はっきり断るがな、まるで親の敵みてぇにガブガブ、ガブガブ飲みやがる鱶旦那野郎には、この上一滴も酒は飲ましゃしねぇぞ、ああ、飲ましてたまるかってんだ」「鱶旦那野郎とは何てこと言うんだよ・・なんだ、財布にゼニはたっぷり持っていやがるくせに、けちけちしやがってこのけちけち半公」「おう、ケチケチ半公で結構よ、この上たかられてたまるか、死んでも奢らねぇぞ」と睨み合う2人。 (南まさとさま・台本より 2009年11月22日)


「花が恥じらうトシだった」 (第二シリーズ 第62話)  クモもネコも無し

<キャスト> 飯田蝶子=春の助の恋人・お花 左ト全=般若の春の助 山口朱美 堀正夫 河村満和 野崎善彦 島田秀雄 大月正太郎 仲はるみ 泉好太郎  
<スタッフ> 原作=南條範夫(週刊大衆連載 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=平山善樹 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾甲田豊 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=久郷久雄 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=林伸憲

<大筋>
足をくじいたため道中をともにした老旅ガラスの88歳の祝いをした翌日、同じく足をくじいて二人が助けた、旅ガラスの昔の恋人が現れる。

<あらすじ>
仲間と間違えられたことが縁で、兵庫と半次は、商売女を足抜けさせて室川一家から追われていた威勢のいい老旅ガラス・般若の春の助を救う。春の助は、惚れた女のことで間違いを起こし故郷を出て65年、ずっと旅の空で、今日でちょうど米寿の祝いだという。「いくらめでたくてもこちゃあ極道だ、誰も祝っちゃくれねえよ」室川との争いで足をくじいた大先輩を背負って、次の宿場に入った半次は、春の助のこの言葉に、米寿の祝いを自分たちでやってやろうと考える。
もちろん、兵庫も大賛成、「えらいぞ、それでこそ、俺が今日まで無理してつきあってきてやった甲斐があるというもんだ。俺の高邁な精神に触れた感化というか、偉大な人格の影響というか、ほんとによく言ったぞ」「ちょっと待ってくれよ旦那、えれえ難しいことばかり並べてるがよ、そんじゃ俺が祝いしてやる気になったのは、まるで旦那のおかげみてえじゃねえか」
その夜は、春の助に半次も加わりドジョウすくいを踊ったり、勘定どころの半次の意向も聞かずに兵庫が泊まり合わせた宿泊客にまで酒を振る舞うなど大宴会になった。
翌日、すっからからんでふてくされる半次は、兵庫に、あれだけのことをしたんだから、きっといいことがあるぞ、今日辺りいい女にもてるかもしれんぞと説得されて、茶店に入るが、そこで店の主人から、足をくじいて困っているお客がいるので肩を貸してもらえないかと頼まれる。
てっきり春の助かと思った二人だが、足をくじいたのは、お花さんと言う女性。半次は「ついてきた」と喜ぶが、お花さんがおばあちゃんと分かり、クモが出てきたかのように驚く。お花が、居酒屋を経営していると言う話に兵庫が率先して次の宿場まで背負って行く。その下心があたり、宿場に着いたおばあちゃんは、御礼にと、二人に店でたんまりうまい酒を出してくれる。
酌をしてくれた娘が、二人が旅をしている間に見つけてくれるかも、と、おばあちゃんの”悲しい恋物語”を話し始める。それによると、62年前、おばあちゃんには恋人がいるのに、養い親が無理矢理金持ちの男の後妻にしようとしたため、恋人がお金持ちに大けがさせて村を出た。それでおばあちゃんも、故郷を出て、それ以来独り身でとおし、もし巡り会ったときに困らないようにと、女手一つで、居酒屋をやって来たというのだ。
その話を聞いた二人が、昨日助けた春の助が、おばあちゃんの恋人に違いないと話し始めた矢先、居酒屋に入ってきた客が、この先でびっこを引いている老旅ガラスが、やくざに追われていたと話す。
「おばあちゃん、あわてずに待っていなさい。半の字、行こう」二人は、その場所へ向かう。二人からお花の話を聞いて半信半疑の春の助は、室川一家に囲まれた。
「こいつらはとっつあんの祝言の祝い代わりに、俺たちが片づけてやる」「とっつあん、こいつらは俺たちに任せときな」春の助を制して二人は、室川一家を痛めつける。
そして、恥ずかしさでとまどう春の助を、おばあちゃんの待つ居酒屋へ連れて行く。
そこには、65年前に別れた恋人が。再会を喜び合う二人に、兵庫と半次は当てられ気味だ。「旦那、どうだろうね、いい年かっぱらちゃってよ」「そう言うな、おめえ、二人は60何年の恋が実を結んだんだぞ」「こりゃ見ちゃいらんねえや」「半の字、目の毒だ、さあ行こう。しかし半の字よ、こんどの道中には俺たちにもいいことあったじゃないか」「いいこと?」「あれ、あれ。あれが出なかったじゃねえかよ」「おー!ネコにクモかよ。あれが出なかったんだか、らじいさんばあさんにいちゃつかれても我慢しなきゃしょうがねえな」
<見どころ>
品川さんとまるで地のような演技の左ト全さんのからみ。半次が春の助の助っ人として室川一家を相手にするとき、思わず刀をあわせた相手が半次と春の助で互いにびっくりしたり、半次が、背負った春の助の重さに耐えかねて下ろすと、ころころ転がる春の助、米寿の祝いの席で、一緒にドジョウすくいをやったり(二人はてんで好き勝手)。最後の殺陣では、珍しく、旦那が小物をやってる間に、半次が一家の用心棒を相手にするのだが苦戦、そこに春の助が颯爽と三度笠を投げて用心棒に目隠しし、材木を倒しひるんだ隙に半次が用心棒を斬る。
春の助の米寿を祝うのがお話の内容だが、実際は、シリーズ88回目のお祝いをお話の中でやっているというお話。お祝いの酒で春の助が眠った後、兵庫と半次は酒を飲みながらこんな話をする。「俺と旦那が知り合ってよ、こうして酒食らうのも、とっつあんの祝いと同じ、88回目くらいになるんじゃないのかね」「ああ、そうだなあ、そういえばおまえのバカ面見ながら酒飲むのもそのくらいになるかもしれんぞ」「バカ面はひでえよ。しかしどっちにしてもめでたいよ」そして、宿からは鯛の活き作り、宿泊客は押し掛け大パーティー、まさに88回目のお祝いだ。(以上 じゅうよっつ)
品川隆二は、素浪人シリーズではどうしてもおとぼけ演技の印象が強いのですが、ハッとするような表情になるときがあります。
左ト全演じる老渡世人の米寿の祝い(88歳の祝い。ちなみにこのエピソードは第88話)に一席もうけた半次、ト全に向かって、「ささ、とっつぁん、やってくんねえ」と酒を勧めます。そのときの慈愛深く優しい表情が絶品でした。このとき、顔はアップになり、目線はカメラの正面を向いています。つまり、我々視聴者に語りかけてるような錯覚さえ起こします。つくづく芸域の広い役者さんだなと、今にして思います。(キンちゃんさま 2003年3月22日)
「捻挫した」といって自分の片足をひょいと持ち上げたト全さん、さすがヨガをされていただけあって、体が柔らかそうでした。(キンちゃんさま 2007年9月16日)
老旅ガラスと居酒屋のお婆ちゃんの素敵な純愛ストーリーに、番組開始88回記念のお祝いも兼ねてるなんて洒落てますよね。きっと視聴率も良くて、スタッフさん達のノリも絶好調だったんでしょうね。それに、ゲストのお二方が何とも言えないいい味を出してらっしゃるんですよね。とは言え、実は左卜全さんは大吉の「あきれた病気に〜」の時が初見、飯田蝶子さんも全然知らない方だったんですが、どちらも有名な方なんですね。大吉や兵庫にはこんな風に、自分の知らない役者さん、コメディアン、歌手といった方々が沢山出てらっしゃるので、後でプロフィールを確認するのも楽しみの1つです。流石に40年という月日の長さを思い知ります。でも、それだけの時間が経ってなお面白いというのが、本当に凄いことだなぁと。いい作品っていうのはいつまでも残っていくものなんですね。ラスト、2人の再会シーンでは、思わずホロリとしちゃいました。やっぱりいくつになっても、恋っていいもんですよね(^_^)(南まさとさま 2009年7月5日)

<旅の場所>
玉井宿あたり
<コメント>
今回の再放送(’07年)では、この第62話以前のお話がすっぽりと落ちているので、どの話からかは分からないが、今回のスタッフには”装飾”が加わり”擬斗”から土井淳之祐さんのお名前が消えた。”進行主任”が”進行”に。また原作の南條範夫さんの原著が「週刊大衆連載」に(thanks 中村半次郎さま)


「お化けに足が生えていた」 (第二シリーズ 第63話) 

<キャスト> 佐々木孝丸=近在のお大尽、万両分限の惣右衛門 柴田美保子=お雪 藤尾純 北見唯一 中村錦司 阿波地大輔=小松川一家の用心棒・相川 佐藤蛾次郎=小松川一家のやくざ 端田宏三 林昌子 中井里美 
<スタッフ> 原作=南條範夫(週刊大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾甲田豊 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行=藤野清 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
兵庫と半次は金持ち老人と意気投合、大いに飲み明かすが、その晩、老人はぽっくり死んでしまった。通夜にきた身内の4人の前で、兵庫は遺言状を預かっていると言う。その晩、兵庫は何者かに襲われた。
<あらすじ>
懐の寂しい兵庫は、半次の来るのを待ちきれず、金を作るために、小松川彌兵衛一家に用心棒を売り込むが、そこの用心棒相手に腕試しをさせられるなど、どうも良くない雰囲気に嫌気が差した頃、ちょうど、半次が宿場にやってくる。
早速居酒屋に入ろうとする旦那に「待ちなよ旦那、持つもん持ってるんだろうな」「何をまた水くせえこと言ってるんだよ。持つものはいつも焼津の兄さんが持つものと決まってるじゃねえか。兄さんいい男だぞ」しかし、当てにした半次もびた銭しか持たない。二人が、あるったけの金で、銚子2本をたのみ、俺の分じゃねえか、ぼやぼやしてるのが悪い、と言い合いしながら、あっという間に飲み干してしまうと、その様子を見ていた奥の座敷から、いい酒の入った銚子を持った質素な身なりの老人が二人の前に現れる。
半次は、老人を怪しんで、酒に手をつけようとしないが、兵庫は、「飲みたいときはお互い様」という老人の言葉にほくほく飲み始め、老人と意気投合し、翌朝、半次が居酒屋に戻ってみると、どうやら、二人はその後老人の家に行き、続きを飲んだらしかった。
ところが、半次が老人の家に行ってみると、入り口には「忌」の張り紙が。なくなったのは、この家の主、その老人だった。
実はこの老人・惣右衛門は、身なりは質素だが近在のお大尽、子供はおらず、4人の親戚、弟・千右衛門、おいの利助、姪のおよし、いとこの次三郎がいるのみ。家の中ではなぜか兵庫が、やがて集まるだろう親戚を待っていた。
兵庫は、惣右衛門から遺言を預かっていた。惣右衛門は自分の財産を誰に譲るべきか迷っていたのだが、遺産の2月前、惣右衛門が試しに白紙の遺言状を寺に預けたところ、4人のうちの誰かがそれを盗んだのだ。昨日、兵庫に出会い、兵庫が小松川一家の用心棒相手に見せた腕と「高士潔癖な人柄」を買って、兵庫にそれを見極めてもらおうと遺言状を託し、その後、兵庫が厠に立った間に持病の心臓でなくなってしまったというわけだった。
そこに、4人が次々と現れる。皆の前で、兵庫は、明日葬式が終わってから遺言状を開けると告げる。
夜、二人の寝ている布団にしのびより、刃を突き刺す男たちが。その男たちは、惣右衛門の姪・およしに雇われた小松川一家と用心棒だった。さらに弟の千右衛門が相棒だったことも見破る。
「なんとまあたまげたね」「たまげることはまだあるぞ。見ろ」死んだはずの惣右衛門が部屋から出てくる。
惣右衛門は死んではいなかった。遺産を誰に譲るか一芝居うったのだった。遺産の半分は近在の貧しい人に、半分は、利助と次三郎、惣右衛門の身の回りの世話をするお雪に譲ることになった。
「しかし驚いたね、この旦那が生きていたなんてよ。旦那も人が悪いぜ、俺に一言言ってってくれりゃあよかったじゃねえか」「そうはいかんよ。おまえに喋ったら事壊すの間違いなしだからな」「事壊しはひでえよ」
<見どころ>
雇われた用心棒らが二人を襲うより前、半次は、仏様に線香でもと惣右衛門の部屋の前に行き、クモが出て大声を上げ、さらに惣右衛門が部屋から出てきて腰を抜かしたのだが、その大騒ぎを、「たかがクモぐらいで大騒ぎしやがって、場所を考えろ」「いい年して恥を知れ、恥を」「いつまでそんなとこに座ってるんだよ。」と、さんざん兵庫にどやされる。しかし、すぐに兵庫の前にネコが出てきて、今度は半次が兵庫に同じ事を言い返す。(以上じゅうよっつ)
冒頭で、兵庫と半次がなけなしの金をはたいて、銚子一本ずつの酒を飲む場面。兵庫はアッという間に自分の銚子を空にしたかと思うと、つづいて半次の銚子に手を伸ばし、当然と言う顔でそれも呑んでしまいます。半次は涙声で洟をすすりながら「さっきから見てりゃ何でぇ、自分ばっかりガボガボ喰らいやがって!」と怒りを爆発させます。(キンちゃんさま 2005年5月3日


「出世が嫌いなバカもいた」 (第二シリーズ 第64話) 

<キャスト> 高津住男=日高平四郎 嘉手納清美=天宮かなえ 尾上鯉之助=城島源之助 堀内一市 波多野博=高木彦二郎 丘路千 平沢彰=クモ助
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾甲田豊 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行=藤野清 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
家老の娘に惚れられた日高平四郎は婿入りを迫られて閉口。出世を放棄して藩を捨て旅に出る。あとを追う娘と追っ手。
兵庫らも巻き込まれる。
<あらすじ>
三国藩の下っ端役人・日高平四郎は、国家老の娘・天宮かなえに惚れられ、その出世欲のなさが家老にも気に入られ、見事、親のきめた婚約者の城島源之助をも退けて結婚相手になったまでは良かったのだが、かなえが見栄っ張りで「やれ家老、それ家老、何が何でも家老!」と自分になにかと家老教育を強いるのに嫌気が差し、かなえを捨て藩を逃げ出し、そのため、同輩の高木、長野に追いかけられるはめになっていた。
捕まればまず切腹は免れないだろうその平四郎が、悠長に棒を倒して逃げ道に思案しているところに出会ったのが、半次。”平さん”の妙に落ち着いたところが気になって、一緒に追っ手から隠れたり、一文無しの平さんの食事の面倒を見たり、着物を取っ替えて侍になりすまし追っ手をだましたりしながら宿に落ち着く。が、宿に、かなえを見つけてびっくり、とび出た二人が夜道をさまようと、追っ手のうちの一人、高木彦次郎が血を流して倒れている。高木はかなえの元婚約者・源之助の名を口にして事切れた。
二人がその夜の宿に、辻堂にはいると、そこには一足先に入って休んでいた兵庫がいた。
兵庫のほうは、この数日、ひどく気の強い武家娘・かなえと縁があった。
一度目はクモ助に酒代をせがまれていたところを助けると、人捜しに協力してくれと訳も知らされずに居丈高に頼まれ、断った。二度目は、たまたま飲んでいた居酒屋の前で、藩に連れ戻そうとする源之助ら侍との口論だった。耳に入ってくる話から、かなえが、この源之助と日高平四郎との三角関係のもつれで、源之助を嫌い、平四郎を追って藩を出ているのが分かった。今度も兵庫は、かなえに命令口調で護衛を頼まれるが、断る。兵庫が、源之助が出世欲からかなえの入り婿になりたがっていると見抜き、腹の内をさぐられた源之助らが兵庫にかかっている間に、かなえはその場を逃げおおせた。
兵庫は、やって来た半次と平四郎の話を聞いて、この男がかなえの婚約者だと分かった。「あんたあんな娘と結婚するぐらいならふぐを食って死んだ方がましだぞ。あんたとんでもないものに見込まれたな」平四郎はその言葉に安堵し、兵庫と半次が、酒を巡っていつものように言い合いしているのをみてすっかり自信を取り戻す。「ご両人を見ていると全く自分が情けない」「あんまりびくびくしているようには思えねえがね」「俺たちそんなにおおらかに見えるかね」「見える見える」
翌朝、かなえが、源之助らから逃れるように、お堂に入ってくる。平四郎をみたかなえは、自分を捨てて逃げた平四郎に手をついて謝れと言う。
「そんなことでいいのか」と、平四郎はすぐさま謝ろうとするが、兵庫は止める。「あんたな、世間の男という男が誰でも自分の思うなりになると思っているのか。あんたはそれが当たり前だと思っていたんだ。ところが平四郎だけはそうではなかったんだ。あんた平四郎をひざまずかせることはできても、平四郎の心だけは絶対に征服することはできんのだ。悔しければやって見ろ。平四郎の心を本当に自分でしっかりとつかんで見ろ。平さんの心はな、家老職なんていうエサでは釣れないんだよ。平さんはあんたの心でしか捕まえられないんだ。それぐらいのことがわからんのか」
兵庫は、二人にお堂から出ていくように言うが、そこに、平四郎を追っていたもう一人の同輩、長野伊織が大ケガをしながら来る。
長野の話では、長野と高木は、協力して平四郎を捕まえようと、源之助に会い、家老の”お構いなし”という平四郎の処置を不満に思った源之助が、平四郎を斬ろうとしていることをしり、止め、斬られたのだった。そこに、源之助らが。
源之助らは、長野と高木を殺したのは平四郎だと家老に報告すれば、晴れてかなえと結婚し家老職も手に入れることができると目論んでいたのだが、それが失敗に終わり、皆殺しにやってきたのだった。・・・
平四郎は、藩へ戻って責任を取ると決意する。いまや目が覚めたかなえも、入り婿がイヤなら天宮の家を出ても一緒になりたいと、平四郎に添う。
<見どころ>
追われているのに人ごとのような平四郎と半次の会話。
居酒屋で、家老の娘との縁談がもとで追われていると話すと半次が勝手に推測しだす。「分かったよ、後はまかしときな。恋敵がいたんだろ」「それが分かるか」「あっしはね、伊達や酔狂で世間の裏街道を歩いてるんじゃないんだよ、酸いも甘いもかみ分けた兄さんだ、それぐらいのことが分からなくてどうしやす」「うんうん、それで」「家老の娘に惚れられたんだろ、ところが娘には既に親が決めた婿がいた」「こりゃあ驚いたなあ、まったくその通りだ、娘の従兄弟で源之助という男だ」「な!親たちは早くその男と一緒になれと言い、娘は源之助が嫌いだという」「そう!うんうんそれで?」「そこで邪魔になったのが旦那だ。ありもしないぬれぎぬをふっかけて旦那をきっちまえということになったんだ」「うーん・・そこのところが、ちょっと違うな」「ち、ちがったか」「まあまあ、違ってもいい、それからどうなった?」とまるで人ごとのような平四郎。その後、「やれ家老、それ家老、何が何でも家老」と教育され初めて、娘の顔を見るのもイヤになったという話を聞き、まんじゅうに喉を詰まらせる半次。平四郎が、茶を取りに行くと、そこに、追っ手の影が。「すまん、俺は逃げるぞ」のどのつかえた判事も、半次の茶も放り出して逃げてしまう。
平四郎の着物を着て歩く半次。さすが、品川さん、さまになってかっこいい!平四郎の追っ手に呼び止められ、「俺に何か用か?」「ご貴殿は?」つい、「月影兵庫ってもんだ」「失礼いたした」「まあまあ、あることだ、以後気をつけられ。うはっははっ」平さんは、半次の着物を着ている。(でも二人とも髪型はそのまま)
居酒屋の前で源之助らが、兵庫を囲む。犬を目の前に出して侍らを脅かすつもりが、よく見ずに首根っこをつかみ持ち上げたのはネコ。「わ〜!犬じゃねえ、犬じゃねえ!ネコ!」と焦りまくる兵庫。回りの侍らはあきれ顔。(以上じゅうよっつ)
不思議なことがひとつ。この回の兵庫、あんまり強くないんです。やたら刀と刀をチャリンと合せるばかりで、ばったばったと斬っていく、という感じから程遠いのです。で、このエピソードだけでなく、この時期、なぜか(あえて、意図的にと思うのですが)兵庫は4,5人くらいしか斬らず、しかもゆっくり時間をかけて斬っています。なんでかな?(キンちゃんさま 2007年9月16日)

