素浪人ばなし(花山の巻二

見れぬなら、読んでみよう「素浪人シリーズ」のあらすじ。27〜52話
月影の巻一 / 花山の巻・二・ / 天下の巻 / いただきの巻 
みなさまの記憶に頼るという、管理人お得意のパターンで行く予定です。
こんな話があった、このへんだけ覚えてる、ここ違うかも、何でも結構です、
多少の間違い、不安は物ともせず、掲示板に書き込んでくださいませ。
ちょっとだけご注意:引用文の場合は、著作権の関係から、全文書かないでね。部分引用はOK。
みなさまご自身の言葉で語る場合は、何でもOKです。
Merci beaucoup!
手作りキャスト表については、相談屋さま(企画・制作)始め、キンちゃんさま(大部屋さんご担当)、長沢威さま(キラ星女優さんご担当)、
右京大作さま(出演者のその後の活躍ご担当)、大地丙太郎監督(花園ひろみさんご担当)、どらおさま(栗塚旭方面から。ノンクレジットがお得意)
智蔵おっかさんさま(ノンクレジット再発見ご担当)の皆さまのご努力により、制作されております。 お名前の後の(NC)は、ノンクレジットで出演者として紹介されてない俳優さんです。

 各お話に出てきたが、タイトル横に貼り付けてあります。(相談屋さまのご提案)

「カッコが良すぎて駄目だった」 (第27話) 

<キャスト> 佐々木愛=軽部主水の娘、綾乃 原健策=大吉の手を握りしめ自宅に案内した郷士、軽部主水(かるべもんど)
加藤忠=なかなかうめぇ新茶を出す、居酒屋のおやじ 鈴木昭生=軽部主水の家来、喜内 高桐真=地獄の悪太郎
安藤英信??悪太郎一味がやって来た事を大声で告げた町人??または友一郎に居酒屋で酒を勧められて「どうもすまないね、
友一郎さん」と言った町人??
高木二朗=半次と街道でじゃれていた雲助、百人力の伊助 入川保則=宿場の英雄、友一郎

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=林春海 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=宇佐美亮 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美エ 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


半次が大吉まで巻き込んでいちゃもんをつけたクモ助と喧嘩していると、宵待宿の友一郎という身なりの良い礼儀正しい若者が、仲介に入る。
その宵待宿の居酒屋で、今度は友一郎が若い町人をもてなしているところを目撃、居酒屋の主人の話では、友一郎は、大工の見習いだった3年前この近辺の宿場を荒らしていた地獄の悪太郎一味から宵待宿を守って以来、この町の大英雄で、今では、世話役をしているのだそうだ。
半次が「えれえもんだ」としきりと感心。ところで、ただのお茶ばかり飲まないで”おちゃけ”でもいかが、と主人にすすめられるが、二人はオケラ。
早速、相談屋を開業しようと、半次が店の主人に旦那の売り込みを開始する。
「この花山の旦那、相談屋っていってよ、上はまあ大問屋から下はまあ巷の居酒屋に至るまで、営業相談にのってだな、その店の営業を繁昌させる方法をぶったてたり、またぐっとくだけて、恋の悩みから寝小便退治に至るまで、このなんだ・・・営業政策の相談、人間の悩み事、なんでもかんでもずばり百般解決するのを商売にしているのがこの旦那なんだよ」しかし、主人は、はんば不審顔。それに対して、先ほどから友一郎が讃えられるのに不快な態度だった老侍・軽部主水が、身を乗り出し、大吉の手を握る(大吉びっくりしてシャックリ)。連れて行かれた屋敷はかなりの旧家、相談屋稼業も繁昌しそうである。(主水の別嬪の娘・綾乃を見てコーフンする半次兄さんがたしなめられシュンとしたところでクモ)
主水の相談事は、娘・綾乃の婿取りだった。数回の見合いのあと、双方気に入り、九分九厘まとまりそうだった縁談が、こじれているという。
その縁談の相手は、友一郎。身分の上下を問わずに養子にと考えられた友一郎、主水にはさっぱり原因は分からないが、1ヵ月前から軽部家に姿を現さなくなった。是非、この縁談をまとめて頂きたいというのだが、綾乃は「自分たちで解決いたします」ときっぱりと他人の介入を断る。
大吉も、綾乃のはっきりとした態度に出る幕はないと考えていたが、夜、再度二人の部屋に訪れてまで介入を断る綾乃の態度を不審に思い、翌日、友一郎にあたってみることにする。
友一郎の家の前で、綾乃が来たことに気づき、二人は物陰に隠れる。「二人の間の話はなかったことにしてくださいと言ったはずだ」「私は知っております、元の友一郎さまに戻って」「それじゃあなたは・・・私はもう駄目なんだ、そばに寄らないでください」去っていく友一郎。
そのとき、悪太郎がまたやってくるとの噂が町を流れる。夜、町の人々は軽部家に集まるが、友一郎だけはいなかった。やって来た悪太郎一味から表を大吉が、裏を半次と町の人々が守り、悪党どもは追っ払ったが、まんまと策略にのせられてしまった。金蔵から金が盗まれたのだ。
しかも、悪太郎たちとやり合っている最中、半次は、友一郎が裏口から軽部家に入っていくのを目撃、強奪には友一郎が関わっていたようだ。
大吉と半次は、悪太郎一味を探しだし、そこで悪太郎と言い合っている友一郎を見つける。「気がかわったから金を返せと言うのか」「宿場の人の血と汗の結晶だ、返してくれ、20両は返す」「とっとと帰れ」「いやだ」悪太郎が刀を抜く。大吉と半次が友一郎に手助けする。・・・
友一郎は、4年前、悪太郎一味から宿場を守ったことで、町の人々からおだてられて世話役に、しかし、いいカッコしたさに必要な金20両を、町のご隠居に化けて友一郎に仕返しをしてやろうとたくらむ悪太郎から借りてしまった。その金のために悪太郎から強盗の手引きをするように脅されていたのだ。バカだった、どうか、宿場の人にこの金を返してくださいと頼み去ろうとする友一郎に、大吉は言う。
「このまま宿場の連中に黙って去ったら、一生人生の裏街道を歩き通すことになるぞ、自分のまいたタネは自分で刈りとることだ、それが男だと思う。4年前にはりっぱな男だったはずだ。」そこに、主水や綾乃、宿場の人々が来る。
「友一郎、やっぱりお前は!」という主水の前に手をついて「どんな裁きも受けます」と謝る友一郎。刀を振り上げようとする主水の前に、友一郎が悪太郎から金を借り脅されていたのを知っていた自分も悪い、斬ってくれと綾乃も手をつく。「軽部主水、かような二人を許しておくわけにはいかんのじゃ」と言いながらも、「止めるな、止めるな」と主水は周囲の家来や町人に期待している。
「旦那、あのご老体、口だけは達者だが腕の方はさっぱり動かねえや」「あのご老体にはとても人間なんて成敗できはせんよ」「ほれほれみなよ、二人してご老体の下で手なんかにぎっちゃって」
見どころ:殿様役の原健策さん。悪太郎が襲ってきたとき、大吉が止めるのも聞かず、「やあやあ、こしゃくな悪党ども、軽部主水いざ見参!
一人残らず一網打尽にしてくれるわ」と威勢良く立ち向かったまではいいが、すぐにやられそうになって「ご老体ご無事か」「何のこれしき、ご助成は無用じゃ」「無茶をやっちゃいかんな」「無茶とは何じゃ」と、最後まで口だけは達者な殿。
旅の場所:宵待宿


「腕白小僧はなぜウソついた」 (第28話) 

<キャスト> 標滋賀子=次郎吉の母、おせき 高原駿雄=宿場の総代で問屋場の主、清右衛門
今福正雄=次郎吉の伯父さんで鍛冶屋を営む、卯助 戸上城太郎=三人組の悪党の頭、喜三郎
今井健二=『なんだこの野郎』刀を抜いて、宿場の者を脅かした三人組の悪党、源太 五味竜太郎=四人組用心棒の親玉格
堀川亮=半次を巾着切り、大吉を人買いにした腕白小僧、次郎吉 唐沢民賢=次郎吉の死んだ父親の茂助
村田厚子三人組悪党に捕まった居酒屋の娘、お花 小倉康子=卯助のかみさん、おかね
藤沢薫『よくやった』茂助を誉めた役人 波多野博=『度胸も無いくせに。。。』三人組悪党の鹿蔵 滝譲二=『人違いか』四人組用心棒の一人 森源太郎=喜三郎が来るという話に『えれえことだよ』と言った町人 美柳陽子=『お前さん、ぐずぐすしていないで今のうちに逃げよう』と言ったおかみさん 壬生新太郎=『おのれ、ハエだと!』四人組の用心棒の一人(ヒゲ面) 智村清大吉半次と橋の上で合った時、右端にいた四人組用心棒の一人  
池田謙治(NC)=『まったく世話が焼けるぜ』問屋場の使用人 川辺俊行(NC)=『何をするんだ。やめてくれ』お花の父で居酒屋のおやじ、と思われる
不明
 男28−4=『うるさい、歩け』喜三郎をしょっぴいた役人

<スタッフ>
  脚本=松村正温 監督=荒井岱志 撮影=森常次 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
助監督=尾田耕太郎 美術=宇佐美亮 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美エ 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


半次は、「歩いて渡れるよ」と案内してくれた子供を信じたために、川の深みにはまってびしょ濡れになり、その子供を追いかけていて、大吉に出くわす。
大吉は、「だいたいな、川の流れを見れば浅いか深いか分かりそうなもんだ」と、まったく同情を示さない。
ところがこの次郎吉は、そのまま面倒をみてもらっている卯助叔父の家に帰り、「喜三郎が侍を連れてきた!」と告げる。それを聞いた卯助や宿場は大騒ぎで、ガラの良くない用心棒の先生に喜三郎退治を頼み、戸締まりをして家の中に閉じこもる。
その、態度のよろしくない用心棒をちょっと痛めつけてからこの宿場にやって来た「喜三郎ではない」大吉・半次を見て、
宿場の人間は姿を現してくる。
喜三郎は、8年前、突然この宿場にやってきて好き放題荒らし、一膳飯屋のお花ちゃんを連れ込んで酒を飲み始めた。そのお花を助けたのが、今はなき次郎吉の父で、卯助の弟の茂助だった。茂助は一計を案じ、喜三郎らにしこたま酒を飲ませて、酔いつぶれたところを寄ってたかって縛り上げたのだった。しかし、喜三郎らが役人に連れて行かれるときに吐いた言葉、「きっとこの宿場に帰ってくるからな、皆殺しにしてやるぜ」は、それ以来、宿場の人間を恐怖に陥れていた。宿場の総代・清右衛門さえ、「こんな恐ろしい思いをするくらいなら余計なことをするんじゃなかった」と弱気だ。
しかし、8年前に喜三郎が来たとき、次郎吉は3才。「3才の子供がはっきり喜三郎の顔を覚えているだろうか」と大吉にいわれ、初めて、今回は次郎吉のウソだったことに気づく。半次は、「なんだよ、おまえたちは。子供のウソに乗せられて、しまらねえ」と笑うが、実は、半次を騙したのも次郎吉、「子供にかつがれて、わあわあ大騒ぎしていた兄さんは、どこの誰だったかなあ」と大吉に笑われる。
半次を含めた大人たちは、次郎吉をきつく叱らねばと考えるが、大吉は違った。おとっつあんが死に、おっかさんが遠くに出稼ぎに行っていて、「やっぱり寂しいんだなぁ」と、夜、卯助の家を閉め出された次郎吉の面倒を見てやる。
一膳飯屋で飯を食わせ、「どうしてウソをつくんだ?」と問うと、宿場の連中がおっとうのことを悪く言うからだと答える。茂助が死んでからは特に、茂助は余計なことをした、出しゃばりのおっちょこちょいだと、言われている、さらに、次郎吉の母親も、この辺では使ってもらえないために遠くまで出稼ぎに行っているのだと、茂助に当時命を助けられたお花が話す。どうやら、先ほどの大人たちの話と真相には大きな差があるようだ。
翌日、大吉は「もうウソは絶対つかないと約束できるか?」と聞く。次郎吉はしばらく考えて、「できるよ」と答えるが、この日半月の暇をもらって帰ってきた母親のおせきと再会したとき、思わず、大吉を「悪い奴なんだよ、おいらを遠いところへ連れてって売り飛ばそうとしたんだから」とまたもウソをついた。
昨日から次郎吉を探していた半次(途中、次郎吉の逃げた塀の穴に入り、身動きがとれなくなったところでクモ出現)、これを聞き、「人のことしまらねえと言っておきながら自分はどうだっていうんだ・・・急に旦那に会いたくなったぞ」と嬉しそうに、このことを旦那に告げに行く。
(大吉、その話を聞いてシャックリ)「どうして、母親にまでウソをつくのかなぁ」大吉は、次郎吉母子に会いに行く。
二人の姿を見て今度は半次を、「巾着切りの半次という恐ろしい奴だ」といい、母親に逃げようとせかす次郎吉の様子を見て、大吉は、母親・おせきに言う。「うそつきの悪い子になればおっかさんが心配して何とかしてくれるだろう、ひょっとしたら一緒に住めるかもしれない、子供なりに一生懸命考えているんだよ。こんな悪い奴がいるところにほっておくのか、と、せいいっぱいおっかさんに甘えているんだよ、将来のために出稼ぎに行っているよりも、今そばにいてやることの方が大事なんだ」
おせきは、次郎吉の気持ちを知り、一緒に住むと約束する。「おっかさんと一緒に暮らせるようになったら、もうウソなんかつかないな」
「うん!」即座に元気良く答える次郎吉。
再び川でつりをする次郎吉。その橋の上で、今度はほんものの喜三郎の、まず血祭りに上げるのは茂助の家族、宿場のものも皆殺しだという声が聞こえる。次郎吉は急いで卯助叔父にこのことを知らせるが、卯助も、総代の清右衛門も取り合わない。おせきも、卯助の手前、困った様子。次郎吉がまたウソをついたと思った卯助は、次郎吉を神社に縛るが、次郎吉を信じたい母親は、次郎吉を助けて大吉の元へ走ろうとする。
が、とき既に遅く、二人は、喜三郎らに囲まれる。そこに、もう宿場を出たはずの大吉・半次が現れた!・・・
大吉に礼を言う清右衛門。「その礼なら、皆殺しになるところを助けてくれた次郎吉に言うんだな、それと喜三郎たちの仕返しを恐れて次郎吉のおとっつあんや、茂助さんのやったことを悪く言ったものは、思いっきり反省をするんだな」頭をたれる宿場の人々。
「うんと、自慢してもいいんだぞ、おまえとお前のおとっつあんはな、二代にわたって、この宿場を守ったんだ」「うん」「坊主、俺が大暴れするのみてたか?どうだ、強えだろ」と半次。「相手が弱いんだよ」「なにこの!」旦那に耳打ちして、「まったく、ハナからしめえまで、こいつにはやられっぱなしだ」
見どころ:人情もののセリフがきまるこのちゃん。
旅の場所:丸山宿(群馬県)
コメント:「次回の『素浪人花山大吉』は・・」で始まるおなじみの予告編には、本編ではない、お腹をすかした半次兄さんの足を大吉がつねるシーンがある。(以上じゅうよっつ)
刀の刃は、人を3人も斬れば血脂で斬れ味が悪くなるもの。どうしても人を斬る必要にせまられたときは、立てかけた畳を切りつけ、刃をノコギリのようにギザギザにし、皮膚がはじけ易くするようなこともあったようです。
しかし、自身剣道の有段者でもある時代小説家の津本陽は、実際の剣豪は斬り掛かられた刃を刀の棟で受け、その棟を返して相手を斬り倒した。これに付随して池田屋での近藤勇は、京都特有の狭い屋内での戦闘であることから、敵の刃を体でかわしながら斬った可能性が高く、その意味で幕末最強の剣客だったろうと推測している。つまり、実際の真剣勝負は時代劇で見るような派手なものではなく、かなり地味なものだった。
花山大吉の『腕白小僧はなぜ嘘ついた』で、近衛は戸上城太郎、五味龍太郎を刃を合わせることなくほとんど一刀のもとに斬り倒している。あれを想像すれば遠くないと思われる。(三四郎さま 2007年8月23〜24日)
毎度ながら大吉の洞察力の鋭さには脱帽です。特に、おせきに語った、次郎吉は寂しくてウソをついてるんだから、子どものことを考えるなら今一緒にいてあげなさい、という言葉が示す子どもの心理は、洋の東西や時代を問わず普遍であるように思います。しっかりと自分に向き合って欲しくて様々な問題行動を起こす・・なのでそう言うときは逃げずに子どもを受け止めてやってほしい・・ちょっと趣旨は違うかもしれませんが、そうダンナに言われているような気がして、子育てを振り返って自省の念しきりでした(汗)近衛さんの諭すような口調、本当に身に沁みます・・。(南まさとさま 2009年2月25日)
堀川亮さん:今日の「腕白小僧はなぜウソついた」には、子役時代の堀川亮(現・堀川りょう)さんが出演されてましたね。ドラゴンボールのベジータや、名探偵コナンの服部平次などの声を当てている好きな声優さんなので、一体どんな演技をされているのかと興味津々でしたが、流石にお上手でしたよね。(尤も、お声は今と全然違っていましたが(笑))半次を口で言い負かしてしまうところや、本物の喜三郎がやってきたことを宿場の人々に必死で訴えているところ等々、大人顔負けの迫真の演技で、実に堂々としたものだと思いました。(南まさとさま 2009年2月25日)


「腹の虫が怒っていた」 (第29話) 

<キャスト> 高森和子=大吉を死んだ父親の使いと思っている油問屋佐野屋の女あるじ(お登勢:予告編より)
山本麟一=侍崩れで断食道場(無念達願流道場)の道場主、隆元(りゅうげん) 山岡徹也=飛脚の金を奪い、また断食道場で半次に『辛抱しなさい』と注意した男 外山高士=佐野屋に見舞いに来た同業の油問屋、太田屋の主人 稲吉靖=断食道場で庭を掃いていた下男
小田部通麿=飛脚を殺した、断食道場のヒゲ面の男 宮城幸生=大吉を奉行所に連れて行こうとした役人
香月涼二=大吉に相談するのは無駄だと反対した佐野屋の手代、伊七 藤川弘=おからをもう少し煮込んで持ってくるべきだった居酒屋のおやじ 立花みゆき??
不明 女29−1=居酒屋の女

<スタッフ>  脚本=松村正温 監督=荒井岱志 撮影=森常次 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
助監督=尾田耕太郎 美術=宇佐美亮 記録=西野敏子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


半次は、飛脚殺しを目撃し、犯人2人を追うが、雑木林の中の「無念達願道場」の辺りで見失ってしまう。
その飛脚が佐野屋の100両を運んでいたことを役人から聞いた、このところ相談屋の商売があがったりの大吉は、早速、1割の礼金で100両を取り戻す話を佐野屋に持ちかける。この金は、先代と亡くなった主人から店を引き継ぎいだ佐野屋の女主人が、昨年来芳しくない店の建て直しのために大商いをうって得た代金で、店の命運がかかっていた。
捜査に乗り出した大吉は、飛脚殺しを目撃した半次の話から、その断食道場がくさいと狙いをつけ、もぐり込もうと考える。
「そう言うことなら、俺にやらせてくれよ」「どうも兄さんじゃ、頼りない気がするがなぁ」半次はそれでもどうしても自分がやると食いさがる。
「旦那、稼いだら飲もうね」と出ていこうとする半次に、「おいちょっと待て」「なんだよ」「勘定だよ、金も払わずに出ていく奴があるかよ」「え、俺が払うのかい?!」「当たりめえだよ、その代わりにお前を道場にやってやるんじゃないか」「払うよ、おやじいくらだ」「待て、これから俺がいくら飲むか、わからんじゃないか、有り金そっくりとは言わんから半分おいてけ」「半分なんてダメだ」「イヤだったら道場、俺が行くよ」「だ、出すよ、これで負けてくれよ」と金を渡された大吉、「おやじ、どんどん酒を持ってこい」
しかし、寺の下男に顔を見られているため、頭を整え大工に変装し道場に入門した半次は、「腹の虫が怒ってるんだよ」と、すぐに道場を飛び出してしまう。
居酒屋で、おからを肴に上機嫌で酒を飲んでいる大吉を見つけてくってかかる。「俺が死ぬほどの思いをしていたのに、旦那こんなところで酒喰らって、俺腹がへって死にそうなんだぞ!」「ハハハ・・その割にはでっかい声が出るじゃないか、(半次の頭をなでて)おお、まあきれいにそろえて」「俺今旦那の頭から塩かけてくっちましたい心境なんだぞ」「おいおい、物騒なこと言うなって。おい、兄さんよ、心境心境とイヤに難しい言葉を使うじゃないか、腹がへって頭が冴える証拠だぞ、ハハハ」大吉は笑いが止まらない。「旦那いつも言ってるだろ、衣食足りて礼節を知るって」「そんな言葉に思い当たるとは、今日の兄さんは冴えとる、おお、きれいきれい」とまた、半次の頭をなでる。」「俺、衣食のうちの食が足りてねえから落ち着いていられないんだわ」半次は、大吉が注文した?杯目のおからをおやじから受け取り、手づかみで勢いこんで食べ、むせてしまう。
ところが、腹がへって道場のことを調べる余裕がなかった半次に、「だからだ、俺が行くと言ったのに、行かせろ行かせろとしつこく言ったのは誰だよ」「・・・俺だい」「俺はな、泣くように頼むから行かせたんだぞ。まったくおまえって奴はバカの見本だよ」自分が明日道場に行くという大吉に、「悪かった、俺悪かった」と旦那に自分も連れて行ってくれと頼む半次は、「金輪際腹が減ったなど言わないか」「言わない」「いくらか見どころがある」喜んだのもつかの間、「おい、払っとけ」と居酒屋をあとにする大吉。
翌日、二人は道場へ向かう。大吉は道場主の坊主・隆元にカマをかける。半次が大吉を、「相談屋稼業をしている花山の旦那です」と紹介すると、隆英は顔色を変える。大吉が立ち上がる際に小柄をわざと落とすと、また顔色が変わる。大吉は佐野屋で、同業者の油問屋・太田屋とすれ違った際、飛脚殺しの相談に乗っている相談屋であることを紹介されていた。小柄は、佐野屋を裏切って、飛脚の情報を一味に流していた佐野屋の手代が殺された時のものなのだ。二人が席を立ったあと、坊主は、仲間の男らを呼び、飛脚殺しの捜査にやって来た大吉と半次を、腹がへって動けなくなったところで殺そうという相談をする。中にはあの飛脚殺しの男たちも入っていた。
翌朝早く、半次が、ご馳走の夢を見ている頃、大吉は、道場を出ていく隆をつける。隆は、太田屋に入り、大吉らをやってしまうまで飛脚から奪った100両を預かってくれと頼む。そこに、大吉が入ってくる。飛脚殺しを企てたのは、御城下での油商売の独占を狙う太田屋で、昔、勘定方の侍だった頃太田屋と癒着していた隆英とその一味が、100両で飛脚殺しを引き受けたのだった。・・・
一方目の覚めた半次は、道場で男たちに囲まれていた。応戦するが、なにぶん空腹、思うようには行かない。(いつもの78回転の「千鳥の合方→天国と地獄」の音楽が、33回転風)そこにクモが出てきて捕まってしまうが、縛られた繩を火であぶり「人間心がけ次第で火だって涼しいんだ、涼しいぞ・・あちい!」繩を切ってからは、いつもの半次兄さんで、男たちをやっつける。(音楽が78回転に戻る)・・・
佐野屋から出てきた大吉を女主人が追いかける。「花山さま、困ります。10両受け取ってくださいませ」「だからこの通り、1両受け取ったよ。あんたの亡くなったおとっつあんの使いで来た相談だよ、あんまり高い相談料を受け取るとよ、おとっつあんにいいわけ立たんからな」「いいえ、おとっつあんだって」「あんた、その金を俺にもたせたら飲んで使ってしまうだけだ、商売に死に金を使っちゃいかん、そいつを佐野屋の繁昌のために使うんだ。しっかり儲けるんだぞ」と言い、去っていく大吉。「へー驚いた、ガラにもなくカッコつけやがって。でもまあ、あれが旦那のいいところかもしんねえな」「おい、こら!」「ああ、行くよ!」「どうも」と挨拶して、旦那のことろへ飛んでいく半次。
見どころ:の仕込み杖と大吉の長刀の、迫力の殺陣。大吉は刀を落とされるが、坊主の振り下ろした刀を避け、バランスを失った隆を足で蹴って、その隙に、小柄を坊主に投げる。目に刺さった小柄に苦しむ隆を、拾った刀で斬る。
断食で冴えた(?)半次兄さんのセリフや、最後はどうしても、口で大吉に負けてしまう半次。半次のきれいな頭を見て喜ぶ大吉。

