素浪人ばなし(月影の巻二)

見れぬなら、読んでみよう「素浪人シリーズ」のあらすじ。
月影の巻一・二・ / 花山の巻 / 天下の巻 / いただきの巻 
みなさまの記憶に頼るという、管理人お得意のパターンで行く予定です。
こんな話があった、このへんだけ覚えてる、ここ違うかも、何でも結構です、
多少の間違い、不安は物ともせず、掲示板に書き込んでくださいませ。
ちょっとだけご注意:引用文の場合は、著作権の関係から、全文書かないでね。部分引用はOK。
みなさまご自身の言葉で語る場合は、何でもOKです。
Merci beaucoup!
お名前の後の(NC)は、ノンクレジットで出演者として紹介されてない俳優さんです。
キャスト表・情報については、中村半次郎さま、つぐひろさま、長沢威さまのご協力をいただきました。

 各お話に出てきたが、タイトル横に貼り付けてあります。(相談屋さま、きざくら&ようめいしゅさまのご提案)


「みんなが待っていた」 (第二シリーズ 第1話)

縄張り争いに2人が巻き込まれる。

「月影」の「猫&クモ」初登場シーンはもちろん第2シリーズ第1話「みんなが待っていた」であります。それもラストシーンなんですよ。
宿場のヤクザ一家をコテンパンにやっつけ、事件を無事解決したた兵庫と半次。例によって日本晴れの街道をノンビリ行きますが、またしてもくだらぬことで口ゲンカ。おりしも道は右と左に分かれた二股道。「やい旦那!俺アもう旦那と一緒に行くのはまっぴらごめんだッ!」「おお、俺もなァ、おめえのようなおっちょこちょいと旅するのは願い下げだよう!」二人は右と左に別れてスタスタ歩き出します。ところが、しばらく行くと半次の目の前にクモがブラ〜ン。「ぎゃああ〜」あわててもと来た道を引き返します。続いて兵庫の行く手に、道端に荷物を置いてお百姓が野良仕事をしています。その荷物の上に可愛らしい子猫がなんと数匹!「あわわわわ・・・。」たちまち兵庫も血相を変えてUターン。結局今さっき別れたばかりのもとの二股道で二人はまたばったり出会います。「お、おい、俺はやっぱりこっちを行くよ、アハハ・・・。」「いや、じつは旦那、おいらもこっちを・・・。」
こうしてドタバタしているところでオシマイ。これが記念すべき「猫&クモ」初登場シーンであります。けれども、最初、このシーンを見たとき、「え?何?今の。兵庫ってネコきらいなの?」と呆気にとられました。今とちがって、前もって番組の情報の入手が困難だったのです。
(キンちゃんさま 2003年10月13日)
さらにキンちゃんさまより、衣装についてのおはなしが、34話「一発屋が待っていた」にあります。
第二シリーズは確かに番組開始から五、六本は、殺陣シーンや猫クモシーンや挿入歌シーン満載でした。ナンセンストリオや上方柳次といったお笑い芸人のゲスト出演も初期の特徴です。思うに、早い段階で視聴者を引き付けておくための方針だったのかも知れません。パチンコ屋が新しい台を設置したとき、客に早くその台の遊び方に慣れてもらうため、バリバリ玉を出してくれるのと同じように。
第二シリーズ第一話の「みんなが・・・」も、そんなサービスに徹した(?)エピソードでしたから。ちなみに、「みんなが」の開巻は、「いただき勘兵衛」の第一話の開巻と非常によく似ています。つまり、サブタイトルが出るやいきなり居酒屋の乱闘シーンから始まるわけで、兵庫が腰かけを大きく振り上げている静止画像から動き出すのです。それこそ首を長くして待っていた前シリーズからのファンにとっては、「おっ、ノってるな!」と思わずうれしくなる好調な滑り出しでした。あら筋は、ハメットの小説「血の収穫」でおなじみのネタで、対立する二組のやくざの、こっちの味方になったりあっちの用心棒になったりして結局両方の組を壊滅してしまうというものです。兵庫が売り込むために割り箸を真っ二つに切ったり、半次が吹き替えなしで障子を突き破りまくる格闘シーン(素手)を演じたり、とにかくサービス満点でした。猫クモの登場は、ラストシーンで、これがこの作品のオチになっています。
で、これはあくまでも私の卑見ですが、このサービス満点状態から転換したのは「何かが狂っていた」というエピソードです。このおどろどろしい作品を境に、殺陣シーンをセーブした地味な作品がしばらく続き、「親なし狐が・・・」で、再び「剣と笑いと」路線へ修正されていきます。(キンちゃんさま 2010年8月11日)


「心に虹がかかっていた」 (第二シリーズ 第2話)

腕こそ立つが根性の腐りきった一族相手に大立ち回り。

ある宿場町にやってきた月影兵庫は、相棒焼津の半次との待ち合わせの居酒屋へ来たが、あいにく半次は不在。しかたなく居酒屋の娘おみつ(土田早苗)を相手に酒を飲んでいると、江戸の杉町道場で兵庫の後輩に当たる来島又十郎が現れた。彼は今はこの町の役人であるが、きくと、この街は娘を領主の側妻に差し出した風張一族の横暴な振る舞いに牛耳られ、また又十郎自身も出世に失敗、大いにくさっているという。
兵庫は早々にこの町を立ち去ろうとするが、その翌朝とんでもない事件が持ち上がった。半次の先輩である居酒屋の主人が、張一族の弥一郎に斬り殺され、娘のおみつまでさらわれたのだ。又十郎も駆けつけるが、風張一族の威光に刃向かい難く、無礼討ちということで弥一郎を咎めようともしないのに兵庫の怒りが爆発した・・・。(京さま 2016年3月13日)


「白刃が待っていた」 (第二シリーズ 第3話) 

<キャスト> 島田順司=清吉 御影京子=おしの 北城弓子(クラウン・レコード)=お弓 柳川清 雲井三郎=浪人・松崎先生 関根永二郎 矢奈木邦二郎 遠山金二郎 Wけんじ(東けんじ・宮城けんじ)=東町と宮城町  
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=結束信二 監督=佐々木康 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 挿入歌=クラウン・レコード 「居酒屋小唄」 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 唄・品川隆二 北城弓子 「一本どっこ」 作詞・結束信二 作曲・阿部好哉 唄・品川隆二 撮影=羽田辰治 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=奈宮聖二 編集=岩本光司 記録=桧垣久恵 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=河野節子 装飾=菅田浩 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・高田正雄