<コメント>
「ウグイスが鳴いてやがるな、もうすぐ春か」と半次が初っぱな言っているので、設定は春。
南條さんの原作が「東京文芸社刊」に戻る。おそらく、作成順と放送順が異なったためだと思われる。Thanks中村半次郎さま)


「お酒がソッポを向いていた」 (第二シリーズ 第65話) 

<キャスト> 三角八郎=荒川の定次郎thanks トプ・ガバチョさま) 三原有美子=居酒屋「松風」のおさき 楠本健二=白壁一家の用心棒・宮部一角 山岡徹也=白壁三右衛門 市川男女之助 岡高史 三田一枝 小沢文也 福本清三(NC)=白壁一家の用心棒
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=佐々木政一 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾甲田豊 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
いろは宿で悪行三昧を働く白壁一家を倒そうと、旅ガラスの団結を呼びかける荒川の定次郎とそれに賛同した半次、一家が酒の値をつり上げるために一滴の酒も売られてない宿場で、珍しく金を持っていていい酒を飲もうという楽しみをぶち壊されて頭に来た兵庫が、ともに団結して白壁一家をぶっつぶす。
<あらすじ>
半次は突然、変な旅ガラスに呼び止められる。「怒れ」とふっかけられたり、半次が怒ると下手に出たり。この旅ガラス・荒川の次郎は、隣の宿場・いろは宿の白壁の三右衛門一家が、十手を預かる身ながら、いかさま博打をし、法外な利息のかたに娘を取り上げて売ったり、乱暴し放題の悪徳三昧なのを憤慨して、”腕に覚えの選び抜かれた”旅ガラスに団結を呼びかけているのだった。もちろん半次は一も二もなく、早速賛同する。
ところが、この二人の話を、居酒屋の後ろの席で聞いていた者がいた。白壁一家の用心棒だ。
どうせやることになるのだからと、二人は、表に出てこの用心棒と対決することになるのだが、ちょうどそこを通りかかった兵庫は、それを肴に酒を飲み始める。もちろん、形勢はすぐ不利になり、すんでの所で旦那に助けてもらうが、これでは、団結しても心許ない。半次は旦那にも団結を呼びかけてみるが、兵庫には全くその気はなく、半次の「旦那が食らった酒はびた一文はらわねえぞ」という脅しにも乗ってこない。それもそのはず、兵庫は、数日前、海賊から娘を助けた礼としてもらった5両もの金を持っていたのだ。兵庫は、半次らの分も払って、ゆっくりといい酒を”たしなむ”ために、2人を置いて次の宿場・いろは宿へと向かう。
そして、半次と次郎も、団結を呼びかけた旅ガラスが集っているはずのいろは宿へ。
しかし、そこには待てども待てども、誰も来ない。やっと来たのは、兵庫の旦那。しかも、旦那は、この宿場で足を棒にして居酒屋に酒を求めて歩き回ったのに、どこにも酒が置いてないと頭に来たのを通り越して泣きながら訴えるのだ。あきれながら見ている半次と次郎を置いて、兵庫はさらに次の宿場へと向かう。
団結するはずの旅ガラスが来ないので、2人は、白壁の様子を見に行く。
と、白壁一家から今まさに戸板に乗せられて運ばれる老人の姿が。
老人は、居酒屋「松風」の主人・清兵衛で、近在の居酒屋の世話役をしており、白壁一家が10日間宿場で酒を売ることをやめさせ、酒の値を3倍にして売らせてもうけようとしているのに、異を唱えて、こういう羽目になったのだった。
半次と次郎が大けがをした清兵衛を気遣い「松風」にいると、そこにあくせくと兵庫がやってくる。
兵庫は、いろは宿を離れ、さらに次の宿場まで酒を求めて足を運んだのに、そこでも酒が見つからなかった。どこの居酒屋も酒がない。居酒屋のオヤジに必死の思いでその理由を問いつめると、ここの「松風」のオヤジに聞いてくれといわれたのだった。
半次と次郎は、今度は兵庫という強い味方をつけて、白壁一家に殴り込みをかけ、そして一家をたたきつぶす(酒のうらみはおそろしい)。
しかし、戦い終わって、兵庫がいない。探すと、蔵に隠された酒を見つけた兵庫が、乾いた砂漠のように、五臓六腑に酒をしみこませていた。
<見どころ>
白壁一家の用心棒と斬り合いを始めた半次、兵庫はそれを肴に飲んでいるが、早々助けを求められる。「旦那助けてくれよ!」「せっかくの酒がまずくなるじゃないか、おとなしく斬られろ」まもなくどうにもたち行かなくなり、「旦那早く〜!」「まったくうるせえヤツだな。お、こりゃいかん。もう少しもつと思ったが、なんて弱い団結だなあ」と杯を投げてすんでの所をすくう。
珍しい兵庫の泣き言。酒が飲めない悲しさを、旅ガラスの団結場所で二人寂しく仲間を待つ半次と次郎に呼び止められて、切々と訴える。
「俺はな、頭にカッカ来てるから足が勝手に急ぐんじゃねえか」「なんでカッカきてんだよ」ここで涙声になる兵庫「おめえな、俺が5両もの金をもってゆっくり酒を飲もうなんてことはまず1年に1度もないんだぞ。それなのにだ(ここで悲しげな主題歌音楽になる)情けねえよ、聞いてくれよ半の字。俺は今までかかって宿場中の酒のありそうなところを全部当たってみたんだ。それなのに、一滴の酒もねえじゃねえかよ。こんなバカな話があってたまるか」「おい旦那、何も酒がねえぐれえで、泣かなくったっていいじゃねえか」「おい、おめえな、そうそう気安いいい方するない。おめえ、俺と酒がどれだけふけえ仲か知ってるじゃねえか。酒は俺にとって、親代わり、女房代わり。まったくこの宿場はけしからんよ、実にけしからんよ。こんなつまらん宿場にいつまでもいられるかい。俺は次の宿場まで行ってやる。命をかけてもいってやる。」と、悲しげに去っていく兵庫。「焼津の兄貴、あの旦那相当変わってるね」
ほんと面白かったですね、わたし、十四郎さんと楠本健二さんの殺陣のやりとりも大好きなんですが(「剣豪乱れ雲」の道場での十四郎さんの長槍と楠本さんの刀、とか最高!)、「お酒が...」では鍔迫り合いの最中に十四郎さんがお酒の香りに鼻クンクンする様をみて、シリアスな殺陣の対決も多くなさってきた楠本さん、きっと笑いをこらえるの大変だったんでは。その後楠本さんが落とした柄杓を十四郎さんがふうふうするシーンとか、もう、おかしくて。大地監督のいわれるように「テッテイ的な」酒好き、などが十四郎さんの素浪人シリーズの魅力なんでしょうね、惚れ直してしまいますう。それでいて、イベールさまおっしゃるように重厚さが随所にただよっていて。酒蔵の右の引き戸を(刀を持った右手ではなく)右足で開けるのは背後に敵がいるってことと、刀は重いってことを表現しているんだろうなあって、勝手に感心してしまうのは私の思い入れのせいでしょうか?次回は鬼の洗濯岩で戸上さんと対決だあ、楽しみです!(meeさま 2007年9月23日)
「お酒がそっぽ・・・」の回では本当に笑わせてもらいました。あの迫真の珍妙演技、豪快な殺陣とマッチして最高でした。(ロイさま2007年9月23日)
遥か遠い記憶に強烈だった話でした。兵庫が「酒がない酒がない」と隣宿場まで急ぎ足で向かうというシーンを記憶していたんですけど、歩いているシーンはなかったですね。勝手にアタマで作ったんだなあ。
しかし、この話が欠番じゃなくて良かったあ〜。この話は、うろ覚えのまま「風まかせ 月影蘭」の2話の元になりました。話自体は覚えてなかったんで全然違うストーリーですけど。「酒がない酒がない」っていうところから始めたかった話です。やくざが酒を牛耳ってるという設定は図らずも同じでした。この辺は禁酒法のイメージでやったんですが。
それにしても兵庫のボロ泣きは面白かったですねえ。あんなに泣いてたんですね。これぞテッテイ的です。花山大吉にもなかったシーンですよね、ここまで泣くなんて。第1シリーズのかっこいい兵庫からは考えられませんね。(大地丙太郎監督 2007年9月24日)
この回の殺陣はほんと素晴らしいですね!3重って感じで、兵庫はもちろん(縁側?からさっと降りながらやりとりしちゃうのって、源太あばれ笠みたいでほんと素敵)、半次さん、三角八郎さん一つ一つをとってもすごい立ち回りなのに、いっぺんに披露しちゃって!楠本さんはもちろん、福本さんも出ていらして。あ、最初のほうでの「あの旦那、ほっといていいのか?」って時の楠本さんの立ち姿もかっこいい。おやめになられたのですか、事業に移られたって?あれだけの殺陣を観ることができなくなってしまったのはほんと寂しいですね…。(meeさま 2007年12月31日)
びっくり!お酒がないことで兵庫があんなに泣くなんて。でも、兵庫を見ていると、本当にお酒がおいしそうに見えますね〜。最後の「あ〜、五臓六腑に染み渡る」では思わずつばをゴックン・・。このちゃんの、お銚子から飲む仕草(口への運び方)って独特ですね。「この人は誰でしょう」みたいなクイズがあって、何かを飲む口元だけを見せられたら、きっと私は正解しますよ!
吐く息が白くうつっているお話が何話もありますが、寒いところでの撮影が多かったのでしょうか。他の人の息は白くないのに、このちゃんの息だけが白いこともあり、このちゃんて他の人より体温が高いのかしら?なんて思いました。(鈴雪さま 2009年7月13日)
<コメント>
この回、再び、殺陣も土井淳之祐さんが戻り、”進行”が”進行主任”に戻っている。どうやら、作成された順序では、このお話は、第62話以前に作られたのではないかと思われる。(Thanks中村半次郎さま)

<迷子のお話>にも少しあります。


「鬼が命を洗っていた」 (第二シリーズ 第66話) 

<キャスト> 嶋田景一郎 桜井良子=兵庫に迫るお元(tanksトプ・ガバチョさま) 日野麻子 戸上城太郎=新陰流の使い手・宇田団右衛門 国一太郎=宇田の弟子
<スタッフ> 原作=南條範夫(週刊大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾道畑真二 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行=藤野清 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋

新陰流後継者姉弟から、極意書を守ってやる。
<あらすじ>
日向にやってきた兵庫と半次、「高千穂の山の辺りから鬼たちがふんどしでも洗いに来たのかな」と青島の”鬼の洗濯岩”を見物していると、そこで刀を構えている新陰流の侍・宇田団右衛門を見かける。眼光鋭く、ひとかたならぬ腕と兵庫に勝負を臨んでくるが、兵庫が相手にしないと、「どうやら見込み違いだ」と憮然と去っていった。
次に見たのは、洗濯岩の上に立つ女。半次はてっきり身投げと止めにはいるが、”四十の坂を越えたばかりの”お元は、2年前に自分の誕生日に鯛をと釣りに出て消息を絶った夫のことを思って岩に立っていたのだった。
お元は、二人が気に入り我が家へ迎え入れて焼酎を振る舞うが、やがて酔ってくると、幼くして侍の父親を亡くした姉弟を育て、その姉のおしのが鵜戸神宮で茶店をやっていることを話し出し、姉弟を拾った夫のことを思いだすと、兵庫がなくなった夫に似ている、「がっちりした五体、それに、よお〜見りゃ男らしい顔じゃし。なつかしかね、何かの縁じゃな、おらもう寂しかっただ」と夫婦になろうと迫ってくる。半次までもが喜んで「今夜祝言あげたら」と言い出すので、兵庫は、その夜、そのまま野宿となってしまった。
翌日、二人は鵜戸神宮にもうで、そこで、若い侍が、岩の上に座り修行をしているのを目撃する。ここは、愛洲太郎左衛門が陰流を編み出した剣法発祥の地なのだ。しかし陰流の家系は途中で途絶え、今はもう勢いはなかった。
その若侍・九郎太は、昨日であったお元が話していた
、侍が遺した姉弟だった。兵庫の陰流にまつわる話を聞き、先生と呼び、是非弟子にして欲しいと頼んでくる。兵庫は九郎太の持っていた亡き父の形見の刀から、九郎太の父親がかなりの人物だったと推測する。
とそこに、姉・おしのの茶店で浪人たちが暴れていると助けを呼ぶ声が聞こえる。
兵庫が追い払い事なきを得るが、浪人たちは何かを探していたらしい。だが、姉弟にはまったく心当たりはない。浪人たちは新陰流の太刀筋だったことから、宇田の弟子に違いない。昨日も、姉弟の生まれを確かめていたらしい。なにかあると睨んだ兵庫は、刀以外に姉弟に遺された、虫に食われた父親の着物を確かめにお元の元へ戻る。お元が物置から出してきた着物には、巻物があり、それは、陰流の極意書だった。姉弟の父親は、愛洲太郎左衛門の七代目の当主だったのだ。極意書を手に入れれば箔もつくし悪用もできると言うことで、宇田らはねらっていたようだ。
そこに、宇田がやってくる。極意書を巡って、兵庫は、宇田とその弟子に洗濯岩で勝負を挑まれる。・・・
無事極意書を守った兵庫に、九郎太は是非弟子にと頼む。そしてお元も、嬉しそうに兵庫を見つめてやってくる。兵庫は、自分には出来ないが、「筑前柳川の渡辺といってな、無類のいいヤツだ、俺はダメだ、紹介状は必ず送るからな」と、慌てて鬼の洗濯岩を走り逃げる。そのあとをおうお元。「旦那、どこへ行くんだよ、そっち行ったら海にはまるだけじゃねえか・・・どうだろね、こりゃまるでしまらねえ、ねえ?」
<見どころ>
野宿した旦那との喧嘩をやめた半次。「しかしよ、旦那と俺はきれいなねえちゃんはともかくとして、たまにもてると子供とか大年増だとかでよ、まともなのにはまるで縁がねえよな」「その通りだ、驚くほど縁がねえな」「情けねえな。これでもお互いいっぱしのいい男のつもりなんだがよ。これいったいどういう訳だろうね」「それだがな。そのへんのところが全くわからんな。こりゃ七不思議だぞ」「七不思議な・・ぼやいてもはじまらねえや。旦那、早いとこ鵜戸の社に参るとするか。現実は厳しいよ」「そう泣きを入れるな、人間はもっと泰然としてなくちゃいかん」と、兵庫が歩き出すと、そこにネコ。あわてて半次の後ろに隠れる兵庫。「どうだろね、泰然としてろとかぶった舌の根も乾かないうちに」
鵜戸神宮で、陰流の話をし出すと、半次が「待てよ、陰流はどっかで聞いたことあるぞ」「おまえが知ってるのは柳生新陰流だろうが」そこで、柳生新陰流の由来を説明をするのだが、思わず、柳生新陰流はお手ものだわね、最近まで十兵衛だったんだからと思ってしまう。
最後の、おばさんに追いかけられる兵庫の姿は、「海に潜れぬ海女もいた」の曽我町子さん扮するおっかさんに追いかけられるラストシーンの大吉と重なる。(以上 じゅうよっつ)
最後の対決で、じりっじりっと兵庫に迫っていく二人。それをどうやって倒そうか考えながら構える兵庫がよかった。草履を飛ばすなんて、さすが兵庫!その後の殺陣も速い!でも、宇田団右衛門は新陰流の使い手のくせに、二人がかりとは、卑怯では?自信がなかったのでしょうか。お元さんに追いかけられて逃げる時は片方、草履を履いていなかったのですよね。大丈夫かな?と思わず足元を気にしてしまいました。(鈴雪さま 2009年7月19日)
<旅の場所>
宮崎青島の鬼の洗濯岩と鵜戸神宮