コメント:大工姿の半次兄さん、かわいらしかったですね(^∇^)でも、あの断食道場の表札看板にあった「無念達願流」で誤字発見!よくあるやつですが、「達」の字のしんにょうの中が「幸」になっていました。「一本足らねぇだろうが、このばかたれがっ!」と突っ込みをいれながら、笑って観る『花山大吉』。それこそ本当に「幸」せを届けてくれる番組ですね(^∀^)v(トプ・ガバチョさま2013年8月31日)
旅の場所:松野藩の御城下


「歴史に残る妻だった」 (第30話) 

<キャスト> 正司照江=育ちが良すぎて貞淑な、花太郎の妻、月江 正司花江=『助けてー』自らを器量良しと称する月江の妹、雪江
茅島成美=半次と目がピッタリ合った、花太郎の逢い引きの相手の女 岡田千代=料理屋つる家の女将
佐藤京一=『たかが痩せ浪人や三下を斬って何になる。百(文)にもなるまい』の先生、並木一馬
鈴木金哉=大吉に鉄扇を投げられ、また池に投げ込まれた、女癖の悪いヤクザ 平凡太郎=『毎度ありがとうございました』大地主で月江の亭主、花太郎

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=宇佐美亮 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


大吉と半次は、土地のワルの男たちに追いかけられて困っていた雪江を助けたことから、是非にと、上方からこの土地に嫁いだ姉の月江の家に招待され、夫の花太郎と月江、雪江の3人から礼を言われる。月江と花太郎は、非常に仲が良いのだが、花太郎が「仕事で失礼します、仕事で」と、やけに「仕事」を強調して部屋を出ていくと、月江は物凄い形相で、花太郎の行方を見ている。
半次が、大吉が相談屋をしながら旅を続けているとを話すと、雪江は、それはちょうどいい、是非、悩み事を相談したら、と姉に勧めるが、月江は
育ちがいいから」となかなか言い出せない。「この期に及んで、何言うてんの、ボケやな」「姉に向かってボケとは何や」と、大吉・半次に負けず劣らぬ言い合いが始まり、ついにはとっ組み合いになる。半次が二人の間にはいるが、クモが出て逃げ出す、「うわー出た!旦那、助けて!」「なんとまあ終始がつかんな」と、旦那がクモを掴もうとするより早く、雪江が掴んで放り投げる。旦那、あきれて苦笑い。
月江の悩みは、夫が浮気をしているのではないかということだった。大吉と半次に、浮気の現場を押さえてほしいと言う依頼なのだが、二人はあまり乗り気ではない。しかし、二人はオケラ、つい先ほどまで「ボケナスとうらなりのカボチャが親戚づきあいしているような顔」の大吉と「狸とイノシシが富士山のてっぺんから一緒くたになって落ちてきたような面」の半次だったのだから、稼ぐためには仕様がないと、花太郎の尾行をはじめる。
二人は、月江からもらった内金中1両を使って、花太郎が入った料亭の隣の部屋で張り込む。
しかし、料亭で女を待つ花太郎、逢い引きにしては、ため息をついている。「ため息入りとなると、これは相当、風変わりな逢い引きだぞ」「するってえとどの手の逢い引きかな」この手の経験のない半次がしきりに考える。
やがて、女がやってくる。半次が、女を見ようと、廊下の障子に穴を開けのぞきこむが、穴が大きすぎて、女に気づかれてしまう。「へへ、こんにちわ」「お前、誰に挨拶したんだ!俺たちはここで張り込みをしてるんだぞ」と旦那に叱られる。案の定、逢い引きはうまくいかなかったらしく、花太郎がため息をつきながら、部屋を出て帰っていった。
半次は、責任をとると言って、隣室に入る。「こりゃどうも、突然入っていて申し訳ない。」花太郎との関係を聞く半次、「あたしたちの仲を探りに来たんだね」と言われ、「こりゃたまげた、実はその・・」と言いかけて、「いやいやとんでもねえ」とあわてて否定する。しかし、女は、花太郎のことを「ウスノロ」と呼び、二人が相思相愛の仲だとは言い難いようだ。そこに、雪江を襲った男たちに先生と呼ばれていた侍・並木が入ってきて、深入りすると命を落とすことになると脅す。
二人は、この場は引き上げて、花太郎に事情を聞くことにする。大吉が、「仕事とは言えんな」とか女と「ああ、確かに会ったな」と言うものだから、月江は逆上し、花太郎に馬なりになり、雪江が渡した尺八で、半次や雪江が止めるのも聞かずに花太郎を叩き続ける。(大吉びっくりしてシャックリ)花太郎が気絶して我に返り、今度は、かいがいしく花太郎を介抱しはじめる月江。
「あんた、女と逢い引きして楽しむつもりが、とんだことになったんじゃないのか」真相をつかれ、びっくりする花太郎。「貞淑でおとなしい女だと思っていた・・」と話だし、月江が睨む。「月江ちゃんは別ですよ、月江ちゃんは貞淑ですもんね」吹き出す大吉・半次。
しかし昨日、並木がやって来て、自分の女房に手を出したと、1000両脅迫してきたのだ。
「この状態じゃ相談料をもらうわけにもいかんし、片づけていくか」二人は、1000両を渡す約束の神社へ向かう。そこには、並木と、手下の男たちが・・・。
「しかしよ、花太郎のかみさん、あれモーレツだったな」「あれはまさに、歴史に残る恐妻ぶりだぞ・しかしなんだな、ああいう場面を目撃するとお互い、独り者のありがたさが実感として迫ってくるじゃないか」「そりゃそうだよな、お互いあれだや、ケツ叩かれずにすむからな。独り者バンザイってわけだ」バンザイ、バンザイと両手を挙げる半次。
大吉・半次の会話:冒頭、旦那に商売に身を入れろ、と言い、俺の懐をあてにしているんだろうとやり返され怒った半次に「俺が上手く相談屋の口を探してたら今夜は旅篭の布団の上で寝られる、酒にもありつける、何とかそうあってほしい、そんなことをこれっぽっちも考えなかったと言えるかよ」「そりゃそう言われて見りゃその通りだが・・確かに態度悪かったな」「反省しろ」「分かったよ、反省するよ、旦那をくそったれ呼ばわりしちまって俺、態度悪かったな、ああ、俺って奴はなんておっちょこちょいなんだろ、俺情けねえ、さもしい根性が情けねえ」半次の極端さに笑いをこらえる大吉。雪江に姉の家に来てくれと頼まれた半次、始めは断っていたがあまりに勧められ、旦那に相談し叱られ、今度も思いっきり反省、しかし・・・「何の言われもねえのに、話を聞いてすぐご馳走になる気になりやがって。俺見損なった。そんなさもしい気持ちでまともな世渡りが出来ると思ってるのか」「そうだよな、俺としたことが。俺が悪かった、俺という野郎、なんていう意地きたねえ野郎だ、このくそったれが(思いっきり自分の頭を小突く)イタタタ」「(あわてて)そう早まるなって、さもしい根性はいかんが、あの姉さんのたっての頼みを断るのも礼儀に反するなぁ、ここは礼儀をたてて、心ならずも姉さんの誘いを受けることにするか、そうしようそうしよう」そそくさと決めてしまう大吉に、半次「なんだ、ありゃ」
見どころ:並木との殺陣。このごろの殺陣は凝ってる+躍動感がある+力強い。このちゃん絶好調。並木が来る、逆手に持ち替えて、後ろの
並木を刺す、くるっと回って順手に持ち替え、反撃しようとする並木を斬る。


「狂ったやつほど強かった」 (第31話) 

<キャスト> 清水まゆみ=塚田先輩の娘、菊乃 成瀬昌彦=大吉に濁酒(どぶろく)の味を教えた剣の先輩、塚田幻舟
天津敏=阿座上(あざがみ)三兄弟の長兄で居合の達人、烈鬼(れっき)
高田次郎=阿座上三兄弟に看板を取られた、馬庭念流川辺道場の道場主、川辺弥一郎
石浜祐次郎=おからを置いていなかった不勉強な居酒屋のおやじ 阿波地大輔=阿座上三兄弟の次男で幻舟に杖を貸した、鉄鬼(てっき)
宍戸大全=阿座上三兄弟の末弟で身の軽い、狂鬼(きょうき) 小山田良樹=稽古中の事故で亡くなった、修二郎の兄の塚田修一郎
三田一枝あいにくなことばかり起こる茶店のばあさん     三上ヒロ子修二郎の行き先を半次に教えたおばさん
宗方勝己=酒に溺れている塚田先輩の息子、修二郎

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=宇佐美亮 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


半次は暑い中、茶店を見つけて冷たい麦茶を注文するが、「へえ、それがお客さん、あいにくで悪いんだが・・」が口癖の茶店のばあさんは、冷たいものはなんにもないという。しようがなく、生ぬるいくみ置きの水でも飲もうと、店の奥に入っていくときに、3人づれの侍の一人にぶつかってしまい、素早い居合い抜きで、半次は上締めを斬られる。謝ったのにと、この仕打ちに怒った半次だが、「今度は上締めだけではすまない」というばあさんの忠告をよくよく考えて躊躇していると、自分がいない間に門弟を殺され看板をとられたという道場主が三人の前に姿を現す。この三人は、阿座上烈鬼鉄鬼、狂鬼の道場破りの兄弟。狂鬼が相手をするが、身の軽い狂鬼に一撃も加えずに殺られてしまう。
密かにこの道場主を応援していた半次が、手を合わせていると、後ろでシャックリが聞こえる。「おめえ、とうとう殺ったのか」と瓢箪の酒を飲む大吉。「どうもこのごろのシャックリは、妙なところで飛び出していかんよ、陽気のせいかな」
二人は暑さしのぎに入ったおからのない「不勉強な」居酒屋で、「ないんだから仕方ないべや」「おから探しだよ、宿場中歩いておからを探してこい」「言うに事欠いて、この粋な兄さんにおから探してこいなんて」と言い合っていると、二人の後ろで泥酔していた若侍が、店の主人が止めるのも聞かずに酒を持ってこいと徳利を倒す。二人が振り返ると、因縁を付けて、表へ出ろ、決着をつける、と大吉に迫る。あまりしつこいので、大吉は相手をすることにするが、この侍、刀を持つ手は震えている。男はかなりの使い手であるにもかかわらず大吉に斬られるの待っている、なぜだと、問いただされ、図星をつかれて愕然とする。
「どうも、おからのない居酒屋に入るとろくなことねえや」と他の店に移ろうとする大吉を追いかける半次の前にクモ。ところが、探せど、居酒屋はない。その代わりに行き当たったのが、りっぱな門構えの「一刀流塚田道場
(Thanks 相談屋さま)」、大吉の剣の先輩・塚田幻舟の道場だった。
3ヵ月前から心の臓の病で寝たきりの幻舟は、大吉との25年ぶりの再会に、大喜びするが、話が2人の息子のことになると、「男の子はおらん、二人とも死んだ、そう、死んだんだ」と、口ごもる。
夜、酒を運んできた菊乃に、息子のことを聞くと、重たい口を開けて昼間の死に急ぐ若侍が「兄の修二郎です」と答える。二人の兄、修一郎と修二郎は、ともに剣の稽古に励む、幻舟自慢の息子だったが、3月前、稽古で誤って、修二郎は兄を殺してしまった。以来、修二郎は家を出て酒浸り、幻舟は病の床に伏している。菊乃は
、言葉とは裏腹に、幻舟は今でも修二郎の帰りを待っているとを話す。「先輩の病の元はこれだったんだな」
翌日、大吉らは、修二郎を訪ねる。大吉は厳しい表情で、「今日、俺はあんたを斬りに来たんだ、立ち直る気力もなく、腹も切れず、そんな男のどこに生きる価値があるというんだ、苦しいのはあんただけじゃないんだ」と刀を抜く。「さあ抜け!腰抜けが!塚田幻舟の息子なら、せめて最期はりっぱに立ち会って死ね!」しかし、一旦刀を抜いた修二郎は刀を引く。「だめだ、あのときからこの手が言うことをきかんのだ」
大吉は、修二郎に遠慮会釈なく斬りかかっていく。始めは、懸命に避けるだけの修二郎が、やがて、剣を構え、応戦してくる。「よし、もういいぞ、修二郎、手はりっぱに言うことを聞いたではないか」ハッと気づく修二郎。「今の気力があれば、あんたはりっぱに立ち直れる、死者に報いる道はただ一つ、りっぱに道場を立て直して兄の分まで剣の道に励むんだ」「私はバカでした、私は甘ったれでした」と目を覚ます修二郎。
そこに、菊乃が、道場に阿座上兄弟が来たと、知らせに来る。4人が道場に着き、修二郎が幻舟に代わって鉄鬼に構える。烈鬼の投げた小柄が修二郎にささり、その隙に鉄鬼が斬りかかろうとしたとき、大吉の鉄扇が飛ぶ。鉄鬼の注意がそれたその時、修二郎は鉄鬼を倒した。
しかし、今度は、残った2人が大吉に向かう。縦横無尽に飛び回るサイ(相談屋さま、thanks)の使い手・狂鬼と、居合いの達人・烈鬼は強敵だったが、最後、バランスを崩した大吉を助けようと、半次が烈鬼に小柄を投げ、その隙に、大吉はかがんだままの姿勢で烈鬼を斬った。
「やっぱ、なんていうか、俺たちの勝負と違って、侍の勝負は見応えあるな」と、旦那の無事を喜びながら傷の手当てをする半次。幻舟親子も、うまくいきそうだ。
「あー、よかった。これで、この道場もバンザイバンザイだ。明日からかんかん日が射そうってもんじゃないか」「俺も肩の荷がおりたよ」「俺も同じ気持ちだ、しかしなんだな、いいことした後ってのは、すがすがしい気持ちのもんだな」「ハハハ、なるほどなるほど」
見どころ:(天津)敏ちゃん、阿波地さん、宍戸さんと豪華悪役三人組。だが、このちゃんの様な隙のない殺陣の役者に、隙を作らせるのは、かなり無理があるように見えた(ってひいき目じゃないと、思う・・)。修二郎を目覚めさせるシーンもいい。
旅の場所:半次が街道を歩いているシーンで「井澤まで四里
(相談屋さまご確認、thanks)」との道しるべがある。しかし、この道しるべ、風にそよいでたぞ。修二郎が佇んでいた場所=大滝の川原から、大滝川を検索すると、北海道、宮城県、山形県、福島県、新潟県、群馬県、長野県、岐阜県にありそう。(以上じゅうよっつ)
宍戸大全さんのお話:何か近衛さんのせっかくテレビヒット作品なので普段画面にに写らない、又は脇役さんにもせりふを与えて登場させようということになったそうで出はったらしいのですが、本人はほとんど何をしゃべったとか役名も覚えていないとのことでした。なお、最近もこのことを何かの新聞でおっしゃったそうで2番煎じだよと笑っておられました。 (京さま)
宍戸大全さん:大阪朝日放送の看板番組に「ムーブ」という情報番組があるのですが(先週で打ち切りになりましたが誠に残念!)、この番組には“ムーブの疑問”という視聴者からの疑問に答えるというコーナーがあります。18年3月15日の放送で「昔の時代劇を見ていると特技のところに必ず“宍戸大全”とクレジットされるが、この宍戸大全とは人名なのか? 会社名なのか? それともどこかのプロダクションの名前なのか?」という疑問が取り上げられて、アナウンサーが太秦まで行って探索するという趣向でした。当時76歳の宍戸さんはさすがに年輪を感じましたが、まだまだお元気で後輩を指導する姿がとらえられていました。ちなみにこの「大全」という名前は、弟さんの名前「大全(ひろやす)」を借りて芸名にしたということです。(長沢威さま 2009年3月9日)
コメント:いいお話でした!(茶店のばあさんの面白さをお話くださった)きざくら&ようめいしゅ様が言われていた、茶店の「おばあさん」おもしろかったですね・・・「あいにくだが・・・」を連発していてました でも半次兄さんが麻上(この字でいいのかな?)三兄弟に立ち向かっていこうとしたとき、おばあさんが止めたのはよかったですね・・・兄さん珍しく忠告を素直に受けて、思いとどまったのは正解でした。(ともちゃんさま 2009年3月3日)
阿座上兄弟とのたたかいが最高でした。「侍の勝負は見応えがあるな」の半次の言葉どおりです。すごい迫力でした。何度も見直してしまいました。やっぱりこのちゃんて、すごい!ただ…大吉が切られたのはどう見ても足または腰でしたが(スローでも何度も見ました)、半次が手当てをしたのは左腕。脚本が「左腕」になっていたのかなあ。切るシーンとは別に撮ったのでしょうか。謎です。でも、怪我を負っても「何事もなかった」かのように笑顔で去っていく旦那・・・武士の中の武士って感じで素敵です。(鈴雪さま 2009年3月8日)

「伜にゃ過ぎた嫁だった」  (第32話) (夫婦グモも)

<キャスト> 市川和子=驚くとシャックリが出る大吉と同じ持病を持った、お美代 田浦正己=赤ん坊を背負った骨なしのタコ野郎、平助
森健二=居酒屋のおやじで、お美代の父親、治平 山田桂子=息子平助を立派に育てた旅籠つた家の女将、おかく
天野新士=赤ん坊を人質に取った権現一家の岩松兄貴 藤尾純=権現一家の寅五郎親分、通称、権寅 島田秀雄=赤ん坊の居場所を白状させられた子分
笹木俊志=岩松に大吉が赤ん坊を取り返しに来ることを伝えた子分 和歌林三津江=風車を置いてある茶店のばあさん

<スタッフ>  脚本=松村正温 監督=佐々木康 撮影=木村誠司 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
助監督=曽根勇 美術=宇佐美亮 記録=宮内喜久子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


「あのお、神様、どうもこのところ景気が良くないもんで・・」と賽銭を入れ、「女と縁がないので、巡り合わせてください」とお願い、「でも、一人孤独な旅ガラスだもんな、やっぱし女はよしにします」と訂正して、境内の茶店で一服していると、そばで町人の男が泣きやまない赤ん坊をあやしている。見かねた半次が「お腹がへったんだよ、母ちゃんどうした?」と聞くと、妻は、母親とまずいことになって里に帰っていると、どうにも頼りない。
半次は、一旦、相談に乗ろうとするが、大吉は、赤ん坊やが姑を放り出して実家に帰った嫁や、その嫁を連れてこられない「骨なしのタコ野郎」男に腹を立て、この件への関わり合いを断る。
「おい兄さんよ、人のことを言えたもんじゃねえぞ、いつまでもおっちょこちょいぶりを発揮していると、あの男のように出来損ないの女房をつかんでしまうことになるんだぞ」「俺は女房なんて面倒くさいものは一生もたねえよ」「おー、それならいいかな、ははは」
ところが二人が今日の宿に決めた「つた家」は、入ってみるとそのタコ男と威勢のいい母親・おかくの経営する旅篭。「頼りなくて安心して泊まることも出来ない」と、二人が出ていこううとしたとき、権現一家の子分が、嫁のお美代の実家からたのまれたと、手切れ金50両を払えと、乗り込んでくる。
負けじと水をぶっかけ追い払おうとするおかくと子分どもの乱闘を見かねて、大吉・半次が男たちを追い出す。おかくは、先ほどより少しシオらしくなって、礼を言うが、二人は、関わり合いになるのはまっぴらごめんと、旅篭を出る。
ところが、次に、静かに飲むつもりではいった居酒屋は、嫁のお美代の父親・治平の経営する店。「勝手に娘が出ていったんじゃないか」とおかくが勢い込み、治平は治平で「娘を傷物にされ、追い出されてだまっていられるか」と負けてはいない。口角泡を飛ばした、相手の息子娘の罵り合いが始まる。「お美代は持病持ちじゃないか、ちょいと何かに驚いたら、すぐにシャックリがおきて、なかなか止まんないじゃないか。あたしゃ、あれを見てるといらいらしてくるんだよ」それに驚いた大吉がシャックリ。
さんざん言い合った末、出ていったおかくを追って治平も店を出ていく。治平を止めようとするお美代を引き留める。「気が済むまでやらせときなさい」「どうやら、一番話が分かっているのはあんたのようだ」と、大吉・半次は、お美代をとんでもない嫁だと誤解していた詫びと、罪のない赤ん坊のために、ひと肌脱ぐことにする。(平助を叱るため,半次がつた家に入った時クモ出現 
Thanks 相談屋さま
原因は、おかくの死んだ夫が若い頃、お美代の母親に出した、古い恋文にあった。おかくは、亡き夫が、昔惚れた女の娘にすべてを譲ろうとたくらんだんだと嫉妬し、お美代になど、つた家の身代を渡してなるものかと、意地を張っていたのだ。
しかし、治平が手切れ金の件を依頼した権現一家は、おかくから無理矢理赤ん坊を取り上げ連れ去ってしまう。赤ん坊の命と引き替えに手切れ金を要求されたおかくと平助は、大吉に助けを求め、二人は治平を連れて権現一家の親分寅五郎のところへこの一件を引き下げに行く。
権寅
は、もともと治平のために手切れ金をとってやろうなんて思っちゃいない。そこで乱闘になり、二人は、赤ん坊を隠しているという子分の岩松の家へ行く。大吉が表で注意を引き、半次が裏から大声を上げて虚をつき赤ん坊を取り返す計画だったが、そのとき、平助とお美代が、「赤ん坊を帰して」と岩松にすがる。その隙に半次が大声を上げ、大吉の鉄扇が岩松に飛び、赤ん坊は無事、半次が取り返した。
改心したおかくも、やってくる。「お美代はつた家の平助の、りっぱな嫁でございます」
境内の茶店。「それにしても、お美代さんっていうのは、野郎にはもったいねえようないい嫁だね。俺も女房もらうなら、ああいうのをもらいてえな」「女みたいなめんどくせえものは一生持たないって言ったのは誰だよ」「俺そんなこと言った覚えねえぞ」神様に手を合わせる半次。「一人、いいやつを見つけてください、お願いします。」そこで、鈴をならそうとして、クモ。「わぁ〜出た出た!子持ちグモだ」と旦那に助けを求める半次。
「つまらねえこと頼むからそう言うことになるんだ」
質問:1、治平の店には、メニューに「おから」があったが、大吉は、至極上品に酒を飲んでおり、おからを食べている様子がない。どうして大吉は、おからを食べなかった(あるいは、上品に食べた)のでしょう?
2、その「おから」のメニュー板が、途中から入れ替わっている。どうしてでしょう?(以上、じゅうよっつ)
 半次が外へ出ている間に、大吉が店のおからを全て平らげたと考えるしかないのでしょうか?(相談屋さま)
コメント:お嫁さんがシャックリもちとわかってから、大吉と二人でシャックリをするシーンがあったら面白かったな、と思いました。(鈴雪さま 2009年3月8日)


「のっぺらぼうが泣いていた」 (第33話) 