<大筋>
大工修行中のはずがヤクザに身を持ち崩した清吉は、妹・お弓の手紙で父親が病気と知り、恋人おしのとともに故郷に戻ろうとするが、おしのに言い寄った若親分を謝って刺し、ヤクザと目明かしの両方から追われる羽目になった。
この身はどうなっても、ひと目父親に会いたい、恋人のおしのだけは逃してやりたいと願う清吉とおしののため、兵庫と半次が一肌脱ぐと言うお話。
<あらすじ>
半次は茶店で、いつもように傾いたのぼりを真っ直ぐにしていて、これから宿場に働きに出かけるお弓にくすっと笑われる。照れる半次。
そのお弓と入れ替わりに茶店に入ってきたのが、数人のヤクザ、茶店の主人に三本杉の新田の茂作の家を尋ねている。
宿場についた半次は、お弓のはたらく居酒屋でいい気分で一杯飲んで宿を取るが、相部屋になった旅人・清吉は、どことなく落ち着かない。おまけにその旅人が出ていったあと、ご用あらために入ってきた2人の目明かしのすっとぼけた調べにすっかり気分を害したので、改めてお弓の店に飲み直しに出かける。
一方兵庫は、その旅人・清吉と恋人が追われてきたヤクザに囲まれているところを助けて、ネコのいる居酒屋を避けながら、半次のいるお弓の店にたどり着く。
その頃、昼間半次と茶店で会ったヤクザらは、清吉の父親・茂作の家に上がり込んでいたが、清吉の妹・お弓が宿場で働いていることを知り、宿場へ向かう。
両親や妹にまで迷惑が及びそうだとしり、覚悟を決めてヤクザの親分の元へ行こうとする清吉の代わりに、兵庫は「酔い覚ましだ、俺が行ってやるよ」と店を出る。
兵庫が店を出たのを見はからって、清吉を捕まえようと店に入ってきた浪人らは、半次の活躍で追い払われ、兵庫も、三本杉からやってきたヤクザらを斬り、ヤクザの一群はこれで片が付いた。
そして今度は目明かし。両親に謝り、潔く、目明かしの前に、若親分を殺しましたと自首する清吉。
しかし、目明かしの二人が清吉を探していたのは、若親分の行方を捜すためだった。若親分は、清吉に刺されて死んだのではなく、それどころか、その後、堅気を5人殺して追われる身となっていたのだ。
晴れて夫婦となった清吉とおしの。「もう行ってしまわれただろうな。とうとうお名前も聞かなかった。」「でもまた、いつか、お会いできるかもしれない」
兵庫と半次も旅立つ・・いや、半次はなんとなく後ろ髪を引かれている。「え?忘れ物?」「別にたいしたことじゃねえんだ」
半次の忘れ物がお弓だと気づいた兵庫は「おまえ、駆け落ちだけはやめた方がいいぞ」「冗談じゃねえ」「第一、おまえはヤクザだ。嫌われるぞ」「旦那、俺はやくざじゃねえぞ」「じゃあなんだ」「つまりその・・旅ガラスてんだ」といいながら自分で笑ってしまう半次と、兵庫。
<見どころ>
清吉とおしのを囲むヤクザと浪人を懲らしめる兵庫。いきなり襲ってきた浪人(雲井三郎さん)にすかさず刀を抜き、相手の腕を傷つけての言葉。刀を見ながら、「どうもいかんな、ちょっと調子がおかしいな。手首の返しが早すぎるのかな。う〜ん。少し勘が狂っているのかもしれんな。」そして相手に向かって、「2〜3人一片にかかってきてくれんか、うん?」そこで勢いよく刀を一振りして相手をおどかす。
Wけんじさん扮する目明かしのやりとりは、もう漫才そのもの。二人に「どこから来た?」と聞かれた兵庫、「ああ、あっちからだ」「うん。あっちならいいんだよな」と確認し合う二人。「おーっ!」と手を挙げて(当時はやったギャグ)出ていく二人に、お酒を持て来た姉さんが「このお酒どうしましょ」と困っていると、兵庫も「おーっ!と手を挙げて「こっちへ回してくれ」
居酒屋を襲ってきたヤクザや浪人相手に、半次兄さんは八艘飛びよろしく居酒屋のテーブルからテーブルへ跳びながら応戦。品川さんって、ほんとに運動神経抜群〜!
冒頭、話とは関係ない(と思われる)喧嘩のシーンあり。
草の生い茂る河原で、兵庫が大勢のヤクザや浪人相手に喧嘩の最中。「おい、半次!半の字、どこにいるんだ。喧嘩おめえ始めたんだぞ!出てこい」と半次を呼ぶ。
「分かってるよお!」出ていきてえけど、ちょっと都合が悪いんだ、都合が!」実は、半次は、クモに遮られて困っている。
そうこうするうち、浪人らは半次の所にもやってきて、半次が危ない目に。「旦那あ、助けてくれよお!」「旦那あ、こいつら旦那ねらってきてんだぞ」
しかし、兵庫が助けに行こうとする道を遮るように子猫がいる。「分かってるよ!行きてえんだが、ちと都合が悪いんだ」「何いってんだ!」別の道から行こうとするとそこにもネコ。「やんなっちゃうな、もう」と困り切る兵庫。(以上 じゅうよっつ)
北条弓子さんと歌う「居酒屋小唄」やっぱりよかったです!何回見ても半ちゃんかっこいい!!歌ってるあの顔がとても2枚目で惚れました・・・^^ ぜったい花山シリーズでの半次とは別人ですと信じて疑わない私です・・・さてお相手の北条さん、当時は新人歌手で期待されていたんでしょうね・・番組で当時の売れっ子の品川さんとデビュー曲をいっしょに劇中で歌うなんて、たぶんキングレコード所属でしょうが、よほど力を入れていたんでしょぷね!その後も数回半ちゃんが番組の中でも鼻歌で歌ってましたね!私もこの歌当時はまったく知らなかったんですが、再放映ですっかり覚えて時々半ちゃんと同じく鼻歌を歌っていますよ!こんないい歌なのになぜ売れなかったんでしょうか・・残念です・・(きざくら&ようめいしゅさま 2009年3月30日)

わたしも先日の兵庫「白刀の刀が待っていた」と「女の影が揺れていた」とても印象に残りました・・・白刀では品川さんが歌手の北条さんとディエットしている場面がかっこよかったですね!あの居酒屋小唄レコードでも品川さんと共演されていたんですね!でも本編ではやはり本職ではないのでせりふが棒読みというか、ぎこちなかったです・・(ごめんなさい 北条さん・・)続く「女の影・・・」でも品川さん鼻歌で歌ってられました! いい歌ですね!(焼津のだんなさま 2009年4月2日)


「夢に子供が歌っていた」 (第二シリーズ 第4話)