「大地が底から燃えていた」 (第二シリーズ 第67話) 

<キャスト> 宮園純子=お美代 牧冬吉=猟師の親方 杉狂児=お美代のおじさん 山村弘三 水島真哉 小倉康子 波多野博=武次 
<スタッフ> 原作=南條範夫(週刊大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 音楽=阿部皓也 協力=阿蘇観光協会 撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾道畑真二 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行=藤野清 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野

<大筋>
兵庫と半次が日向路で漁師たちの奇怪な殺人事件に巻き込まれる。阿蘇・高千穂ロケ。
クモ登場シーンでは半次が「ウヒャー旦那〜出た出た〜高千穂グモだあ〜」と叫んだのをおぼえてます。(キンちゃんさま 2003年10月4日)
<あらすじ>
宮崎に続き、高千穂にやって来た兵庫と半次は、地域独特の家の造りに見入っていて、そこの主に、阿蘇から遊びに来ていた娘・お美代を送り届けて欲しいと頼まれる。二人は快く引き受け、3人は高千穂を出発、無事に阿蘇にたどり着く。
しかし、お美代を待っていたのは、お美代の父親・猟師の矢吉が吉野屋の旦那を撃ち殺し金を奪って逃走中だという知らせだった。吉野屋の旦那はいつも阿蘇に来ては散財し、その日も、かなりの金を持って千里が浜に出向いたらしい。既に、見つければ矢吉を撃ち殺して良いという許可が出ていて、猟師たちは、翌日、山を探すことになる。
しかし、兵庫には少し解さないところがあった。
矢吉が吉野屋の旦那を撃ったのを見た者はなく、猟師の親方らが鉄砲の音がした方へ行くと、矢吉のそばに心臓を打ち抜かれた旦那が倒れていたと言うのだ。又、お美代の話でも、矢吉は気弱で、とてもそんな事をする人間ではなさそうだ。兵庫と半次も、お美代のために、矢吉を探しに出かけるが、親方らはそれを快く思っていないようだ。
兵庫と半次は、矢吉を探していて千里が浜で数日前に撃たれたと思われるキジの死体を発見、そばに吉野屋が撃たれたと思われる跡も見つかる。そこに突然、何者かが2発、二人に向けて火縄銃を撃ち込んできた。2発続けてと言うことは、2人が撃ったと言うことだ、矢吉ではない。
町の芸者の話では、昨日、吉野屋が撃たれたときも、2発、ほとんど同時に発砲する音が聞こえたそうだ。どうやら、吉野屋を撃ったのも、火縄銃を1丁しか持っていないはずの矢吉ではなさそうだ。
二人は、お美代の家に戻り、矢吉が行きそうな場所、鎮守の裏の森に行ってみる。そこでは、既に無抵抗の矢吉が、親方らに追い込まれ、撃たれる寸前だった。すんでの所で、中に入った兵庫は、矢吉に吉野屋を撃ったのか、金を盗んだのか尋ねる。
矢吉は、その日、キジを撃ちキジの落ちた場所に行くと、代わりに吉野屋の旦那が倒れていて、親方らに自分が撃ったといわれたのだ、金は盗んでいなかった。
「おまえの撃ったキジは落ちていたよ」「あの旦那は誰がいったい?」「こいつら二人が撃ったんだよ」
親方らは、吉野屋を殺して金を奪おうとしたのだが、撃たれた吉野屋のそばで呆然としている矢吉を見て、罪をなすりつけたのだった。
「しかし半の字、妙な火の国見物になっちまったな」人助けしたんだからいいじゃねえか。火の国で人助けしたんだから、俺たちにもあつあつの姉ちゃんが現れるかもしんねえぞ」「え?あつあつのねえちゃんはよかったなあ」
<見どころ>
高千穂を見物しながらの二人の会話。
「高千穂はな、その昔神々が天下ってきたと言う伝説のあるところなんだ」「どうやって天下ってきたのかな。軽業の綱みたいなのにぶら下がってきたのかな。」「あきれた野郎だな、おまえは。そう言う伝説があるんだ」・・そして、半次が食べていた弁当のにぎりめしを一つとり、怒る半次に、「兄さん、にぎりめし一つでそう怒るなって」さらに卵焼きまで。「野郎、もう許せねえぞ。よくも卵焼きまでかっぱらいやがったな。その卵焼きは飯を平らげて最後に食おうとでえじにとって置いたやつなんだ。その卵焼きまで臆面なくくいやがって」「それは大切な楽しみを頂戴してすまなかったな」と言いつつ、兵庫はしっかりと卵焼きを半次から遠くに持ち、「兄さんよ、卵焼きくらいで大の大人が目をつり上げるなって」まるで、二人とも大人げないところが楽しい。そして二人は高千穂渓谷へ。
<旅の場所>
高千穂→まだ雪の残る阿蘇高森、内牧、千里が浜



「破れかぶれでもてていた」 (第二シリーズ 第68話) 

<キャスト> 鈴村由美=おみつ 中山昭二=武芸十八般の後藤又右衛門 清川新吾=おみつの許婚の清之助 北原將光 本郷秀雄=井村屋の番頭 森秀雄 西田良=武芸十八般の旦那はやっつけたが兵庫にやっつけられたクモ助 山本弘 大東俊治 
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=玉木照芳 照明=佐々木政一 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾甲田豊 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野

<大筋>
普段はもてない2人が、強い男が好きというおみつに惚れられてねを上げる。
<あらすじ>
ある侍が、武芸十八般に秀でていると若くて身なりのいい娘に自慢しながら、後ろからクモ助に敢えなくやられたところに、兵庫が通りかかる。
そして兵庫が、クモ助をやっつけたものだから、強い男が好きだというその娘・おみつは、兵庫にぞっこん。兵庫を”つーちゃん”を呼び、「すべてをあげる」と抱きつく。
困った兵庫は、そこにちょうどやってきた半次に、わざと喧嘩をふっかけ、半次がぱちんと一発くらわしたのを大げさに痛がって「負けだ」と退散。おみつの興味は、もくろみ通り半次へと移った。
はじめは「盆と正月が一緒に来た」ともてて喜んでいた半次だが、そのうちおみつをもてあましてきて、「結構すぎて足の裏むずがゆくて、地獄の天上まで突っ走りてえよ、ちきしょう」という複雑な心境となり、”はーちゃん”と呼ばれるに及んで、兵庫に相談を持ちかける。そこにちょうどクモを見つけた兵庫、「ほらあそこを見て見ろ」「わあああ!」「クモがこわいなんてサイテーね」と、おみつは無事、半次に失望した。
兵庫は、居酒屋でおみつと半次がいちゃついているところを店の外から覗いている人相の悪い男・多吉が、井村屋の娘だ、放っておく手はないと話していたのを聞いていた。それで、おみつがどうやら万両分限の井村屋のお嬢さんで、蝶よ花よと育てられた反動で強い男にあこがれ、それが、気の弱そうな婿と結婚させられそうになったために家出したのだと推測する。
しかし、状況はほっとしてばかりもいられなかった。
半次は、おみつと思われる娘を捜す二人連れの商人を見かけていたのだが、そこに、再びその商人がやってくる。
2人は、やはりおみつを捜している井村屋の番頭・仁平と、おみつの許嫁・清之助だった。おみつは、兵庫の推察通り、やはり気の弱そうな清之助との結婚がイヤで家出したようだった。
番頭の、多吉は井村屋を素行が悪くてクビになり穴熊一味に加わったと言う話から、おみつは誘拐されたかもしれないと思われた。4人で、おみつを捜し始めると、あの武芸十八般の旦那が、たいそう虚言を含みながらもおみつが賊に山へ連れて行かれようとしていたところを救ったと吹聴しているのを見つける。旦那を問いただすと、おみつは、助ける暇もなく賊にさらわれ、そば道へ連れて行かれたらしい。
4人は山へ向かい、そま小屋を見つける。
心配で泣きそうな清之助を兵庫は勇気づける。「あんたな本当に惚れてるんだったら、俺たちも助けるからおみつ坊を命をはって助けて見ろ。そうでもしなきゃ、おみつ坊は戻って来てはくれないぞ」「はい」賊どもが出てきた。「おい、あんたの出番だ」「あたしは、おみつちゃんの許嫁の清之助だ、おみつちゃんを返せ」兵庫が清之助を賊のほうへ押しやり、兵庫、半次、清之助の三人で賊を退治する。
「あんたの許嫁はなかなか勇気があるぞ。命を投げ出してあんたを助けにいったんだ。こういうのがまことの勇気だ。」「ええよく分かりました」と清之助に謝るお美津。「旦那、これでめでたしめでたしじゃねえか。」「めでたしだな」そこへネコが。「いかん半の字、出た!」あっけにとられるおみつと清之助にいう。「あの旦那、実はネコが大の苦手なんですよ。ネコがこわいなんてね、こっちは面倒みきれねえや、ねえ・・おい旦那、待ちなよ」
<見どころ>
兵庫はおみつから逃れようと、「これは知り合いでな、ものすごく強いヤツなんだ」と半次をおみつに紹介する。半次にもてすぎて困っていると説明してもなかなか状況が飲み込んでもらえないので、兵庫はいきなり「うすらバカ、野郎間抜け野郎」と喧嘩をふっかける。「いくら旦那でももうゆるせねえ」と半次が一発食わすと、すぐに「あいたたた、参った参った、もう降参だぞ。半の字兄さん全く参った、完全に負けだ」と退散する。あっけにとられる半次。
みつに武勇伝をせがまれた半次は、はじめは困っていたが、自分の話に酔い始める。「今からちょうど3年前、大利根の流れを挟んで、関八州の親分がまっぷたつに別れて血の雨を降らせたことがあったのよ」「わたしゾクゾクしてきたわ」「渡世の義理である親分の助っ人をしていたんだが、先方には月影の旦那とおんなじくれえの腕の用心棒が30人くらいも集まっていたのよ」「30人も」「はいな。そこで俺は、夜霧に大利根の流れを渡り、たった一人でその用心棒の集団めがけて殴り込みをかけたって訳だ。(おみつはうっとり)いやあそんときの斬り合いのすさまじかったこと、いくら俺でも一人一人相手にしていちゃこっちがあぶねえ。そこで!(と、兄さんはテーブルをパシンと叩く)」「手裏剣手槍に長ドスを右に左に使い分け、斬って斬って斬りまくり、とうとう、その30人一人残らずぶったおしたってわけだよ。ウハハハハ、あ〜くたびれた」」
中山昭二さんのおとぼけ武芸十八般の旦那役は、ウルトラ警備隊隊長とは正反対で意外だった。(以上 じゅうよっつ)
最高でした!!いやも〜おみつちゃんのキャラ、ナイス過ぎっす(笑)けど、あの「2人だけの呼び名」結構いい線いってたと思うのですが(個人的にはつららちゃんが好き(^o^))・・やっぱダメっすかねぇ・・(^_^; 兵庫も、当初はめちゃ鼻の下伸ばしてたのに(←またこの時の表情がいい!!)流石に持てあましてましたよね。まさに「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですよね・・参考にしないと・・(←って・・何を今さら・・(爆))ともかく、半次も交えた前半のやりとりが可笑しくて、散々リプレイしたんで、見るのに時間がかかってしまいました。そうそう、中山昭二さんの口だけおとぼけ侍も面白かったっす。特に後半再登場時には、何気に十兵衛のコスプレ(・・って眼帯ですが(笑))してませんでした??そんなちょっとしたところのノリの良さも大好きっす。時に1つだけ疑問が。兵庫はどうも「おじさま」と呼ばれるのに抵抗があるみたいですが・・そして大吉にも確か似たようなシチュエーションがあったと思うのですが・・一体ダンナ達は何て呼んで欲しいんだろうと??いくら何でも「お兄さん」っていうのはちょっと厚かましすぎっすよねぇ??(爆)当人達の意見をじっくり聞いてみたいものです(笑)
ところで、半次との会話で兵庫が、育ちが良すぎるとかえって強い人間に憧れるもんで、自分もそうだった、てなことを冗談ぽく言ってましたが、出自を考えるとあながちおふざけではなかったりして・・!?とは言え個人的には、テレビの兵庫って原作の設定をいったんチャラにして始まったんじゃないかと思ってるんですが。というのも、以前どこか(時代劇マガジン?)で、上月プロデューサーだったかが(すみませんうろ覚えで・・)、月影兵庫は素浪人なんだから、生い立ちとか何処からきたのかとか、その辺のところははっきりさせないほうがいいと思っていた・・という様なことを仰っていたのを読んだ記憶があるんです。で、そういうスタンスで作っていたら、視聴者からのお便りで「兵庫は何故旅をしているのか?」という質問が来るようになったので、第1シリーズのラストで、その質問を半次にさせて、兵庫が半次にその答えを耳打ちする・・というシーンを入れたら、それ以来この手の質問はなくなったというお話だったような。(南まさとさま 2009年7月29日)
(↑のおじさま呼ばわりについて)「お兄さま」ではやっぱりおかしいので「月影さま」「花山さま」と呼ばれるのが一番しっくりくると思っていたのではないでしょうか?私は、旦那と半次がお互いに「つーちゃん」「はーちゃん」と呼ばれたと言い合っている場面が好きです!(鈴雪さま 2009年7月29日)
<旅の場所>

上月の城下(兵庫県?)から少し離れたところ



「才たけすぎて凄かった」 (第二シリーズ 第69話) 