<キャスト> 御影京子=銀次の妹でのっぺらぼうに化けていた娘、おちよ 
二階堂有希子=居酒屋の別嬪の姉ちゃんで名前はおとし、しかし、こぶつき(子持ち) 
加島こうじ=お化け界、特に一つ目小僧には、やけに詳しい子供。ヒッヒッヒッ 池田忠夫=評判の悪い十手持ち、平河屋藤三(ひらがやとうぞう)
中村錦司=用心棒におちよ達を斬れと言った平河屋一家の子分、虎松 丘路千=眼帯をした用心棒、滑川(なめりかわ)十兵衛
伊村賢一郎早く寝ないとお尻ペンされる運命にある、おとしの子供、吉松
谷幹一=喧嘩場では五十や百の人間を相手にしてもビクともしない流れ雲の銀次と、元大工の源次(二役)

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=長谷川武次 照明=佐々木政一 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=中島哲二 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映

覚えているのは、のっぺら坊か一つ目小僧を退治するという話で、子供がどういう理由だったか忘れましたが、
周囲の大人を張りぼての被り物(のっぺら坊?一つ目小僧?)を使って脅かしていて、それを見破った旦那が子供に対して
「嘘を言ってもダメだ ちゃんと顔に書いてあるぞ」といって白状させるシーンです。(せりざわ ひろしさま 2002年10月7日)
一つ目小僧は子供のいたずらで、のっぺらぼうは、土地のやくざに無情にも兄を殺された妹が、夜な夜なのっぺらぼうに化けて
親分の評判を落とそうと苦心したものです。(相談屋さま 2002年10月7日)

’お化け界のことにえらく詳しいガキ’に教えられた一つ目小僧を、ホントに見てたまげた半次兄さんと、「助けてくれ」と走っているところを
呼び止めた旦那が、現場のお堂に向かう途中で、これまた、あたふたと息を切らしてお堂方向から走ってくる旅ガラスにぶつかる。
男は、旅ガラスの銀次。「おれはよ、喧嘩場じゃあ、50や100の人間相手にしてもびくともしねえ腕と度胸の持ち主だが、お化けはいけねえ」
(2人めの目撃者に驚いた旦那はシャックリ)「4つの目玉が見たとなるとおかしいな」と、3人でお堂に行くと、一つ目小僧はいない。変わりに出て
きたクモにびっくりした半次に、びっくりして旦那にしがみつく銀次。この一つ目小僧は、笠谷の御城下に半月ほど前から出るという、のっぺらぼう
の噂をきいた子供たちのいたずらと分かり、子供からは「おじさんたち、いい年こいて、ちょっとカッコ悪すぎじゃないか」と反省を促され、大吉にも
「恥さらしなうすらバカタレと一緒に歩くのはごめんだよ」と先に行かれる。
銀次は、笠谷の生まれで、4年前、城下で一の親分でお上から十手を預かっている平河屋藤蔵の子分と諍いを起こして国を出たのだが、
双子の弟の源次が死んだと聞き、一人残された妹・おちよを心配して帰った来たのだった。
銀次と別れた半次が、町の居酒屋にはいると、別嬪のおとしがあまりに愛想良く相手をしてくれるので、この際花山の旦那はほっといて
ここに3〜4日居続けようかと考えていると、そこに、今別れたばかりの銀次が入ってくる。のっぺらぼうが出るという場所を通らなければ、自分の
うちに帰れないので、送ってくれと言うのだ。妹のおちよは大工町の小町娘といわれる別嬪で、料理もうまいから、おちよの酌でいっぱいやろうと
誘うが、おとしのことをあきらめかねているところに、「おっ母」とおとしの元に子供が。「くそったれ子持ちが」と、ちょっきりの勘定をおいて、そそくさと
居酒屋を後にする。
2人で暗い道をこわごわ歩いていると、その通りに、近頃こののっぺらぼう騒ぎのために風当たりが強くなっているという平河屋の家がある。
そこに、のそりと現れた大吉に驚いた二人。「おい焼津の。お前達はどこまでもしまらねえ旅ガラスだよ」大吉は、平河屋から、のっぺらぼう退治の
助力を頼まれていた。「本日は休業らしい」といった矢先、のっぺらぼうが現れる。2人にしがみつかれて身動きできない旦那。
通りかかった平河屋の用心棒が、のっぺらぼうの面を斬ると、なんと、おちよである。
さっそく平河屋の連中は、子分を傷つけた銀次とのっぺらぼう騒ぎで一家の顔に泥を塗ったおちよを殺ろうとするが、「訳も聞かずに殺していいという
法はない」と大吉・半次によって、その場は引き返しを余儀なくされた。
おちよは、源次兄さんの仇が討ちたかった。源次は、4年前、事故で右手を折って以来、大工の仕事がうまくいかず、そばの屋台をはじめた。
そば屋の営業が順調になり、儲けも出てきた頃、平河屋に法外な所場代を要求され、それを断ったために、殴り殺しにされたのだ。しかし、十手を持つ
平河屋は、源次は、商売に不審な点があり取り調べ中に、心臓の発作で死んだ、死因についてとやかく言うときは、城下はずれに住む叔父の一家
の命はないとおちよを脅してきたのだ。おちよは、叔父の一家に迷惑がかからず、しかも、平河屋の評判を落としてうまくいけば十手返上になるかも
しれないと、こののっぺらぼう騒ぎを思い立ったのだった。
その話をきいいて、平河屋に乗り込む決意をする銀次、それに助っ人をかってでる半次。しかし、敵は、すぐもうそこに来ていた。・・・
逃げ腰ながらも無事仇をとった銀次「やった、これもあにいや旦那のおかげだ」
「旦那あ、これで万事めでたしだ。いやあ今日は一つ目小僧だとか、のっぺらぼうだとか、お化けに縁のある日だったな」「なにがお化けだよ、
正体は、腕白どもにおちよちゃんじゃねえか。それを俺に悲鳴をあげてしがみついてきやがって、まあ。」「それを言っちゃあいけないよ、とにかく
俺はお化けが苦手なんだ」「おめえのような奴にも苦手なんかあるのかね」「ひどいこと言うなよ、おい」
見どころ:銀次と半次のかけあい。最後の平河屋一家とのやり合いで何かと、半次に助けを求める銀次。「おい、銀の字、何やってんだい」
「まだ調子がでねえよ」・・「どうだい、調子は出たかい」「まだまだあ!」・・半次の痛めつけた相手を斬って「どうだあ!」「おい、あまりいい格好するな」
「俺はよ、50や100の・・」とすぐに恰好だけはつけたがる銀次。「調子は出たかい?」「ぼちぼちだ!」
二階堂有希子さん:兵庫第二シリーズにも悪役でゲスト出演されましたが、あまりテレビで見かけることのなかった女優さんです。この二階堂さん、ご存知の方もおいででしょうけれど、柳生博さんの奥さんで、「ルパン三世」の初代・峰不二子の声を担当されたんです。(イベールさま 2009年3月13日)
旅の場所
:笠谷


「海にもぐれぬ海女もいた」 (第34話) 

<キャスト> 柴田美保子=半次を肘鉄で気絶させた海の侍、おしま 曽我町子=輪島で一、二と言われる海女で、おしまのおっかさん
南弘子=おしまの喧嘩友達でせんべい好きの海女、おきみ 江見俊太郎=死んだ海坊主の浪之助の片腕、ドクロの仙造
千葉敏郎=荒磯で浪人を斬り、また時国家で大吉に『貴様の目が気に食わん』と言った浪人、稲葉
江上正伍=時国家で大吉を斬ろうとした、もう一人の浪人 白川洋子=『おしま、おはよう』おきみの行先を告げた海女
岡美芸子=おきみと共に人質になった海女 壬生新太郎=『仙造に謀られた』と言って斬られて死んだ浪人 

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=佐々木政一 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=中島哲二 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映  輪島市協賛

能登半島ロケ(素浪人日本縦断ロケ第4弾)。
大吉・半次が能登の外浦の荒々しい景色を感心して見ていると、浪人二人が斬りあっている感心しない風景に出くわす。やがて、片方の男が
倒されるが、倒した相手は大吉に気づき、しばらく睨んで立ち去った。倒された方は、半次が抱き上げると、「仙造に計られた、輪島のう、う」と
言ってこときれた。大吉に「普通の人間が分かる事も分からん男なんだから、分からんことが分かる道理がねえだろ」と言われながらも、
半次が男の最後の言葉の謎解きを考えていると、今度は、おきみとおしまという娘二人がとっくみあいの喧嘩をしている、やけに派手な景色
に出くわす。半次が、見かねて止めにはいるが、逆にひじ鉄を食わされ伸びてしまい、それで落ち込んだ半次は、それから景色を楽しむ気持ちに
なれない。二人が窓岩に来たとき、先ほどの娘の片割れ・おしまが現れる。おしまは、加賀100万石の殿様から侍の呼び名を許された、輪島の
海士の一人、どうせ、二人と同じ方向、輪島へ帰るところだからと、二人の道先案内を買って出る。
三人が時国家を見学し終わって出てくると、そこに、先ほどの浪人と浪人がもう一人、町人が一人、立っている。浪人は、大吉に近より、「貴様の
目が気に食わん」と睨む。「わしもあんたの目はあんまり気に食わんなぁ」斬りかかってきた刀を大吉は半分抜いた刀でよける。もう一人の浪人も
加わって一発触発の時、町人風の男が「大事な仕事の前でっせ」と止めに入る。自分に免じて刀を引いてくれと大吉にも頼むが、大吉が、「仙造は
あんたかね、さっきその男の刀に斬られた浪人が『仙造に計られた』
と言っとったよ」というと、振り返りざまに、小柄を投げ、大吉の右袖に刺さる。
「つまらねえ詮索はなさらねえ方がお得でござんすよ」といって、三人は去っていった。おしまによると、この土地のものではなさそうだ。
再び、御陣乗太鼓にびっくりしたり、「千枚田よ」を「何枚だ?」と聞いたりしながら、三人は輪島に着いた。おしまは、母親がサザエやアワビを
うんととって待っているし、自分も母親も世話好きだからと、自分の家に泊まるよう、強く勧める。しかも、「他に訳があるのよ、特に半次さんに」と
半次にウィンクするものだから、半次は、すっかりその気でついていく。大吉も、夫が死んでから女手一つでおしまを育ててきたという、いける
口のおしまの母親と、新鮮なアワビやサザエを肴にたっぷりの酒を酌み交わす。(途中、おしまの母親に儲け話の相談に来たおきみとおしまが
再び喧嘩を始め、半次がー今度は遠くからー止めに入ったあと、クモ出現)
翌朝、漁に出るおしまと母親について沖に出る半次に、おしまは「半次さんも思い切って輪島の人になったら?」「そりゃまあならねえこともない
けどよ」すっかり喜んだ半次が、母親が潜って船で二人きりになった時に「俺に何か話があるんじゃなかったのかい」と聞くと、「もし半次さんさえ
よかったら、夫婦になってほしいのよ」といわれ、もうすっかりその気になる。「おっかさんきっと喜ぶわ、でもちょっと、照れくさいな、半次さんのこと
お父さんって呼ぶの」半次は夫婦になる相手がおしまでなく母親だと知り、目の前が真っ暗になって、船から二人で落ちてしまう。必死に半次に
すがるおしまに「海女が泳げないなんて、助けてくれえ」
旦那の船に拾われた半次は、事の次第を話すと、「そりゃあおめえ、似合いの夫婦が出来るぞ」と笑われるが、母親が気のあるのは半次では
なく旦那の方だと分かり「半次さ〜ん、あんたじゃないんだって。そっちそっち」とのおしまの言葉に困惑する旦那を見て、すっかり喜ぶ。
「こりゃまた、似合いの夫婦じゃございませんか」
ところが、恥ずかしがって海に潜った母親が、海底に船ごと沈んでいる荷物を見つけた。昨夜、おしまの喧嘩友達・おきみが、おしまの母親に持ってきた
「沈んだ荷物を1月分の稼ぎで引き上げてくれ」という話と関係ありそうだ。そして、その依頼人は、仙造らで、殺された浪人が「輪島のう、う」と
言い残したのは、「輪島の海」に違いなさそうだ。
睨んだごとく、そこに、仙造ら3人が、おきみら、うまい話に乗ってしまった海女2人を人質にやってくる。この荷は、仙造の頭・海賊の海坊主の
之助がお宝を運ぶ途中で時化にあって落としたもので、仙造らは、島での刑を終えて、この荷を取りに来た。昨日殺された男は、分け前を増やすための、仲間割れの一人だった。一旦、荷を渡した振りをして、人質2人を取り返し、2人は仙造らから荷を取り返す。・・・
無事を喜ぶおきみとおしま。「あの二人、今度は神妙に抱き合ってるぜ」しかし、その隣では、大吉の今回の活躍ぶりにさらに惚れ直した母親が、
大吉を輝く目で見つめている。「おい、俺はちょっと、先に行くからな、後はよろしく頼むぞ」「花山の旦那、ちょっと待っておくれよ」と、逃げる大吉
を追いかけていく。「こりゃいいや、旦那の野郎、目の色変えて逃げやがった」
見どころ:時国家と、海岸での、殺陣。いつもより遠くから風景を入れて映している。手前で半次が仙造とやっている向こうで、大吉が浪人2人
に対して構えているという風に、全体が見えると見方が変わって、また面白い。遠いからと言っても、旦那の殺陣の迫力はまったく劣ること無し。
それどころか、砂浜なのに、おちている感じはない。最後、浪人の刀を両手で支えた刀で受け、それを脇にはねてから斬るのは、やはり足を
取られやすい砂浜での剣法だろうか。
ラストの、曾我町子さんに追いかけられるシーンが、兵庫の「鬼が命を洗っていた」でラストに年増の女・お元から追いかけられるのとよく似ている。
旅の場所:能登半島(石川県)の、仁江の海岸(窓岩)→時国家→千枚田→輪島


「中年の魅力で売っていた」 (第35話) 

<キャスト> 岸本教子   大吉の豪快な中年の魅力にゾッコンの娘、おしま 桂麻紀=商売がまとまったら、半次の嫁になる娘、お千代
市村俊幸=商売に悩む万両富源、生糸問屋太田屋のご隠居、伊兵衛 藤岡重慶=大豪傑、荒木又兵衛じゃ! ハッハッハ
三田村元父のことで悩む太田屋伊兵衛の息子   滝恵一=半次を付回し、大豪傑をにらみ倒した浪人
川浪公次郎=おしまの亭主になるという男  大城泰=『何だと、これだけの道幅のある街道で。。。』二人組雲助の一人(後棒)
清水健祐=雲助に絡まれた商人     浜木孝=??   
井上茂(NC)=三人組浪人の一人で、気絶する直前、右端にいた浪人 西田良(NC)=三人組浪人の一人で、半次から金包みを『もらって行く』
大江光(NC)
ダンナ達の話を盗み聞きしていた茶店のおばさん
(thanks 南まさとさま、相談屋さま)
不明 男35−2=『だまりやがれ!』二人組雲助の一人で商人を殴った男(先棒)
男35−3=居酒屋のおやじ 

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=宇佐見亮 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


半次が、街道一の生糸問屋太田屋の隠居・伊兵衛という大口の得意先を見つけ(伊兵衛が身投げをすると勘違いして止めたあと、クモ出現)、
しかも旦那を連れてきたら、半次が一目惚れした遠縁の娘・お千代をくれてやるといわれ、旦那を捜していると、旦那もこれまた若い娘・おしまと
居酒屋にいるところを発見。おしまは、大吉を一目見るなり「中年の魅力にグッと惹かれちゃった」と積極的にアプローチ、大吉がこの稀なケース
に驚いてシャックリをしても、「男の臭いがぷんぷんするような豪快な中年の魅力があって、そこがしびれるんだな」と、とまりぎ城下までの道連れを
頼んだのだ。その「お友達」との「愛情に裏付けされた信頼を、豪快な魅力のこの俺が、たかが月いくらの金で裏切れると思っているのかよ、
バカタレが」という理由からか、「結構すぎる話は8割方眉唾もんだから乗らんことにしているんだ」という理由からか、大吉はまったく、半次の話
に乗ってこない。なにせ、お千代のこともあるから、半次は頭に来るのをグッと我慢して「考えなおしてちょうだいよ」と下手に出ていたが、ついに
切れて、「やい、このくそったれ、中年のおからふぬけにもう頼まねえ、てめえのような野郎はな、おからの海におぼれて大シャックリを三日三晩
こき続けてくたばれ!くそったれが!」と出ていく。
しかし、ふと気づく。これではお千代はもらえない。途方に暮れていると、勇壮なBGMと共に、荒木又兵衛という浪人が現れる。この浪人、
先だって、街道で商人に言いがかりをつけているクモ助を、「われ鐘のような」大声で、追っ払った男だった。半次はひらめいた、荒木の旦那に
かわりをやってもらおう。
「材木問屋成田屋に500両届け、それ以降、商売が波に乗るまで月15両」の話に惹かれたわけでは決してない荒木改め、花山大吉に
伊兵衛は大満足。早速、500両の金包みを差し出し、二人は、成田屋と会うために宿場はずれの春日原に向かった。
途中、再び大吉とおしまに出会い、大吉に荒木を大吉の身代わりに立てたことを見抜かれ、その上、昨日や今日出会った人間に500両持たせ
そんな宿場はずれで取引をするなんておかしいと言われ、半次は頭に来て、荒木に大吉を痛めてくれ、と頼む。荒木は、「う〜ん」と言いながら
後すざり。「出来る!」そして、「刀は武士の心、みだりに抜くべきではない」
しかし、そこにおしまと許嫁の間にわって入ろうとおしまを追ってきた男が現れ、大吉が追っ払ったことで、おしまが許嫁の働くとまりぎの御城下
に行くところで、この男が追ってくることが不安で、大吉に同行を頼んだ事がばれた。それじゃあ、と、大吉にあっさり別れを告げるおしまに
「なんだよありゃ、まったく、近頃の娘は手におえんな」と「一年も下痢が止まらないような渋い面」の大吉を見て、半次は愉快に笑い、「さいなら
さいなら」と、大吉をおいて春日原へ向かう。
しかし、春日原には待てども待てども、成田屋は来ない。その代わりに現れたのが、まず大吉。大吉は、この街道には、成田屋という材木問屋は
ないということを二人に知らせに来たのだ。次に現れたのが、浪人三人。居酒屋で半次が大吉に太田屋の件を頼んでいたときに、後ろでその話を
聞いていて、以来、ずっと半次のあとをつけていたのだ。金包みを渡せと、迫る。半次が荒木の旦那に頼るが、荒木は、3人とにらみ合って、刀を抜こうとしたとき、「助けて〜」と逃げていく。「あれ一体どうなってんだ?」「見せかけだけの大達人らしいぞ」
浪人らは、隙に、半次から包みを奪い取って逃げる。半次と三人の追っかけっこ。半次がようやく包みを取り戻し大吉に渡すが、浪人が
再びそれを取っても、なぜか大吉は一向に気にかけない。そして、ついに浪人が包みを奪い、意気揚々としているところで、大吉が包みを
刀で斬り、空高くに上げる。落ちてきた包みを開けると、二つに割れた木箱の中身は石ころ。浪人三人は、その場にへたってしまう。
「これから先の説明はいかに俺でも気の毒で出来ンよ」と旦那に言われ、半次が太田屋に向かうと、そこには4月から気がふれた伊兵衛が
息子に付き添われて眠っている。伊兵衛は仕事熱心なあまり、気がふれた後も仕事の話ばかり、それも、話しっぷりが狂っているとは思えない
のだそうだ。しかも、お目当てのお千代は、この息子の女房だった。
「旦那、こらないぜ、とことんついてねえ」「まあそう泣くな、またいいこともあらあ。さあ行こう」「うん」とぼとぼと歩き出す半次「まったく・・・」
見どころ:今回は、極悪人は出てこないので旦那の殺陣はほとんどないが、コメディーとして面白い。旦那や半次のセリフが、ますます調子に
乗っている。(以上 じゅうよっつ)
私が好きな傑作のひとつです!冒頭 茶店で若い娘からほめられて(この茶店のばあさん、盗み聞きしていました(笑))やにさがる、だんなの態度が実におもしろいです!「今日は中年がもてる日かな?」などすっかりごきげんでした・・・半次も市村さん演じるご隠居にすっかりだまされてしまい、最後までユーモラスなストーリーでした!藤岡さん演じる「荒木又兵衛」も最高!!(きざくら&ようめいしゅさま 2009年3月6日)
きざくら&ようめいしゅ様が仰るように、ユーモラスで見ていてめちゃ楽しかったっす(^-^)鼻の下伸ばしてる花山のダンナなんて珍しいですよね。でもそこが大変可愛かったかと(^^ゞ(南まさとさま 2009年3月7日)
旅の場所:とまりぎの御城下


「フラれた方がましだった」 (第36話) 

<キャスト> 本間文子=他ではまず味わうことの出来ないうめえおからを作るお元バア、いやお元姉さん
松木路子=半次が惚れた娘、お咲 武田禎子=半次に惚れた娘、おきみ
鮎川浩=間一髪のところで帰ってきた記憶喪失の旦那でおきみの亭主、伝助 玉生司郎=大親分の遺言に逆らって未だに山賊を続けている山賊の頭、赤牛
阿木五郎=お元姉さんの家に行く途中に出会った、近所の伍作 有川正治=お元姉さんを痛めつけた山賊様、勘八
高寺正=半次たちが行くことを家にひとっ走り知らせに行った伍作の息子、三吉

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=佐々木政一 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=中島哲二 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