浪人の妻の蒸発事件の裏に潜む海賊騒動。そのまっただ中に兵庫は踏み込む。

病気の子供に飲ませるための朝鮮人参を求め、兵庫は薬種問屋を訪ねますが、ここの主人が天津敏。二人は向き合って談笑しながら互いのハラを探りあいます。その部屋が豪商の部屋らしく洋間で、テーブルを挟んでイスに腰掛けながら向かい合っていたのを覚えています。
朝鮮人参は高価なので兵庫には手が出ません。そこで天津は「その刀はどうでございますか」と言って兵庫の例の日本一長い刀にチラと眼をやります。すると兵庫は「ふっふっふっふっこの○○○○○かね。」と言って刀を片手でかざしますが、確かにそのとき、刀の名前を言ったのです。
そうです。あの日本一の長刀には名称があったのです。おそらくこのエピソードだけでしょう。なんという名前か、一度聞いただけでは覚えられない長い名でした。もう一度見たいですね。(キンちゃんさま 2003年9月13日)


「一両だけが知っていた」 (第二シリーズ 第5話)

<キャスト> 坂口祐三郎 園千雅子 神田隆 島田秀雄 小田真士 宮城幸生 大邦一公 坂東京三郎 高並功 畑中伶一 藤川弘 大坂志郎

<スタッフ> 企画=上月信二・高田正雄 脚本=結束信二 撮影=羽田辰治 照明=松井薫 録音=三船良男 音楽=阿部皓哉 美術奈宮聖二 編集=岩本光司 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=河野節子 装飾=菅田浩 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 記録=桧垣久恵 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都撮影所 ナレーター=牟田悌三 監督=佐々木康

相変わらず、曲がったものをまっすぐにしながら道中を行く半次(劇中歌「一本どっこの唄」うまれたと〜きから、い〜ぽんど〜おおっこぉ〜)、
ある宿場で久々に兵庫に会う。二人して居酒屋に入り、「つきすぎて困ったよ」と半次が近況を話すと、「もててもてて困ったよ」と兵庫。
兵庫はじつは、16年前江戸で貸した一両を返してもらいに、この宿場で寺子屋を開いているという昔の友人・浦辺を訪ねてきていた。
「侍の約束なんて言うのは堅いもんなんだぞ」「そりゃそうだろうな」
二人は夜、旅籠で落ち合う約束をして、半次は賭場へ、兵庫は借金とりに出かけようとして唐松屋のおかみから声をかけられる。「だろう?もててもてて困るんだ」と手を振り、首をかしげる半次と別れた兵庫、唐松屋の主人に一両で、若侍を痛めつけてくれと頼まれる。
「弱い者の相手は嫌だな」と断って出ていく。
浦辺のことを、同じく寺子屋をやっている浪人・山川に尋ねるが、見当がつかない。
だが、この山川が、もと江戸住まいで、兵庫の通っていた居酒屋の常連だったことから、話が弾む。山川は、江戸を出る際に、その居酒屋に一両借金があった、だが、必ず返すと主人に伝えてくれ、と兵庫に託す。山川の息子・進介は、難関を突破し、明日の剣術の試合に勝てば、晴れて仕官できるので、返済の当てができたのだ。
一方半次、賭場で着物まですって出てきた所で、浪人に声をかけられる。着物を取り返してやるという。だがこれもまた、一両で明朝までに若侍を痛めつけて欲しいという話だった。
夜、兵庫は半次が一両で闇討ちを頼まれた話を聞き、不審に思う。どうも、兵庫が頼まれたのと同じようだ。
昼間会った、山川進介の明朝の試合のことを思い出し、急ぎ、山川のうちへ向かうと、途中で、怪しい男達が逃げていくのを見かける。
危惧したとおり、進介が男達に左腕を斬られていた。
逃げていく男達を追った半次は、彼らが唐松屋に入ったことを突き止めた。進介の話では、明日の試合はこの唐松屋の息子が相手だ。
御用商人の唐松屋は、息子を侍にしたくて裏から手を回しているらしいが、試合だけはどうしようもないために、進介を痛めつける策をとったのだろう。
うなだれる進介に、「まだ試合に負けたわけじゃないだろ、意気地なし。腕の一本くらいなんだ!・・おれが片手上段霞斬りというのを見せてやる。刀は一本だぞ、腕も一本あれば充分だ」と、進介を連れて唐松屋に乗り込む。
唐松屋では、世話になった侍達がもてなされていた。そこに乗り込み、左手を懐に入れたまま、兵庫は侍達を次々峰打ちにする。
「兵庫」の声に振り向くと、そこに昔の友人・浦辺がいた。唐松屋の用心棒だったのだ。「16年前の一両を肴に酒を酌み交わそうと来たんだ」
「あのときのお前はいい奴だった。だからなけなしの一両貸したんだ」
兵庫の片手上段霞斬りに勇気づけられ、進介は、明日の試合を力一杯戦うことを兵庫に誓う。
半次が、自分の着物を取りに行くと、そこにはクモが。「ク、クモ、クモ、クモ」と出てくる半次に兵庫が笑って「しょうがねぇやつだ俺がとってきてやるよ」今度は、猫がいる。「※%☆」とへっぴり腰で慌てて出ていく兵庫。「やめた自分で行って来い」
翌朝、進介のために兵庫は神社で柏手を打つ。半次が走って追いかけてくる。二人旅立つ。(じゅうよっつ)
「意気地なし、侍なんてのは根性だっ」とカツを入れるシーンがグッときます。まさに日本男児って感じでした。(岡野さま 2002年5月30日)


「小判に尻尾が生えていた」 (第二シリーズ 第6話)

百両という大金を拾って大慌ての二人。だが、それは偽金だった。

このお話は、比較的始めの頃に撮影されたらしい。(参照)


「何かが狂っていた」 (第二シリーズ 第7話)