<キャスト> 佐々木愛=早苗 荒木玉枝 西村淳二 汐路章=青空ばくちで半次にやられたクモ助 淺川美智子=8割がた水でわった酒を出す居酒屋のねえちゃん(thanks トプ・ガバチョさま) 相原昇 三木豊 大河内広太郎 
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=羽田辰治 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=野崎八重子 衣装=工藤昭
 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=尾田耕太郎 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=荒井岱志
<大筋>
からっけつの兵庫と半次は、かつて旅の途中、病気で苦しんでいたのを助けた老人がこの宿場に住んでいるのを思い出し、さっそく一宿一飯にあさりつくためその家を訪れた。老人は既に死に、美人の娘に酒とごちそうの接待を受けるが、酒に何か薬が・・。
<あらすじ>
空きっ腹で旅をする兵庫は、道ばたで旅人が食べている握り飯につばを飲み込みながら、半次がクモ助相手に青空博打をしているところにやってくる。
半次も同じくからっけつ、兵庫の応援で、最後の大ばくちを組むと、それが大当たり、とたんに金を払わないといいだしたクモ助らから痛い目にあわせてやっと手に入れたのがたったの19文だった。
その19文と兵庫の2文で、やすい居酒屋に入り、酒と焼酎を頼むが、それが、”8割方水で酒をわってある”という飲めた代物ではない酒で、もう、喧嘩も大声が出せないほど腹は空くし酒は飲みたいし、そこで半次は、3年前、雲右衛門という男が旅先で病気になり介抱したとき、是非訪ねて欲しいといわれた事を思い出す。その雲右衛門の住まいの銀杏屋敷がこの近くなのだ。
早速訪ねると、誰もいない。戸締まりはしていないのですぐに戻ってくるのだろうと、上がりこんで広い家の中を歩き回っていて、酒樽を見つける。「見ろよこれをよ。ほら、極上酒の酒樽だぞ」と、早速「本物かどうか試してみるんだ」「どうせとっつあんが帰ってきたらいっぱいやるんだから」と飲み始める兵庫、はじめは止めていた半次もそのうち飲みだし、雲右衛門の娘・早苗がばあやのまつのと戻って来た時には、2人とも完全にできあがっていた。
雲右衛門は10日前に亡くなっていた。早苗は連絡を受けて、6年間遊学にいっていた京から一昨日戻ってきたのだそうだ。
2人は、早苗の琴の演奏を聴きながら手厚くもてなしを受けるのだが、その晩、寝ている2人の部屋に早苗とまつのがそっと入ってくる。 まず、2人は、ぐっすり寝込んでいる半次を縛り、兵庫の方へと。「おれも縛る気か」ハッとする2人。
兵庫は、早苗が雲右衛門のことになると言葉を濁したり琴の調子が急に変わったり、まつのの酒を出す手がふるえていた事から、眠り薬入りの銚子には手をつけなかったのだ。早苗は、どうやら2人を賊の一味と思いこんでいるようだ。
そこに、本物の賊が、入ってくる。兵庫が片づけている間に早苗らは姿を消し、良覚という和尚が兵庫らを確かめに来ていた。良覚が「人相は悪いが悪党とはおもえん」と早苗らを呼ぶ。早苗らは、無礼をわび事情を話す。実は雲右衛門は”早手の雲右衛門”という海賊の頭で、強奪品を隠した場所の図面を良覚に託していたのだ。そこには、仲間割れを起こした配下の一部が、図面をねらってくるので気をつけろと書いてあった。
そして再び、今度は用心棒らを連れた海賊が家をとり囲む。・・・
「御礼の言葉もございません。おかげさまで図面をお役人に届けることができます」「ああ、そうするがいい」「あっしも気いもんでましたがね、それを聞いて安心しましたよ」「旦那、いくら才媛の三十一文字でも、考えることは俺たちとそうかわらねえな」「バカ、おめえってやつは、よくハナからケツまでこっぱずかしい事が言えるな」「ハナからケツまではひでえや!」
<見どころ>
2人あわせて21文ではいった居酒屋は、ホコリだらけでねえちゃんは無愛想。でも料金表を見て、他の店の半値以下の金額に態度を変える兵庫。「この店はいい店だな、それにねえちゃんもべっぴんだしよ」と上機嫌。「並酒3本に焼酎2杯21文ぽっきりで肴なしでのむんだとよ」と、ねえちゃんに大声で注文される。しかしその酒が水増しの酒で、「水を酒で割るなんて、この世の中で最大の罪悪だぞ、ほんとうに」「そりゃおおげさだけどよ」「何が大げさだよ。店を許して置いたらこの世は闇だぞ。半の字、オヤジを引きずり出してな、思い知らしてやらんといかんぞ」「よしやろうじゃねえか」と奥へ行こうとする半次の前にクモ。代わりに行こうとする兵庫の前にネコがいて、2人ともそうそうに店を飛び出す。
そこで悪い酒を飲まされたのがよほどこたえたのか、兵庫はその後、銀杏屋敷では、家人がいないのに勝手に酒樽の酒を吟味し出すし、早苗が出した酒も「つかぬ事を聞くが、この酒は樽の酒だろうな」と確認する。
このちゃんの殺陣のうまさが生きるのが、狭い場所でのシーン。今回は銀杏屋敷の中で大勢の用心棒や賊をやっつける。障害物のなかでも、決してこじんまりしたりはしないのが凄い。
<コメント>
「才たけすぎて凄かった」の予告編で、タイトルの文字がヘンなバランスやなぁと思っていたのですが、本編を見て納得しました。女性の横顔が入るんだったのですね。(キンちゃんさま 2007年10月7日)
お酒に眠り薬を入れたと見抜いた兵庫、さすがですね〜。(でも、半次に「それは飲むな」とは教えてあげなかったのね)(鈴雪さま 2009年7月29日)
<旅の場所>
平間宿



「飛ばない前から落ちていた」 (第二シリーズ 第70話) 

<キャスト> 小松方正=三吉の父、三造、 桜むつ子=三造の妻で三吉の母 西山辰夫 堀川亮=三吉 新宮寺寛 表淳夫 小山田良樹 大城秦 大河内広太郎 西田良(NC)=半次のいかさままがいの商売に危うく乗るところだった講中の旅人の1人
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾道畑真二記録=藤原凪子 衣装=工藤昭 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=中島信宏 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉津正・宮川輝水 監督=長谷川安人
<大筋>
空飛ぶ実験に目を奪われる兵庫ら。山かげでは家老一味が悪だくみみを。
<あらすじ>
「日がくれるねえ旦那」「カラスが山へ帰っていくなあ」「腹あ減ってきたな」「酒も飲めんな」「どうする?」
金はなく酒も飲めず腹も減った兵庫と半次。半次は、「現実は厳しい」と、いかさまぽい商売を始める。
それは、土地の親分から借りた瓶と一両を元手に、参加料10文払わせて、水を張った瓶の中においた玉を、両手を使わずに出せたら1両だそうという商売。
しかし、客はなかなか来ない。やっと来たのが子供の三吉。三吉が、両手は使わないけど片手を使うという機転をきかせてまんまと一両持ちさるところ、半次は、頼み込んで、「もうあこぎな商売はするなよ」と説教されて返してもらう。
兵庫はそんな半次にあきれて先に行くが、半次は、三吉から、父親が聖徳太子に次ぐ頭のいい人物だときき、是非会いたいと、三吉の父親のいる山に連れて行ってもらう。「山賊じゃあるめえな」と疑いたくなるほどの山の奥深くで、突然、三吉の父親・三造は、翼のようなものをつけて半次たちの目の前に落ちてきた。父親は、なんと、ここの炭焼き小屋に住み着いて、鳥人機を作ろうとしているのだった。
人間が空を飛べるはずがないと、怒って山を下りた半次が、居酒屋で飲んでいると、半次の声を聞きつけて兵庫もやって来て、半次の話を聞く。
奇遇なことに、そこの女将は三吉の母親だった。空を飛ぶという話にあきれて出ていけといったら、出ていったきり帰ってこないのだ。半次の話を聞いて、三吉が世話になったと、酒を飲ませてくれるものだから、調子に乗って飲んだ2人は、そこで夜を明かすことになる。
翌朝、兵庫が目を覚ますと半次がいない。三吉にきくと、母親と出かけたらしい。
そこに、母親が息せき切って戻ってくる。2人で山道を三造を捜して歩いているときに、浪人たちに囲まれ「帰れ」と脅され、半次は谷底へ足を滑らせてしまったと言うのだ。
兵庫が山に半次を助けに行くが、谷底にはおらず、道に真っ直ぐなキセルが落ちていた。どうやら、半次は生きているようだ。
とそこに、やはり、半次の時と同じく、浪人どもが兵庫を囲む。「やはり何かあるな」
母親にも頼まれ、兵庫は半次と三造の探索に乗り出す。山を歩くと、そこにはないはずの陶土が落ちている。土地のものにきくと、どうやらそれは別の山にある近頃売りだしてきた二瓶焼を作るための土のようだ。それが、あの山に落ちていたのは、陶器づくりの中心となっている家老岩津が絡んでいるのではないかと睨んだ兵庫は、家老の屋敷へ向かう
そのころ、谷に落ちた半次は、飛んで谷に落ちた三造に助けられ、折れた腕も治って(早!)、三造の描いた鳥人機の図面を見せられ、だんだんと人間も空を飛べるのかもと信じ始めていた。鳥人機をつけた三造を引っ張る手伝いをしている時、ふと、2人は、こんな場所にはあるはずがない窯焼き小屋を谷底に見つける。そこには、職人の他に侍や浪人もいて、さらに、三造の留守に小屋を訪ねてきた三吉まで捕らえられていた。
大声で叫び、やって来た侍たちを相手にする半次。「あんた無理だよ、ワシの背中につかまりな。斬られて死ぬか谷底に落ちて死ぬか、二つに一つなら、いちかばちかワシと一緒に飛んでみよう」「それは名案だな。とっつあん頼むぜ」鳥人機をつけた父親の背中におぶさると、鳥人機は空へ!「飛んだ、飛んだ〜!」
と思ったのもつかの間、谷底に落ちた2人も又、浪人たちに捕まってしまった。
ここは、家老が、藩運営の窯とは別に二瓶焼を作って私腹を肥やそうともくろみた小屋で、それを見た3人に、刃が向けられる。
そこに、兵庫にカマをかけられた家老がやってくる。もちろん、そのあとをつけてきた兵庫も・・・。
「おい旦那、飛ぶか飛ばねえか、今夜の飲み代賭ねえか?」「面白い。おまえ飛ぶ方に賭けるのか、飛ばねえ方に賭けるのか」「そりゃ飛ぶ方だよ」「人間が空を飛ぶなんてことはできっこねえっていってたのは誰だっけよ」「それが、なんとなく飛ぶような気がしてきたんだよ」「じゃあ仕方がねえ、俺は飛ばねえ方に賭ける」「よし、今夜は旦那のおごりだ」悪徳家老らを懲らしめ、兵庫と半次と三吉は、鳥人機をつけた三造を引っ張る。
<見どころ>
小松方正さんのとぼけた物言いと、半次のやりとりが面白い。浪人らに襲われ谷に落ちた半次を見て、
「あんたばかだなあ。俺はな、翼をつけて飛ぼうとしたんだ、それでも墜落したんだぞ。何もつけないで谷を飛ぼうったって落ちるのが当たり前だ。そりゃ、無理ってもんだ。」「俺はね、谷を飛び越そうと思っておちたんじゃねえんだよ」「へえ。何の目当ても無しに谷に落ちようなんて、これまた物好きなんだな」「物好きで落ちるヤツがいるかい」「それもそうだな。」半次を起こそうとして「日頃から落ちなれん人間はどうもやっかいだな。ははは。」」と、肩をかし、炭焼き小屋へ連れて行く。
「現実は厳しいな」というセリフが半次にも兵庫にもあるが、当時のはやりか。
半次を探しに行った山で浪人たちに囲まれた兵庫の殺陣と最後の殺陣がたっぷり迫力!(以上 じゅうよっつ)
これはストーリーは覚えていませんが、何やら謎の実験をしている男が山小屋に篭っている話を聞きつけた旦那と半の字がその小屋に行き着くとなんとそこは飛行機を造る実験場。
木と竹で組まれた骨組に布張りの羽をつけた、今でいうハンググライダー式のぶらさがり飛行機が隠されているではありませんか。
「これ、本当に飛ぶのか?」とか訊ねる半の字に「じゃあ、試しに乗ってみろ」とか挑発されていざ滑空をはじめた半の字、例によって「助けてくれー」と空中を飛ぶのですが、あわや立ち木に激突して飛行機はおじゃん、というシーンを覚えています。
この時の滑空シーンは素浪人シリーズでは大変珍しい、スクリーンプロセスを使用した特殊撮影だったと脳裏に焼きついています。
「ワタリ」や「赤影」の様な。(三太夫さま 2004年4月9日)
なんといっても小松方正の怪演がバツグンでした。人力飛行機の実験に取り付かれた、半分ヤマ師みたいな男の役で、歯をむき出して「ウヒヒヒ」と笑いながら兵庫や半次をケムに巻くところなんかケッサクでしたよね。三太夫さまの仰るとおり、人力飛行機が飛ぶシーンでは、スクリーンプロセスが使われていましたよね。CG主流の現在では「特撮」なんて死語なのかも・・・。けど、まさか「月影」で特殊撮影が見られるとは。
まさに「赤影兵庫」ですな。半次が、小松方正の人力飛行機にしがみついて浪人どから逃れるシーンでは、両手に巨大な翼を附けて必死で羽ばたきながら滑走する小松方正に拍手喝采しました。それまで失敗ばかりだったのに、最後に見事に谷底を跳び越えて脱出成功するんですよね。あ、もちろんこの場面には兵庫はいません。しかし方正さんにしがみついて空を飛ぶこのちゃんってのも見てみたい気もするなあ。
で、ストーリーは、残念ながら詳しくおぼえていません。たしか、ニセモノの陶器か何かを焼く某藩の窯元の現場を目撃したために、事件に巻き込まれるてな筋ぢゃなかったかしらん。(キンちゃんさま 2004年4月9日)
「おらは死んじまった筈だった」の見どころにも、関係するお話があります。
予告のナレーションにあったとおり、ある意味「大人の童話」で、本当に楽しいストーリーでした。いつもながの堀川亮くんの芸達者ぶりも良かったですが、何と言っても三造役の小松さん、こんな突拍子もない(笑)変わり者のキャラでも、すんなりと自分のものにされているというか・・ああ、こんな人実際にいそう・・と思わせてしまうところが流石っす。
それと、結構深いセリフもありましたよね。中でも三造の「色んなことを想像する楽しみを知らん奴はな、それだけで知らず知らずのうちに損をしてることになるんだからな」という言葉には、思わずそのとおり!!と膝を打ちました(笑)人として生きるうえで、想像力って(他人や社会の出来事に対するものも含めて)とても大切ですもんね。
あと、兵庫の方がロマンチスト(笑)っていうのもいいなぁ・・と。尤も、半次は丁半博打を生活の糧にしてるんで、どうしても現実的になってしまうのかもしれませんが。けれど最後にはそんな半次までも「ひょっとしたら飛べるかも?」と信じて、みんなで鳥人機の綱を引っ張るという・・何とも夢のあるラストでした。この時の、止めのアップでのそれぞれの笑顔が、この話の楽しさを象徴していたんじゃないでしょうか。(南まさとさま 2009年8月9日)
<旅の場所>
九十九山と二瓶山のあるところ



「おらは死んじまった筈だった」 (第二シリーズ 第71話) 

<キャスト> 谷村昌彦=死んだはずなのに生き返った左吉 二見忠男=奥の皿までテーブルの上に出して壊させ、にこにこ顔で補償を要求した居酒屋のオヤジ 鶴田桂子 楠義孝 山本一郎 江上正伍=居酒屋で兵庫に植え込みの中に顔を何度も叩きつけられてまっくろけにされたり、投げ飛ばされて2メートルほどブッ飛んだりした浪人 多々良純=お化けがこわい名僧達識
(thanks トプ・ガバチョさま)の定光寺の住職 西田良(NC)=居酒屋で兵庫に殴られて店の植木に倒れた浪人
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=脇武夫 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=森村幸子 
衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=尾田耕太郎 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉津正・宮川輝水 監督=荒井岱志
<大筋>
2人はある寺で、酒をごちそうになって泊まったが、夜中に死んだはずの佐吉が生き返った。何かがある・・。
禁制の金山を盗掘していた庄屋とその一味の目撃者殺しをあばく。
<あらすじ>
珍しく金(びた銭)を持って酒を楽しもうと入った居酒屋で、兵庫は庄屋・清右衛門の家の浪人たちに絡まれ、居酒屋のオヤジに「喧嘩両成敗」と、”ご乱暴代”2朱と350文を求められる。
持ち合わせが足りなくて困っているとちょうど半次がやってきて、「兄弟も及ばない兄さんと俺の仲じゃねえか。俺の生涯の友達のことはあるぞ、この感激は生涯忘れねえ」」と、クモもにこやかに踏んづけて半次を呼び込み、2人は一文無しに。
怒る半次に、「喧嘩するからには訳があるだろうが。そのわけもきかずに成敗するなんて、おめえ、無茶とおもわんかよ。そんなことしたら言い分のある方はいったいどうしたらいいんでえ。え?」「そりゃあ喧嘩にはだな、いい方と悪い方があるからよ、そうなったらいい方は落ち目だなあ、これ」「うん。やっとわかったのかよ、おめえってやつは全く頭の回転の悪いヤツだなあ」「いやあ、すまねえすまねえ。訳きかずにおこったりしちまってよ。ははは・・?・・待てよ、あれ?この旦那野郎、俺は何にも言っちゃいなかったんだよ。言ったのは居酒屋のオヤジなんだぞ。それをなんで俺がバカ呼ばわりされなきゃなんねえんだ」「そりゃあたしかに兄さんの言うとおりだな」「何でオヤジにいわねえんだよ、こらあ」「そりゃあおめえ、居酒屋のオヤジ相手に理屈なんかこねたってはじまらねえからじゃないか」と、こんな風に古寺の前で言い合っている2人。
「坊主というのは俺たちのような素寒貧を助けてこそ名僧達識といわれるんだ、その辺のところが分かったらせめて一升ビンぶら下げて山門から出てきたらどうだ」と兵庫が調子のいいこと言っていると、先ほどから2人の話を聞いていた和尚が2人を寺へと招き入れる。
和尚は檀家の酒屋が持ってきた酒がふんだんにあるからとどんどん酒を飲ませ、泊まっていけと布団まで用意してくれる。
夜中、用足しに目が覚めた半次は、寝ぼけて布団のそばに置かれていた、庄屋の家の奉公人で食中毒で亡くなった左吉の棺桶にぶつかり、中に仏がいないことに気づいてびっくり。すっかり怖くなって寺を出ようとするのを引き留められ、兵庫に和尚を呼びにやらされるが、実はお化けがこわい和尚は、「一年前に出たことがあるんだ、ちょうどあのの辺りに・・」と指さす方へお化けが出たため、怖がって逃げてしまう。
しかし、お化けと思った左吉は、生きていた。庄屋のうちで夕飯を食べて、気分が悪くなり、気づいたら棺桶の中で、「天国はどういうところだっぺ?」と外にでてみたところだったのだ。
兵庫には、同じ夕食を食べたのに食中毒になったのは左吉ただ一人だけで、左吉だけが庄屋の家にいる浪人たちの世話をさせられていたこと、その浪人たちが、何かを荷車に乗せて持ち運んだり出したりしている事、奥の部屋には絶対に入っては行けないと言われていたことなど、左吉の話に、解せないところがあった。
翌朝、昨日から逃げていた和尚も見つかり、話を聞くと、庄屋の家では1年前にも同じように食中毒で死んだ奉公人がいたそうで、さらに、知らせを受けて寺に駆けつけた左吉の妹・おとしの話では、その奉公人も、浪人たちの世話をしていて誤って奥の部屋の戸を開け、その夜に、亡くなったのだそうだ。