大好物のおからの中にマムシの肉を混ぜられて、食うに食えない大吉旦那(2002年10月6日 相談屋さま)のシーンがある。

素寒貧の半次と大吉が、山街道の掘っ建て小屋で一夜を過ごしたあと、鉄扇で捕ったウサギを腹の足しにして再び歩きだすと、向こうからばあさんが、
反対側からガラの悪い男たちがすれ違う。このばあさん・お元は、男たちからすごまれても一向に怯む気配をみせないが、多勢に無勢、
やられそうになったところを半次と大吉が助ける。男たちは赤牛を頭にする山賊で、二人の腕っぷしの強さに「あっぱれ」と、すっかり満足の様子。
二人がウサギを食べたと聞いてちょっと驚いたが、二人の顔をまじまじと見てから、今夜は家に泊まって行けと「だるまやの引き込み」のように
かなり強引に誘う。ここからさらに1里山奥と聞いて、半次も大吉も最初は乗り気ではなかったが、「どぶろくのうめぇのとお元自慢のおからが
あるだよ」と言われ、一転して態度を翻しお元についていく旦那。そのあとを、しぶしぶ追った半次も、お元の家で出迎えてくれた年増のおきみ
若いお咲のうちの、お咲をみて一目惚れ、お咲ちゃんに足まで洗ってもらって、「俺、きて良かったね」とやに下がる。
大吉も、瓶一杯にあるおからを早速味見し、「うん、うまい!特に山鳥の肉みたいなやつがこりんこりんと応えられん」と絶賛。そんなにうまいのなら
と一口食べた半次も「うん、うめえや。一緒に煮込んだこりこりした奴がなかなかうめぇ」「このこりこりしたのは一体なんだよ」「まむしだわね」
それを聞いた旦那はシャックリ、半次は「旦那、早く瓢箪の酒飲みな、俺ちょっと吐いてくるわ」「俺のシャックリは簡単には止まらんぞ、こら」と
二人して、屋外へ飛び出す。
それからの大吉は、「瓶一杯にはいっているおからが宝の持ち腐れになったんだぞ」とすっかり機嫌が悪い。しかし、お咲ちゃんが気に入った半次は
「ここんちはここんちの流儀があって、おからのなかにまむし入れてんじゃねえか。、郷に入っては郷に従えだ」と、旦那に何を言われても怒らない。
そこに、お元が入ってきて、二人に話をもちかける。孫ッ子の養子が8年前に炭焼きに行ってから行方知らずで、このままでは孫ッ子が可愛そうなので
二人のうちどちらかが養子になってくれないかと。
その話を聞いて、大喜びした半次、旦那が「まむしをおからに入れるような家風は気に食わんからな」とあっさり引き下がってくれたので、お元に
自分が養子になると申し出る。早速祝言だが、その前に孫ッ子に声をかけてやってくれと言われ、入ってきたお咲を恥ずかしげに見ていると、
隣に座るおきに「あんた、おら、いい嫁っこになるだで」と言われたまげる。おきがお元の孫、お咲はおきの妹の娘・お元のひ孫だったのだ。
旦那に助けを求めるが、「俺はさっき、いいのかと、念を押しただろうが」と取り合ってくれない。しかも、この土地では卯年の殿様がウサギを殺す
ことを禁じていて、殺すと打ち首になる、もし養子にならないなら、ウサギを食べたことをお上に申し出ると脅される。
さらに、祝言の始まる夜、婚礼の羽織を着てすっかりしょげ込んだ半次が決意し、逃げだそうとすると、そこにクモが。大声を出してお元らに
みつかってしまう。
「ちくしょう、肝心なところであれが出るなんて、俺、ついてねえ」と、しぶしぶ家の中に戻ろうとするとき、先ほどの赤牛の一味がすぐ近くまで
来ていると言う知らせが来る。実はお元の死んだ亭主は山賊のかしら。山賊は一代で止めよとの遺言で、身内も仲間も堅気になったのだが、
亭主・目玉の松三の右腕だった赤牛だけが言いつけを守らず、再び山賊を組んだのだった。赤牛は、お元らを裏切り者として皆殺しに来る。
「俺、今猛烈に機嫌が悪いんだぞ」と、半次は大吉とともに、山賊を痛めつけ、追い払う。
それを見たおきは半次にますます惚れ、さて祝言を始めようというとき、おきの亭主が戻ってきた。なんと、8年前、足を滑らせ谷底に落ちて
頭を打って以来記憶を失っていたのが、半月前、姫路の城下で喧嘩して再び頭を打ち、記憶が戻って、歩いて帰ってきたというのだ。
「どうして花嫁さ行くようなかっこうしてるだ」と不審がる亭主に、お元は「そんなことはこの際いいでねえか、お祝いだ」と皆で家の中に入っていく。
外に取り残された大吉と半次。「旦那」「記憶喪失の旦那が8年ぶりによ、しかも間一髪のところで帰ってくるとは、おめえ、助かったな」「助かったよ、
まるで命拾いしたような気持ちだ」二人が笑っていると、お元が、「静かに、もう用はない」と言わんばかりのジェスチャーをし、戸を閉める。
「お元ばあさん、今度は出ていけだとよ、なんとまあちゃっかりばばあだ」「確かにすこぶるつきのちゃっかりばあさんだが、また妙なことが
起こらないうちに退散するとするか」「ああ、そうしよう」そそくさと去っていく二人。
コメント:ずっと疑問に思っていたのですが・・「おからは傷まないのか」っていうことです。このちゃんがいろんなところで食べているおから。居酒屋に行き、おやじさんが「もう少しお時間をいただかないと・・」なんて言いながら作っているおからは「できたてほやほや、新鮮!」なので安心なのですが、どこかのお寺の古そうな台所から出してきたおからや、大きなカメいっぱいに作り置きしてあったようなおからは・・・傷んでいないのか?このちゃんは何の疑いもなく、いつも初めからバクバク食べているけれど、大丈夫なのか・・・?!って、変な心配をしていました。こんなこと考えている人は、いらっしゃらないでしょうね・・。(鈴雪さま 2007年10月2日)
旅の場所:つきのわ宿の近くの山奥で、姫路の御城下から昼夜歩いて半月で来れる場所。
本間文子さん:1911年夕張生まれ、上京してプロレタリア演劇研究所に入りましたが同期に宇野重吉、一期上に東野英治郎がいたいうことですから新劇畑の人ですね。黒沢明の「羅生門」「七人の侍」「生きる」「赤ひげ」「野良犬」などの名作に出演していますが、昔からのファンには「生きる」で菅井きんさんらと共に役所の窓口で陳情するおばさんの役が印象的ではないでしょうか。(長沢威さま 2009年3月9日)




「バカにかまってバカをみた」 (第37話) 

<キャスト> 谷村昌彦=不幸な星の下に生まれた飛脚、安造 はぁ〜 桜井浩子=半次をおじさん扱いする、ネコババ五人連れの目撃者の娘、お初
永山一夫へ理屈野郎の喧嘩常(けんかつね) 千原万起安造の後を追って探していたかあちゃん(かみさん)の、おたつ   
河上一夫=神聖なる稼ぎを数えていた山賊のお頭さま(牛裂きの牛松さま)
北見唯一=怪しい怪しい永徳寺の生臭坊主、了念 月形哲之介=茶店で大吉達の話を聞き、五十両をネコババしようとした四人組浪人の頭
白川浩三郎=『だまれ下郎』、大吉に最初に斬られた四人組浪人の一人 大江光=見知った顔の客が来なかった茶店のばあさん
川谷拓三(NC)=喧嘩常の率いる仲間の一人

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=井沢雅彦 撮影=脇武夫 計測=長谷川武次 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
助監督=久郷久雄 美術=中島哲二 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤井雅朗 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


大吉が街道を歩いていると、喧嘩中の半次を見つける。途中、喧嘩常の振り回した刀をよけた際に思わず「危ねえ」と叫んだ半次は、「喧嘩
ってのはそもそも危ねえもんなんだ、その喧嘩の最中にそんなこと声に出して言う、理屈にアワねえ大バカ野郎がどこにいるかってんだ。
反論の余地があるなら言ってみろ」と喧嘩を一時中断した常から説教され、「言われてみりゃ、喧嘩は危ねえにlきまってるがよ、はずみで言っ
たのよ」と謝り、さらに喧嘩は続く。
「今日のはなかなか興行価値がある」と見物を決め込んだ旦那は、刀が木に刺さって抜けなくなった半次が助けを求めても、「この先何年生きても
女にもてるわけはまるでねえんだし、博打を打っても皆目目がでずじゃ、張り合いがねえだろうが」と、常の言うように「間抜け面と胴を生き別れ」
させてもらえと笑う。それを聞いた常、今度は思いやりのない相棒の旦那に怒り「この場合は、怒ってしかるべきよ」と、向かってくる。しかし、すぐに
常は捕まり、旦那が半分抜いた刀を顔の前に見せられて、思わず「危ねえ」、それを聞いた半次「人のことぎゃーぎゃー言いやがって、今の失言
はなんだい」「はずみで言っちまったのよ」常と仲間は、平身低頭二人に謝って去っていった。
(木に刺さった刀を抜いたところでクモ出現)互いに互いの名前など聞いたこともないと言われたことから始まった「なんともしまらねえ」喧嘩に
少し反省した半次は、次に、街道を歩いていて、身投げしそうな男を発見する。しかし、「いつもあわてるからおから旦那にバカにされる」と今度は
慎重になり過ぎた結果、とうとう男は川へ身を投じてしまう。しかし、この身投げ、なんともしまらねえ身投げで、川が浅くて未遂に終わった。
半次が、訳を聞くと、男は「親切」「誠実」「早足」をモットーとする飛脚の安造、松ヶ谷宿の生糸問屋・岩田屋から預かって大野宿まで届ける50両
を落としてしまったのだ。気づいた茶店から岩田屋まで何度も探したし、役人にも届けたが見つからない、きっとねこばばされたんだという。
「俺はなんて不幸な星の下にうまれたんだ」と嘆く安造と戻った茶店で、常に会う。大吉は、街道では顔の広い常に、この一時半前に安造とすれ
違った人間を捜してくれと頼み、常が見つけた人間のうち、話が聞けなかった永徳寺の和尚にあたることにする。表が静かなので裏に回って
半次が「もし」と声をかけると、中でがさがさとあわてる音。和尚が顔を出すが、「知らん」と素っ気なく障子を閉める。しかし、くさい、もう一度今度は
いきなり障子を開けると、隠れて酒を飲み鶏肉を食う和尚が。まったくの見当違いに笑って出ていく大吉と半次のそばで、ションボリとした安造。
そこに、常がお初坊を連れてくる。お初は、安造と今朝方すれ違ったあと、街道筋をキョロキョロと森のほうに入っていった怪しい5人組をみた、
ねこばばした連中に違いないと、5人が消えた山に、4人を案内する。山のそま小屋に、その男たちはいた。金を数えている姿を見て、たまらず
安造が「俺の50両を返せ」と叫ぶが、男たちはきょとんとしている。男たちは山賊、金は「山賊の神聖なる稼ぎ」だった。(そこで「調べてもらおう
じゃねえか」と逆にすごむ山賊を見てシャックリ)安造の金ではないと言っても、山賊は山賊、常と3人で山賊を痛め、喜ぶ常と半次。だが、安造は
今度も違って「どうせ俺は、不幸な星の下に生まれたんだ」とガックリ。
そこに、浪人4人が来る。茶店の奥で大吉や常の話を聞いていた浪人で、お初のところにも、50両のことを聞きにきたらしい。どうやら、50両の
ねこばばの上前をはねようとして失敗し、今度は山賊の上前をはねようと言う魂胆らしい。「それでも二本差しか」と、今度は本気で向かう大吉。
結局、50両は見つからない。「ああ俺はなんて不幸な星の下に生まれたんだ」ととぼとぼ山を下りていく。「旦那さん、半次さん、常さん、お初さん
ありがとう、これから川へ入って身を投げます」
そこへ、安造の嫁さんが来る。「おめえの顔見たら死ねなくなるんじゃないかと」と号泣する安造。「何を寝言言ってるんだよ、しっかりしなきゃダメ
じゃないか、肝心の金包みを忘れて」「へ!?」
安造は、弁当をとりに家に戻ったときに、金包みを忘れていったのだった。50両あった、バンザイと踊りまわる安造。
「そんなバカな」「こんなしまらねえ話、聞いたこともねえや」と常。「まったくしまらねえ話だが、しかしまあ、めでたしめでたしだ。見ろ、不幸の星
の下に生まれた男が幸せ一杯の顔でおどっとるゾ、ほら」「あの野郎、朝っぱらから一日人騒がせしやがって。俺バカらしくて怒る気にもなんねえや」
見どころ:常と半次のやりとりも面白いし、「素浪人シリーズ」を通して何度もゲスト出演しておられる谷村さん(安造)のとぼけた味もいい。
旅の場所:松ヶ谷宿と大野宿の間


「天から小判が降ってきた」 (第38話) 

<キャスト> 宮園純子=姉ちゃんそば屋を営み、隣の子供達の面倒を見ている娘、お絹
春日章良=『おれはまぼろし小僧だ』四人組強盗のかしらで、ニセまぼろし小僧 梶健二おろくをしょっ引いていった役人    
東竜子=役人にしょっ引かれた、お花、よし坊の病身の母親、おろく 
入江慎也=用心棒は大吉だけにしたかった、ささやかな商いを営む油問屋相模屋のあるじ
小津敏=まぼろし小僧からの脅迫状を読み上げた油問屋相模屋の番頭
伝法三千雄=おろくが役人に捕まる時、格子窓に手を掛けて中を覗いていた近所の男 宮城幸生=四人組強盗の一人で普段は大工姿の男、儀十
尾崎弥枝つじ占売りの女の子、お花 井上博嗣つじ占売りの男の子、よし坊(よし太郎:予告編より) 乃木年雄=金谷町の金貸し三崎屋のあるじ 
坂本美智子
まぼろし小僧が小判の雨を降らせたことを大吉達に告げた、旅籠の女中

<スタッフ>  脚本=松村正温 監督=荒井岱志 撮影=森常次 計測=長谷川武次 照明=松井薫 録音=渡部章 
助監督=尾田耕太郎 美術=中島哲二 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行主任=北村良一 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


大吉が夜、お絹という娘が病気の父親の代わりにやっているそば屋でいっぱいやっているところに、この宿場で落ち合う約束の半次がずぶぬれで
やってくる。半次は、「城下一の金持ちに忍び込んだ泥棒を追いかけて下りてくるところで取っ組み合って」と威勢のいいことを言うが、旦那には
すぐさま「おめえが取っ組み合ったのはクモだろうが」と見破られ、「どうして、どど、どっからそんなデタラメ言いやがんだ、旦那意地悪いね、さては
みてたんだな」と泥棒を追った屋根にクモがいて驚いて防火用水に落ちたのがばれてしまう。(まだ半次の肩にクモが残っていて、二度びっくり)
そこに、お絹の隣家の子供が二人、辻占売りから戻ってくる。二人の母親は病気、父親は、島送りだ。話を聞いて、半次は賭場と相談屋で
珍しく持っている二人の金を子供たちに役立てようと考えるが、「一生面倒見るのでなく一時の施しは変に甘えた気を起こさせるんじゃないかい」という
旦那の言葉で、「せめてここでたんと飲み食いしていこうじゃねえかい」ということで、半次はぐでんぐでんに酔ってしまう。その「どうしようもない
バカタレ」の半次をかかえて歩いている大吉は、4人組の黒装束を目撃する。
翌朝、旅篭で「姉ちゃんそば屋の払いはどうした?」「勘定は俺がしたんだよ」「たまには自分で払うのもいいもんだろう」「たまにはとは何だよ、
全部とはいわんがな、10回に1、2回はちゃんと俺が払ってきたんだい」とやり合っていると、外で子供の声がする。
見ると、昨日の子供たちとお絹が、役人に連れて行かれようとする母親・おろくを追っている。今朝、おろくの家に「この金で薬を買って早く元気に
なるがよい 義賊幻小僧」という書きつけとともに5両が投げ込まれていた。それを聞きつけた役人が、これは、おろくの亭主が島を抜け出して
金貸しの三崎屋に入り込み、5両を奪ったに違いないと、事が判明するまでおろくを牢に留め置くことになったのだ。
幻小僧は、昨日、金貸しの三崎屋で5両、総州屋にも押し入ったが、こちらは気づかれて何も捕らずに逃げていた。
半次は、この話を聞いて、貧乏人に金をばらまく「幻小僧に肩入れしてえくれえのもんだ」と断然、幻小僧を気にいるが旦那は「説教するわけじゃ
ないがな、人を助けるだけじゃ世の中どうにもなるもんじゃねえんだよ、一時しのぎの気休めにすぎんよ」と批判的だ。(半次が幻小僧と義兄弟に
なりたいと子供みたいなことを言うのを聞いて、旦那シャックリ)
夜、二人がお絹の屋台に行くと、今日は休んでいる。そこで呼び子が聞こえる。さっそく半次は義兄弟の盃を上げるべく幻小僧を捜し、あとを
追いかけるが、おいなりさんで、見失い、落ちていた櫛を拾う。
朝、昨夜、幻小僧が三崎屋に再び押し入り今度は人殺しをしたと言う話と、幻小僧が貧乏長屋に小判をばらまいたと言う2つの話が二人の元に
舞い込んでくる。「兄さん、幻小僧は二組いるんだよ、小判をばらまいた方が本物、金貸しを殺した4人組は偽物だな」さらに、半次の袂から落ちた
櫛を見て、大吉は幻小僧の正体に気づく。
大吉は、お絹にそれとなく言い含めるが、その夜、お絹は4人組の男たちに囲まれる。あの晩、幻小僧のお絹を追っていたのは半次だけでは
なかった。ニセの幻小僧4人組は、お絹の正体と居所を掴んでいたのだ。4人はお絹に、仲間に入れ、さもなければ子供たちの命はないと脅し、
お絹は、再び黒装束になることを承知する。
相模屋へ忍び込んだお絹の前に、用心棒をかってでた大吉が現れる。「本物の幻小僧はもう現れないと思っていたんだが」
そこへ、4人組が入ってくる。・・・
お絹は、子供たちの病気の母親のためと、借金が返せないために自分の母を慰み者にし母を自殺に追い込んだ三崎屋への復讐のために、
1度だけ盗みを働くつもりだった。2度目は、ぬれぎぬを着せられたおろくの亭主のためだった。「あたしのしたことは間違ってました」と、罪を
償いに行こうとするお絹に「この通り、幻小僧は死んじまったよ、あんた悪い夢を見たんだ、悪い夢は早く忘れてしまうことだな」と逃げ道を促す。
「旦那、幻小僧はやっぱり
いい人間だったじゃないかや」「このバカタレが。幻小僧は盗みをした悪い奴だよ、ここに倒れている4人だと言っただろうがい。
おめえは他にまた、幻小僧がいるとでも言うのかよ、そんなことをこくとぶっ飛ばすぞ」「こかねえ、こかねえ。口が裂けたってこかねえわな」
旅の場所:三崎屋があるのが金屋町、総州屋があるのが末吉町と言うことになっている。
コメント:大吉がキセルを吸っているのを初めて見た。 
次回予告「次回、悪魔が島から帰ってきた、悪魔が島から帰ってきた、にご期待下さい」とのナレーションだが、ホントは、「島から悪魔が帰ってきた」だった。(以上 じゅうよっつ)
旅籠の場面、大吉が煙草をすっていましたね。これ、とても珍しいのではないですか? 大吉が煙草をたしなむなんて、記憶になかったんです。(イベールさま 2009年3月13日)


「島から悪魔が帰ってきた」 (第39話) 

<キャスト> 左時枝=居酒屋で働いているツンツン姉ちゃん、お春 里井茂=お春の兄で、島抜けをした首領株の百人力の音松
酒井哲=島抜けを伝えたり三浦屋で大吉たちに事の成り行きを語った、源助 
千葉保
=おからを大吉に食わせないで追い出した居酒屋のおやじ 藤山喜子=花嫁のおっかさん
賀川泰三=『あー、べちゃべちゃ』花嫁を乗せた駕籠を止め、金をゆすった男
堀正夫=抜け荷の張本人でひねた面をした、廻船問屋の今津屋甚七(いまづやじんしち) 鈴木金哉=坊主頭の闘犬の政(マサ)
三木豊=島抜けの一味に一家を殺された三浦屋の子供、三吉
滝譲二=『野郎くたばりやがれ』島抜け一味で大吉に最初に斬りかかった男(人斬りの熊)

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=佐々木政一 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=中島哲二 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美装 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映 珠州市協賛


大吉・半次の二人は、能登半島の内海、安宅の関址に来る。「近頃は字も読めるしよ、学も出来てきたんだ」と、最初は調子よく弁慶の勧進帳が
どうのと、大吉に説明していたのに、たびたびのど忘れに「俺の方はもう感無量で怒る気がせんよ」と大吉にそっぽを向かれ、目の前にクモ。
「わぁ出た!安宅の関にもあれがいた」
これから向かう七尾をその昔制圧した上杉謙信は、やはり源の出か?と聞かれ、大吉は「おめえと話しているとこっちの脳みそまで腐ってしまう
んじゃねえかと思って」シャックリ。
七尾に着いた二人は、新鮮な魚と新鮮なおからを求めて居酒屋に入る。文字通り山盛りのおからが運ばれてきて大喜びの大吉が、早速箸を
つけようとしたとき
、能登島から極悪罪人7人が島抜けしたとの連絡が来る。島抜けしたのは誰?と即座に聞いたのは、先ほど半次がこのあたりに
居酒屋はないかと尋ねたのに、返事もせずに去っていった「ツンツン姉ちゃん」お春だった。人斬りの熊、闘犬の政、それから首領の百人力の
音松、と聞いたところでお春は顔色を変え店を出ていく。
さて、お目当てのおからを食べようと再び箸をつけようとすると、するっと、店のおやじに皿を引き上げられる。「こら、何をするんだよ」亭主は
7人組を恐れてさっさと店を閉めようとしているのだ。「一口も食っとらんのに殺生なことするな」「こんな時に殺生なのはお客さんの方だ、出て
いってください。」とおやじの意志は硬く、二人は閉め出される。「けしからんなあ、おからの臭いばっかり嗅がせやがって、食わさんとは。ここの
おやじは畜生にも劣るクソタレだぞ、うすらおやじが、バカタレが」と、閉められた戸をのぞきこみながら未練がましいことこの上ない。
そこに、「三浦屋が襲われた」と言う町の声。坊主頭の闘犬の政が目撃されたことから、やったのは島抜けの男たちで、彼らは、路銀と着物を
盗るために、子供を含む一家4人を斬殺した。遊びに行って一人助かった三吉が、仇を討つというのを大吉が止める。「仇討ちはおじさんにまかせとけ
三吉はな、不幸な目にあったみんなの分まで幸せに生きることを考えるんだ、そうすることがみんなへの何よりの供養になる」「どうしておじさん
が仇を?」「おじさんはな、こんな子供までなぶり殺しにするような獣どもは許せん性分なんだ」「仇は旦那と俺にまかせときな」二人は、抜け荷買いで
捕まった音松が、船を出して逃げるだろうと、音松の家のある飯田に向かう。
途中、あやしい6人組が通り過ぎようとするとき、大吉はほおかむりをした男を見逃さなかった。大吉が斬り上げたほおかむりの下には、昨日目撃された
坊主頭、三浦屋の事件を突きつけられると、正体を現した。どうやら欠けているのは首領の音松のようだ。二人は、3人を斬るが残りの3人を
逃がしてしまう。が、おそらく、3人は音松のいる飯田に向かったはずだ。
二人も飯田に向かっていると、お春が、急ぎ足で人目を気にしながら歩いている。何かあると、つけた先には、音松がいた。しかし、出てきた音松は
あまり極悪罪人らしくない。音松は抜け荷とは知らずに今津屋で荷を運んでいたのだが、役人に捕まり、闘犬の政に妹・お春の命はないと脅され、
自ら抜け荷の頭であると名乗ったのだった。その後、数回政から口封じのために殺されそうになった音松は、島抜けの船が七尾に着いた直後に
他の連中から逃げ出し、隠れていたのだった。音松とお春は、てっきり大吉らが今津屋に雇われて音松を殺しに来たと思ったのだ。
音松とお春を連れて今津屋へ向かうが、今津屋も、逃げた3人を連れて音松を殺しに来ていた。・・・
気絶した今津屋を連れて役人に届ければ、音松は無罪になるだろう。
「焼津の、俺たちもそろそろ行くとするか」「行くって、どこへ行くんだよ」「七尾だよ。おめえは三吉との約束を忘れたのかよ」「おー、そうだよ。
俺たちはこの始末をよ、ちゃんと報告しなきゃいけなかったんだ」
見どころ:三吉を引き留めるセリフを言う時の、このちゃんの顔。
いかにおからが必須か:居酒屋のおやじに魚は後回しでいいからと言ったのを半次にあきれられ、「当たり前だよ。一におから、二におからだろ。
三、四がなくて五がおからって言うくらいのもんじゃねえか」
旅の場所:金沢(お話の前日)→能登半島の安宅の関址→七尾→穴水→宇出津→飯田
コメント:この回の予告編から、CM後の大吉・半次の静止画像が「新画面」に変わる。


「目玉が火事でもてていた」 (第40話) 

<キャスト> 沢宏美半次に同情し、おかみさんになろうとした、丸っこくて可愛い茶店の娘、およし、十九歳
川上夏代=茶店を営むおよしのおっかさん 吉田義夫=目だけでなく、半次のおっちょこちょいも治療した、医者の天安先生
梅津栄=半次に盲僧になれとしつこく勧める盲僧、武の市 二見忠男=半次に任侠道を説く浮気亭主、伍作
辻伊万里=半次をウソッこきタヌキ野郎と罵る暴力かかあ、お元
尾上鯉之助=半次に目潰しを投げた、ましらの円蔵の子分、疾風の仁三郎(はやてのにさぶろう)
伊豆五郎自分から出てきて大吉の探す手間を省いた、ましらの猿蔵 

<スタッフ>
  脚本=森田新 監督=井沢雅彦 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=渡部章 
助監督=久郷久雄 美術=宇佐見亮 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美工 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川きい 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