飛ぶ鳥をひと太刀で落とし兵庫にも舌を巻かせた男も、恋の未練は切れなかった。

このときの小松方正さんの不気味なこと。剣の腕は立つが気がふれているという役どころなので「飛ばない前から落ちていた」(第二シリーズ第70話)のときみたいなユーモラスな演技と百八十度違います。(2003年2月24日 キンちゃんさま)
素浪人シリーズは、その内容から、剣戟編、人情編、推理編、抱腹絶倒編、などに分類できますが(私が勝手に分類してるだけですが)」、さしずめ、この「何かが狂っていた」はミステリー編、いや、スリラー編と呼んでいいものと思います。この作品ほど不気味さと異様なムードの漂うエピソードは、シリーズの中でも他にないでしょう。ゲストの小松方正さんの熱演に圧倒されます。
例によって素寒貧の兵庫と半次、大道芸の真似事で酒代を稼ぐことにしました。このあたり、「タカがトンビを生んでいた」と似ていますね。
往来に兵庫が正座する。半次は通行中の人々に呼びかけます。一回十文で、座っている兵庫めがけて遠慮なく木刀で打ち込めというのです。
早速物好きな通行人が次々と十文払って挑みます。ヤーッと打ち込んでも、そこは兵庫です。ヒョイとかわしたり、反対に相手を指一本でチョイと突いたり、グッと睨んだだけで相手を金縛りにしたり・・・
誰も兵庫を打つことができません。半次の三度笠にはたちまち十文銭が貯まっていきます。そのとき、「わしにもやらせてもらおう」と、一人の武士、小松方正が兵庫の前に立ちました。十文を払って木刀を構える武士。ただならぬ空気が漂い始めました。三白眼で兵庫との間合いをはかる武士を見て、この男の腕が尋常ではないことを見抜いた兵庫の顔に緊張が走ります。次の瞬間、ものすごいスピードで打ち込む武士。
兵庫はからくもこれをかわし、右手一本で男の木刀を持った腕をグッと押さえます。力を緩めた方が負けです。互いに歯をくいしばって耐えるその表情がスゴイ。やがて武士は「拙者の負けだ」と言い、スタスタと帰っていきます。兵庫はため息をついて半次に言います。「十両にしとけばよかったな」
その武士、小松方正は、仕官がかない、前途有望な人生を歩むエリートでした。ところが、ある武家の娘に横恋慕したことから、転落の道を歩むことになったのです。小松は次第に病的になっていき、ストーカーとなります。ついに、その娘の許婚者を斬り、娘を強奪し、出奔してしまいます。許婚者の周辺は直ちに追跡隊を結成し、兵庫も請われてそれに加わります。小松は嫌がる娘を連れまわし、ついに山奥に逃げ込みます。そして神社を発見するや宮司を脅し、娘との祝言を挙げようとします。宮司が震えながら祝詞をあげようとしたとき、兵庫らが追いつきました。小松を倒せるのは兵庫しかいません。兵庫はそれでも彼を説得し、お縄を受けるように勧めますが、もはや理性を失っている小松には通用しません。一対一の勝負は一瞬のうちに決まりました。恋愛のために道を踏み外し転落していった男の死に顔を見て複雑な表情の兵庫・・・。
小松方正さんというと、「ゲバゲバ90分」などの怪しくコミカルな演技や、容貌魁偉という面をすぐに思い浮かべますが、よく見ると、端正な顔立ちでとても知的です。このエピソードでは、終始抑制のきいた演技で、それがまた実に不気味なのです。許婚者を斬る場面で、斬った後、死体をしばらく見つめ、唇をニッと歪めながら「死んだ」と一言つぶやくところなど、背筋がつめたくなるほどです。浪人ではなくちゃんとした武士なので、月代も剃ってるし、服装も羽織袴に白足袋というきちんとしたものです。まともな外見の人物が、まともでない行為をする。
これほど怖いことはありませんね。(2003年4月10日 キンちゃんさま)
兵庫と半次がスカンピンだったと思います。大道芸をやらかす。兵庫はあぐらにくんで座ってる。半次が短い木刀を持って、囃し立てます。「さあ、さあ、この木刀で・・・・台詞わすれ旦那に見事当てたら・・・・・覚えていない。何人かが挑戦したが当たらない。そこで月代頭の小松方正が登場、兵庫の顔が一瞬緊張します。このシーンは覚えてる。そして小松が木刀を持って一振りするが間一髪兵庫がかわす。小松が「十剣無刀流とみた」と言います。兵庫も「示現流」とみたと言います。拙者の負けだといい何文かお金を投げて去っていきます。(yukimente2000さま 2013年6月7日) 


「女の影がゆれていた」 (第二シリーズ 第8話) 