兵庫は何かあると、左吉を連れ、庄屋の家を確かめに行く。
まず、左吉が幽霊の格好をして浪人たちのいる奥の部屋の前にあらわれ、驚いて浪人や庄屋をおびき出した。中には鳴尾金山の金が。庄屋たちは閉山中の金山から金を掘り出し売っていたのだ。・・・
奉公もとけ、喜ぶ左吉。「しかし旦那、とんだお化け騒動に巻き込まれたもんだな」「何だなあ半次、やっぱり坊主の振舞酒というのは程々にせんといかんな」「ちげえねえ」
<見どころ>
和尚と半次がお化けを見たという辺りを兵庫と半次が確かめていて、突然「出たあ!」と一目散に逃げ出す兵庫、てっきりお化けだと思い、兵庫より先になって逃げる半次。「あ〜あびっくりした。俺は2,3年寿命が縮まった。」「俺もびっくりしたぞ。しまらんやつだなあ、大きな声張り上げやがってよ。なんでさっさと追っ払わないんだよ」兵庫がびっくりしたのはお化けならず、ネコだった。
このころのこのちゃんの殺陣は、かなり乗ってる!
他の回でもゲストで出ている多々良さんや谷村さんのとぼけた味もいい。(以上じゅうよっつ)
「ありゃ?」と思ったことがひとつ。居酒屋のおやじ、二見忠男さん(犬彦猿彦さんね)が兵庫に請求した弁償金額は「二朱と三百五十文」だと。二百五十文から一朱になるのに、この場合、「三朱と百文」というべきではないでしょうか。ためしに高校生の娘が使用している「国語総覧」という国語の副教材で調べても、一両=四分=十六朱=四千文と記載されております。
ところで、その「おらは・・・」のオープニングの乱闘、おもしろかったですね。西部劇での酒場の乱闘シーンを髣髴とさせてくれました。兵庫に叩きのめされる浪人の中に、おっ!いましたいました江上正伍さんが!兵庫のド派手な転倒シーンでおなじみの「鏡の中に俺がいた」で、鼻血を出したり蹴っ飛ばされたり、散々な眼に合わされる藩士を演じた役者さんです。今回も植え込みの中に顔を何度も叩きつけられてまっくろけにされたり、投げ飛ばされて2メートルほどブッ飛んだりやってくれましたね。剣会の中でも肉体派なんでしょう。これからも楽しみです。ちなみに、「飛ばない前から落ちていた」のカラミ浪人の中には、アンパンマンそっくりの人がいらっしゃいました。剣会も人材豊富デス。(キンちゃんさま 2007年10月11日)
まず何と言ってもこのタイトル、この当時ならではですよね。おそらく兵庫・大吉の中でも1、2を争う「時代を感じさせるタイトル」なのでは(笑)記憶力の怪しい私でさえ、「おらは死んじまっただ」のフレーズだけは、強烈に憶えてますもん(もっとも、歌のタイトルが「帰ってきたヨッパライ」だったというのは、すっかり忘れてました(^^ゞ)谷村昌彦さん演じる左吉も、セリフの中でちゃんと節をつけて歌ってましたよね(^o^)
で、その左吉、いつもの谷村さんキャラよりおとぼけ具合は控えめ!?だったけど、それでも相変わらず木訥でちょっと間の抜けた感じが、何とも可笑しくて良かったです。それに多々良さんの恐がり和尚や、二見さんのちゃっかり者の居酒屋親父など、ゲストの方々の個性がそれぞれ光ってました。それに加えて兵庫と半次の掛け合いも相変わらず絶好調でしたね。思うに兵庫って結構(かなり(笑))我が儘で自分勝手なところもあるんだけど、逆にそれが魅力の1つになってるんですよね。これはやはり演じているのが近衛さんだからこそだと思います。あの全開笑顔で「そんな細かいこと言うなって・・!」とか言われたら、半次じゃなくてもソッコー許してしまいそうな気がするっす(爆)あと、冒頭の乱闘といい、ラス立ちといい、近衛さんの動きがめちゃ身軽なので、見ていて嬉しくなっちゃいました。やられそうな半次の「ダンナ〜!!」の声に応じて、すかさず手を貸すシーンもあって(←好きなんです)良かったです。南まさとさま 2009年8月2日
<旅の場所>
鳴尾山の付近(2里とは離れていない)



「君子が墓穴を掘っていた」 (第二シリーズ 第72話) 

<スタッフ> プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=荒井岱志
<キャスト> 中村竹弥
山川三右衛門 原健策庄田伊織 都築克子菊野 千葉敏郎黒田弥一郎 鈴木金哉軽部主水 小田部通麿地獄の辰 酒井哲居酒屋のオヤジ 有島淳平旅籠の富頭 溝田繁山川(本物) 坂下政子お千代
<大筋>
12年間父の仇を追い続ける浪人と兵庫、半次が、とある宿場の早耳隠居の客になる。この早耳老人が、浪人の仇らしい男を知っていたことから決闘することになるが、肝心の浪人は逃げ腰。夜逃げまで試みる。実はホンモノは、病死し、旅の道連れになったこの浪人が仇討ちを引き継いだのだった。
仇を追い続けた浪人をみて半次が、「俺は厳しい生き方に徹するのだ」と兵庫との腐れ縁を切ると言い出す。
<あらすじ>
昨日から兵庫と別れて1人街道を行く半次が人だかりのする方に行ってみると、そこでは山川三右衛門という年配の侍が、地獄の辰ら数人のゴロツキに肩が当たったと因縁をつけられていた。衆人環視の中、辰に言われるままに土下座して謝る三右衛門。唾を吐きかけられても抵抗しない彼を笑いものにした辰たちがいなくなった後、成り行きをイライラしながら見ていた半次が、何故刀を抜かなかった、怖かったからかと問い詰めても、三右衛門は何も答えず去っていく。
やがて宿場に着いた半次が一杯やろうと居酒屋に入ると、そこには先客として先程の三右衛門がいた。面白くないとばかりに離れて座る半次だったが、やがて彼が居酒屋のオヤジに、自分は人を探していると話すのを聞く。なんでも、彼が探している男の名は黒川弥一郎と言うが偽名を使っているかもしれず、大柄で40過ぎ、長い刀を差しており、剣の腕も立つという。そしてその男こそは自分の仇と語る三右衛門は、12年の間彼を追い求め、弥一郎が大酒飲みだという情報を頼りに、宿場毎の居酒屋を尋ね回っており、旅籠で晩飯を食べたこともないらしい。すっかり同情した居酒屋のオヤジは食事代はいらないといい、お茶を入れようとするが、三右衛門は本懐を遂げるまでは茶断ち、酒断ちをしているからと、食事のみご馳走になって店をでていった。
一部始終を聞いた半次は感心することしきり、仇を討たねばならない大事な身故に、あえて辰たちにも逆らわなかったのかと思い至って三右衛門の後を追い、さっきの非礼を詫びたうえ、一緒に仇を捜すことにする。
そして入ったとある旅籠で、半次の語る弥一郎の様子を聞いた番頭が、今夜似たような侍が泊まっているという。その侍が、宿帳などはそっちで適当に書けばいいから、まず酒を持ってこいと言ったというのを聞いた半次は、その男こそ仇に違いないと、勇んで三右衛門に知らせに行き、2人して件の侍の部屋の前まで行ったその時、「ウアッ・・で、でた・・い、いかん、シッ、シッ」慌てふためいた声と共に部屋から飛び出してきたのは、ご存じ月影兵庫だった。
言われるままにネコを追い払った半次が、しぶしぶことの顛末を話すと、案の定笑いが止まらない兵庫、「・・しかしなんだな・・・俺を仇と間違えるとは、いやはや、バカというか、阿呆というか、キ印というか、見事なおっちょこちょいぶりだな・・全く言うことなしの抜けっぷりだぞ」「や、野郎、よくもふざけたことを並べ立てやがったな。やいやい、俺はな、なんとか山川の旦那に仇を討たしてえ・・そう思い詰めた挙げ句、旦那を人違いしたんだぞ」「どう思おうとお前、人違いに変わりはねぇんじゃねえか、おっちょこちょいに変わりはねぇよ」相変わらずの雑言に頭に来た半次は、人違いのこともニッコリ笑って許してくれた山川の旦那と兵庫では月とスッポン、人間の出来が違うといい、三右衛門が茶断ち、酒断ちまでして両親の仇を討とうとしていることを告げる。
「茶断ちというのは分かるが、酒まで断つというのは感心せんぞ」「・・酒というのはだな、俺のように適量を飲めば、今日の疲れを癒し、明日の力の源になるもんなんだぞ」そんな結構なものを絶ってコチコチになっても仇は討てないと兵庫は言い返し、道場荒らしを片付けたお礼の一両で一緒に飲もうと誘うが、「人生はもっと厳しく生きなきゃいけねぇ」「俺は厳しい生き方があるのを知った今、旦那とはもうつきあいきれねぇ」と、兵庫と別れて三右衛門の供をすることに決めた半次は「・・旦那、今からでも遅くねぇ、どうか旦那も目ざめておくんなせぇよ」と言い残して部屋を出る。と、そこに下りてくるクモ。「ウアッ!クモ・・で、でた、旦那、助けてくれ」「・・おいお前は目ざめたんだろうが、クモなんかに悲鳴上げてては、とても厳しく生きれはせんぞ。自分で取れ自分で」「や、野郎、途端につれねえことこきやがって・・た、助けてくれ」逃げていく半次を見送り、またもや大笑いする兵庫だった。
翌日のこと、兵庫が追われている旅姿の武家娘、菊野を助け、追っていた地獄の辰たちを懲らしめているところに、三右衛門と半次が通りかかり、3人は助けてもらったお礼にと、請われるままに菊野の屋敷へと案内される。途中、土地の郷士、軽部主水一派が因縁をつけて来て一戦交える羽目になるが、彼らは兵庫の峰打ちを浴びてことごとく逃げ去った。
さて、菊野はやたら人を褒めるのが好きな祖父の庄田伊織、通称早耳の隠居と2人暮らしをしており、この隠居がその名の通りこの街道筋のことなら何でも知っていることから、早速三右衛門が仇の黒田弥一郎の特徴を話すと、確かにそれらしい人物に心当たりがあるという。軽部の元には、つい2、3日前にも酒の席で人を殺めたという、大田黒弥九郎なる男が身を寄せていた。
その時、軽部等が屋敷に現れ、兵庫に果たし合いを所望する。同行してきた弥九郎に、本名は弥一郎だろうと鋭く問う兵庫。睨んだとおり、その男こそ仇だった。兵庫に促されて、何故か我に返ったように名乗りを上げる三右衛門。対する弥一郎は返り討ちにしてくれると豪語し、翌朝七つに雌雄を決することになる。
その夜、3人のためにと張り切る伊織の陣頭指揮の下、ご馳走作りに余念がない菊野や女中のお千代達をよそに、1人落ち着かない三右衛門。一方その隣室では兵庫が、料理より先に酒を持ってこないとは気が利かんと、相変わらずの台詞を吐き、それに呆れつつも隣が気になる半次が覗いてみると、三右衛門は熊のように部屋の中を右往左往していた。
半次に見とがめられ、これも未熟さ故、どうか1人にしてもらいたいと話す三右衛門、その顛末を聞いた兵庫が半次に彼の流派を問うと、願流居合をたしなむと言っていたとのこと、しかし兵庫の見るところ、三右衛門はそんなに腕が立つとも思えない。
そのうちやたら静かになる隣室、兵庫に促されて半次が襖を開けてみると部屋はもぬけのカラで、なおも行方を探す2人の目に入ったのは、荷物を背負い、必死で塀を乗り越えんとしている三右衛門の姿だった。
怒り心頭に発している半次の前でうなだれる三右衛門。ふと、その刀に目を留めた兵庫が抜いてみると、案の定中身は竹光だった。ますます怒る半次に三右衛門は、もう何もかも打ち明けると言い、実は自分の名前は山川武之進で代々浪々の身だったが、旅で本当の山川三右衛門と知り合い、とある宿場で流行病に倒れた彼が、いまわの際に言い残した仇討ち旅の苦労と、仇を討てずに死んでいく無念を聞いて、彼に成り代わって仇を討とうと決心したのだと語る。
だが、そのことを行く先々で告げ、弥一郎の行方を尋ねると、何処でも同情が集まり、飯代も旅籠代も只になる。そして仇討ちがそこまでもてるなら、本物になればもっともてるはずと思った彼はいつしか三右衛門の名を騙るようになり、弥一郎がいると聞いていた方面には近寄らないように旅を続けていたという。
「ふうん、しかし、俺も大分旅して歩いたが、あんたのような手口の騙り屋に会うのは初めてだぞ・・いゃあ、こりゃ珍しい手口だ」妙なところで感心する兵庫をよそに、まだ怒りの収まらない半次はなおも武之進を責めるが、そこに伊織がやってくる気配。あれだけ張り切っているご老体が事の真相を知ったらひっくり返ってしまうと、とりあえずこの件は伏せることに。そして兵庫は彼に、このままでは本物は浮かばれない、あんたが本当に仇討ちをやることが、死んだ三右衛門への償いであり、なによりの供養になると告げる。その言葉を聞き、このまま山川三右衛門として仇を討つ決心をする武之進。「よく言った。それでこそあんた二本差しだ、山川三右衛門殿」
そして翌朝。果たし合いの河原に立つ3人の前には、軽部、弥一郎ら10人余りが待ち受ける。顔面蒼白の武之進に、刀まで買わされたんだからしっかりしてくれと文句を言う半次、一方兵庫は、向こうにいるのはワラ人形だと思えと励ます。
向かい合い、一斉に刀を抜く軽部等。と、その時兵庫が「冥土の土産に聞かしとくことがある」と話し出す。ここにいる三右衛門が、病に倒れた本当の山川三右衛門の意をくんで、弥一郎を討つことを決心した赤の他人であること、このへんの真の武士の温かい心情など、お前達のような外道には分かるまいと断ずる兵庫。「黒田弥一郎、お前はな、おのれの犯した悪行のために、山川常右衛門(三右衛門の父)になんの関わり合いもない男に仇呼ばわりされて死ぬんだぞ、全く哀れな奴だ」
その言葉を聞いて一斉に斬りかかってくる弥一郎達。「山川さん、それいけ、骨は拾ってやるぞ」兵庫は1人2人と斬り伏せながら、巧みに武之進に助勢する・・。
兵庫の手助けでついに弥一郎を倒し、喜ぶ武之進。一部始終を見ていた伊織達も駆けつけ、武士道未だ滅びず、貴殿こそまさに武士の中の武士、と例によって大袈裟な褒め方をする彼に、すっかり照れた武之進は、三右衛門の墓前に事の次第を報告するから・・と、そそくさと去っていくのだった。全く完全無欠の御仁じゃ・・と、その背中にまで賞賛の言葉をかける伊織。
「旦那、こりゃまた凄まじい褒めようだね」「ああ、凄まじいな」「しかし旦那、土壇場でえらく山川の旦那を持ち上げたすっぱ抜きをやったもんだな」「いやな、ああでもいわんと、あの旦那使いものにならんくらい、ぶるぶる震えていたからな」「なるほど・・ヘヘッ・・震え止めに持ち上げのすっぱ抜きをやったわけかい」「・・震え止めはふるってるぞ」いつものように顔を見合わせて笑う2人なのだった。(南まさとさま・台本より 2009年11月22日)
<見どころ>・・というか見たいところ(^_^;
酒断ちは感心せんと言う兵庫に怒る半次、「や、野郎、酒断ちしたら仇を討てねえだと・・やいやいこの旦那野郎、言うに事欠いてなんてことこきやがるんでぇ・・もう許せねえ・・その上、2日酔いで、しょっちゅう頭抱えてやがるくせしやがって、俺のように適量飲めばとか、ふざけるのも大概にしやがれ」
そして一両あるから一緒に飲もうという兵庫の誘いを断り、「・・旦那、言っとくけどな、旦那も若けえわけじゃないんだ、いい調子で酒ばっかり喰らって腕を頼りに小銭を稼いだり、暴れたりしねぇで、少しは反省した方がいいと思うよ」「反省をか?」そのまま立ち上がる半次。「おい、お前どこ行くんだ」「俺は反省したのよ」「ほう、どう反省したんだ」「つまり人生はもっと厳しく生きなきゃいけねぇってことをだ」と、兵庫と別れて三右衛門の供をすることを告げる。 (南まさとさま・台本より 2009年11月22日)
<コメント>
ゲストの中村竹弥氏扮する浪人が、半次も心酔するほどの人格者だと思いきや、果たし合いの前夜、泊まっていたお寺の塀を、荷物と一緒によじ登ってトンズラしようとする場面だけ覚えています。物陰からのぞく兵庫と半次。「ふおっほっほ、おい半次、あれを見ろ」「えっ、ありゃ、あの、これ、どーなっちゃってんダ」とまあ、こんな具合。このシーン、黒沢明の「用心棒」で、藤田進が逃げるシーンのパクリ、というより、今で言うところのリスペクトかな、なんて思います。(キンちゃんさま 2008年7月23日)


「星の数ほどふられていた」 (第二シリーズ 第73話) 