茶店の娘の丸こくてかわいいおよしちゃんを見つけて嬉しがっている半次兄さんのもとに、見知らぬ男が駆け込む。「おめえさまがたの任侠道
ちゅうものは、強きをくじき弱きを助けるんでねえだか、百姓町人が困っていたら助けるのが任侠道ちゅもんじゃねえだか、それともおめえさん、
もぐりの旅人さんかね」と、盛んに任侠道を振り回して「昨日の暮れ六つから四つ時まで一緒に飲んでいたと言ってくれ」と頼む。男の命に関わる
と聞いて、半次は訳も聞かずに承知するが、やがてクワを持ってスゴい形相で追ってきたのは男の女房。しかも、亭主が浮気したことが既に
ばれており、半次は「うそつきタヌキ野郎」と女房にひっぱたかれ、説教すると、逆に追いかけられる。
逃げ抜いた半次が切り株で休んでいるところに、茶店でこの話を聞いた大吉が「そんな間抜けはおめえしかいないじゃないか」とやって来て
大吉から「しまらんやつだ」と小言を言われていると、今度は、茶店のおかみさんが男を追いかけて、こちらにやってくる。
これはまた、間違いなく、浮気のばれた夫婦ゲンカだ、と、半次は男に「おいおい早く逃げろ」とハッパをかけ、後を追いかけるおかみさんを
「みにくい夫婦ゲンカは止めろ」と引き止める。ところがこれがとんだ見当違い。男は人殺しもいとわない大盗人・ましらの猿蔵の一味で、
一月前、おかみさんとおよしの家を襲い、有り金残らず盗ったのだ。
「どうしてくれるんだよ」とおかみさんのひんしゅくを買った半次は、「お詫びがわりに今の野郎をとっつかまえてくる」と、男の向かった方向へ走る。
しかし、茶店で待つおかみさん、およし、大吉のもとに、半次はなかなか帰ってこない。様子を見に出た大吉は、ションボリと”目にはちまき”
まいてへたり込んでいる半次を見つける。半次は、見つけた男ととっくみあいになり、目つぶしを喰らい、「いてえ、目が火事だ!いてえいてえ」
ともがきながら刀を杖に歩き、小川で目を洗ったが、まったく目が見えなくなっていた。
「旦那、俺の目はもうダメなのかねえ」「言いたかねえが、お前ってやつはまったく、何をしてもしまらんやつだなあ」大吉の手厳しい言葉に、
「ああ、俺は、不幸せな男だ、世の中の不幸せという不幸せをそっくりしょったも同じだぁ」と、「ノミの涙くらいの親切はある」大吉に引かれて
茶店にとぼとぼ帰ってくる。
荒療治の天安先生は、半次の目は夕方には見えるようになると大吉に話す。「ありがたい、先生。あの男は前代未聞のおっちょこちょいだがな、
根はいい奴でな」と、先生に礼を言いながらも、大吉は一計を案じる。「おっちょこちょいに灸を据えてもらいたいんだ」
「気の毒だが、いかなる手当をしても、治らんな」という先生の言葉を聞いて、半次は何とか治してくれ、とすがる。「おい、焼津の、先生も一生懸命
手当をしてダメだったんだから、男らしくあきらめろ、もともとお前のおっちょこちょいが原因なんだから」「その通りだよ、だからこれから改める
だから何とかしておくんなせえ」
しかし、話は、大吉の予期した方向とは少しずれ始めた。半次に同情したおよしが、ずっと面倒を見る、おかみさんになってもいい、と言い出したのだ。
それを聞いた半次は、「目の前がぱっと明るく」なり、目が見えなくなったことを「バンザイ、バンザイ」と喜ぶ始末。それを見た大吉はシャックリ、
おかみさんは「半次さんここ(頭を差す)が?」「盲僧になりなされ」と半次を誘っていた武の市にも「えらいなあ、おまえさん、わずかの間にすっかり
悟りを開きなすったようでございますね」と言われ、「生き仏がついたんだよ」
夕飯時、大吉はリクエストの淡泊な味付けのおからと酒を楽しんでいるが、半次は、すぐに来るからといってなかなかおよしが手伝いに来てくれないので、
お椀をひっくり返したりしながら、旦那がまったく思いやりがないことに文句を言いつつ、半次は厠へ行きたくなる。「ぶつぶつ言わずに早く行ってこい」
「一人でどうやって行けと言うんだ」「しょうがねえなあ」大吉に連れられて厠へ行く途中、おかみさんとおよしの話が二人の耳に入る。
「半次さんが可愛そうで、すっかり同情したんだもん」という娘をたしなめている母親。「今はどう思ってるんだい」との問いに、「全然その気は
ない、まるで付き物が落ちたって感じ。いい年の人のおかみさんになるのはイヤだわ」さらに、先刻、「目が見えてりゃひいひい言って逃げ回るあれ」を
捕ってくれ、と逃げ叫ぶ半次の姿を見たおよしは「クモが嫌いなんてバカみたい」半次は泣き出す。
大吉に促されて外に出た半次、「たった一つの生き甲斐だったおよしちゃんにまで裏切られて、もうこの先、生きていく望みなんてねえや」
「目隠しとってみろ、おめえにはもう必要ないんだよ」不思議に思いながら包帯をとると、天井に星空。「旦那、星みたいなものがぴかぴか光ってるわ」
「何言ってるんだおめえは。正真正銘の星だよ」「おー!旦那だ!、あ、木だ!おー草も!俺見えた!」
「お前のおっちょこちょいはな、ご愛敬でもあるが、治さんと今に命取りになるんだ。少しでも治すには、よっぽど骨身に応えねば治らんのだ
だから、荒療治をしたんじゃねえかよ」「そうだったのかい、そこまで俺のこと考えて、すまねえ」「分かったらもういいや、そうメソメソするな」
「俺いい相棒持って嬉しいよ、俺一生懸命おっちょこちょい改めるからよ」
そこに、ましらの猿蔵一味が、昼間おかみさんに泥棒呼ばわりされたことを根に持って仕返しに来た。・・・
礼を言うおかみさん。「そんな礼にはおよばねえんだな」とちょっと不服そうな半次に、およしが言う。「半次さん、さっきはごめんね」「およしちゃん
気にしない、気にしない。俺は助かったんだからよ、それだけで充分だ」「しかし焼津の、目が開いてても見えなくても、見事に女にはもてん男だな」
「おいおい、およしちゃんたちの前で個人の名誉を傷つけるようなことをはっきり言うんじゃねえよ」「何が個人の名誉だ」笑う二人。
「あ!」見上げた半次の頭上を、星が流れた。
見どころ:盲僧・武の市(抑揚のない喋りもいいが、ぼーっと座ってるだけなのに、可愛いような、気持ち悪いような、何とも言えない感じもいい)や、
浮気亭主、天安先生役の吉田義夫さんなど、脇の配役が光る。
旦那や半次の人柄・関係をあらわすセリフや行動が嬉しい。
旅の場所:入相宿から少し先の茶店
コメント:エンディングのテーマ曲「風来坊笠」の時に映っているのは、この回のものでないようだった(多分、ロケ?)。→風来坊笠の時に映っている映像は、同じパターン(つまり毎回同じ映像)がしばらく続きます。(相談屋さま)
次回・第41話『頭の中身が いかれていた』の予告編で、頬に傷跡のある旅人が殺された現場に大吉、居酒屋のおやじと息子の3人が向かって池のほとりを歩いていくシーン、本編では、有りませんでしたぞ!(じいさま) 
コマーシャル明けの画面は「新画面」で音は「旧音楽」みたいですね。少し前の回から、「旧画面」「旧音楽」ですが、時間がわずかに短くなって
いて、最後の一発音が無かったです。42話から、音もテンポの早い「新音楽」になりました。(花山小吉さま)
目をやられた半次の一言、「だれのせいでもありゃしない・・」どっかで聞いたセリフだとおもったら放送の数年前イギリスのグループ、アニマルズが歌い、その訳詩を尾藤イサオが歌った「悲しき願い」からのセリフでしょうね。半次のセリフの節のつけかたもあの尾藤イサオの歌い方の感じでした。(ろくりんさま 2010年3月2日)


「頭の中味がいかれていた」 (第41話) (←半次のしらぬところで)

<キャスト> 潮万太郎=大吉を板前として雇おうとした、経営者の良心を持った居酒屋のおやじ
織本順吉=半次を取り調べ、牢にいれた役人、瀬沼弓之進 由利京子金貸しの高田屋の通い女中のお徳さん 
鷲塚良子=酔いつぶれには頭っから水でも掛けてやったらいいと思っている居酒屋の娘、おしず
高村俊郎=クルミを鳴らしていた役人、高堀弥兵衛
嶝忠洋居酒屋の息子で、高田屋が殺されたことを告げた子供  藤原勝うろうろ役人(終盤、半次側、大吉側を見たりと、うろうろ三役人画面中央) 智村清=頬に傷のある旅人
井上茂(NC)=役人・井上 土橋勇(NC)=うろうろ役人(終盤、半次側、大吉側を見たりと、うろうろ三役人画面左)
江上正伍(NC)=うろうろ役人(終盤、半次側、大吉側を見たりと、うろうろ三役人画面右) 宮崎博(NC)=居酒屋の客(大工姿)
不明
 男41−2=居酒屋の客(もう一人)

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=宇佐見亮 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美工 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川きい 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


酒をおごると約束していた半次が来ないものだから、有り金で、”都合よく”おからがない居酒屋で飲もうとした大吉は、出てきた焼きナスが
あんまりひどいので、おやじに料理指南素浪人シリーズいろいろ(四)花41」をし(おやじから”あしらい”って何ですか、と聞かれ
シャックリ)、その腕前に感心したおやじに是非うちの板前にと、誘われているところに、娘がお客さんが裏で酔いつぶれていると言いながら
戻ってくる。「ひょっとするとあのバカタレじゃねえかな」と出てみると、やはり半次、しかも、大吉が怒鳴っても、クモが下りてきても、ぴくりともしない。
翌朝、大吉に鉄扇で小突かれてようやく目をさました半次は、二日酔いの頭を井戸で冷やされても、昨夜のことは全く思い出せない。
しかも、懐にはわけのわからない5両。「知らない内に金持ちになってた、酔いつぶれてよかった」と喜ぶのもつかの間、昨日居酒屋で旅人と2人
づれで飲んでいたと言う、「見事に忘れている」事実を確かめようと居酒屋に出かけようとして、脇差しがないのに気づく。渡世人の魂の脇差しを
なくすなんてと、すっかり意気消沈で「俺の頭はどうなってんだ」と大吉の後をとぼとぼ歩く半次に、「お前の頭は普段から人並みではないんだ、
その中に膜がとぐろを巻いて張り巡らされたんじゃ、使い物にならんのも当然だぞ」
しかし、昨日の朝のことは覚えている。朝は5両は持っていなかった。「すると、旅人と飲んでから手に入れたってことになるなあ」「昨日、この宿場の
金貸しのうちに押し込みが入って夫婦が殺されたと大騒ぎしてたがな、おめえ、その旅人と一緒にやらかして、5両稼いだんじゃねえのか。
それがばれないように酔いつぶれた振りなんかしてよ」と大吉がからかっているところに役人がやって来て、半次を取り調べる。役人が差し出した
半次の赤鞘の脇差しには、血が。大吉の筋書き通りに、半次は押し込みと金貸し夫婦殺しの犯人として牢に入れられる。
しかし大吉は、昨日から大吉と半次の後をつけている男の存在に気づいていた。「(一緒に飲んだ)旅人の頬に傷はなかったか」と聞く大吉に
半次は懸命に思い出そうとする。「あー・・確か俺は・・頬に刀傷ある同業に誘われて飲んだ!」
しかし大吉が居酒屋で、旅人と半次が飲んでいた時刻を聞きだしている内に、頬に傷のある男が体に石をつけられ死体となっていた。
次に行った殺された金貸しの高田屋では、「ごめん」と声をかけると、あわてて逃げる覆面の侍。どうも、証文を探していたようだ。大吉が
見つけた証文には、役人・瀬沼の名で100両の借金が(証文隠しの額のうえにクモ)。家に戻っていて一人助かった通い女中のお徳の話では、
役人たちは、金遣いが荒く、よく芸者を上げて大騒ぎする、このごろでは高田屋も厳しく返済を催促していたそうだ。
大吉は刀傷の男の死体を役所に運び込む。驚いている瀬沼らに「あんた、約束どおり、旅人を連れてきたよ。石を抱かせるときはもう少し
器用に縛るんだな、焼津の、出てこい」とサッサと鉤をとって半次を牢から出す。「俺はな、こいつに代わって入るべきものが入るように戸を
開けたんだよ、つまり、あんたたちだよ」
昨夜、瀬沼と部下の役人は、高田屋夫婦を殺害した後、喧嘩で捕まっていた刀傷の男を使って半次を眠り薬で眠らせ、半次の刀に血を付けて
犯人に仕立てようとしたのだ。大吉は瀬沼らに多額の証文を突きつけ、「あんた金貸しの家にこれを探していて風を食らって逃げたな、ほれ」
と、先ほど高田屋から逃げた侍の落としていったクルミを投げる。・・・
「ほら立て。これが真犯人だ、連れてけえ!」上役を差し出され、戸惑う役人たち。
「いやあ旦那、助かったよ。旦那のおかげで命拾いしたよ、礼を言うよ、ありがとう」「お、お前も、人並みに礼を言えるようになったな。」「人並み
とはなんでい。いけねえいけねえ、ここで怒っちゃいけねえ。俺は、旦那に助けてもらったほやほやなんだから。もういっぺん礼を言うよ、ありがとう」
と片手で拝む半次。「お、ほやほやの癖に、かしこまったこと言うな。さあ行こうか。」
見どころ:「棺桶かついで笑っていた」に引き続き、居酒屋のおやじ役の潮さんは、相変わらずのとぼけた、のらりくらりのセリフがいい。このちゃんも、
料理指南の時に、卵を遠眼鏡のようにして遊んでいるのが、なんともかわゆい(あれは、アドリブ?)。最後のシーンが旦那の背中の「花」の字の
大写しで終わるのが、理由なく好き!やっぱ、このちゃんの背中はものを言う。
コメント:CM後の静止画像の時は「新画面」で「旧音楽」(以上 じゅうよっつ)
大吉が半次のことを思う(無実の罪をはらす)気持が全編通して出ていてちょっとジーンとしました。「あいつが…のはずはない」「俺はあいつのことはよく分かっているんだ」という親友(?)がいるって、いいですよね〜。それが大吉だったりしたらもう最高!あと、料理指南がすごくよかった。(私の料理はこの居酒屋のおやじ並みです)「卵を遠眼鏡のようにして遊んでいる」シーン、本当に可愛いですね。卵を透かして見て、鮮度をはかっているのでは?とも思いましたが、表情からみるとそうでもなさそうですね。最後の旦那の背中の「花」の字のアップ、私もだ〜いすきです!もっと見せてほしい。(鈴雪さま 2009年3月18日)


「大めし喰らって弱かった」 (第42話) 

<キャスト> 大橋壮多=いも泥棒の取的(相撲取り)の兄さんで、しこ名は荒岩(予告編より本名は岩五郎)
島村昌子=逃げ出して来て、おじさんの所に助けを求めた鳥追い女、おかよ
戸上城太郎=下仁田一家の用心棒、佐和次(さわじ) 山岡徹也=負けたり、『勝ったり』する相撲を取って欲しかった、下仁田の仲蔵親分
岡部正純=『親分、いいカモを拾ったようですな』取的の兄さんに親分を紹介した、下仁田一家の子分
五藤雅博=雲助に絡まれていた旅の父娘(父) 永井柳太郎=大吉に飲み代はただにしてもよいと言った居酒屋のおやじ
水木達夫=用心棒の佐和治に殺されたおかよの許婚、常太郎(つねたろう) 小沢文也=『いも代なんていらねえだ』の百姓
楠義孝おかよが逃げたことを仲蔵親分に伝えに来た男 表淳夫=昨日も芋畑を荒らされ、ゴン次んとこの牛にも詳しい百姓
東三千=雲助に絡まれていた旅の父娘(娘)で、仲蔵一家の人質にもなった娘 
浜伸二=取的の兄さんの対戦相手、ご存知近郷近在の名横綱、熊虎 藤長照夫=半次に『やいやい、この三下野郎』と言った雲助
古閑達則=『なにが無茶でい』の雲助 井上茂おかよを無理やり大吉の前まで連れて来た仲蔵一家の子分(画面左、仲蔵印の半纏を着た子分)
日高綾子=取的の兄さんのおかげで飯はもうおしまいになっちまった茶店のばあさん

<スタッフ>  脚本=松村正温 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=宇佐見亮 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美工 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川きい 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映

半次は、腹が空いたあまりに芋を盗み追っかけられていた、文無しの取的の兄さんを助けるが、この兄さん、あんまり弱いんで親方に追い出され、
その後も職が定まらない根性無し。人はいいが気が弱く、大吉と半次が、父娘に言いがかりをつけているクモ助を追っ払っている最中も、
木陰に隠れている始末。(半次が兄さんを引っ張り出したときに、着物にクモが付いていて悲鳴、取的に笑われる)
その兄さん、下仁田の仲蔵親分から、宿場の祭りでやる勧進相撲に雇われ喜ぶが、実はこれが八百長の依頼と知り、断れない兄さんは
居酒屋で、「祭りに酒は付き物だ」とすでに20本の徳利を空けておきながらまだ追加を催促する大吉と、「宿場に着いて祭り提灯見たとたんに、
いやあな予感がした」と大吉にあきれる半次に相談、大吉は「明日の相撲は取るんだぞ、相手を投げ飛ばしてやるんだ。後のことは心配するな」
と勇気づける。
その時、仲蔵一家の用心棒が来て「余計なことを口走るな」と、兄さんを連れて行く。そして居酒屋の奥には、この用心棒をジッと見る鳥追い女が。
翌日、案の定皆が本職の兄さんの勝ちに賭けている。取的の勝ちを信じて疑わない半次も、思い切って1両賭ける。ところが、ふたを開けると、
草相撲の素人にみごとに負け、結果は仲蔵の思惑通り。(投げられた兄さんを見て大吉がシャックリ)兄さんは、半次に損をさせて申し訳なかった
と、勝つ予定の明日の試合では負けるから、と言うが、「それじゃあ八百長の上塗りじゃないか、バカなまねをするな、1両ぐらいこだわりゃせんよ、
なあ、焼津の」半次も思わず「そ、そりゃあそうとも」それを聞いた取的の兄さんは、「明日は全力を出していい相撲を見せるぞ、見ててくんな」
と張り切って帰っていく。
「明日は相手が負ける手はずになってるのに、『全力を出していい相撲を見せる』もねえもんだ」「それがあいつらしいところさ」と二人は笑う。
しかし「精一杯取ってもあいつのことだ、筋書き通りにはいかんよ」という大吉の言葉通り、次の日、全力でぶつかった兄さんは、相手にかわされて
「目の前に誰もいないもんだから」勢い余って自ら負けてしまう。1両取り戻したと、喜ぶ半次の様子に、仲蔵は兄さんと半次らがグルになって
裏切ったととっちめるが、逆に大吉と半次に痛めつけられて「二度と賭け相撲はしません」と逃げていった。
しかし、仲蔵一家の悪行はこんなものではなかった。
「折り入ってお頼みしたいことがあるんです」と、一昨日、仲蔵の用心棒をジッと見ていた女・おかよが大吉に声をかける
おかよの許嫁は、仲蔵に金を借りたが、返済期限をごまかされ返済が遅れ、それを理由に、おかよは越後に売られ、おかよをかばおうとした
許嫁は仲蔵の用心棒に斬られた。かよは、許嫁の仇を討ちに、売られ先を抜け出してきたのだ。しかも宿場にはそうやって苦しめられ、姿を消した
人が何人もいると言う。その後、二人がクモ助から助けた父親にも、娘を仲蔵一家に奪われた、と助けを求められる。もう、相手の出方を待つ
猶予はないと、二人は仲蔵の家へ向かった。
大吉は表から仲蔵一家を相手に、半次は裏から娘を救おうとする。しかし、おかよが逃げ出したことを聞きつけた仲蔵一家は、おかよを捕らえ
人質に連れてくる。大吉は、言われるままに刀と鉄扇を捨て、そこに折り悪く飛び出してきた半次まで、救った娘を取り戻されてしまう。
二人に、じわじわと、仲蔵一家がにじり寄ってくる。
その時、叫び声を上げて、取的の兄さんが大きな丸太を振り回しながらやって来た!「あの取的い!」二人も刀を拾い、応戦・・・。
「旦那やったぜ」「取的の兄さん、おまえにしちゃあ上出来だ」「もう何が何やら夢中でごんした」
死んだ用心棒の前で、泣くおかよ。「おかよさん、過ぎたことは忘れてな、もう一度、幸せをつかむんだ、いいな」「はい」三人は発つ。
「おかよちゃんよかったな。これからは安心してわしの店で働くがいい」という居酒屋のおやじに、おかよは頷く。
コメント:取的の兄さんがあまりにフィットしてるので、もしかして今後二人の旅に同行するんじゃないかと思ってしまう。ラストシーンは、
「素浪人 花山大吉」では初めて、二人の会話でなく、二人の去った後の、居酒屋のおやじとおかよのシーンで、しんみり終わった。
CM後の静止画像の時の音楽が1.5倍くらいテンポが速い「「新音楽」だった。普段よりお話が長かったのだろうか?→むしろこの音楽の方が
多かったと記憶しています。(相談屋さま)(41話の花山小吉さまのコメントも参照)
いつも最後の1分間の予告編のあとに、予告した回のタイトルが出ますが、42話後の「(43話)鼻をつまんで名乗っていた」の予告のあとの
タイトルには、まだやってもいないのに“終”の字が入っています。(花山小吉さま)
予告を見ただけでは、あまり期待していなかったのですが、とってもいい話でした!最後のシーンは人質を取られ、刀ばかりか鉄扇も捨てろと言われ、「どうなるの、旦那〜!」って思いましたが、取的のお兄さんが丸太を持って走ってきた時には感動しました。(あの丸太はちょっと軽そうでしたが)「お咲」が出てきてからの旅はほとんど覚えていないのですが、あの取的のお兄さんが二人の旅に同行したり、同行とまではいかなくてもたまに出てきたりしても面白いかも、と思いました。(鈴雪さま 2009年3月18日)
なんと冒頭シーンのバックで流れているのは月影第1シリーズ第9話「月は見ていた」で使われていたアルトフルートの渋い曲ではありませんか。もしかしたら別の話にも使われているかもしれませんが、やはりあの名曲を月影だけでお蔵入りは勿体ないと監督が思ったからでしょうか。
こんなところで月影と花山の共通項が見つかって驚きました。(黒い笛さま 2009年6月16日)
旅の場所:下仁田(群馬県甘楽郡)


「仇討ちばなしは臭かった」 (第43話) (←人が食べるのを見るだけ)

<キャスト> 三角八郎=厠(かわや)で仇を討とうとする渡世人、大洗の浅太郎 桂麻紀=天童左近を仇と狙う武家娘、佐野いくの
渋沢詩子=麻太郎に短筒を貸した女スリ、おきみ 池信一=喧嘩のかなり深けえ訳を半次に語り、饅頭を食う速度の遅かった、駕籠かきのゲン
伝法三千雄=饅頭を断りもなしに三つぺロッと平らげた、駕籠かきのゴン 森本隆=姉と共に天童左近を仇と狙う男子、佐野松之介
道井恵美子=おからを大吉には出さなかった不公平な茶店のばあさん 野崎善彦=一膳飯屋での地獄のような出来事を語った男
入川保則=スゴ腕極悪侍、天童左近

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=寺島孝男 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美工 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川きい 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