<キャスト> 八代真矢子 佐藤和男 高田次郎 小谷悦子 国一太郎=寅八 多田久子 島田秀雄 小田真士 佐藤祐爾 名護屋一 藤本秀夫 鷹司譲紀 小山田良樹
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 挿入歌=クラウン・レコード 「居酒屋小唄」 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 唄・品川隆二 北城弓子 撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=奈宮聖二 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=藤井達也 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=秋田実 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
兵庫は子供を助けた腕に惚れられ、お多恵という上品な美女に厚くもてなされ、半次も、居酒屋で喧嘩に強いところを、おきみというべっぴんに惚れられる。しかし、その二人が惚れられたのは、実は同一人物だった。本当は、江戸で悪事の一端をになわされそうになって逃げてきた多恵の弟・新左をかくまいたいがために、腕っ節の強い二人が目をつけられただけのことだったのだ。しかも、江戸から追ってきた悪者一味を片付けた二人は、新左が実は多恵の年下の恋人だったという事実を知るというとんだ結末つき。
<あらすじ>
兵庫は、人質になった子供を助けた縁で、物腰の上品な美人の女主人の家に呼ばれた。多恵というその女は、兵庫に酒を振る舞い、すっかり兵庫が気に入った様子。毎日でも会いたいといわれる。
一方半次は、「いい女だあ」と、居酒屋・藤一のおきみを見ている。そのことをからかわれた半次は、2〜3人を簡単にかたづけて、おきみに腕っ節を惚れられる。江戸で所帯をもとうと誘う半次は、「急にいわれても・・」といわれ、「じゃあ毎晩来るよ」と約束する。
翌日も、お多恵は兵庫に、ずっとここにいてくれ、せめて一月でも、好きにしてくれていい、小遣いも10両くれると頼む。
しかし、同じ晩半次は、頑として送っていくのを断るおきみをつけていき、おきみを見失った行き止まりで、お多恵のうちで酒を飲んでいる兵庫を発見、そこに現れたお多恵にびっくりする。それもそのはず、お多恵はおきみとうり二つだった。しかし、多恵は、おきみなど知らないという。
その翌日、半次は、おきみにも聞いてみるが、やはりお多恵など知らないという。半次は、徳利2つを並べて兵庫に説明しようとする。「これがダンナに惚れてるお多恵、これが俺に惚れてるおきみ、だとするとだ、そっくりなヤツが2本あるだろが」「あああるよ」「ここにお多恵がいるだろ?で、こっちがおきみじゃねえか。でこっちをこうするわけだ(徳利を入れ替える)、そしたら同じようなやつが2本あらあな?このお多恵、いや、こっちはおきみだから・・あー分からねえ、ちきしょう!」と悩む。「半の字、こうすりゃ分かるだろ」と兵庫が徳利を1本、脇によける。「二本並べるからややこしいんだよ。1本にすれば簡単じゃねえか」
兵庫のいったとおり、おきみとお多恵は同一人物だった。お多恵には新左という御金蔵やぶりの寅八一味に荷担させられそうになって逃げてきた弟がおり、飲み屋はその一味が来るのを見張るためのものだった。話を聞いた二人は、不本意ながらも新左を守ることにするが、兵庫とお多恵の仲を焼いて飲みに行った居酒屋で、半次がそのことを漏らしたことから、悪党一味にお多恵の家がばれてしまう。その夜の襲撃はかわしたものの、翌日、兵庫の苦手なネコを追い払いに外に出たお多恵が一味にさらわれ、新左に城下はずれの地蔵杉に呼び出しがかかる。兵庫と半次がとめるのも聞かずに走っていく新左。
無事に悪党一味を退治した二人に、お多恵は礼もそこそこにケガをした新左の元へ駆け寄る。お多恵の方へ行こうとする半次を兵庫が引き留める。
「おめえは底抜けのバカだな。」「なんでバカだ」「あの二人は姉弟じゃねえよ」「え?じゃ・・」お多恵がさらわれた時の新左の目は恋をしている目だった。「さ、邪魔者はとっとと消えようぜ」なお呆然として二人を見ている半次の首根っこを捕まえて、「な、何をしてるんだ」とさっさと連れて行く兵庫。
「ちきしょう、どこまでなぶりやがんだ。」「まあそう怒るな、そう野暮を言うな」「そうすると、俺も旦那も鼻の下がなげえってことだな」「そうだよ、大体ガラにもなく俺たちが女に持てようとしたことが間違いの元だ」顔を見合わせ笑う二人。
<見どころ>
美女に惚れられたいい気分の兵庫と半次は、互いが出会った美人の話で鼻の下を伸ばしている。そして、相手の話にはうますぎるのではと冷静に対処できるのに、自分のこととなるとすっかりうぬぼれている二人が面白い。きっと大吉や他の旦那だったら、ここは半次だけが惚れ、旦那は冷静に笑っているだけとなるのだろうが、兵庫は半次と同じ土俵にいるのがいい。
新左と半次の会話。「姉さん俺のこと何か言ってなかったか?たとえばよ、俺がいい男だってことをよ」「ええ言ってました」「どんな風にいいって言ってた」「あの、人がいいって・・」「人がいい、そうかえへへへ・・・(ふと気づく)何?そいじゃ俺がバカだってことじゃねえか」「そんな風には言ってなかったと思います」
夜中の寅八一味の襲撃のあとの兵庫と半次の会話。「おいダンナ、これは寅八一味の仕業だ」「そんなこと言われなくても分かってら」「どうしてここをかぎつけやがったのかな」」「バカやろ、おめえがおびきだしたんだよ」居酒屋で寅八一味と間違えてくってかかった旅役者とのやりとりを、本物の寅八の仲間が聞いていたのだ。「だからおめえはとぼけた野郎だって言われるんだよ」「分かったよ、何でえ、がんがん言わなくったっていじゃないかよ、俺は悪かったなとおもってんのに、そんなにぼんぼん言われたら謝るに謝れねえじゃねえか」と、布団に入り込む半次。兵庫は笑っている。
最後の悪党退治では、兵庫は矢を飛ばす。このちゃんの矢は珍しい。もしかして大都映画「柘榴一角」以来か?
(以上 じゅうよっつ)
流石の兵庫も、超べっぴんの姉ちゃんには鼻の下が伸びちゃうんですね(笑)こちらの素浪人ばなし(↑)にも書かれているように、兵庫が半次と同じ土俵上にいるっていうのがいいです。けれどあのお多恵さん、ものすごい殺し文句を言ってましたよね(笑)新左を守ってくれるなら、自分をどうしてくれてもいい・・みたいな。その捨て身の必死さが恋する女なんだなぁ・・と思いましたが、肝心の新左より、どう見ても兵庫や半次の方が格好いいもんで(←失礼(^_^;)、まさに蓼食う虫も好き好きやなぁ・・って感じでした。あと、兵庫が弓を使うのがめちゃくちゃ格好良かったです!!特に、背中に矢を背負ったまま斬り込んでいく、その後ろ姿に見とれちゃいました。(南まさとさま 2009年3月30日)
「女の影が揺れていた」でのラスト、兵庫が背中に矢を背負って弓を射る場面が大好きです!以前にもこのことを触れましたが・・・月影、花山以後の天下太平、勘兵衛と続く中で唯一だんなが弓を使用しているシーンだからなおさら貴重ですね!でもこの回あの場面だけ何でだんなは弓を持っていたんでしょうね!いつもなら小柄と刀なのにね・・^^でもめったにないからよけいかっこよかったです!(きざくら&ようめいしゅさま 2009年3月30日)


「親なし狐が鳴いていた」 (第二シリーズ 第9話) 