<キャスト> 北竜二=大石弐左衛門 神戸瓢介=腰が低い割にはきっちり安値を付ける質屋和泉屋の主人 阿波地大輔=盗賊頭の浪人 宮城幸生=大石の家に乗りこんで来た盗人たちのリーダー格の人か? 仲はるみ 山本紀久子 南都雄二=52回見合い相手にふられた苦難にクビをつろうとし、それを乗り越えた仙吉
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=篠敦子 
衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉津正・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>
2人は、52回も見合いに失敗して首つりを計った仙吉を助けた。仙吉をなだめて彼の経営する小料理屋へ。懐の寂しかった2人は「恋は体当たりだ」などとおだてて酒を飲む。仙吉は、その言葉にのって最近の恋人にぶちかましをかけたが・・・。
<あらすじ>
「一緒に道中さえしなきゃ宿場宿場の賭場でがっぽり稼げる」と言った半次と、「剣術を教えればおまえの3倍の稼ぎはかてえ」と言った兵庫が再び出会ったのは、3日後、無一文から相次いで質屋に刀を入れて金を作ろうとし、兵庫は「1朱」、半次は「100文」と言われて引き上げる途中でネコとクモに出会うという災難の後だった。
金を作らねば酒も飲めない。半次に会って喜んで入った居酒屋で、2人とも一文無しと分かり、まさに飲み干さんとする杯の酒まで名残惜しそうに銚子に戻し、店を出て2人は街道へ。そこで、あまり枝振りの良くない木に紐をかけて首つりをしようとしている男を見かけて助ける。
この仙吉は、これまで52回も見合いをして振られ自分に愛想を尽かして、ヒモがないので自分のふんどしで死のうとしていたのだ。
「おめえには同情する余地はない」と2人にきつく言われて首つりをする気がなくなった仙吉は、命の恩人だと自分の経営する居酒屋”竹乃家”に招待する。「人助けはするもんだ、(半次に)おめえはあしたから(首つり)専門に探して歩いたらどうだい」と機嫌良くどんどん飲む兵庫に”仙さん”は招待したことを後悔し始めていたが、「仙さんは実に偉大など根性の持ち主だ、りっぱりっぱ」とおだてられて気をよくすると酒を勧めはじめる。あきれる半次に、兵庫はこそっと、「ばかだなおめえは。ここは銚子の追加が来るかどうかの天下分け目なんだぞ。もっと気合いを入れてほめろ、もっと真面目にやれ」
機嫌の良くなった仙さん、首をつろうとした原因がもう一つあると話す。「実は私、恋をしてしまいまして」(2人とも)「恋?」(画面にハートマークに”恋”の字がでてくる)「その恋というのはつまり、色恋の恋か」「決まってまっしゃないか」2人は笑い出す。
ちょっと気分を害しながら仙さんは、最近越してきた浪人・大石弐左衛門の娘・綾乃に身分違いの恋をしたことを話す。
「恋に身分の上下などありはせんよ。押しの一手でいけ」という兵庫に、勇気を得て、「いてこます」と、早速行動を起こす仙さん。
しかし、帰ってきた仙さんは、綾乃の父にやられ、ふらふらのこぶだらけ。
2人はこれはあんまりひどすぎると、弐左衛門の住まいに乗り込む。弐左衛門によると、仙さんは、「好きだ」と言いながらいきなり娘に抱きついたために、木刀で殴られ追い返されたのだった。事実を知った弐左衛門は仙さんの”強烈な一目惚れ”の気持ちにうたれ、綾乃もまんざらでもないようで、どうやら「ぶちかましが功を奏した」ようだ。
が、そこに、いきなり刀を振りかざしながら「表へ出ろ」と、弐左衛門の家に入ってきたやくざたちがいた。
半次の活躍で一時撤退したやくざらは、弐左衛門にはまったく覚えのない連中、やつらが来た理由は、弐左衛門の家の中にありそうだ。それはどうやら、この町に立つ高札にあった、1月前に起こった美濃屋の押し込み強盗の金と関係あるのではないかと推理する。弐左衛門の家の床下にもぐると、やはり、なかから千両箱が。
盗賊の一味が頭とともに戻ってくる。・・・
「おい、いつまでいちゃいちゃしてるんだよ。もう盗人たちはおわっちまったよ」と半次が、家の中でいちゃついている仙吉と綾乃に言う。「なんと。もう終わったん。何と弱い泥棒たちやな。もうちょっと長いこと斬り合いやってくれたらよかったのに。ねえ、綾乃さん」「食われるねえ、だんな」「まあそう言うな、仙さんは52回の苦い経験がやっと稔ったんだ」「52回の苦い経験がね。ちげえねえ」
<見どころ>
冒頭、質屋の主人に「ものがいいのは分かりますが、こんな田舎では引き取り手がいません」と刀を1朱に値切られ、ぶつくさ出てきた兵庫、そこにネコがいて追い払うのだが、逃げていかない。「この質屋はなんていう質屋だ、けしからんぞ。なんと質屋同様、物わかりの悪いネコだな」と、方向変えする。その後、半次が同じく刀を質草にしようとして、「こんな妙な刀、いくら田舎町でも」と100文に値切られ出ていくと、そこにクモもがでて、半次も逃げていく。
一文無しとは言いだせずにいる半次を誘って入った居酒屋で、半次に「ところで旦那、はっきりしとくがよ、ここは旦那のおごりなんだろうな」ときかれ、「おまえ何とぼけたこといってんだよ。俺といなければがっぽりもうけて見せると言っただろ。毎度毎度海よりも深けえ恩を受けている俺に対してだぞ。」「海よりも深けえご恩だと」「その通りだ。おめえ下手な売り出しをやってよ、俺に命を助けられたことが何度あると思ってるんだ。実に13度だぞ13度」「じゅ、13度・・ちきしょうつまらねえこといつまでも覚えていやがって」「そのご無礼代わりにおごって当たり前じゃねえか」と、おごるのは世の中の常識とのたまわる兵庫。その後、半次も一文無しとわかり、泣きそうになりながら杯の酒を戻し、居酒屋を出る。そのあとも、お銚子の幻が浮かぶ兵庫は機嫌が悪いが、半次が旦那も3倍かせぐと言ってたじゃないかと反撃に出て、さらに2人とも刀をかたに金を作り損ねたと知り仲直り。
なよなよっぷりがいい南都雄二さん。しかし、見事に恋の相手をゲット!
林の中で盗賊の浪人たち10人ほどを相手にの殺陣!相手が多いと、さっとジャンプして避けたり、斬った後、すぐに次の相手に向かって刀を構える。(以上 じゅうよっつ)

いゃあ〜・・本当に兵庫と半次の掛け合いは毎回絶好調ですね。特に兵庫、大吉の時に比べて早口で、半次に負けず劣らずセリフをまくし立ててるんだけど、その口調が何とも耳に心地よいっす。近衛さんがお元気だからか、大吉後半の頃なんかと比べると、かなり早口でも言葉が聞き取り安いように思いました。
それにしても、全く同じように刀を質入れしようとするとは・・やっぱり結局は似たもの同士の2人なんですね(笑)で、お互いそれを知ってあっさり仲直りとは・・居酒屋での涙目兵庫といい、このAパートの部分だけでも十分すぎるほど面白いっす。もちろんゲストの南都雄二さんも、十八番の「何とも頼りないけど憎めない」優男を好演されていたし、殺陣も相変わらず格好良くて、メインの(笑)ストーリー自体も楽しかったですが。
特に今回、最初に盗人達がやってきた時、兵庫が半次に「お前が片付けろ」みたいに言って、自分はその顛末を見ていたのがすごくいいなぁ・・と思ったっす。半次に任せるときは全面的に任せるという。この時の「お、やってるな」って感じの兵庫の嬉しそうな笑顔を見て、本当にいい相棒や〜・・という思いをまたまた新たにしました。無論その分、ラス立ちでは兵庫の見事な太刀捌きが堪能できて満足っす。(南まさとさま 2009年8月9日)


「お山の大將が二人いた」(第二シリーズ 第74話
 

<キャスト> 芦屋雁之助=芦屋無宿の雁次(thanks トプ・ガバチョさま) 林昌子 美田園子 賀川泰三 脇中昭夫 川浪公次郎 三杉健介 東光男 高城丈二=兵馬、日置の旦那(thanks トプ・ガバチョさま) 川谷拓三(NC)=雁次に「本気でやったらケガするで」と止められた川辺一家のやくざの一人 小田部通麿?(NC)=青空博打シーンの雲助のひとり?
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=藤井光春 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=河野節子 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉津正・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>
ある時、兵庫と半次に相対し、兵馬と雁次という、名前が酷似しているコンビに出くわします。
そして、半次が「なんか気味悪いなぁ」と言いつつ、お互いがお互い仲良く意気投合し、兵馬(高城丈二)が「俺はあれに目がなくてねぇ」と言うと、兵庫も応じ、「おぉあれかぁ〜。俺もあれには目がないんだ」と、早速茶店に。茶店で注文したものは、なんと兵馬はしるこそして兵庫はもちろん酒。甘党辛党と、見事に相対したのでした。「なんでぇ〜、あれって言うから、てっきりあれ(酒)だと思ったよ」とブツブツ。
それにしても芦屋雁之助(高城丈二の相棒の渡世人役)、ほとんど印象なかったなぁ。
(ZAPOさま 2001年12月19日、雁之助さんの役追加=キンちゃんさま 2003年2月27日)

<あらすじ>
兵庫が、およしとおちかという若い娘2人の「かっこいい、しびれる」と言う言葉に気をよくしていると「おじさんどいて」「?」
娘たちが目を輝かせていたのは、兵庫のずっと先を歩く兵馬という浪人だったのだ。
そのころ、半次が青空博打をのぞくと、雁次という旅ガラスが駕籠かき相手に大儲けしていた。そこへ、先ほどの兵馬がやって来て雁次に話しかける。
「雁の字、このバカ!」「旦那かいな」「何が旦那かいなだ、おまえってヤツは人足相手に道草食ってやがって全くどうしようもねえ野郎だな」「そんな旦那、人前でぼろくそに言うことありまへんがな。わいはな、旦那が腹すかしとるやろ、はよ団子の一口でも食べてもらおうと、こうやって勝負にでてまんのや。それをバカとはなんでんねん」雁次が結構稼いでいるときいたとたんに態度がころっと変わった兵さん。「これはすごいな。なかなかやるじゃないか。それでこそ、雁次兄いだ。はははは」
まるで自分と兵庫のやりとりにそっくりな2人を目のまえに、びっくりする半次。
人足たちが雁次の取り分を支払わないために、3人で人足たちを痛め、人足たちは金を払わないまま逃げてしまったのだが、兵さんは、口の悪いのだけでなく、腕前まで兵庫そっくりだった。
半次が兵庫に、この何ともびっくりの出会いを話していると、ちょうどそこに仕返しに行こうとする先ほどの人足たちが来たので、雁次が取り損ねた1両を取り返してやる。そして御礼にと、4人して”あれ”をやりに行くことに。「”あれ”が飯より好き、一日お目にかからんと調子が狂う」と、兵庫と兵馬はすっかり意気投合したはずなのに、実は、兵さんの”あれ”は汁粉、兵庫の”あれ”はもちろん酒で、「そんな反吐の出そうなものをよく何杯も食えるな」「そんな鼻の曲がりそうな臭いのするものをよくがぶがぶ飲めるな」と互いの好みを牽制かつ敬意を表しながら、酒と汁粉をどんどん飲み食いし始める2人にあきれる半次と雁次。
「あんたも俺と同様に似たようなのを連れて歩いているようだが、どこまで行くのかね」「どこまで行くのやら、その日の風任せの旅でね。「それも俺たちとそっくり。で、旅に出て長いのかね」「もう2年になるかな。あんたは?」「いやあよう覚えとらんが、あんたの倍くらいにはなるかな」「途中でこの上方の丸っこいのをひろっちまってね。窮鳥懐にいればってやつで、追い出す訳にもいかず、面倒を見ながら旅をしているようなわけですよ」「俺もあんたと全く同じでな、俺は旅に出る早々、このおっちょこちょいを拾ってしまってな。まあ、薬にもならんが毒にもならん奴なんで精神的肉体的に面倒を見ながらつれて歩いてやってるわけだ」
互いが互いの相方との腐れ縁の話をしだしたことが元で、いつもの言い合いになり、兵庫と兵さん、雁次と半次は、互いの相手と斜め向かいの相手にダブルの口げんかとなり、怒った雁次と半次は店を出ていってしまう。
半次と雁次はすぐに旦那たちが心配になり引き返すが、そのころ困っていたのは、旦那たち。飲み食いしたのに払う金はなくなる、店のオヤジはこわい顔をして睨み始める、どうしようかと思案しているところに、先ほどの兵さんにあこがれる娘たちが来て、「あら月影さまの分まで払うんですか」と言いながらも金を立て替えてくれることになる。
しかし、突然入ってきたやさぐれものたちが、娘たちを連れて行こうとする。まったく身に覚えがないと言う娘たちだが、兵庫が話を聞くうち、娘たちは城下から里帰りの途中で、城下で買い求めた100両の富くじの当選発表を待たずに早立ちしたことを思い出す。雁次の話では、その富くじが去年当たった旅人は、喧嘩で死んだらしい。どうやら、胴元がとって置くはずの当たりくじを、間違って娘たちに売ったらしい。そこに、富くじの胴元の親分らが富くじを取り戻しにやってくる。・・・
腕は兵庫と同じくらい強いのに、兵庫と違ってもてる兵さん。両サイドに娘たちが座り大福を食べている。
「俺一度でいいから、あんななりてえよ」「バカ、泣くやつがあるかよ。さて行くか。あんなの見せつけられたらかなわんからな」「ちげえねえ」「そら旦那と半次兄いはよろしいわ。いてしもたらそれで終いや。わいはあほらしい、あれ終わるまでまたなならんのやから」「ははは。なるほどあほらしいな」
<見どころ>
似たものコンビという設定がよくて、飯屋でのダブル旦那と&旅ガラスのやりとりが、面白い。
互いの相方について「全く同じだな、先輩。」と、兵庫と兵馬が意気投合すると、「おっちょこちょいを拾って精神的肉体的に面倒見てやってるとはなんて事こきやがるだよ」と半次。「そやそや。おい旦那、上方の丸っこいの拾って窮鳥懐にいれば何とかかんとか、おい、ふざけんのもいい加減にしてもらおうかい」と雁次。「何がふざけるなだ、おれは事実を言ったまでだ。そこいらのちんぴらに簀巻きにされて土左衛門になりかけたのをこの俺に助けられたのはどこの誰だったんだ、このバカ」「そうだそうだ、おい半の字。おめえは二言目には目を剥いてこの俺にこいたとかこかねえとかほざいてるが、今日までに何度下手な売り出しをやりやがって殺されかかったところを助けていただいたんだ、おめえは」「助けていただいただと」「おめえは命の恩人になんてこと言うんだよこのバカ」「バカとはなんだいバカとは。そんじゃ言わせてもらうがな、旦那が今日まで旅の先で酒やおまんまにありつけたのはいったい誰のおかげだって言うんだい」「そうやそうや。おう旦那、今の半次兄いのセリフを、”酒”を”汁粉”に変えれば以下同文じゃ」とこんな調子。
今回も殺陣が冴えている!設定では兵さんは旦那と同様の凄腕だが、あいにく兵さんの殺陣とは、腰の入り方が違うので、ちょっと丘になったところでの殺陣も、安定した旦那の動きは、ずっと上に見えてしまう。
飯屋での、兵庫と兵さんの話から、兵庫の旅は4年ほど続いていて、半次とは旅をはじめてすぐに出会ったことがわかる。(以上 じゅうよっつ)
兵馬は雁次の事を「雁の字」って呼んでいたのがおもしろかった。最初は半次と雁次の出会いが先だったと思いました。
お互いの連れの”だんな”の悪口に花が咲きそこへ、兵馬が現れて、悪人にからまれる。兵馬は悪人を片っ端からぶちのめします。
二人と別れて半次は兵庫にこの事を話すけど、兵庫は「お前みたいな馬鹿はどこにでもいるが、俺みたいな腕の立つのはあまりおらんぞ」といって信用しない。そこへ、先ほど兵馬にやられた悪人が来て、「さっき一緒にいた奴だ」とからんでくる。 兵庫は「半の字、お前の言った事、本当かもしれん」「ほれ、こいつらの頭みてみろ、みんな同じ所にコブができている」悪人達は頭の同じ場所にコブができていて、兵馬は腕利きだと証明された。自信はないけど、兵馬は確かに甘党だったけど、注文したのは、しるこではなかったのか?(花山の記憶と混ざっているので自信はない)悪人に対する謎がとけて、兵庫が「どうやら俺には見えてきたぞ〜」兵馬は「なるほど、そういう事か」といって二人は前へ出るしかし半次と雁次は首をかしげる。悪人の前で、先ず雁次が「やい!やい!やい!」とたんかを切って前へ出るが途中で恐くなって逃げてくるシーンが面白かった(清貴さま 2004年2月26日
「お山の大將が二人いた」観ました。ううむ、にわかコンビとはいえ、高城丈二、芦屋雁之助両氏のコンビ、とうてい近衛十四郎、品川隆二のコンビには及びませんね。ほとんど脚本は兵庫、半次と同じ言い回しで書かれているにも関わらず、まったく似ても似つかない演技でした。コンビやシリーズ歴の長さより、これは近衛、品川の演技の成せる技です。何しろ、ふたりの舌は実に良く速く回るし、リズム感があって軽妙。まったく勉強になりました。
脚本がいかに面白く出来ていても、近衛、品川のふたりでなければ演じきれないという事ですね。いやあ、いやあ、ますます以て両者の演技、コンビネーションに感服いたしますぞ。どうりで、リメイクはおろか、似せて作る事もなかなかかなわぬというわけだ、あっはっはっは!(っと、ラストカット風に)(大地丙太郎監督 2007年10月23日)
お山の大將が二人いた」は、兵庫が始まって100話目の記念のお話とかで、期待して見ました。兵庫と半次のようなカップルいや、コンビがもう一組出てくるのですが、いや〜全然違う!もう片方のコンビは、同じようなせりふを言ってても、言っちゃあ悪いけど、取って付けたような・・気持ちが入っていないような・・って感じがぬぐえない。その点、兵庫と半次は、本当に自然!こうやって他のコンビと比べると、改めて、二人のナイスな関係が分かりますね。もしかしたら、もう片方の「旦那」は、もう少し年上の(このちゃんぐらいの)人の方が良かったのでは・・。どうも頼りになる「旦那」と言うには、若すぎて。でも、お姉ちゃんたちに「きゃー素敵!」と言われる役なので、人選が難しいかな・・。「腕も立つ」と兵庫は言っていましたが、何だかスローモーに感じてしまいました。このちゃんとの差は歴然ですね。(鈴雪さま 2009年8月10日)
仰るようにコンビとしての差が歴然だったっす。とは言え話を楽しみたかったので、兵馬と雁次の掛け合い部分は、思いっきり愛情フィルターをかけて見てたんですが(笑)、殺陣だけは・・近衛さんが上手すぎて(爆)どうやっても無理でした(^o^) なんかいつもにも増して冴えた太刀捌きでめちゃくちゃ格好良かったっす。(南まさとさま 2009年8月10日)
高城丈二さんの「兵馬」を、雁次が「ヘキの旦那」と紹介していました。これは「日置」と言う苗字で、兵庫の「月」に対して使ったんでしょうね。(トプ・ガバチョさま 2011年12月8日)
<旅の場所>
大和宿