「朝っぱらから裸になってノミを捕り損なって鼻を打ってヒーヒー悲鳴を上げてるお粗末を絵に描いたようなうすらをだ、バカタレと呼ばずに何と
呼ぶというんだい。ここらのノミは、お前のような無駄飯食いの血は吸ってもよ、俺のような有能な士には敬意を表して寄りつかんところなんか
、なかなかりっぱなもんじゃねえか」と、「相談屋の稼業をぶっこけて」昨夜は半次の世話で同じ三文宿に泊まった大吉が笑う。
しかし、半次が捕まえたノミは、高飛びして、大吉の懐へ。「ここらのノミはよ、俺のような無駄飯食いの血は吸っても、旦那のような有能な士には
敬意を表して寄りつかねえんじゃなかったのかね?」と小気味よさそうに半次が仕返し。「どうだい、しっかり捕れ、こら」と裸になった大吉が
人目を避けながら半次に
声をかけると「やかましい、気が散る!」
ついにノミ退治を終えたご両人、再び街道を歩きながら、「朝から二人でノミ捕りでもしてよ、ここんとこ天下太平だね。かーっと血の騒ぐような
ことに出くわしたい」と言ってる半次の目の前で、駕籠かきが喧嘩をしている。「おめえの血が騒ぐのに似合いの連中が何かやっとるぞ」と旦那に
からかわれるが、きっと「その根は海よりも深くて意外な大事件に発展するとも限らない」と、半次が仲人を買って出ると、これが喧嘩の元は
客からもらった饅頭を相棒が1個余計に食べたとか言うことで、半次は怒って駕籠かきを追い払う。「ははは、焼津のよ、饅頭5つが原因とは、
意外中の意外な大事件だったな」「全くよ、俺としたことが」と、つい認めそうになって、「何い!」そこにクモ「出たあ!大事件だあ」
茶店を見つけたご両人は、軽く一杯やることにする。大吉がふと店の奥を見ると、頬に刀傷のある侍がおからを肴に酒を飲んでいる。早速注文するが、
おからは昨日の残りでもうない。大吉は「全くけしからんな、あの男はおからの残りを独り占めしやがって。武士の情けを知らんのかよ。、武士は
相身互いと言うだろうがや」と、「何とか聞こえんかと思って」聞こえよがしに文句を言い始める。しかし、「全く馬耳東風」で飲み食いしている。
そこに、侍目がけて大洗の浅太郎と名乗る男がやってくる。侍に名を尋ね、「天童左近だ」と答えると、ずーっと店の外へ出て遠く離れてから
3月前、袖が触れただけで斬られた舎弟分の浮き雲の仙太の仇だと、「尋常に勝負しやがれ!」と叫ぶ。実は天童はかなりの腕前、浅太郎は
「深謀遠慮」して、「厠へ入ってスキをみせたところで」殺ろうと、「くさい仇討ち」の機会を狙って天童の後をつけて歩く。半次は今度は本物と、
早速浅太郎に肩入れしようとするが、侍の方は「仇討ち?知らんな、そんな男」と全く心当たりがないようで大吉は乗り気ではない。
そんな天童の前に、さらに仇討ちが現れる。今度は、佐野松之介といくのの武家の姉弟で、1年前に天童に殺された父の仇だと、かかってくる。
浅太郎も、先に仇の名乗りを上げたのは自分だと、これに加わり、「仇討ちが2組混み合ってえれえ派手なことになってきちま」うが、やはり天童と
名乗る男は、仇など知らないと、おたおたしている。
見かねた大吉が「あんた、これで骨身にしみたかね」侍は汗を拭き吹き、事情を説明。侍は3日前、すご腕で恐れられている天童左近に間違われ、
ある居酒屋で注文もしない酒や肴を出され、おまけに勘定も取られなかったのに味を占めて、天童を名乗っていたのだった。「もうかたりはこり
ごりじゃよ」と「さよなら、さよなら」と逃げていった。
そうすると、本物の天童左近は、まだそこらにいるはずだと、大吉、半次、浅太郎、姉弟が街道を歩いていると、人だかりのした居酒屋がある。
勘定を催促した店の主人が天童左近にやられたそうだ。5人は、天童が行ったという方向へ急ぐ。はたしてそこには、先ほどの侍に顔はそっくりだが、
人相が悪い侍がいた。・・・
「よかったよかった。あの二人、どんなに嬉しいだろうね。これでめでたしめでたしだ」「じゃあ、俺たちも行くとするか」「おい、行くのはいいがよ、
大洗の野郎、どこに?」「大洗ならほら、そこにいるよ」そこには無事に仇を討って放心状態の浅太郎が立っている。「何してるんだ」「あ」と気づき、
「やっちゃった、やっちゃった。仇を討ったんだ。万歳だい、万歳だい・・」と踊りまわる浅太郎をみて、大吉はあわてて瓢箪の酒を飲む。「旦那、
何してんだい?」「あんなのを見てるとシャックリが出そうでな」「シャックリ封じかい?」「おお、そうよ」
旅の場所:3日前、侍が天童に間違われた馬込宿(長野県木曽郡山口村)の近く
見どころ:そろそろ出ると思った、このちゃんのフルスウィング!このごろのゲストは、ゲストだけでも十分面白い方々が、これでもかこれでもか、
と出演されている。
コメント:木賃宿(きちんやど)を半次が(品川さんが?)「もくちんやど」と脚本を読み間違えているのではないかと思っていましたが、
そのことを調べていて「木賃(もくちん)アパート」という言葉に出くわしました。で、「木賃宿」の方は「旅人が米を持参し、薪代(木賃)を払って
泊めてもらった宿」のことをいい、「木賃(もくちん)アパート」は「木造賃貸しアパート」の略であることが分かりました。いずれも「安い値段で
泊まるところ」という意味で、混同してしまったと思われますね。(花山小吉さま)
私のベスト3のひとつです。前半のノミ騒動は傑作でした^o^ だんなも上半身はだかで はずかしそうに木のかげから姿を出している光景には笑えました・・・そのあとの饅頭一個でもめている篭かきのエピソードも最高でした!ほんとこの前半の流れはのんびりしていてこのままラストまで大事件も起こらないような雰囲気でしたね!結局「天童左近」(本物の方!)以外は特に悪役も出ない回でた・・・前に区分けした「抱腹絶倒」偏のひとつだと思います。(きざくら&ようめいしゅさま 2009年3月19日)
あのノミになりたかった・・です(爆)大吉ダンナの胸元に飛び込めるなら、後で半次兄さんに捻りつぶされても本望じゃん、とか思って見てました(^^ゞ(←って・・変なこと書いてすみません(汗))(南まさとさま 2009年3月22日)


「おいらの父ちゃんカモだった」 (第44話) 

<キャスト> 十朱久雄=一日に一度はサイの目を見ないと下痢をする体質の居酒屋のおやじ、幸助
牧冬吉=子守りをしながら大吉に仕事を紹介する、口入れ屋の菊五郎
堀川亮=大吉に店番を無理やり押し付けた居酒屋の息子、一松 松木聖=『黒磯一家の連中いいきみ』一松たちを心配している娘、おきみ
須藤健=黒磯一家のイカサマの親分、黒磯重兵衛 国一太郎=黒磯一家の雇われ用心棒で矢部道場の道場主、矢部源八郎
川浪公次郎=大吉がおからを食べていたのを邪魔しに来た黒磯一家の代貸、般若の徹
上田恵子博打に賭けられた一松の母ちゃん、おかね 佃和美=博打に賭けられた一松の姉ちゃん、おみよ
福本清三=大吉がおからを食べている時背後にいた、黒磯一家の子分

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=井沢雅彦 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
助監督=太田雅章 美術=寺島孝男 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美工 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川きい 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


(街道に道しるべ)「刈部宿まで12丁か。最近ツキがねえが、宿場についたら一発当てて、ダンナの鼻をあかしてやるか!」・・・
(しばらくして花山が通りかかり)
「刈部宿まで12丁か。最近どうも相談屋稼業はさっぱりだが、宿場についたら営業成績を上げて半次のやつの鼻をあかしてやるか。」
花山がそのあまり景気の良くなさそうな宿場に着くと、口入れ屋の菊五郎(牧冬吉@白影)に出会う。ひまそうな花山を見て、農家の肥集め
などの仕事を持ちかける。その中に、黒磯の重兵衛親分の所の用心棒の口があった。一日一朱でアゴ持ち、晩酌一本付きというケチな親分だ。
それらを断って、ある居酒屋へ入ると、そこには腰掛けも台も何もない。「みごとに何もないなあ」と驚く花山。そこへほのかに流れるあの匂い。
鼻をクンクンいわせて奥へ侵入すると鍋に大盛りのオカラ。当然断りもなしに早速いただきにかかる。必死の形相で食っていると、
ヤクザ連中がやって来た。ここの親父の借金を払えという。この時間に取りに行くといって親父がいないからそこにいた花山に払えというのだ。
花山の言葉は口の中をオカラでいっぱいにし、ほとんど聞き取れないが「そんなむちゃくちゃな話はあるか」とか何とか言って相手にしないが、
そのうちヤクザたちが斬りかかってきた。花山はヤクザたちを軽くあしらいながら、まだ食べている。しかし、はずみで鍋を落としてしまった!
大盛りのオカラが全部パー。「あああ〜、もったいない。こんなことになったのもみんなおまえ達の責任だぞ、どうしてくれるんだ。」と言った
あと、ヤクザたちを痛めつけたときの強いこと強いこと。オカラのうらみは恐ろしい!
ここの親父(十朱久雄)は、ばくちが好きで好きで、黒磯の親分(須藤健)の賭場に入り浸りで、一日一回サイの目を見ないと下痢をする体質。
店の道具も全部借金のかたにとられたという。仕方なしに親父を連れて花山が黒磯の家に行くと、中はけんかの真っ最中。半次兄さんだ。
半次はここの賭場でイカサマを見抜いたのだ。花山も加勢。刀をさっと一振り、一人のヤクザのマゲだけが見事に落ちてザンバラ髪に。
これを見ていて「おっ、やったぜ」と半次兄さん、まねして別のヤクザに刀を振ると、わずかに軌道がずれ、頭の皮まで削り取ってしまった!
あわてて皮つきのマゲを拾って当人に返す半次。
店の道具は取り返した。だがこの親父のバクチ好きは途方もなく、かつて妻と娘も賭けて見事敗れ、今二人は黒磯のやっている店で女中奉公
させられているという。「なかなか、こぎれいな店でしたね」なんて、この親父まるで罪の意識はない、「そんなこと、聞いちゃいねえよ」と花山に
叱られながらも、ひょうひょうと説明を続ける親父だ。
この二人の証文も花山と半次の二人で取り返した。親父は証文を持ってその日のうちに妻と娘の店に向かうが、次の朝になっても戻らない。
途中で黒磯の連中におそわれ、動けなくなっていたのだ。迎えに行った息子に抱えられて親父は帰宅。そこへ黒磯一家がやってきた(半次に
頭の皮を削られた子分の頭に巻かれた包帯が笑える)。妻と娘を人質に持っている間は黒磯優勢。だが、花山の機転であらかじめ背後に
回っていた半次兄さんが人質を取り返すと、形勢逆転、親分を残して子分は全員逃げ出してしまった。たった一人残った哀れな黒磯親分、
あっさり斬られてしまった。(花山小吉さま 2002年6月5日)
コメント:(おやじは)「3両負けて」(黒磯一家は)「2両2分」借金を取りに来ました。「堀川亮さん」がその理由を 「(店の道具で)8分は持っていったからよ」
と説明していました。「1両=10分」十進法と間違えているのでしょうね。当時スタッフも誰も気付かなかったのでしょうか。製作当時は「将来家庭に
ビデオが普及してマニアが繰り返し再生して、微に入り細に入り間違いなどを追求する」なんてことは想定していなかったのでそれほど厳しく
チェックしていなかったのでしょう。(花山小吉さま)
このちゃんのウインクが見られましたね〜!半次が大吉との約束を守れずにいつ飛び出すか心配でしたが、守れてよかった!
居酒屋のおやじさんの子供として「20前後のお姉さんとすごく年の離れた弟」がいることが多いですが、弟の方は幼なすぎでは?「お父さん」というより「お祖父さん」のように見えてしまいます。特に「おいらの父ちゃんカモだった」のおやじさんは、どう見ても「お祖父さん」に見えませんか?(鈴雪さま 2009年3月20日)
十朱久雄さん、久しぶりに見ました。いやぁ、懐かしい…。あの、おっとりとして上品なとぼけた味わい、大好きなんです。今、ああいう役者さんって、いないでしょう。貴重な人材でしたね。それから、黒磯の親分を演じた須藤健さん。確かに悪役の多い役者さんでしたが、私にはそういう印象がさほど強くありません。テレビがまだモノクロ放送だった子供のころ、「鉄道公安36号」というテレビ映画かあり、須藤さんがその公安官の室長役を演じていて、それが先に記憶に刷り込まれているからなんです。(イベールさま 2009年3月21日)
相変わらず堀川亮さんがお上手でしたね。前回出演の「腕白小僧はなぜウソついた」の時も、台詞だけじゃなく表情もうまいなぁ・・と思っていましたが、今回ますます磨きがかかったっていう感じで、近衛さんや品川さんとのやりとりは、お2人を向こうに回してのノリと愛嬌のある演技に感心しました。正直、子役さんがイマイチの回もあるけれど、この回のように上手だと、全体のノリもますます良くなって嬉しいです。(南まさとさま 2009年3月22日)
最高でした!冒頭でだんなが、おからの入った鉄鍋をもったまま、やくざ相手におっぱじめたところは抱腹絶倒ですね^o^そのうえおからを口にいれたままで下品というか、こっけいで笑いますね・・・全104話の中でわたしは このシーンが一番強烈に印象に残るほどベストワンです!! 結局このシーンの最後には土なべを落としてしまい、(考えたら 最初からかまどの上に置いときゃよかったのに・・・ねえ、だんな?)そのあと「こんなことになったのもみんなおまえたちのせいだ!」と猛烈にだんなが怒って、まあ食べ物のうらみは恐ろしいものですね!こてんぱんにやっつけました!ところで黒磯の親分のキャラクターもいい味ですね!口癖に「こんちくしょう!」と連発していましたね!最後に おっ母と娘が人質に取られたとき、裏に回った半次への合図がなんとだんなのウインクでしたね!!^o^(かわいい!!みなさん見ましたか??)ちなみに第32話「伜にゃ過ぎた嫁だった」では同じように 赤ちゃんが人質にとられましたが、この時はだんなが半次への合図は、腰のひょうたんに手をやるのでしたが、それとは大違い!ウインクにはびっくりしました! でもその回によって設定を変えているこの細かい点にも脱帽しました!(きざくら&ようめいしゅさま 2009年3月23日)
代貸しの顔を、キツネにタドンと罵ったり、ヤクザとおからの鍋で戦ったり、大吉がヤクザの髷を切ったのを真似して、半次さんが頭の皮まで切ったのは可笑しかった。そして、ヤクザの用心棒の先生に向かって、あんた、一体何の先生だ?と尋ねたり、可笑しくて可笑しくてたまりませんでした。この話は傑作ですね。(DUKEさま 2020年5月28日)
旅の場所:刈部宿


「鼻をつまんで名乗っていた」 (第45話) (←見ただけ)

<キャスト> 柳沢真一=大吉に、かあちゃんへの代筆を頼んだ大根畑の肥衛門、シュラシュシュシュ
滝那保代=大吉に側杖を食わせた、おちよの母親
鮎川浩=『焼津の半次』に堂々と食い逃げされ、大吉の袴を噛みながら泣きついた峠茶店のとっつあん
藤尾純=大吉に赤牛と呼ばれた、赤松の虎造 石浜祐次郎=あああ、おからを捨ててしまった居酒屋のおやじ
山口朱実=肥衛門に鎮守の森の裏の田んぼに誘われた居酒屋の娘
大川淳『焼津の半次さん』に二分の御報謝を弾んでもらった、巡礼の男の子
波多野博=茶店で大吉に切りかかった赤松一家の代貸し、浅五郎
和歌林三津江=持病の差込みで苦しみ半次に介抱された、しん坊(赤ん坊)のお婆ちゃん
崎山陽要=『焼津の半次』が二重結婚しようとした相手の純情な娘、おちよ

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=宇佐見亮 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美工 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川きい 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


多分四国ロケの話と思いますが。大吉がふとしたことから、うだつの上がらない三下と出会い、三下は、「四国の母へ手紙を書いてくれ」
と大吉に頼む。大吉、ひどく嫌がり「自分で書け」と突き放す。「おらぁ、(文盲で)字が書けねぇ。頼むから言う通りに書いてくれ!」
仕方なく、嫌々だが応じる大吉。三下「かぁちゃん恋しやシュラシュシュシュ〜。」と、突然大吉がしゃっくりを・・・。
(ZAPOさま 2002年4月1日)→ロケではなさそう。シャックリは、母娘から半次が二重結婚しようとしたと言われたとき。(じゅうよっつ)

お調子者の旅ガラス、「大根畑の肥衛門(こええもん)」が、その名が恥ずかしいために半次の名をかたります。半次の名で、娘をくどく、
無銭飲食はする、宿場のヤクザと喧嘩をする、などやりたい放題。ダンナが、それらの迷惑をかけられた連中に「おれは半次の連れだ」と
言ったものだから、ヤクザに斬りかかられるは、店のオヤジに「払ってくれ!」と泣きつかれるは、娘のお袋にはひっぱたかれるは、
さんざんな目に遭います。「シュラシュシュシュ」は肥右衛門がクニに残した恋女房に出す手紙の代筆を大吉に頼んでいるところです。
何でも、「物事が順調に行っている」ことの表現だとか。「ひょっこりひょうたん島」に出てくる「トウヘンボク」のあの軽妙な声でお馴染みの
柳沢真一さんの独特なとぼけた味と、初めはあほらしくて筆を放り出すものの、最後まで付き合う大吉が傑作です。
余談ですが、このシーンの最後に書き上がった「手紙」が映り、そこには大吉の字で「肥衛門」と書いてあるのに、あとで肥右衛門が
本名を話すシーンで大吉は、「で、おまえは(本名は)何と言うんだ?」と尋ねています。 (花山小吉さま 2002年4月4日)
見どころ:大吉による肥衛門の母ちゃんへの恋文代筆がようやく終わった頃、居酒屋の亭主が酒の肴にとがおからを仕入れてくる。
それを嗅ぎつけて、「どんどん持ってきなさい」と早速おからを注文しようとする旦那。だが、肥衛門は「冗談じゃねえや」と飛び退き、
「馬グソよりまだひでえ、箸にも棒にもかからないしろものだ、においを嗅ぐと2〜3日胸くそ悪くて眠れねえ」とののしる。「この世の中で一番
うめえものをつかまえて。このうすらバカタレが!」おからをかけた戦いに居酒屋の亭主はおののく。「おやじはやく捨てちめえ」「おやじ、とんでもねえ」
捨てていいものか、出していいものか、迷ったあげく、逃げていった亭主のあとを追うと、そこにはざるから落ちてしまったおからが。
結局大吉はおからを食いっぱぐれて、これも半次のせいだと、翌日、昨日落ち合う場所に来なかった半次を捜しに、出かける。そしてさらに、
上記のごとく、大吉に災難が降りかかってくる。
最後に、ヤクザ連中が半次こと肥衛門と大吉に仕返しに来たとき、肥衛門が改めて名乗りを上げると、相手のヤクザはプッハッハと吹き出す。
「焼津の、これなんでい、だからおいらはイヤなのよ」だから肥衛門は、大根畑の肥だめの横で生まれたために付いた名前を使わなかったのだ。
3人で見事に近在を悩ますヤクザ連中をやっつけて、「やった、やった、やったぜかあちゃん。約束どおり足を洗うぜシュラシュシュシュ」と喜ぶ
肥衛門を見て、「旦那、あの肥衛門、何を騒いでいるのか」「あれはヤクザの足を洗うと騒いでいるんだよ」「ヤクザの足を洗うのにシュラシュシュシュ
か。変わった旅ガラスだ」「おい、人のこと言うとるよりも、自分の身の上に大事件がおきとるぞ」「大事件?」「肩のとこ、見ろい。あれがおるだろうが」
「でたあ、助けてくれえ」「しかしおめえも毎度クモで大騒ぎするとは変わった旅ガラスだな」
最後の殺陣の場面、風に吹かれたこのちゃんの袴姿、カッコいい!
(じゅうよっつ)
面白かったです。このエピソードは保存しておかないと・・とか思ったりして。このロケ地?以前ウサギをぶち殺したところ(36話)と同じだったみたいでした・・(゜o゜)何度か出てきてるので覚えちゃいました。あと街道の右当たりに湖の出るロケ地も色んなエピソードに出てきてますよね。今日は「あっ・・ヒコーキが飛んでる」って思ったら鳥でしたヾ(^△^ゞ(ともえさま 2009年3月23日)
柳沢さん いい味だしていますね!わたしも「しゅらしゅしゅしゅ・・・」の場面は子供の時に見て以来忘れられません・・・ 今日は「赤ちゃん」登場でだんなが赤ちゃんを抱っこする時の優しい目が印象的ですね!以前、「地獄の鐘が鳴っていた」でも赤ちゃんを抱くシーンがありましたが、ほんとうに近衛さんの優しい一面が見られほのぼのします!月影から大吉まで、たびたび赤ちゃんが登場するシーンがありますが、いつもそういう思いで見ています。(きざくら&ようめいしゅさま 2009年3月24日)
冒頭、待ち合わせ場所のお地蔵さんを前にしての2人の小芝居が面白かったです。半次兄さんはちゃんと拝んでいたのに、ダンナはなんと鉄扇で頭をポカリ!!なんちゅう罰当たりな・・(笑)ひょっとしてその後の災難続きはあれのせいじゃないの!?なんて思っちゃいました。それにしても肥衛門さんはあのお顔で(失礼!)よくモテるんですね。恋女房がいる上に居酒屋の姉ちゃんや、旅の娘さんまで・・。こうなってくるとご本家の方が何故あんなに女性に縁がないのかがますます謎です(笑)で、そのご本家焼津の半次兄さんの特徴をダンナが説明するところ、言い得て妙で可笑しかったです。けど、好きになる女性の対象範囲が「15、6から42、3」ていうのだけは・・実際よりかなり誇張して言ってますよね(笑)ダンナも面白がっていたのかな??(南まさとさま 2009年3月24日)


「赤ちゃんお手柄立てていた」 (第46話) 

<キャスト> 市村俊幸=大吉を一瞬怪しいとにらんだ自信過剰の役人、藤堂弓之介
舟橋元=大吉に説教した、武士の威厳にうるさい師範代殿、馬場作太郎 桜田千枝子=病人の看病を買って出た旅の女、おちよ
佐藤蛾次郎=四人組悪党の一人で、半次の頭を殴った、見張り役 千葉敏郎=四人組悪党の一人で、一刀流の腕利き
西山嘉孝=四人組悪党のお頭、血祭り銀次 佐藤京一=四人組悪党の一人で、短筒使い 柳川清=木賃宿のおやじ
丸凡太=その日の風まかせの旅を続けている、興津の留三郎 三浦徳子=赤ん坊を里で生み、嫁ぎ先に帰る途中の女、おきみ
藤本秀夫=大吉に頼まれ、病人を運んだ百姓 太田博之=血祭りの銀次を仇と狙う若侍、榊原達馬
不明 男46−1=つねられたお返しにあれをして、大吉にあれを出させた赤ん坊、松吉

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=渡部章 
助監督=山村繁行 美術=宇佐見亮 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=曽根美工 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川きい 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