<キャスト> 高宮克己 柴田美保子 坂東春之助 滝恵一 梶川武利 乃木年雄 津島道子 
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
偽のキツネ火で町民をたぶらかし、そのすきに強盗を働くという一味を相手にする。
<あらすじ>
半次が、ある宿場にたどり着くと、そこは、「中村雪之丞一座」の前触れが響くだけでひっそりとしている。それもそのはず、やがて来るという”狐の嫁入り”を見学するために宿場中がこぞって見物に出かけていたのだ。半次もこの機会を逃すまいと早速出かけるが、宿場中が狐の嫁入りの提灯行列を見ているさなか、一番の金持ち・泉屋に押し込みが入る。
居酒屋で兵庫に夢中でその話をしていると、ふと気づくと半次の酒のつまみがない。てっきり旦那が?と怒るが、とったのは、机の下に隠れていた子供・音松だった。音松は、自分が大名の子供だとか、赤川宿の金持ちの孫だとか言って、半次を”おじさん”呼ばわりしながらすっかり振り回すが、居酒屋の娘が優しく問うても、半次が問いつめても、いっこうに自分がどこから来たのか口を割らない。が、そこへ、入ってきた男たちを見るやいなやおびえて隠れてしまう。男たちも音松を見知っているようで連れ戻そうとするが、兵庫と半次が追い払った。
どうやらあの男たちが何か悪事をしているところを音松は目撃したらしいが、しかしそれでも、音松は男たちの正体も、自分に何があったのかも語ろうとはしない。翌日、雪之丞一座の幟を見て逃げようとする音松に、一座と関係があると半次が探るが、一座にはそんな子供はいないと言われる。
その夜、また狐の嫁入りがあるというふれこみが来る。
兵庫は、狐の嫁入りと押し込みの関係を怪しみ、半次に狐の嫁入りの正体をあばかせ、自分は一番の金持ち、桝屋へ向かう。
案の定、狐の嫁入りも、その騒ぎに乗じて空になった宿場で押し込みを働いていたのも、雪之丞一座とその仲間だった。
音松は、一座で働いていて、狐の嫁入り行列をする一座を不思議に思ってつけていき、連中が押し込みを働いたのを見てしまったのだった。
そこへ、正体を暴かれた一座らが来る・・・。
音松は居酒屋の親子が引き取り、二人は旅立つ。「月影のおじさん、半次兄さん、さよなら」
やっと兄さんと呼ばれてうれしがる半次。
<見どころ>
振り回される半次と子供のかわす会話と、それを眺めて愉快にしている旦那の様子が面白い。
「うん?(半次のつまみがなくなって)」「おい旦那、なんてみっともないことするんだよ「バカ、俺じゃないよ、犯人は下だよ」
そこで音松を捕まえる。
「あの坊主、ただの盗人とは思えねえ品のいい面してやがるぜ」「かもしれんな」「な?」音松が「松千代じゃ。松尾備前の紙の一子松千代じゃ。”おめえ”とは無礼であろう」と言われ、「へえ、とんだご無礼いたしやして」と、とたんに丁寧になる。が、城に連れて行くと、二人して放り出される。「許しておくれよ、半次」「半次!?」「いやおじさん」「おじさんじゃねえ、兄さんだ!」今度は両親に死に別れて祖母に引き取られておおきな薬問屋で育てられたと言い始める。(その様子を愉快そうに笑っている兵庫の前にネコが出て、半次も喜ぶ)もう音松を信じないと言いながら、放っておけない半次が、その場所に連れて行くと薬問屋はなく、「風で飛んじまったのかな」と涼しい顔。
ふてくされて赤川の宿場で居酒屋にはいると、そこにはもうそろそろ子供にだまされて怒った半次が来るだろうと兵庫がいた。しかしまだ、音松は半次にまとわりつく。
元気な兵庫の殺陣のシーンもたくさん!兵庫は、子供から男たちを追い払うために、居酒屋の外へと男たちを誘う。
兵庫のあとから出ていく男が、居酒屋を出たばかりの兵庫を背後から斬りかかろうとするが横に避け、そのときに出した鞘のついたままの刀でかわし、さらに刀の先で、別の背後から襲う男を突く。次に正面から来る男は、両手で刀を持って真ん中で受ける・・とお見事〜!
音松が男たちに襲われそうになった晩、男たちが何やら”良くない”ことをして音松に見られたと言うところだろうと推測する兵庫に、「よくねえことってのは?」「よくねえことってのは、その・・つまりよくねえことだ」「うん、うん、そうかい・・・ふんじゃあ、何も分からねえじゃないかい!」「うん、分かるめえ?」とふつーにしている兵庫。「何を言ってんだい」全く語らない子供の様子に兵庫が「当今珍しい坊主だ。忍者にでも育てたら相当な大物になるぞ、半の字」と二人で笑う。(以上 じゅうよっつ)
(子役:高宮克己クン)居酒屋で、半次の酒の肴の油揚げをかすめとって床几の下で手づかみで食べるシーンが印象的でした。
(キンちゃんさま 2005年5月3日)


「空家に花が咲いていた」 (第二シリーズ 第10話) 

<キャスト> 高野通子=およう(thanksトプ・ガバチョさま) 上方柳太=一・九分けの地獄の辰(thanksトプ・ガバチョさま) 小柴幹治 河村満和 黒沢真一 大山良平 橋本明  
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影羽田辰治 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=角井博 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=藤井達也 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=秋田実 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=林伸憲