「思わぬところに敵がいた」 (第二シリーズ 第75話) 

<キャスト> 北林早苗=咲 谷口完=都島彦兵衛 梅津栄=兵庫に「土鍋が割れたような顔」といわれた都島一家の子分・赤岩 月形哲之介=兵庫とそっくりな着物の都島一家の用心棒の先生 野々村圭 野崎善彦 香月凉二=竹松の身の上を話した大工風の町人 白川浩三郎 太田博之=竹松 西田良(NC)=都島一家の子分
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=篠敦子 
衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉津正・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>
神社の境内で百両の大金を運ぶ途中の飛脚が殺された。落ちていたお守り袋が竹松という男の物だったため、竹松は下手人として都島の彦兵衛にしょっぴかれた。
<あらすじ>
半次が旦那だと思って、後ろからぱーんと背中を叩いた浪人は、都島一家の用心棒だった。、
用心棒はなにやらとても急いでいるようで、やって来た都島の子分たちに半次を痛めつけるように言い残して去っていった。
その喧嘩を茶店で見ていたほんものの兵庫は、酒をおごるという条件で半次に手助けし、早速飲みに行こうとするのだが、その途中、神社で、殺されたばかりの飛脚を発見する。半次の知らせを受けてやって来たのは、先ほど子分が半次とやり合った都島の彦兵衛だった。
彦兵衛は、飛脚がこの町の生糸問屋・甲州屋から100両預かって運ぶ途中であることを確認、ちょっと離れたところで兵庫たちが見つけた「咲 竹松」と書いたお守りから、この町の札付きの暴れ者・竹松の仕業に違いないと、早速竹松を捕らえる。
竹松は若い男だった。町の人の話では、人殺しで島送りになった父親とは生き別れ、母親とも死に別れて、姉の咲とすんでいるらしいのだが、”人殺しの子”と呼ばれ、ひねくれてしまったらしい。
その後気晴らしに、2人が入った居酒屋では、お咲が弟の事で気をもみながら働いていた。そこに、竹松が逃げたと言うしらせが。兵庫と半次はお咲とともに、都島の彦兵衛を訪ねるが、彦兵衛は、子分を傷つけて逃げた竹松は、生きて捕まえるには及ばないlこともあると話す。
お咲を帰した後、2人は、竹松が一家を物陰からねらっているのを発見、一家に見つからないように話を聞こうとするが、竹松は、「都島の彦兵衛を殺す」と息巻いてばかりで理由も言わずに、走り逃げてしまう。
お咲に寄れば、竹松には、この町を出て江戸か大坂に行きたいという、金が欲しい動機もあるのだが、兵庫には、少し解せないところがあった。
1つには、お咲が、以前から都島彦兵衛から妾になれと言われていて、そのことで竹松は親分を恨んでいた、もう1つには、竹松は、大金を盗ったにしては、すぐに出ていかずに、都島彦兵衛を殺すことばかりを考えて一家の辺りをうろうろしていることだ。竹松は、お咲を手に入れたい都島に、無実の罪を着せられていたのでは?
それに、争ったあともないのに、死体より離れたところにわざわざ証拠のお守りを落とすのはおかしい。甲州屋の話では、100両を飛脚が運ぶのを知っていたのは、甲州屋の主人と番頭、飛脚、都島の親分だけだそうだ。
真犯人は他にいそうだ。誰だ?と考えたとき、半次が兵庫と間違えた浪人を思いだした。用心棒が急いでいたのは、飛脚が殺された神社の近くだ。居酒屋で懐具合よく飲んでいる用心棒にカマをかけると、都合良く乗ってくる。
そこにお咲が、竹松が一家に乗り込みそうだと2人に助けを求める。やはり竹松は、姉を妾にするために自分に飛脚殺しの罪を着せた都島を殺そうとしていたのだ。「竹松、おまえが都島を殺したら自分はどうなると思ってるんだ」「どうなったってかまやしねえや。どうせ人殺しの子呼ばわりされて極道に走っちまったんだ」「このバカ」やけになる竹松を殴る兵庫。
「甘ったれるんじゃねえ。血迷うな。人殺しの子呼ばわりされたのはおめえだけじゃねえはずだ。姉さんだって言われているはずだ。その姉さんはどうだ、やけでも起こしたのか。居酒屋で一生懸命働いておめえのようなやつに飯を食わしてるじゃないか」半次も竹松に話す。「おい、竹松、人殺しの子呼ばわりされたのはおめえや姉ちゃんだけじゃねえ、まだ他にもいるんだぞ。だがおめえのように極道に走ったのはその中のほんの一握りの負け犬野郎だけだ。え?」「竹松分かるか。どんな境遇に置かれても負けないのが本当の男なんだ。おまえももう子供じゃない、いい加減に目を覚ませ。姉さんがどれだけ心配しているかおめえにはわからんのか」竹松は飛脚は殺していなかった。守り袋は3日前に都島の赤岩と酒を飲んで無くしていた。
そこに、用心棒と都島一家がやってくる。・・・
竹松は今までのことを咲にわびる。「これで、めでたしめでたしってところだけどよ、お咲きちゃんが一言、俺に好きっていてくれたら言うことねえのにな」「半の字、無駄な努力はよせ、それこそ100年待っても無駄だよ」「100年はひでえや」
<見どころ>
冒頭、人違いから都島一家の子分とやり合うはめになった最中、茶店で休んでいた兵庫がお茶を飲みながら声をかける。
「半の字」「「おう旦那」「おまえだいぶ旗色が悪いぞ、しっかりやれ、ほら」「何を水くせえ事いってんだよ」「おめえってやつはまったく進歩のない野郎だな」「俺何も好きこのんでこの・・」と旦那の方へ話しかけようとして、「ほれ、後ろから来るぞ!」「わあ!危ねえ。ほーびっくりした」「ほれ今度は右だ」「野郎!」「ほれ、左からもしかけて来るぞ、もっと注意してやれ」「旦那あ、ちょっとぐらい手え貸してくれたらどうだい」兵庫が喧嘩相手の人相まで文句を言い出したので、子分たちは兵庫にもかかってくる。
その後、仏を調べにやってきた都島一家の中に、先ほど兵庫にあごをはずされた赤岩がいるが、兵庫の顔を見て、「ほ」「ほ」といいながらこわそうに通るのだが、その時の兵庫のちょっとにんまりした顔がいい。今回はなんとなく兵庫の物言いが優しいような(気のせい?)
今回は、2度も居酒屋に入って、酒の注文までするが、とうとう兵庫は飲まずじまい。
竹松に説教する兵庫と半次兄さん、どちらもかっこいい!
最後の殺陣ではちょっぴりコミカルに、月形哲之介さんまで樽のわっかをはめられてけちょんけちょんに叩かれる。(以上 じゅうよっつ)
このところ、勢いに乗ってる時の番組っていうのはどういうものなのかの見本のような(笑)回が続いてますよね。例えば、兵庫と半次の掛け合いひとつとってみても、セリフの妙もさることながら、それを喋っている時の近衛さんと品川さんの表情や間合いが、まさに芸術的域に達していると言っても過言ではないと思うし、それだけじゃなく、例えばゲストキャラのちょっとした仕草に至るまで、一瞬たりとも目が離せないというか・・とにかく画面の隅々まで楽しさが溢れてるんですよね。
そうそう・・今回「思わぬところに〜」の冒頭で、呼んでも振り向かないダンナに後ろから飛びつきざま肩を叩いた半次に一言。
「あんたは女子高生かいっっ!!」
いや・・なんか一昔?前の学園マンガのワンシーンにありそうなイメージだったもんで(爆)思わず声に出してツッコミ入れてました・・(^_^;あのシーン、もし本物だったらどういうリアクションだったのか、ものすごく興味あります(笑)(多分「ばかやろ!!いきなり何するんだよ!!全くおめぇはどうしようもなく落ち着きのねぇ野郎だなぁ〜!!」とか何とか罵られてるんだろうなぁ・・)(南まさとさま 2009年8月16日)
<旅の場所>
盛太宿


「母よあなたはケチだった」(第二シリーズ 第76話) 


<キャスト> 三浦策郎 海老江寛 雲井三郎=片目の弥十郎 高宮克己 乃木年雄 西田良=肩が触れたと因縁をつけて銭を要求する地回りやくざのリーダー格。そのおかげで造り酒屋の用心棒のくちがみつかる。 中村伸子=造り酒屋の隠居・清衛門さんのところで働く姉さん 今沢昭信 ミヤコ蝶々=兵庫と半次を1日2人3朱で雇ったどけちの姉さん
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=脇武夫 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之装飾=甲田豊 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=尾田耕太郎 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉津正・宮川輝水 監督=荒井岱志
<大筋>
片目の弥十郎という盗賊一味におびえる宿場で、兵庫と半次は、2つの用心棒の仕事にありつくのだが・・・。
<あらすじ>
「旦那いけねえな、こう世の中が不景気だとしわ寄せが無情にも俺たちに吹き寄せてくるんだな」「そうだなこの不景気は相当深刻だな」
今日も今日とて金のない2人。「俺とおまえと合わせて3文しかない」という兵庫に対して、「その3文だって俺がもってたんじゃねえかい」という半次と言い合いになり、金を作ってくるのはおまえの仕事だと”不文律”を説かれた半次は、旦那に3べん回ってワンと言わせるために、仕事を探しに出かける。
そして、見事その腕を買われ、”半次に並ぶ剣の達人”という売り込みで旦那と2人、一日一人1両、あごつき10日、酒飲み放題で、造り酒屋の”おちよ”を片目の弥十郎というこの界隈をおびえさせている残忍な盗賊一味から守る用心棒のくちをもってくる。ところが、”お孫さん”と思った、早速引き合わされたそのおちよは、南蛮渡来の何十両もするネコ、「趣味悪いぞ」と慌てて飛び出てしまった。
しかし、金は作らなければならない。
「なんだよおめえは。ネコの用心棒のくちなんか見つけやがって。鬼のクビとったような面しやがって。おめえが探したくらいの口はな、俺が目をつぶってでもすぐに見つけてみせらい」「おーおお、こきやがったな。さっさと見つけてみやがれってんだ、ちきしょう」と喧嘩しながら次に見つけたのは、ボロ屋のなかから「用心棒を求む」の幟をもって出てきたおばさん、いや姉さんの家の用心棒。
2人にしっかり竹の試し斬りをさせて腕を確かめ、半次は「まあまあやな」旦那は「凄腕」と見込まれ、雇われることになった。
仕事は、やはり片目の弥十郎から財産を守ることなのだが、2人あわせて1日「清水の舞台から飛び降りたつもりで」3朱、守るべきものはほとんどなさそうな家の中で、朝ご飯はお粥、昼はなし、夜は痩せ芋に薄っぺらなたくあん一切れで、ちゃっかり食事代も取り上げるという何とも先ほどの仕事とは比べものにならないもの。「なるほど俺たちも貧乏はしとるが、ここの食生活はすさまじいのお。(芋とたくあんと取り上げて)見事にすさまじいぞ。透けてみえとるわ。はっはっはっ」
向かいの居酒屋の主人の話では、この”姉さん”と夫は8年前にこの宿場に来て以来、食うや食わずで金を貯め高利貸しをはじめて、楽しみと言えば金を前に並べて拝むことと言う、あまり評判の良くない夫婦だった。そんな話をきいているうち、向かいから悲鳴が。弥十郎が子分たちをつれてやってきたのだ。
兵庫と半次に痛められ、「朝までには頂戴する」」と言い残し、去っていく。
その間、夫婦は、怖がりながらもしっかり床の下に隠したらしい金の上で守っていた。朝まで体一つでどこかへ避難しなさいという兵庫の言葉に、金と離れるくらいならと涙声になる夫婦。結局朝になり、弥十郎が今度は浪人たちを引き連れてやって来て、無事兵庫らが一群をやっつけるまで、2人は床下の金の上に座り続けた。
守り抜いた金を前に拝んでいる夫婦。「今日の用心棒代出せなんて、そんなあこぎなことはいわねえから安心しろよ」といいながら出ていこうとする2人を呼び止め、夫婦は2両を渡そうとする。
夫婦は、もともと上方で商売をしていたのだが、奉公に出していた息子が店の集金を落としてしまい、その埋め合わせをするために、こうして店を畳んでここに移って金をため始めたのだ。その50両を無事に守れた御礼と言うわけだが、そうときいては、もらうわけには行かない。
「そうだったのかい。そんなこととは知らないものだから、俺はどけちだとか散々嫌みいっちまって、申し訳ねえ。そうと知ったらこの2両はおろか昨日もらった用心棒代ももらうわけにはいかねえんだよ、なあ旦那」「あ〜あ、そうだとも」「これはそっちに納めて、上方に帰る路銀の足しにでもしてくんな」「いいえ、とっといて頂戴」「いや、いいからもっといて」「とっといて頂戴」「いや」とやりとりをするうち、「そうでっか、ではもろとくわ」とひょいと2両を懐に納める姉さん。「え?」2人はびっくり。
「旦那、どうだいまあ、しまちゃったよ」「しまちゃったって、おまえ、出したものしまわれたんだからしょうがねえじゃないかよ。事金に関しては、おめえの歯の立つ相手じゃねえよ」「ちげえねえ」
<見どころ>
旦那に「三べん回ってワン」と言わせるような用心棒の口を見つけてきた半次兄さん、旦那に、「さあ」と迫る。見ている方は、あまりに半次がしつこいので、ついに「ワン」まで言わせるかと興味津々になる。
「いやあ兄さん、すごいじゃねえか。兄さんの頭は冴えてるなあ。まさに天才的な頭の持ち主だぞ、いい頭だ」と半次の頭を撫でながら喜ぶ兵庫。「おい旦那、そうと分かったら三べん回ってワンと言ってもらおうじゃねえか」「兄さん、このめでてえ時にはそんなことどうでもいいじゃねえか」「いや俺はやってもらわなきゃ気がおさまらねえんだ。さあやりやがれ」「兄さんそうしつこく言うなって、こんな時にいつまでもこだわってるとせっかくの兄さんの貫禄に関わるぞ。大人物というのはな、物事にこだわらんもんだ」「いいや。おら今日はごまかされねえぞ。さあ、両手ついて三べんまわんな」」「いつまで言ってんだよ」「何してんだよ、ほれこの」と半次のしつこさに旦那も困り果てていると、ちょうど、半次の頭の上辺りにクモを見つけて、「ものは相談だ」とそれをとってやるのと引き替えに、三べん回る約束はおじゃんになる。
ボロ屋の姉さんの家の用心棒として腕を試された兵庫と半次。このちゃんはさすが、自分で竹を放りあげると、いいタイミングでスパッと斬る。ほんとに斬ったように見える。半次兄さんは、ちと遅いかな・・でもわざとかもね。
このちゃんの殺陣は身軽だ。前にも同じようなことを書いたが、半次兄さんが手前でアップで悪者をやっつけている向こうの、小さく見え隠れしているシーンでさえ、ご本人がやっていると、ああ、この回は調子よかったんだなと嬉しくなる。6〜7人の腕の立つ浪人相手の殺陣は、どの方向にも隙を見せない。さすが!(以上 じゅうよっつ)
ミヤコ蝶々の出演は、少し覚えています。大変な節約家(ドケチ)な母役のミヤコ蝶々。
ふとした縁から空腹の兵庫、半次は、蝶々と夫に、いつものごとくひょんなことから関わり、家に赴き、やっとの事で馳走になることになった。それが、夫婦はボロ長屋住まい、兵庫と半次に馳走するが、おかずが何とタクアン1切れずつに芋、それも向こう側が見えるくらいかなり透けている。
抱腹絶倒する兵庫。「ホホホホワ〜ッ、はんのじ、こいっぁ〜うまく切るもんだなぁ〜。透けて見えらぁ!透けて・・・、ホレホレ・・こりぁぁ、相当なものだぞぅ!」とこんなような・・・。(ZAPOさま 2001年12月18日と2002年1月23日)
ミヤコ蝶々に用心棒として雇われる時、竹割のテストをさせられる。半次は半分に皮一枚程度残して切った。ミヤコ蝶々「まあまあやな」と言う次ぎに兵庫は見事に真っ二つに割り驚かす。
最後にミヤコ蝶々はこれはお礼だと言って二人に二両を渡して、身の上話をする。その内容は覚えていないけど、半次はすっかり同情して、「そんな話聞かされちゃこの金は受け取れねえ」と言って返すが、ミヤコ蝶々「いやいやそんな事言わずに」と言って一度は、受け取りを勧めるが二度目には、「そうか、それなら」と言って一両をしまってしまう、半次はこのケチぶりを兵庫に愚痴るが、兵庫は「いまさらやっぱり一両くれなんて言えるかよ」といって番組は終了する。(清貴さま 2004年2月26日)