凶悪四人組騒ぎにおののくある宿場にやってきた花山。探索をしている役人(市村俊幸)に、街道で呼び止められて怒っているのは堅物の師範代
(舟橋元)だ。その様子を見ていた花山も「人相書きに類似したのがある(役人)」ために呼び止められた。人相書きを見せてもらった花山
「こんないやらしい顔ではないぞ。俺の方はもっと気品がある。」などと、すっかり役人と仲良しに。
役人と別れて歩いていると、道ばたに苦しんでいる老人。これを助けて宿場の木賃宿に入った。一部屋にはわけありそうな旅の青年(太田博之)
旅人、鳥追い女、赤ん坊をつれた若い母親。あとの一部屋には街道で怒っていた師範代は一人で泊まっていた。侍が町人と同じ部屋に
泊まれるか!と力んでいる師範代に対して花山「何?承知した?いやすまんなあ」と調子よく病人をかつぎ込んでしまった。
先の役人が宿改め。旅の青年が詰問されて難渋しているところを花山が機転で救う。井戸端で一人で体を拭く花山に近づいた青年は礼を言い
「実は私は敵討ちを・・」と言いかけたところ花山が止めた。「やたら人に言うことではあるまい・・」
部屋に戻った花山は、自分の刀が消えていることに気づく。師範代や青年、旅人の刀も無くなっていた。それにかつぎ込んだ病人も消えている。
「眠り方が変だと思っていたが・・」と花山。そこへ、その病人(西山嘉孝)を先頭に四人組が入ってきた。病人は凶悪四人組の首領だったのだ。
四人組は花山たちを人質に旅籠に立てこもった。
緊迫する旅籠に、全く緊張感のない声で「ごめんよー」。入ってくるなりクモが出て一人で大騒ぎ。苦り切った顔の花山が出てきてクモ退治。
半次「ダンナ、四人組騒ぎをしってるか。」「ま、おまえよりはな」「だったら、叩っ斬る算段をしなきゃいけねぇじゃねぇか」「おまえな、この際大口
たたかない方が身のためだぞ」そこへ姿を現した四人組。「ひぃふぅみぃよー・・するとおまえ達か!!」と威勢がいいが、短筒が出てきて、
スゴスゴ引っ込み、四人組の中の一番チビ(佐藤蛾次郎)に頭をしこたまたたかれ、あえなく人質の仲間入り。
再び役人が宿改め。半次は「ここに来る途中で怪しいヤツを見かけなかったか」と尋ねられ「来る途中で・・は、見かけなかった」と答えた。
「途中では」とはどういうことかと突っ込まれ、しどろもどろ。「途中、途中も、見かけな・・全然見かけなかったかった・・と・・申し上げたんで・・」
と、かろうじてきりぬけ、冷や汗を手で拭いた。
夜も深まった時、母親が抱えている赤ん坊が突然泣き出す。それに首領が異常なほど反応、「泣かせるな!」と怒鳴り、ついには赤ん坊の
首を絞めにかかる。花山が体で止めたが、首領は「あの赤ん坊と同じ泣き声だ・・」とつぶやく。自分で絞め殺した赤ん坊の泣き声を
忘れられないらしい。
師範代は四人組に挑んで斬られ、旅人は逃亡を図って斬られた。青年が狙う仇は実はこの首領。それを名乗ったが花山に制止された。
四人組は一晩ここで過ごし、朝になったら人質を皆殺しにして逃げる気だ。刻一刻運命の朝が迫る。小声で半次「どうするんだよ、朝が来たら
殺されちまうよ」花山「そんなに殺されたかったら早く殺されちまえ」
朝が来た。「どうやら役人は宿場にいませんぜ」と(佐藤蛾次郎)が首領に報告。そこへ赤ん坊が泣き出した。狂ったように赤ん坊に近づく首領。
と、その瞬間、花山が首領をつかまえた。短筒を誤発射させ、あとはいつもの・・だがこんな緊張の極限の場面でも半次はやってくれる。半次が
花山、青年、それに自分の刀を取り返したが、持ち主を間違えて手渡した!「違うじゃないかよ」と言われてあわてて取り替えるがまた違う。
「なんだよ、おめぇは!」と怒られる。真剣に悪人に向かおうとしている花山が青年が、半次の赤い粗末な?(まっすぐな)刀を持たされるのが
たまらなく可笑しい。
「おめぇたちのようなのはな、この半次兄さんが・・」と威勢良く啖呵を切り出したが、おまえはあとあと、と花山にどかされ画面の外に。青年が
正式に敵討ちの名乗り。さっきのお返し、半次は(佐藤蛾次郎)を徹底的に痛めつけ、青年は花山の助けで見事に敵討ちを果たす。
タイミング良く泣き出した赤ん坊が一番手柄だ。花山は「つねったりして悪かったな」と細工を披露しながら赤ん坊を抱き上げた。次の瞬間、
あわててひょうたんの酒を飲みだした。赤ん坊が”あれ”をして、驚いたダンナには”あれ”が出てしまったのだった。
コメント:月影兵庫にもよく似た、凶悪な四人組の人質になる話がありましたね。(第2話)(花山小吉さま 2002年6月13日)
見どころ:「武士はかくあるべき」との師範代殿に、威厳がないといさめられっぱなしの大吉が師範代を見る目は、いたずらっ子のよう。(じゅうよっつ)
かなりシリアスでしたね。この手のパターンって時代劇の定番の1つですよね。登場人物達の心理描写が見どころな反面、派手さに欠けるような気がして、以前はちょっと苦手なタイプの話でした。けど、今回の話も、兵庫の「風は知っていた」も面白く見ることができたので、これは偏にキャラ(大吉or兵庫&半次)が魅力的だったからなんだろうなと思います(^_^)それにしても、こともあろうにダンナが仮病に引っかかってしまうとは・・あの頭、よっぽどの役者なんですね(笑)ああいう展開の場合、今だったら誰かが「お前が余計なことをしなけりゃこんなことには・・云々」って言い出しそうなものなんですけど、少なくともあの人質の中には、そんなことを考えている人は1人もいませんでしたよね。きっとこの作品が作られた40年前には、日本がもっと精神的に豊かで、困っている人や苦しんでいる人がいれば手助けするのが当たり前、っていう共通認識があったからなんじゃないかなぁ・・なんて思ったのですが、考えすぎでしょうか?ともあれ、あんな局面でも冷静さを失わず、しかも咄嗟の判断で素早く的確な行動ができるダンナは、本当に頼もしくて格好いいです。頭をおびき寄せる為とはいえ、心ならずも痛い目にあわせてしまった赤ちゃんにもちゃんと謝ってるし、お詫びに高い高いをしてあげるシーンでは、近衛さん自身も本当に嬉しそうなので、見ているこちらも思わず頬が緩んでしまいました(^_^)ただ、師範代殿が斬られちゃったのだけはお気の毒でしたね。何遍も叱られてたけど(笑)、うち解ければ結構仲良くなれそうだったのになぁ・・。(←この時の上目遣いのダンナのむくれ顔、なんとも可愛かったです(^_^))(南まさとさま 2009年3月25日)
最後の方で斬り合いになって、半次と佐藤蛾次郎扮する悪人がもみあいながらかまどの方に行きしだれかかった時に!かまどが動いたのですよぉ!「えっ?」するとまた動いた!「エエエー?!」音にするならゴゴッっ感じで・・「あははーっ」思わず大笑いしてあんなに激しく太刀ち回りしてもたれかかった所が急に下がったらドキッとしただろうなって心配にちょっとだけなりました。  見てみて下さい。(のりりんさま 2009年3月26日)
人相書きをのぞき込むシーンの旦那がかわいくて、何度も見ました。こういうちょっとした仕草がかわいい〜。(鈴雪さま 2009年3月29日)
旅の場所:昨日四人組が襲ったのが三田宿なので、その近辺の宿場と思われる。(じゅうよっつ)


「夜になるほど強かった」 (第47話) クモもしゃっくりもおからも無し

<キャスト> 青柳美枝子=居酒屋の雇われ女将で、見目麗しく情け深い姉さんの、お藤
伊達岳志=目が不自由な深編笠の浪人、倉内一人(くらうち・かずんど) 吉田義夫=別に一軒、居酒屋を新築中の居酒屋のおやじ、熊吉
谷村昌彦=熊吉と喧嘩ばっかりしている大工の棟梁、留五郎 都築克子=倉内を仇と狙う真弓田典膳の娘、月江
五味竜太郎=お藤と知り合いで、真弓田道場の師範代、小沼 岩村百合子=危うく斬り合いに巻き込まれるところだった居酒屋の子女
阿波地大輔=居酒屋で飯を注文した、敵討ちの助太刀浪人 宮城幸生=外から二階に上がり、蔵内を切ろうとしたが、反対に斬られて階段逆落としになった侍
矢奈木邦二郎=実際は小沼に斬られた道場主、真弓田典膳(まゆみだ・てんぜん) 藤長照夫=居酒屋で深編笠浪人に斬られた侍

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=荒井岱志 撮影=脇武夫 計測=長谷川武次 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
美術=宇佐見亮 助監督=尾田耕太郎 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川キイ 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


相談屋の得意先探しに走らされ、自分ばかりこき使われていると大吉の「周りをうろうろしながら」わめき立てる半次に、大吉が言う。「おめえにかろうじて出来ることは俺の下働きぐらいのもんだろがい。だからせめて出来ることをさせてやらんことには、おめえのこの世に生まれた意味がねえってことだ」
「とさかが火を噴いてき」て、金輪際口をきかない「このくそったれおから!」と言い捨てる半次と別れた大吉は、宿場に入り、そこでも「ボケナス親父」
「うすらとんまのくそったれ」としまらない喧嘩をしている居酒屋の亭主・熊吉と大工の留五郎に出くわす。二人は、留五郎が建てている
熊吉の新しい居酒屋の、階段の手すりが太過ぎるだの、調理場の柱が邪魔だの、大吉が相談に乗っている間にもまた喧嘩、あきれた大吉は
二人を置いて表へ出る。と、出た拍子に、お藤とぶつかり、お藤の持っていたドンブリが割れた。お藤は、3月前から熊吉の一件目の居酒屋を
任されている雇われお女将で、ドンブリのかけらを拾いながら大吉が話す半次の描写が面白いので是非一緒に飲んでくれとと、自分の店に誘う。
大吉のためにおからを買いに行ったお藤を先に居酒屋で待つ大吉は、先客の目の不自由な深編み笠の浪人に、後からきた2人連れの侍が
斬りかかり、浪人が腕に怪我、侍の一人が一突きで息の根を止められた現場を目撃する。残った侍は逃げ、浪人は、居酒屋の小女を気遣って
代金を置いて出ていった。
帰ってきたお藤にこのことを話すと、お藤はどうも、斬られた侍も編み笠の浪人も知っている様子なのだが、大吉の問いには答えようとしない。
騒ぎを聞きつけて来た熊吉と留五郎が、その浪人が、熊吉の新しい居酒屋に来て、夕刻まで二階を借りると、強引に上がっていったという。
大吉は熊吉に頼まれて浪人に出ていくように話すが、浪人は聞く耳を持たない。「何とかしてください」と泣きつく熊吉。
そこに、半次が、まるで先ほどの捨てぜりふは忘れたかのように、茶店できいた話を持ってくる。居酒屋での斬り合いで逃げていった侍を含む
真弓田道場の連中が、二階の浪人を仇討ちに来るというのだ。浪人は倉内。以前、真弓田道場に師匠をやられ、その時に両眼を失った。
その後修行を積んだ倉内は3年前、真弓田道場に乗り込み、門弟3人と病床の真弓田典膳を殺したのだ。今度は、典膳の娘・月江と師範代・小沼、
門弟が、仇の倉内を狙っている。
そこへ、その一同がやってくるが、倉内は、親の敵の名乗りを受けるいわれはないと、二階にこもったまま姿を現さない。立ち会いには応じるが、
暮れ六まで待てとの言葉に、一同は、すご腕の倉内を黙って待つしかなかった。
しかし、大吉にはどうも解せなかった。倉内は、先ほどの斬り合いで、訳がわからずぼおっと突っ立っていた居酒屋の小女を楯にして自分を守ること
が出来た。が、それをせず、敢えて自分が傷つく方を取った。そんな心根の倉内が、病床の師匠を斬るという、非情を行い得るだろうか?実際、
倉内も自分は門弟は斬ったが師匠には回復を待って決着をつけようと言ったと言っている。大吉は、何かを知っていそうなお藤の元へ行く。
お藤は、酒を飲んでいた。大吉に問われても、固く口をつぐんでいたお藤は、「もし倉内がやっていなかったら、娘はとんだ仇討ちをやらかし、
死んでいくかもしれん。倉内もぬれぎぬを着せられたまま死んでいくかもしれん。真実をゆがめられたまま死んでいく、そんなことは許せん
ことだと思うんだ、真実をゆがめた奴が、その真実の上にあぐらをかいてほくそ笑むとしたらだな」と言う言葉に泣き崩れる。「私は、小沼の女
だったんです」お藤は、3年前のあの日、倉内が去った後、真弓田道場の師範代・小沼らが、師匠・典膳を斬ったところを見てしまった。
跡継ぎのいない道場と娘の月江に目がくらんだ小沼の元から、お藤は身を引き、ここに流れてきたのだった。
そして暮れ六。篝火をたいて待つ小沼らの前に、倉内が姿を現す。「私は父上を斬ってはおらん」という倉内に、斬りかかろうとする小沼ら。
大吉と半次がお藤を連れて、月江に真実を明かす。「あんたの父の仇は、道場とあんた欲しさに父上を殺した、その師範代の悪党だよ」・・・
ようやく小沼を倒した倉内が呆然と立っている。倒れた小沼の側にしゃがみ込むお藤、既にこときれた小沼に刀を向けようとして出来ず立ち尽くす月江。
半次が言葉をかけようとするが、大吉が止める。二人は暗闇の中へ消えていった。
コメント:吉田さんや谷村さんという大物ゲストを前半だけに使うとは、何と贅沢な!
旅の場所:真壁の御城下(茨城県)(以上 じゅうよっつ)
見どころ:
斬られて階段を逆落としになった宮城幸生さん、痛そうですね(表情には出ていませんが)。アザの2つや3つが出来たような気が
します。(相談屋さま)

冒頭 居酒屋のおやじ「吉田義夫」さんと大工の「谷村昌彦」さんのかけあい最高ですね!!これも全104話の中で忘れられない名シーンの一つです。ほんと最高の組み合わせのお二人ですね!お二人ともこの回以外は単独で出演されていて、(吉田さん・・・10話「坊さんまるまる損をした このひとはお坊さん役が似合いますね^^」76話「大金持ちほどけちだった」など谷村さん・・・37話「バカにかまってばかを見た」など)それぞれの回はそれはそれでいい味を出されている役柄ばかりでとても好きです!この個性強い2人が共演する今回のシーンがおもしろいのは当然ですね!ほんとうに実際の私生活でも「けんか友達」という錯覚がおきるほどピッタリ相性の合う二人かもしれませんね!^^(きざくら&ようめいしゅさま 2009年3月25日)
吉田義夫さんを観ると勘兵衛の貧乏神を思い出して笑ってしまいます。(ともえさま 2009年3月25日)



「佛を背負ってモメていた」 (第48話) 

<キャスト> 由利徹=二日続けてナニでナニした生臭坊主の良ちゃんこと、良念(りょうねん)和尚
御影京子=半次の足を踏みつけた、佛の妹、菊乃 三原葉子=和尚の大黒さん(女房)で、永遠の生き菩薩のお徳ちゃん
江見俊太郎=半次の背負った佛を眺めていた武士、榎木武太夫(えのき・ぶだゆう)
北見唯一=酒の肴におからを持って来なかった、寺男の作兵衛 賀川泰三=野原代官所の手代を良く知っている、ニセ役人殿
有島淳平=佛になって半次の首を絞めた菊乃の兄、浦邉和太郎(うらべ・かずたろう)

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=渡部章 
美術=宇佐見亮 助監督=山村繁行 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=伊藤健三 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川キイ 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


道ばたに寝ている同業を起こそうと、男を揺すると体が冷たい、顔色が悪い、耳を近づけても何にも聞こえない、「体が冷たくて顔色が悪くて
息もしてねえってことは・・わあーおかしいもいいとこだ!」と男が死んでいることを発見して騒いでいる半次のところに、大吉が来る。
転々とついた血の跡、やせた体から、胸を病んでいた旅人であること、手の竹刀だこから相当な腕の持ち主であることを推測した大吉に、
「いやあ人間、何か取り柄があるっていうか、旦那、佛の見立てをやらすといい線読むじゃねえか」とすっかり感心する半次。
とにかく、近くの寺まで運んでやろうと、嫌がる半次に、「ひやっとしていい気持ちだぞ」と佛を背負わせる。「ああ、いけねえ背中が氷のように
冷えてきた。ああ、これはきっと、死に神が乗り移って背中が死体になり出したにちがいねえ」「ああ、こっちが死にたくなってきた」などとブツブツ
言いながら歩く半次の前にクモ。「死にたくなったらあれが出た!」とあわてて死体を落とす。「ああ、いけねえ、これこれ、ああどうしよう」と、
佛は救いたし蜘蛛は怖しの半次兄さん、クモを見ながら死体の足を引きずる。
やっとついた寺は、和尚が留守で、いつ帰ってくるか分からないと、えらくあだっぽいがぶっきらぼうな和尚の大黒さん(=おかみさん)が答える。
「良公のやつ、今夜帰ってきたら頭から煮え湯をぶっかけてやって井戸に放り込むからね」と和尚の浮気の虫にかなり頭に来ている様子。どうせ、
お経を上げる奴が生臭坊主なんだからお経など後でも先でも同じことと、大黒さんは、まずは佛を寺男の作兵衛に埋めさせ、身元保証人として
大吉と半次は、和尚が帰るまで寺にとどまるようにいう。
その夜、おこそ頭巾の女が二人の部屋に忍び入った。半次が足を踏まれて驚いて飛び起き、「泥棒!」と叫んだために、女は逃げた。女は昼間、
半次の背負った死体を何とも言えない顔で見ていた武家娘で、その後を追ってきた侍を避けて、走り去ったのだった。この死体に関して何かある
とにらんだ大吉は、寺男から佛の見回り品を買い取り、保管していた。やがて、娘を追っていた侍も、佛の持ち物を求めて、ここに来るに違いない。
そして、外に気配が・・と、大黒さんの「ちきしょう、この色キチガイが!」というけたたましい声。庭にいたのは18の娘の元からこっそりと戻ってきた
良念和尚だった。
とうとう、その夜、侍は現れなかったが、翌朝、役人が佛について取り調べに来た。佛の持ち物を調べ、「書状のようなものがなかったか」と問いただす。
二人がない、と答えると、墓の中の死体を改めるという。怪しいとにらんだ大吉が「俺の知り合いの・・」と、デタラメの名前をでっち上げて役人らが
所属する野原代官所で働いているはずだが、と尋ねると、案の定、「無論、知っている」と答え、化けの皮がはがされた。
役人と称した男たちも、昨日の娘も、どうやら佛が持っているはずの書状を探しているようだ。大吉は再び、佛の所持品を調べる。着物には何も
隠されていない。「書状があるとすればこれしかないな」刀の鍔をはずすと、柄の中から、書状が出てきた。それは血判状だった。
寺男に教えられ佛の墓参りに行くと、そこには、昨日の娘が一足先に参っていた。佛は稲葉家家臣・浦邉和太郎、娘・菊乃は、和太郎の妹だった。
稲葉家では、殿の近縁である榎木武太夫が、徒党を組みろうぜきの限りをつくし目を覆うばかりの横暴を働くため、心ある侍たちが江戸にいる殿に
血判状を差し出すことにし、和太郎は胸の病をおして江戸に向かっていたのだ。兄を心配したあとを追った菊乃は、昨日、兄の死を知ったのだった。
「いつまで隠れているつもりだ!」菊乃を追っていた侍と先ほどの侍たちが、三人を囲む。「俺は二本差しの面汚しは遠慮なく斬ることにしているんだ」
・・・「「菊乃さん、もう心配は要らん。これを持って江戸に行くがいい。兄さんたちの気持ちも必ず殿に届くはずだ」血判状を菊乃に渡す。「花山さま」
「さあ、兄さんに別れを告げて行きなさい。兄さんの死も無駄ではなかったんだ。」「はい」「行こうや」「うん」墓の前で目をつぶる菊乃。(以上 じゅうよっつ)
コメント:あこがれの御影京子嬢が出演していることもあり私のお気に入りの回のひとつなのですが、何と言っているのかどうしても意味がわからないセリフがあって昔から気になっていました。和尚のダイコクさんに扮する三原葉子さんが、しごいた翌朝に仲直りして「朝食には“ごしょぐるま”もたんと添えといたからね」と言い、和尚が「それは結構結構、朝の生卵はまた格別じゃ」と言い返すシーンがあります。ここを何回見返しても“ごしょぐるま”と聞こえるのですが、ごしょぐるまとは“御所車”のことなのか? 次の由利徹さんのセリフが“生卵は格別じゃ”だから“ごしょぐるま”とは生卵のことなのか? なぜ生卵が御所車なのか? それとも私の聞き間違いで“ごしょぐるま”と言っているのではないのか? このあたりがどうしてもわからず気になっていたわけですが、この疑問は6年前に「坊さんまるまる損をした」を初めて見た時にスッキリしました。お寺や神社では昔から生卵のことを“御所車”というのですね。こういう古くからの言葉を素浪人シリーズで勉強したことは他にもあって、たとえば和尚の奥さんのことを“ダイコク”ということや、「貴様と俺とは逆だった」の後半で近衛さんが、再会した舟橋さんに「それであんたは“門前の小僧”で武士道にうるさいというわけかね」のセリフ。この“門前の小僧”とはなんのことだろうか?と調べてみると、これは「門前の小僧、習わぬ経を読む」ということわざで、お寺の小僧さんが、お坊さんの読むお経をただ毎日聞いてるだけで、お経を習ったわけでもないのに、お経を読めるようになったというお話から来ているようです。(長沢威さま 2009年3月27日)
旅の場所:野原代官所の近くの天領。
佛の名前について:うらべかずたろ=本放送より(菊乃の口の動きでも『うらべ』です)
            渡邉和太郎=血判状(二人目)より(ただし『渡』,『邉』,『郎』の字はハッキリせず)(相談屋さま)


「オケラが三匹揃っていた」 (第49話) (←彦さん)

<キャスト> 成瀬昌彦=金蔵合戦では大吉になんとか勝利した浪人、姓は星山、名は彦九郎右衛門四郎五郎兵助忠勝(ほしやま・ひこくろうえもんしろごろうへいすけただかつ)
原健策=準備体操のおかげで剣では一度も遅れをとったことがない庄屋の道場主、山川仁右衛門大先生
三原有美子=今は居酒屋で働く庄屋の娘、べっぴんのお浜ちゃん
幸田宗丸=太鼓持ちの真似して下手な棒振りを教えている、大先生の道場の師範代、高嶋
江幡高志=『御貴殿方はどなたでござるかな?』大先生の道場の下男 江上正伍=ひこさんが道場で軽くのした浪人、河本
野村鬼笑=半次たちの懐を見透かす眼を持った居酒屋のおやじ

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=渡部章 
美術=宇佐見亮 助監督=山村繁行 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=藤井達也 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川キイ 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