<大筋>
大きな門構えの家の庭には新しい土まんじゅう。兵庫と半次は、一人すむ怪しい美女を、財産をねらう男たちから救う。
ふとしたことから一人暮らしの女の世話をすることになった兵庫。雑巾がけから掃除にせんたくとコキ使われます。女は世間知らずのお高くとまったわがまま娘。昼食の時分になります。「食事は?」と尋ねる娘に兵庫は「ああ、そこに雑炊を作ってあるから食べなさい」と微笑しながら言います。
ところが娘は「こんなものが食べられますか!」と吐き捨てるように言うのです。それを聞くや兵庫は「なにっ!こんなもの!?」と娘を睨みます。
「おいっ!あんたにとっちゃあこんなものかもしれんがなあ、世の中、こんなものを食べたくても食べられない人たちが大勢いるんだぞっ!」と厳しく言い放つ兵庫。その迫力にタジタジとなる娘。もちろんこの娘は世間知らずなだけで悪人ではありませんから、兵庫の人間性に惹かれ、やがて改心します。(キンちゃんさま 2003年10月4日)
<あらすじ>
道で言いがかりをつけられた時の腕前を買われ、兵庫は、大きなお屋敷に一人住む気位の高い娘に10両で雇われ、ほとんど下男同様の扱いでこき使われる。「月影」と呼び捨てられ、娘を「おようさま」と呼ばせられ、風呂をたかされ(水をかけられ)、飯を作らされた晩、憂さ晴らしにやってきた居酒屋で、半次に出会う。半次には、惚れられた女に、丁寧に世話をやかれ(兵庫がやったことの逆)小遣いまでもらったとうそぶくが、翌日、門前を掃いているところを半次に見つかりばれてしまう。始めは愉快に思った半次だが、兵庫を呼び捨てし居丈高に命令する娘にあきれかえり、城下に戻ってそのいきさつを調べてくる。
この家は空き家で誰も住んでいないことを兵庫に知らせに来た半次は、庭に新しい土まんじゅうがいくつもあるのを発見、兵庫も庭石に血が付いているのに気づいた。しかし、兵庫は、何かにおびえている娘の力になろうと、娘の高慢ちきな扱いにもかかわらず、ここにとどまっていた。二人の話を陰で聞いていた娘は、兵庫の暖かさに目が覚める。
そこへ、倉吉という男がおようの元へ戻ってきた。
おようは、最近主人が亡くなった大店・鳴海屋の跡取り娘だった。父親が全財産を娘に譲ると書いた遺言状と財産の隠し場所をおように言い残して亡くなったため、腹違いの兄弟・清助やグルの役人に遺言状を盗まれ、財産のありかを知るべくねらわれ、味方数人とこの空き家に身を隠したのだった。しかし、跡をつけてきた清助の手下に倉吉とおようを残し全員が殺され、そしてまもなく、また、おようを捕まえにやってくると言うのだ。
やってきた手下どもを片づけた二人は、もはや隠れずに店に戻り清助に立ち向かうと決心したおようのために、一芝居うつ。
兵庫と半次は、棺桶を担ぎ、鳴海屋にいる清助や役人のもとに乗り込む。二人は、争いで死んだおようから、死ぬ前に遺言状の文字を組み合わせると財産の隠し場所が分かると聞いたと告げる。と、清助があわてて、遺言状を破った役人を責め始める。「ははは、そう嘆くな。清助、なかなか念の入った泥の吐き方をしてくれたな」これで清助が遺言状を盗んだことがはっきりした。「あの世に行く前に、一言挨拶を聞かせてやる。、仏の挨拶をな」「耳の穴をかっぽじいてよくききやがれ!」棺桶から死んだはずのおようが出てくる・・・。
今までとはうってかわって丁寧に二人に礼を言うおよう。遺産は世話になった農家に寄付し、これからはこじんまりと店をやっていくと言う。
「えれえ!俺は見直したな」「俺も見直したよ、じゃ、達者でがんばるんだぞ」
<見どころ>
この回の見所はなんてったって、日頃にない兵庫の困った様子だ。
お嬢様育ちのおようと兵庫の会話と兵庫の表情。
「(兵庫が”おまえ”とおようを呼ぶことについて)おまえに一言注意しときます。私の名はおよう。おようさまとお呼びなさい」「およう・さま、ね・・」「雇い主に対して”あんた”よばわりは失礼かもしれんが、あんたのおまえよばわりも失礼かもしれんな。」「では名前をいいなさい」「月影兵庫、お月さまの月だ。」「では月影」「え?月影?」「ではお風呂をたきなさい「」「え?風呂?わしが風呂をたくのか?」「そうです」ふーふーと風呂をたく兵庫は、「ぬるい」と言われ立ち上がって、湯をかけられる。「月影、お風呂場をのぞくなんて最低ですよ」ため息をつく兵庫。「いつまでそこにぐずぐずしているのです、早く食事の支度をするのです。「しょくじぃ?飯を炊くの?・・」と哀れな声でつぶやく兵庫。こき使われる兵庫の表情が可笑しくってたまらない。
さんざんこき使われた後、ストレス発散に入った居酒屋で半次との会話。おようと兵庫の風呂の会話をまるっきり逆にしてうそぶく。「『月影さま、早速お風呂をおたていたしますから旅のおアカをお流しくださいませ』とおようのヤツがよ、言葉遣いも優雅にな。「ぬるい」といったら敵は立ち上がった。そこでおれは湯をぶっかけてやったぞ」「なんてことすんだよ」「焚き口のところでたちあがれば丸見えだ、俺は裸だ。のぞきはいかんよ、のぞきは。たとえその気がなくってもだ、俺は最低だといってやったぞ」「はあ・・なんだかよくわかんねえな」素知らぬ顔の兵庫。「でもそのべっぴんが気の毒じゃねえか。」「なんでえあんなやつ」と思わず本音が。「こんちきしょうめ」と半次が肩を叩くと、着物はおように掛けられた湯で濡れている。「えらく着物が湿っぽいじゃねえか」「そりゃあ大もてに持てたんだよ、着物まですっぽり濡れるほどにな」すっかりあてられた半次兄さんが出ていくと、「バカ野郎め、おようさまか。俺も縁切りを願いたいよお」とつぶやく。(以上 じゅうよっつ)
普通にすごくおもしろかったです。お風呂を焚きつけてるシーンなんかほのぼのした感じだし 門前で半次と話をしながら足をカキカキしたりして、なんかいきなりコミカル路線まっしぐら みたいな。でもやっぱり立ち回りには胸がすく思いがして ほっとしたりして。
半次が背負っていた棺おけの縄を切った後 刀を鞘に納めるシーンですが 何度見てもフイルムの逆回しに思えるんだけどどうなんでしょう。あまりにもクルクルチンがすごい・・もし違っていたら半次さんごめんなさい!(のりりんさま 2007年6月15、20日)
Aパート最後の風呂炊きシーンはサイコーだね。特に、Aパート大ラスの「食事? 飯たくの……?」(この声もひっくり返ってて笑うけど)チャーンチャチャチャチャーチャチャー♪(いつもの音楽とはいえ重々しいのが却って笑える)に合わせて、カメラがすーーーーっと引いて、ぽつーんと座ってる兵庫。笑った笑った。
ホントにいきなり来ましたねえギャグ路線。いかす! ホント!(大地丙太郎監督 2007年6月16日)
こき使われて情けなさそうな表情の兵庫がめちゃ可愛いかったっす(^_^)風呂焚き&飯炊きシーンも可笑しかったですが、襷がけで袴の裾を絡げて門前を掃除していて半次に見つかり、こそこそ隠れるところも最高でした。
ところで、この時袴を絡げているので生足が見えるんですけど(笑)、どう見ても着物が膝のところで切れてるんですよね。以前素浪人ばなし「月影の巻」第26話のキンちゃんさまのコメントに同様のことが書いてあったので、ひょっとして動きやすいようにワンピース仕様にしてあるのかな?とか思ったのですが。それともやっぱり視聴者サービスに徹したユーモアなんでしょうか??真相が知りたいところです。
それにしても兵庫は優しいですね。あれだけ居丈高に命令されても、何かに怯えている娘のためにあえて屋敷内に留まっているとは・・これぞ大人の男!っていう気がします。あ〜・・ますます好きになりそうっす(笑)(南まさとさま 2009年4月5日)
上方柳太さん「空家に花が」での上方柳太のギャグ、お気づきになられましたか?関西以外の方はご存じないと思いますし、関西人でも知らない人が多いかもしれません。なにしろヒットしませんでしたから。兵庫につき飛ばされて、藁の束に倒れこんだとき「そんなことしなや、今さら」と(控えめに)言っています。これが上方柳太の唯一のギャグです。もともと上方柳次と組んだ漫才師です。柳次さんはとても端正な顔で渋い紳士でしたよ。(キンちゃんさま2010年8月18日)


「子亀のせなかに親がいた」 (第二シリーズ 第11話) 

<キャスト> ナンセンストリオ(岸野猛 江口明 前田隣)=太助、五作、元治(順不同) 千葉敏郎=蛭間一家の代貸し 高橋漣 宮城幸生 西田良=蛭間一家のごろつき 堀川亮 船越正雄 藤沢徹夫 藤尾純 阿部九州男=2足のわらじ、蛭間の傳蔵親分
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  挿入歌=クラウン・レコード 「居酒屋小唄」 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 唄・品川隆二 北城弓子 「一本どっこ」 作詞・結束信二 作曲・阿部好哉 唄・品川隆二 撮影羽田辰治 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=奈宮聖二 編集=岩本光司 記録=桧垣久恵 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=河野節子 装飾=管田浩 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・高田正雄 監督=佐々木康