「タカがトンビを生んでいた」 (第二シリーズ 第77話) 

<キャスト> 御影京子=居酒屋のおきみ 小林勝彦=八十川辰馬 不破潤 水木達夫 瀬良明 国一太朗(”郎”の間違いか?)=半次に股の下をくぐれといった一刀流門下・横井重五郎 浜崎憲三 宍戸大全=果たし合いで兵庫に斬りかかってかかえられ、木のところで斬られた八十川道場の門下生 朝永桐子 月形龍之介=一刀流の名人・八十川典山吉兼 西田良(NC)=八十川道場のポニーテールの門下生
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=脇武夫 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之装飾=甲田豊 記録=高木弘子 
衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装置=木村雅治 助監督=尾田耕太郎 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉津正・宮川輝水 監督=荒井岱志
<大筋>
すかんぴんの兵庫と半次は、ついに背に腹はかえられぬと、大道芸を思案。
兵庫は、竹を見事にいくつも切ってみせる。人も集まり見物料も稼ぐが、道場主(月形竜之介)は、「十剣無統流見事、だが剣術を芸におとしめるとは恥を知れ恥を!」と兵庫を罵倒。その後、道場主の放蕩息子は、悪行三昧。兵庫は、道場主に、逆に「恥を知れ恥を!」とやり返す。
しかし、あまりの悪行に業を煮やした兵庫は、大激怒し、成敗にかかる。息子は、あえなく惨敗。兵庫、激怒に堪え、かろうじて許すが、その背後から卑怯にも斬りかかった刹那、影から見ていた道場主が、息子に剣を投げて殺害に及ぶ。
複雑な道場主の心情を察するが、何もできぬまま去る兵庫と半次。(ZAPOさま 2002月1月16日)
<あらすじ>
またまた金のない2人が、夜は野宿するとしても、酒も無しでは胃の附に申し訳がたたんと考え出したのが、居合い斬りの見せ物だった。幸い、人も集まり、見物料も稼げると思った矢先、一人の老剣士が兵庫の剣をじっと見ている。そして、「十剣無統流、見事な腕だ。おぬしなぜ大道芸人のまねをする。剣の心を何と心得る。恥を知れ、恥を。それが分からぬ腕ではあるまいがの」と言い残して去っていった。
剣士の名は、八十川典山吉兼、兵庫もとてもかなうまいと言う剣豪で、この町に道場を構える一刀流の達人だ。
しかし、典山の跡を継いだ息子・辰馬は、典山が旅に出る前は評判も良かったのだが、今は、弟子共々あまりいい話を聞かない。
酔っぱらった道場の門弟たちは、半次に股の間をくぐれと道を立ちふさぐ嫌がらせ、その後、半次が屋の主に水を引っかけられたのが縁で世話になった居酒屋でも、辰馬と師範代の大場鉄心が入ってきて、この屋の娘・おきみに言い寄る。
おきみには、許嫁があり、辰馬にしつこく囲いものになれと言われて迷惑していたのだが、この日も、おきみに酒をつがそうと、嫌がるおきみを引き寄せる。そこに、許嫁の常が。常は、事を荒立てないために、おきみが請うまま屋を出るが、その後、辰馬らに斬り殺されてしまう。
いかに名門の道場とはいえ、あまりの行状に、「おい旦那、旦那は相手が悪いと尻込みしてるが、俺一人で結構だい」と、半次は兵庫が止めるのもきかずに道場に乗り込み、門下生や辰馬、典山に囲まれる。半次は典山に「旦那はさっき、俺たちがせっぱ詰まって居合い抜きをやったとき、剣の心を何と心得ると怒ったな。その旦那の道場のいったいどの野郎が剣の心を知っているって言うんだい。」と詰め寄る。
辰馬は典山を前に完全にしらを切るが、そこに兵庫も現れる。「しらを切るつもりらしいが、仮にも天下に聞こえた一刀流道場主として恥ずかしくないのか、恥を知れ。俺はさっき、大先生に、今の言葉が己の心に恥じぬなら、言は要しまいと言われた。同じ言葉をあんたに言いたいよ」しかし辰馬は、あくまで知らぬで通し、一刀流の名を汚したと、兵庫に果たし合いを挑む。
翌日、約束の場所、城下はずれの桔梗ヶ原に向かう兵庫。
辰馬は約束を違えて道場の門下生に兵庫を囲ませる。しかも、弟子たちをかたづけた兵庫が自分に刀を構え劣勢になると、命乞いを始める。兵庫は、その勝負を見守っていた典山を見ながら刀を納め、半次とその場を去ろうとする。その後ろ姿に、短刀を抜く辰馬。しかし、辰馬が兵庫に斬りかかるより早く、典山の投げた刀が辰馬を刺す。
「月影殿、ひきとられい」その様子を見た兵庫は会釈をして立ち去る。「旦那、大達人の旦那をあのままにしておいていいのかい」「半の字、そっとしておくんだ」半次も会釈をして2人は場を去る。
<見どころ>
賭場ですっかり金を無くした半次は、「人を求む 経験のある人優遇す」という木札を見つけ、早速応募しようとするが、何の「経験」かわからない。とりあえず、自己紹介として、「実はあっしはこう見えても経験はたしかなんで。正式にやったことはないんでござんすがね、根がでえすきなもんでござんすからね。門前の小僧って奴で覚えましたんで。」「まあ!どうやって覚えたんだい」「それがその、のぞき見しやしたりしましてね。へへへ」「まあいやらしい男だねえおまえさんは」「え?いやらしい?」「当たり前だよ、。うちはどスケベの男産婆はお断りだよ」、その産婆が木札の横の戸を閉めると、そこには、「安産におたけ産婆」の文字が。門前で女たちに笑われながらあたふた出ていく半次は、旦那が声をかけても物陰に隠れている。半次の「猿も木から落ちるって事がある」と言う弁解に、兵庫は、「兄さんのは、富士のお山のてっぺんから百貫目の石をしょって落ちたも同じくらいすさまじい」と大笑いされる。その後2人で、金の算段をしているとそこに、居合い斬りでもうけた浪人が。2人はそのまねをすることにする。
最後の果たし合いシーンで、典山を見つめる兵庫、なにもセリフはないが、その重たい雰囲気は、胸が締め付けられる思い。この重厚な雰囲気を醸し出すこのちゃんと品川さん、うまい!(以上じゅうよっつ)
このラストの殺陣、兵庫の「怒りの殺陣」としてとても魅力的です。敵が卑劣であればあるほど冴えに冴える十剣無統流。最後は鮮やかな二刀流を披露してくれます。兵庫は一本差しなので敵の刀を奪い取っての二刀流です。まあ、そのビシッと決まった格好のよいこと!
余談ですが、当時、「週刊少年マガジン」で、TV・映画の剣豪特集があって、無論「月影兵庫」もとりあげられていましたが、そのとき、この二刀流のスチール写真が使われていました。(キンちゃんさま 2003年4月6日)
兵庫はその道場主を見て自分より腕が上である事をしる。半次はだんなより強い人がいることを最初は信じられなかった。
息子と闘う前の日、半次は決闘にその道場主が来ないことを祈った。兵庫は「これが最後の酒になるかもしれない」と言って覚悟を決めていた。
決闘の時、「半次、おまえは手を出すな、たとえ俺がどうなろうとも」半次は祈ったにもかかわらず道場主は現れて、半次はギョッとする
しかし道場主は手をださない。(清貴さま 2004年2月26日)
近衛十四郎、最大の傑作は月影兵庫の77話「鷹がトンビを生んでいた」です。あの時の2刀流は、相手がたった7人なのに凄腕ぞろいで苦肉の策。2刀流は攻撃ではなく防御の構え。それが証拠になかなか1人が倒せない。残り3人になったところで小刀を捨て本来の1刀流に。月形龍之介も貫禄十分でよかった。(次郎さま 2004年3月1日)
泣いたり笑ったり、忙しいお話でした。子供の頃一回見たきりなのに、タイトルも話の内容も記憶がありました。気に入った物語の一つです。このちゃんの気迫ある剣術が冴えるシーンも、格別でした。半次さんのとんでもなくトンチンカンな売込みで、求人先が産婆さんだったという落ちが笑えました。その後の手に汗握る緊張感の溢れるシーンを、このギャグが浮き立たせていると思います。(花鳥風月さま 2007年10月31日)
このちゃんと月形龍之介さんの最後のシーンが最高でした。ジーンとくる終わり方でしたね・・。二刀流もかっこよかった!!
それと、一押しのこのちゃんのかわいいシーンがありました。半次が水をかけられた居酒屋のおやじが「お酒でも一杯・・」と言った時の仕草です。前屈みになって手をグーパーグーパーして喜んでいるところ・・ほんっとにかわいいです。
あと実は、個人的に感動したシーンがありました。兵庫と半次がおなかをすかせて「胃のふがキュウキュウ言って」る時に、兵庫が「間違いなくいいことにぶち当たると自信を持って歩くんだ、自信を持って」と言うところです。兵庫の言葉に勇気をもらいました。(でもそのあとすぐ猫が・・(^^))(鈴雪さま 2009年8月23日)
いゃあ〜〜良かったです!!何よりゲストの月形龍之介さんの存在感が抜群でした。もう出てくるだけで画面が引き締まりますよね。その月形さんにあわせたように、ストーリーもいつもよりやや重めだったので、かえってお楽しみ部分とのコントラストが際だって見応えがありました。何より久々に緊迫感溢れる立ち回りが見られて最高っす。見終わって、なんか凄く贅沢なフルコースを食べたみたいな(笑)感じ・・笑いもドラマも殺陣も・・まさに全てが言うことなしの美味しさだったなぁ・・と思います。
そうそう、おきみちゃんが辰馬達に無体なことをされているのに、助けようとしない兵庫・・の描写が好きです。第1シリーズの「赤鞘だけが知っていた」でも、勝ち目がないからと、関口兄弟との決闘から逃げる場面がありましたが、それと同様のシチュエーションで、見ながらその態度にかなりのもどかしさを感じつつも、彼が決してスーパーヒーローじゃなく、殊更人間くさい主人公だっていうのを再認識できる喜び・・という、ある意味アンビバレンツな感覚に浸れるところがたまらないんですよね〜(←変!?)(南まさとさま 2009年8月23日)


「吹けば飛ぶよなデブもいた」 (第二シリーズ 第78話) 

<キャスト> 桑山正一=ほんとは「鼻高々」ではなかった高鼻の六助 夏川かほる 由利京子 藤山喜子 日高久 唐沢民賢=品のいい方の浪人 丘路千 波多野博=般若のまさ 寺下貞信 平沢彰=ガラの悪い方の浪人 沢田トモ 大江光(NC)=グルの浪人が捕まるのを居酒屋の主人の横で見ていた、おだんご頭の長屋の住人
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=藤井光春 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=河野節子 装置=木村雅治 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉津正・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>
兵庫と半次が”捕り物の達人”と思いこまれ、凶悪犯にはめっきり弱い岡っ引きの手伝いをして、宿場でおこった殺人事件を解決する。
<あらすじ>
賭場で当たったお祝いをせねばと口実をつけて、兵庫が半次を誘った茶店では、ガラの悪い浪人が、菜っぱに針が入っていたと言いがかりをつけて店の主人を脅す。と、後ろで飲んでいた品のいい浪人がその男を追いだし、主人は感謝して品のいい浪人に御礼を渡した。
それを見ていた半次は、感心することしきりなのだが、宿場に着くと、その男たちは”高鼻の六助”と言う十手持ちに連れて行かれるところだった。
実は、この2人はグルだったのだ。すっかり人間不信に陥った半次を慰めようと、「しかしあの十手持ちだが、あんな芸細かな細工を見破るとはたいした男だな。江戸にでも連れて行ったらめきめき売り出すぞ」と高鼻の六助をほめる兵庫。
これだけの腕前の十手持ちがいればこの町には盗人一人いないだろうと、居酒屋の主人に話すと、ところが、つい3日前にも辰巳屋に泥棒が入り、120両と織物30反が盗まれたのだそうだ。
その話から「犯人は3〜4人組」と推理した兵庫に、居酒屋の主人は、「お武家さまはかって捕り物に関わりがあったかたでは。そうに違いございません。それもきっとさぞ名前の売れたかただったのでございましょう」と感心、いい気になった兵庫が「そうまで見透かされちゃ仕方がないや。ひところ町奉行の与力や同心の相談役みたいなことをやっていてな、大いに感謝をされてもてはやされたもんだった」などと言ったものだから、すっかり兵庫を捕り物の達人と思いこむ。
そこに、表で人が殺されているという声。出てみると、牛松と言うやくざな男がイヤに行儀良く死んでいた。居酒屋の主人は、早速兵庫を、高鼻の六助のおかみさん・お元に紹介し、兵庫と半次は高鼻家に。実は、高鼻の六さんは、こそ泥くらいなら大丈夫なのだが、大きな事件はこわくて取り調べられない、先ほどの浪人2人組も、なんとか先代の”高鼻の五助”に恥じない十手持ちになってもらおうと言うおかみさんの協力によるものだったのだ。勘違いとはいえ、2人は捕り物の名人として協力せざるを得なくなった。
翌日まず、牛松の許嫁というおスミを訪ねると、おスミや近所の長屋のおかみさんたちは、口を揃えて、この10日ほど、牛松は姿を見せていない、殺された夕方、牛松は大男と歩いていたと話す。
が、どうも、その態度が不自然だ。
現に、半次の調べで、長屋以外の人間で、大男と歩く牛松を見たものはいなかった。おスミの態度もいまいちはっきりしないし、苦しんだ形跡のない牛松は、別の場所で殺されたはずだが、その場所も謎だ。そして、”般若のまさ”と言う地回りのやくざが、長屋の連中の証言はウソだ、昨日長屋で牛松を見たと、高鼻の六助に話す。
その話の通り、長屋のおかみさんたちは、牛松が堅気にならないため夫婦になるのを拒むおスミが、たびたび牛松に暴力を受けるのがかわいそうで、おスミをかばおうとウソついていたのだ。おスミは、その日部屋で襲いかかってきた牛松を突き放すと、牛松は倒れて頭を打って死んだと告白する。動転したおスミはしばらく外に出て歩きまわり、その後戻ってきて長屋の住人が相談してうそをつくことにきめたのだった。
しかし、兵庫の見立てでは、牛松は頭を打ったからではなく、首を絞められて死んでいた。しかも、地回りのまさの家の畳がめくれていて、その下には何かが隠されている様子があった。「おスミちゃん、牛松を殺したのはあんたじゃないぞ」牛松は、おスミが家を出ていた間に誰かに首を絞められて殺されたのだ。もし、牛松が3日前におこった辰巳屋の盗みに関係していて、分け前を巡って仲間ともめたとしたら・・・。
「旦那、早く捕まえてくださいよ」「六さん、捕まえるのはあんたの仕事だろうが。一生笑いものにされてもかまわんのか。あんたが男になるのはここだぞ。さあ」まさの家を家捜しすると案の定、盗品がでてきて、六さんは無事、真犯人を捕まえた。喜ぶ六さん夫婦。「半の字みろ、親分のほうは昨日と比べて一段と鼻が高く見えるぞ」「ちげえねえ」
<見どころ>
茶店でガラの悪い浪人を追い払った品のいい浪人に「ぴりぴりしびれるほど惚れちまった」半次兄さん、実はグルと知り、「もう何がなんだかわからねえ。人間が信じられなくなった」とがっくり。あまりの気の落ちように、目の前に下りてきたクモさえも、気づかず、自分でクモを手づかみし捨てるのを見た旦那は、「こりゃあ驚いた。半の字信じられんのはこっちだ。おめえ大丈夫か?(あまりのことに声がしゃがれる)下を見ろ、下を。今おまえが払い落としたもんだよ、ほら」「うわあ!出たあ!」「おまえ狂ったかと思ったが、まともらしいな」とほっと笑うのもつかの間、「こりゃいかん、ネコだ!」「クモが先だ!」と二人して逃げていく。
(以上 じゅうよっつ)
ところで、「吹けば飛ぶよなデブもいた」のタイトルの意味が分かりません。デブって、誰のこと・・・?高鼻の六助もそんなに太っていないし・・???このタイトルは、「吹けば飛ぶよな将棋の駒に・・」のもじりですよね。タイトルの意味、お分かりになりますか?(鈴雪さま 2009年8月23日)
(↑の鈴雪さまのお話を受けて)確か予告で、高鼻の六助のことを「身体は大きいけど頼りない」みたいなことを言ってたと思うので(←うろ覚え(^_^;)やっぱり彼のことなんじゃないかなぁ・・。でも、見た感じ全然デブじゃないですよね〜〜(笑)(南まさとさま 2009年8月23日)





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