のっけから橋の上にいる半次の弱った顔のアップ。「あっ、違っちゃった!」 橋に下から半次を見上げた見知らぬ浪人「”クソったれ”だの
”オカだんな”というのは俺のことか?」
このダンナ、名前を「ほしやまひこくろうえもんしろごろうへいすけただかつ(星山彦九郎右衛門四郎五郎兵助忠勝? 成瀬昌彦)」という長い
名前。すぐに半次と仲良しになり、一緒に居酒屋で一杯やる。そこへ花山ものぞき、「おっ、焼津のにーさん、やっとるな!」とすぐに加わる。
浪人二人意気投合し、二人で半次をバカにし始めたので半次はおもしろくない。追加の酒を頼めという花山に、半次「なんで俺が頼まなきゃ
ならないんだ」花山「俺達のような大人物におごらせていただいているお前の役目だろうが!」半次「俺のおごりじゃない」
花山「すると、長い名前のダンナのおごりか。すまんなぁ」星山「いや、おれは知らんよ」・・と勘定を巡ってなにやら怪しい雰囲気。どうやら、3人
とも他の誰かが払うと思っている。店の主人は察知して、次第に近寄ってくる。とりあえず持ち合わせを出そうということになり、半次は15文。
二人はさんざん半次をバカにするが、あとの二人はなんと星山3文、花山2文。星山「あぁ、清和源氏の末裔の私が、無銭飲食とは情けない」
「俺の方は桓武平家の流れとじいさまから聞いたことがある」と花山。源平末裔の金蔵合戦は源氏方1文の勝ち!
店のお浜さんから、「庄屋の仁右衛門のところへ行って、借金を払ってもらいなさい」と言われる。仁右衛門(原健策)は、名字帯刀を許され、
いい気になって剣術道場を作ったのだが、道場には、仁右衛門の金目当てのゴロつき浪人が集まっていたのだ。門弟3人に勝ち抜いたら
借金を払ってやるといわれたのだが、星山が2人目に仁右衛門を指名し、さんざん殴ってしまい借金は払ってもらえず。
店に帰ってきた3人はお浜に礼を言われる。「わたしは仁右衛門の娘。これで(殴られて)父も目が覚めるでしょう。」そこへ、師範代を連れた
道場の連中が仕返しにやってきた。3人でこれらをこてんぱんにやっつけた。これで、仁右衛門も本当に改心しお浜と抱き合うのだった。
さて、借金返済の金策に出かけようとすると半次はクモにおそわれ花山はしゃっくり。星山はなんと猫が苦手で逃げ出した。月影の時の、
懐かしい猫の鳴き声だ。(花山小吉さま 2002年5月29日)
コメント:そういえば立ち回りのときの音楽も月影兵庫のものでしたね。スピーディーで豪快な峰打ち!。でも、旦那の豪剣が存分に観られる
のもこの辺りまでで、急激に殺陣が苦しくなっていくのです。「二人揃って・・(第78話、約半年後)」の頃になると殺陣のシーンはコマ落としを
使っています。かなり体調が悪かったのでしょうね。(岡野さま 2002年5月29日)
見どころ:ひょうきんなのんびり口調の、おから流には5人前はあるという長い名前のひこさんの旦那と半次のやり取りは、「おからなくして
何の人生だ」とまで言いきり勘定の払えないのにも頓着せずひたすらおからを食べ続ける旦那と、昨日あん摩の武市の娘を口説こうとして
旦那に邪魔されたのに腹を立てている半次の、早口同士のやり合いとまた違って、面白い。
道場主の原健策さんが、ひこさんの旦那にやられた後登場するとき、ちゃあんと、たんこぶで膨れた絆創膏を貼っているのが笑ってしまう。(以上 じゅうよっつ)
源氏の末裔を名乗る星山のだんなと平家の流れのある花山のだんなのかけあい!それを見ている、そうめんみたいな目をして見ている居酒屋のおやじ!最高ですね!この成瀬さん演じる星山のだんな、この回だけじゃなくてその後も時々登場して半ちゃん共々三人で旅してほしかったな〜・・・というように想像してしまうほど、3人の息がぴったり合ってましたね^^半ちゃんも「星山のだんな〜」とこれからも、甘えれるような頼りがいがありましたよ!剣も達者だしね(きざくら&ようめいしゅさま 2009年3月27日)
今日の「オケラが三匹揃っていた」ですが冒頭の部分がカットされてませんか?以前見た時は半次が橋の下にいた浪人を大吉だんなと勘違いして、糞ったれとかおからとか怒鳴って気がしたんですが、気のせいでしょうか?そうじゃないと冒頭の部分がおかしいと思うんですが。(焼津さんの旦那さんさま 2009年3月27日)
「オケラが三匹揃っていた」は、昔テレビにラジカセをあてて録音した2本のカセットテープのうちの1話でした。音だけ聞いて、場面を想像していたのですが、やっと見られました!面白かった。(鈴雪さま 2009年3月29日)
三原有美子さん彼女は月影、花山両シリーズに何度か出演していますが、印象的なのは何と言っても「オケラが三匹そろっていた」のお浜役です。私はこの「オケラが三匹そろっていた」はシリーズ中屈指の名作のひとつだと信じていて数え切れないほど見返していますが、大吉と長い名前の旦那(成瀬昌彦さん)がおからを肴に酒を酌み交わしている場面、半次を加えた三人が支払いをどうしようかと意見交換している場面などを、後方から見つめる三原さんの慈愛に満ちた表情。成瀬さんの「盆と正月が一緒に来たような名前だなあ」のセリフのところで三原さんのアップに切り替わりますが、それまでの微笑みの表情が、盆や正月には程遠い自分の境遇に思いをはせたためか暗い表情に替わるシーンなど、いつ見てもホロッとさせられるんですね。御影京子さん、柴田美保子さん、青柳三枝子さん、井上清子(光川環世)さんなどと比較すると地味ですが、シリーズを飾る名花の一人だと思います。
参考までに彼女の略歴は、1940年東京生まれ、本名は三原万智子、58年の東映ニューフェイスに合格、同期に梅宮辰夫さんがいます。時代劇専門の脇役女優であったが、後年には昼のメロドラマでも活躍されたそうです。(長沢威さま 2010年5月2日)


「シゴいた相手が悪かった」 (第50話) 

<キャスト> 万里昌代=由井正雪の埋蔵金を狙う鳥追い女、お滝 神田隆=徒党を組んで埋蔵金を探している、トラ鮫の弥七
増田順司=日が昇れば耕し、暮れれば休み、ささやかに平穏に暮らす、お久美、重吉の父っつあん
鶴田桂子=背負ってもらい、半次にアゴを出させた百姓の若い娘、お久美 春日章良=儲からないおからなんかより宝捜しの手引書を売りたい居酒屋のおやじ
岡部正純=縛られた大吉、重吉を馬小屋で見張ったトラ鮫の子分、酉助(とりすけ) 三木豊=知らないおばさんについて行ってしまった子供、重吉(しげきち)
月形哲之介=トラ鮫の用心棒だが裏切り浪人、佐倉の旦那 山本一郎=槍を持っているトラ鮫の子分
有馬宏治=トラ鮫の用心棒に斬られた秋葉屋の旦那 鳴尾よね子=大吉に秋葉屋の旦那が殺されたことを告げた女
京町一代=お久美、重吉の母ちゃん

<スタッフ>  脚本=松村正温 監督=井沢雅彦 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=山根定男 
美術=宇佐見亮 助監督=太田雅章 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川キイ 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行主任=中久保昇三 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


その宿場は、由井正雪の残党が残したと言う200〜300万両の在処を求めて荒れていた。一月前にここに宝探しに来て以来、脅したり殺したりで
ライバルを排除してきたトラ鮫の弥七一味は、その日も、同じ目的の鳥追い女・お滝をやろうとして、大吉に痛めつけられた。助けられたお滝は、
大吉に礼も言わずに去っていった。その後入った居酒屋は、おからは「手間ばっかりくって儲かりませんので置いておりません」という
けしからんオヤジの店で、大吉に埋蔵金の手引き書を300文で売ろうとする。しかも、埋蔵金景気に便乗して酒は徳利一本90文の高値。
ところが、後刻、大吉を捜して同じ居酒屋にやってきた半次は、昨日はツキについて、オヤジが「前もってお断りしときますが、いろいろものが
上がってちょいとお高くつきますが」と言っても、全然気にしない。これはいいカモが来たとばかりに喜ぶオヤジが、早速、埋蔵金の話を持ちかけると
「これだけ詳しく書いてあればもうめっけたも同じようなもんだ」と即座に300文出して手引き書を買い、「どんどん酒もってこい」と注文する。
上機嫌の半次の「腹具合が悪くなるような下手な歌」を聞きつけて居酒屋に戻った大吉は、半次がまんまとオヤジの話に乗って手引き書を買ったのを見てシャックリ。「これが間違いなく埋蔵金の隠し場所を書いてあるもんだったら、ここの欲張りオヤジがなんでおまえに300文ぐらいで売りつけるんだい」と言われ、ようやく気づいた半次は怒って、隠れたオヤジを探し出そうとするが、「それより、おまえこの酒1本いくらでのんどるんだ、あのオヤジの
ことだからな、俺が値切った分おめえから取りかえそうと思ったに違いなねえや、銚子一本30文、それ以上絶対払うな」とくぎを差し、「オヤジ酒だ、
どんどん持ってこい、ただし、銚子一本30文だぞ」とガッカリして隠れているオヤジに注文する。
翌朝、大吉とまだ後ろ髪を引かれる思いの半次は宿場を発とうとするが、足をくじいて難儀している娘・お久美を見つけて、20丁離れたお久美の家へ
連れて行ってやる。そこは、宿場とは違って静かでいいところ。だが、宿場の埋蔵金騒ぎを話すと、とたんにお久美の父親の顔が曇る。
じつは、この村は、由井正雪一味の子孫が隠れ住む村だったのだ。最初は大吉・半次を公儀の隠密かと疑ったお久美の父親は、二人に、
軍資金は使い果たされた、埋蔵金などあるはずはないと話す。この大騒ぎの状況に、「この村を捨てて別のところへ行くときが来たようです。」
とあきらめの男に、二人は、この男の幼い息子・重吉のためにも、何とかしてやらなければと、思う。「焼津のは村へ残って亡者どもをこの村へ
近づけさせるな」と大吉は、宿場へ、トラ鮫退治に引き返す。「とっつあん、元気だせって」と半次が肩を叩くとそこにクモ。
宿場に戻った大吉は、居酒屋のオヤジに、大吉が埋蔵金を見つけたことを言いふらさせ、やって来たトラ鮫一味を退治しにかかるが、大吉に懐い
ていた重吉を人質にしたお滝に、刀と鉄扇を奪われ、大吉と重吉は馬小屋へ閉じこめられる。
大吉捕縛にいったんは弥七と同盟を結んだかにみせかけたお滝が、弥七の用心棒と結託して争っているところに、いなくなった重吉を探して
宿場に来た半次が出くわす。半次が、弥七の鞭に刀をとられ、窮地に追い込まれたとき石がとんでくる。そこには弥七の鞭で痛めつけられた
大吉と、大吉に励まされながら大吉の繩をといた重吉がいた。
「この傷はあいつらがやりやがったのかい」「バカタレが、おめえがしっかり重坊を見守ってないからこんなことになるんだぞ」「すまねえすまねえ
悪かったよ、大丈夫かよ」半次が奪い取った槍を大吉に渡す。・・・
「おじさん男の子はどんなに苦しくても最後までがんばらないといけないんだよね」「ああ、そうとも」重吉の家族が来て、重吉は泣き出す。
家族の抱き合うさまを見て、微笑む二人。
見どころ:何といっても、このちゃんの槍使い!突く、はねるはもちろん、槍でホームラン斬りまで見せてくれる。弥七の鞭が槍に巻き付いて、
力の勝負、その後、相手の引く力を利用して、槍を刺す。槍を持って、つつつ、と横や後ろの敵に注意しながら歩くさまも、すきなく美しい!
何たってあの姿勢がいいよなぁ!
次回(51話)の予告で、ロケ中の模様が映っている。このちゃんが説明を聞いているところ、品川さんが小野監督と打ち合わせしているところ、
大勢の見物客の中で、撮影しているところなど。
コメント:お滝に、宝探しに大吉の腕を貸してくれないかと頼まれ、「人を見損なってはいかんよ、俺は子供の頃は60の間数のある屋敷で40人
の女中にかしずかれて育ったんだ、そんな暮らしが反吐が出る程イヤになって家を飛び出したんだ、大金となると見るのもイヤなんだ」と断るが、
第3話の「部屋数が38あるさる屋敷」からだいぶ話が大きくなってる。
三木豊さん:ネットで拾った情報なのですが、彼、長じての津山栄一さんだったんですね。津山さんと言えば、特撮番組の「電子戦隊デンジマン」でデンジイエロー黄山純を演じてらした方で、この番組のファンだった(笑)こともあって、とてもなじみ深い俳優さんでした。(南まさとさま 2009年4月5日)
旅の場所:菅野宿(伊勢本街道・奈良県宇陀郡御杖村)


「富士のお山が知っていた」 (第51話) クモもしゃっくりもおからも無し

<キャスト> 宮園純子=半次に『結構な粗茶』を差し上げた女、綾乃(実は鳳来さなえ)
近藤正臣=狼男、実は鳳来彦太郎 長嶋隆一=『お、これは武二郎殿』風巻家の家臣、野田 川浪公次郎=暗い洞窟の苦手な、風巻武一郎
古閑達則=狼男に斬られた、風巻武二郎 藤沢徹夫=綾乃の正体がばれた時廊下にいた三人の中で、右側にいた家臣
白川浩三郎=綾乃の正体がばれた時廊下にいた三人の中で、左側にいた家臣
山形勲=風巻一族の長、風巻正元(かざまき・しょうげん)

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
美術=宇佐見亮 助監督=山村繁行 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川キイ 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


素浪人日本縦断ロケシリーズ東海編第一弾
(thanks,相談屋さま)
日本一の富士山を見て「日本最低のどんケツ男」「日本最低の相談屋」と言い合っている大吉・半次は、奇妙な風貌の若い男と若侍が斬りあっている
変わった風景に出くわす。鉄扇を投げて斬り合いを止めようとした大吉に向かう若い男に、劣勢だった若侍が背後から斬りかかり、逆に斬られた。
「朝霧高原に、風巻一族」と言う最後の言葉から、二人が侍の死体を朝霧高原に運ぶと、そこでは19代続いた土地の豪族・風巻一族の長、
風巻正元が野点(のだて)の最中だった。死んだ侍は、一族の次男・武二郎で、斬ったのは、2〜3年前からこの辺りに姿を見せている狼男と呼ばれる
山男のようだ。武人の正元は、斬られた非は武二郎にあるとしながらも、どうして斬り合いに至ったのか訳を知りたいと、大吉に狼男の首実検
を頼む。しかし、狼男が住むという洞穴には、誰もおらず、ただ、一刀で仕留めた狼の死骸があった。狼男の剣は珍しいが腕はなかなかと
認めていた大吉は、男が、狼相手に命がけで剣を会得したことを知る。
その夜、乞われて風巻家に泊まった二人に、正元は、10年前自分が、19代に渡る仇敵・鳳来一族を絶滅させたことを誇らしげに語る。そして、
洞穴に臆して入れなかった長男・武一郎と、卑怯な行いで斬られた次男・武二郎のふがいなさに「もはや風巻の血筋を継ぐものはおらん」と悔やむ。
しかし、一族にはただ一人、鋭い視線を投げかけているものがいた。江戸から父を捜しに来て、正元が引き取ったという、綾乃だった。綾乃は、
正元を手助けする大吉らに、下手な詮索は止めて屋敷を去れと言う。「ただのネズミじゃねえや」
大吉のにらんだ通り、その夜綾乃は、正元を刺そうとして、捕まる。綾乃は鳳来作太郎の娘・さなえ、狼男は弟の彦太郎で、10年前死体を装って
生き残った二人は、仇を討つ機を求めて、姉は屋敷に入り込み、弟は洞穴で腕を磨いていたのだった。「さあ、斬れ」と言い捨てるさなえに、
「決着は朝霧高原でつける」と正元。
翌日、さなえを連れ、朝霧高原で彦太郎を待つ風巻一族の前に、彦太郎が現れる。たたき落とされて刀を失った彦太郎に、大吉は、容赦なく
斬りかかる。たまらず「姉上!」と叫ぶ彦太郎の元に、さなえが走り寄り、弟を斬るなら自分を斬ってくれと頼む。「綾乃さん、あんたは今日始めて
彦太郎から人間らしい声を聞き、姿を見たな。昨日までの彦太郎は、人間じゃなかった。ただ復讐のために人殺しを仕込まれた獣だった。
人間は人間らしく生きてこそ人間だ。あんたにも10年前殺された父上にも、彦太郎を獣に育てる権利はない。復讐に一生をかけるなんて一番
愚かなことだ。不幸が不幸を呼んでいくだけだ。すべてを忘れて彦太郎と生きていくんだ」と、二人を立ち去らせる。
そして、正元に「ご老体、俺はあんたにも同じことが言いたい。これだけ言えばもう、何か言う必要はあるまい」と、武一郎に「あんたも肩の荷を
おろしてこのご老体と仲良くやることだな」と諭す。
綾乃も助けたい、しかし、ご老体も好感が持てると、どちらにもつきたいで、困っていた半次は、この裁量に感心する。富士山と旦那を見比べて、
「今日は何だか、旦那が富士のお山みたいにりっぱに見えら」「今日はとは何だよ、能あるタカは爪を隠すってな」「おい、持ち上げたとたんに
そう売り出すやつがあるかい」「富士のすそ野は富士山が睨みをきかせているだけあって、いいところだ。ほら、俺のあれもおまえのあれも
出なかっただろうが」「そういや出なかったな。いやあ、富士のすそ野はいいところだわ」
コメント:最後のテーマ曲での場面が、二場面だけ、富士ロケのものになっている。
旅の場所:もちろん富士山麓、朝霧高原(以上、じゅうよっつ)
見どころ:この回は山形勲さんが渋い役柄(風巻一族の頭領)で出演されていますが、それ以上に富士の裾野の洞窟で狼と闘って不思議な
剣法を自得したという野生児役の近藤正臣さんが面白いです。飛んだり跳ねたりの不思議な剣法と花山大吉の大太刀を片手で自在に操る
剣法との対決シーンがみものです。(座頭市血煙り街道の最後の対決シーンを想わせるところが結構あります)全体にこの回はコミカルな面が
抑えられていて、特に、山形勲さんと近衛十四郎さんとのやりとりは重厚の一言です。(錯乱坊さま 2003年2月26日)


「殿様スタコラ逃げていた」 (第52話) 

<キャスト> 倉丘伸太郎=『両親の育児に何らかの欠陥があった』花山家の家臣第一号、川原一馬
林昌子=大吉のためより、一馬のために一緒におからを買いに行った、居酒屋の娘おみつ
高木二朗=大吉に一時の猶予を与えた、高桑道場の道場主 汐路章=眼(がん)を飛ばしたと因縁を付けた雲助、黒蜘蛛の仁三郎
有川正治=一馬の父の仇、横堀渡一郎(よこぼり・といちろう) 丘路千=取り押さえられ、大吉に『慌てるな』と言われた高桑道場の浪人
志賀勝=雲助の一味で、一馬の襟元を掴み『さあ、返答しろい』といった男 乃木年雄=殿に対して無礼を働いてしまった茶店のおやじ

<スタッフ>  脚本=森田新 監督=井沢雅彦 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 
美術=宇佐見亮 助監督=太田雅章 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=木村雅治 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 
美粧=林三郎 結髪=長谷川キイ 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行主任=中久保昇三 現像:東洋現像所 
プロデューサー=吉川義一・宮川輝水  制作:NET・東映


大吉は、クモ助に絡まれて困っている気の弱い若侍・川原一馬を助けたことから、一馬にその「豪放磊落・天衣無縫」な性格を慕われ「殿」と呼ばれ
勝手に仕えられるハメになる。袴をいじられたり着物のゴミをはたかれたり、いい加減面倒になっている大吉にも気づかず、「殿、今日はいい天気
でございますね。こんな日はゴキゲンも一段とおすぐれでしょう」「このバカタレが、何がゴキゲンも一段とすぐれるだ。俺はな、ゴキゲンが逆立ちして
火を噴いてる状態なんだぞ。これ以上くっついてきて殿とぬかしたら、もう命の保証はせんぞ!」と大吉が脅しても、一向に意に介せない様子で
しつこくついてくる。弱っている大吉に、街道をやってくる半次が目に入り、「おーい、焼津の、いいところへ来てくれたな」と、「地獄で仏にあった」
ように半次を見て喜ぶ大吉に、「ハー読めたぞ。この茶店でおからたらふく食って、万歳しやがったな」と半次、とたんに、一馬から「殿に対して
なんたる雑言!」と言われ、何が何だかわけがわからない。事情が分かって、大笑いして喜ぶ。しかし、大吉が「まるで女にもてんおまえ
には分かるめえがな、あの若者は押しかけ女房のきらいがあってな」と半次の機嫌を損ねたものだから、半次は追っ払い方を引き受けてくれない。
「イヤだというなら止むをえんが、ちょっと後ろを見ろ」そこにはクモがいて、しかも大吉は半次の体を掴んで離さない。「どうだ、苦手とご対面の
感想は」「早くどけねえかって、あれを!」「どけてやらんこともねえが、俺の頼みの方はどうしてくれるんだよ」
無理矢理追っ払い方を引き受けさせられた半次は、くもにまこうとしたり、自慢の足で逃げ切ろうとしたりするが、一馬はしつこく付いてくる。
とうとう、先に発った大吉と落ち合う場所の次の宿場の居酒屋まで、付いてきてしまった。大吉それを見てシャックリ。「おめえんとこの殿は、
ビックリこくとシャックリこきだす殿様なんだよ」
しかし、居酒屋のおみっちゃんが遠いのでいやと、買いに行くのを拒否したおからを「殿の好物を臣下たるもの買いに行くのは当然です」「すぐに
行って参りますが、殿、またお戯れに身を隠されても、一馬、必ずお探し申しますぞ」との申し出に、大吉は態度一変、「いやあおからを食うのに俺は
断じて身を隠したりせんよ。安心して行って来なさい」「旦那、どうするつもりなんだよ」「そう固いことを言うな。そんなことはおからを食ってから
のことだよ。人はな、おからを食ってれば何でもすべて解決するんだ」と迷言を吐く。
ところが、一馬はおからを買いに行く途中で、町のわる浪人たちが集まる高桑道場の連中とすれ違う。そのうちの横堀とはどうやら顔見知りの模様で
悪い予感のしたおみつは、居酒屋に引き返し、大吉の助けを求める。「おからはどうしたんだよ」「おい旦那、はやいとこ御輿をあげなって」「全く
しょうがない奴だな、花山家の家臣は。騒ぎを起こすのは、おからを買ってきてからにせんといかんよ、おからを」
大吉・半次がその現場に着くと、一馬は高桑道場の連中に用水桶を頭からかぶせられて斬られる寸前だった。連中は、これは返り討ちなんだ
といいながら、間に入った大吉にかかってこようとするが、大吉は、一馬に訳を聞きたいと、一時、連中を引き取らせる。
江戸で2500石取りの旗本に仕える小姓だった一馬は、2年前、隠居の身だった父を肩が触れたと横堀に言いがかりをつけられ滅多斬りにされた。
その仇を討つために江戸の殿様と許嫁に送り出されたのだが、何せ自分の腕では、横堀は倒せない、しかし、このままかえるわけにも行かない、で、
やけになって大吉を殿様に祭り上げたのだった。「男は一生に何度かは体を張って勝負しなければならん時が必ずあるんだ」「しかし、私は
死ぬのはイヤだ」「正直なだけでは世の中渡れんぞ」仇は討つべきと分かっていても決心のつかない一馬に「よし、分かった、俺に付いてこい」と
一馬を外に連れ、座らせる。大吉は「おまえのようなふぬけのくずは、生きてても世の中のためにならんから、俺が成敗してやる」と刀を抜く。
「助けて!」と逃げ出す一馬に「見苦しい、一馬。せめて死ぬときは潔く死ね」観念した一馬に大吉が勢いよく刀を振り下ろし、それは一馬の首の
直前でとまる。「一馬もういいぞ。おまえはもう死んだんだ。人間一度死んだらもう、何も怖いことはあるまいが」
そこへ、高桑道場の連中が戻ってくる。「一馬、名乗りを上げてやれ」・・・
「一馬さん、やったやった!」と半次が一馬に駆け寄るが、一馬は放心状態。「旦那、あれ一体どうなってるんだ」「俺の家臣はな、まだ無我夢中で
一時せんと正気に戻るまいよ」「旦那、さっきの首斬りのまじないな、あれ良く効いたな」「おお、効いたな。おまえのおっちょこちょいも治らんから
一つ、やってみるか」「いや、俺結構だよ、俺結構」
見どころ:大吉は、一馬があまりしつこく「ご芳名」を尋ねるものだから、つい、「焼津の・・」「焼津の?}「ああ、焼津の半吉というもんだ」と答える。
一馬はそれに、「いい名前でございますね」「そんなにいい名前かね」「実にすがすがしい名前でございます。」「ほほーそうかい。分かった、本人に
良く伝えとくよ」その後、半次と出会って偽名を語ったと知り「お恨みもうします」と嘆き泣く一馬に困って、「いや、すまんすまん、俺の名前は
花山大吉と言うんだよ。お花の山に吉がいっぱいの、あの花山大吉というんだよ」
コメント:最後のテーマ曲の時のバックのシーンは、前々回までのに戻っていた。





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