<大筋>
悪党の家から証明を盗み出した3人組が兵庫のいる宿へ飛び込んだ。
<あらすじ>
(ナンセンス)トリオはお人好しのお百姓の役で、借金のかたに悪人に連れ去られた娘を取り返すべく立ち上がります。なんとか金を工面しなければとあれこれ思案しますが、どうにもできず、ついに追いはぎを決意します。田舎道で真昼間、クワやスキで武装(?)してカモが来るのを待ち伏せしますが、根は善人なのでガタガタふるえています。「お、おい、やっぱりやめようよ」「バカ!おみよちゃんのためだ」なかなか実行できません。「よ、よし、今度こそ・・・次にやって来た奴をやるだ」そうこうするうちに「あっ、来た」三人が向こうからやってくるカモを見ながら言います。「うわ〜強そうなヤツだや〜。ど、どうする?」
田舎道を足取り軽くやってきたのは我らが兵庫。バラード調にアレンジした「浪人独り旅」の楽曲をバックに胸を張ってまさに「浪人まかり通る」という感じです。主題歌が違いますが。三人はへっぴり腰で「や、やい、あ、有り金全部置いていけ」と兵庫に言いますが、たちまち兵庫は三人が悪人ではないことを見破り軽くあしらいます。「むっふっふ。俺だって、今夜は旅籠に泊まって寝酒の一杯えもやりたいからなあ」と言い、肩を上下に揺すって笑います。(私はこの場面で寝酒というものを知りました)この後は、もちろん兵庫と半次が三人のためにひと肌脱ぎます。
「月影」初期には、よくコメディアンがゲスト出演しました。「wけんじ」「上方柳次・柳太」など。しかし、いずれもストーリーに関係ない狂言回しです。
ところが、ナンセンストリオの場合はタイトルにもなるくらいで、筋の中心となる重要な役どころでありました。人気のあった証拠でしょうね。(キンちゃんさま 2004年4月9日)
<見どころ>
自分たちは追いはぎではない、その証拠にできるだけ強そうな男から5両を”もらおう”と、ナンセンストリオは落ち着くために”俺たちの歌”を歌う、「親亀の背中に子亀を乗せて・・・親亀こけたら、子亀孫亀・・・みなこけた」と当時のネタを披露。勢いつけて兵庫の前に飛び出ていったところにネコがいたため、ひとしきりネコ騒動になって調子を狂わせられる。やっとの事で兵庫に5両払えと言うが、兵庫の懐には1朱のみ。
兵庫の部屋に隠れていたナンセンストリオの3人がクモをつけて天井から現れたとき、半次が怖がるのをおもしろがってひとしきり笑ったあとの兵庫のセリフは、ちょっとずれずぎてるし、半次が蛭間一家が気に食わずに「明日は早立ちにするか」というセリフは、品川さんの口は動いていない。二つとも、アフレコの時にセリフの入れ替えや追加があったのだろうか?
第二シリーズエンディングの大笑いして指さしている兵庫の写真と半次兄さんの写真は、このクモ騒動のときのもののようだ。
最後に蛭間一家とたたくときのBGMは、「柳生武芸帳」のBGMか?
一家の用心棒を相手の殺陣は力がこもっている。時に劣勢を強いられるが、半次の投げた火鉢に気をとられた隙に斬る。(以上 じゅうよっつ)

「子亀...」の殺陣の時の音楽、「片目の忍者」の音楽と同じでしたね。第1シリーズ3話「白い雲が...」でも使われていたような。「火煙筒!....火煙筒はどうした!」の壮絶なシーンを思い出しちゃって、兵庫の殺陣に集中できなくて困りました(笑)。(meeさま 2007年6月23日)
ナンセンストリオ、単なるにぎやかし出演ではなく、ストーリーの中心になる重要な役どころでした。彼らの人気を物語っていますね。持ちネタの歌まで披露してくれましたが、ゲスト出演したお笑い芸人の皆さんは、Wけんじにしろ、上方柳太にしろ、しっかり自分たちのギャグというかネタをかましています。(キンちゃんさま2010年8月18日)


「御用の風が呼んでいた」 (第二シリーズ 第12話) 

<キャスト> 宮園純子=およし 佳島由季 永田光男 大木勝 河上一夫 有島淳平 藤山喜子 大城泰   
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=奈宮聖二 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=河野節子 装飾=藤井達也 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=秋田実 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 ナレーター=牟田悌三 監督=小野登

<大筋>
松平家の寄進した1万両が消えた。行方を捜す女親分を助け、兵庫と半次が盗人一味を追いつめ、捕り物の加勢をする。
<あらすじ>
半次は、昔世話になった間中の親分が治める城下町にやってきたが、町は早馬が走り、役人があわただしい。
それもそのはず、昨日、三峯山の大社に寄進するはずの松平の殿様の1万両が、街道を運ぶ途中で消息を絶ったのだ。
代が代わり細々と十手を預かる娘のおよしを助けるため、半次が、腕と知恵を借りようと旦那を探していると、昔キンチャク切りだったお縞が姿を現す。そして半次は酔った勢いで、今1万両の盗人の捕り物に関わっていて、「腕利きの浪人が3〜4人、やくざ崩れが2〜3人、頭目と見張り、しめて10人の仕業だ」「(一行は)お天道さまが頭のてっぺんに来かかった時分に街道の人目につかない場所に巧みに誘われて殺された」と、つい、口から出任せを気分良く話してしまう。
しかし、実は、お縞は盗人の一味だった。半次がすべてぴたりと言い当てたために、お縞はばれてしまったと勘違いし、あわてて頭目に知らせに走る。そのため、翌日、半次と半次の説明をからかいながら聞いていた兵庫は、怪しい一団に襲われる。
1万両の入っていた箱が河原で見つかり、役人らは盗人がここから街道を下った見て見張りを固めるが、兵庫は、これが、そう見せかけて別のルートから逃げるための盗人たちの芝居だと見抜く。二人を先ほど襲ったのは盗人の一味で、今回の件に関わっているらしいお縞が半次の言葉を信じてしまったのが理由だろうと考え、彼らはおそらく、襲った辺りに隠れているに違いないと、推理する。
しかし、隠れ家の寺を見つけたときは一足遅く、見つかったのは血のあとだけ、盗人らは既に逃げていた。
「あんたはどう思う?」兵庫がおよしに問いかける。およしは、街道にはすべて役人が網を張っているので、逃げるとしたら海路ではないかと推理。半次は、昨日会ったお縞が、浜辺の川辺村のみやげをもっていたことを思い出す。
およしと兵庫、半次は、川辺村へ向かう。そこには高飛び寸前の盗人たちがいた。
「教えといてやるがな、おいお縞、俺の、口から出任せダボラにアワくいやがって、ご忠心に夜道を走ったのはとんだお笑いぐさだったな」「口から出任せ?」と悔しそうなお縞。「そうよ、へへへ」と兵庫を見る半次。兵庫も「ふ」と笑い返す。・・・
無事、盗人を捕まえ、礼を言うおよし。「おい焼津の、役人が来るまで面倒見てやれ、俺は先に行くぞ」半次が追いかけようとするおよしをとめる。「あの旦那はああいう男なんだ、俺の相棒はさっぱりしたいい男だろ。」と嬉しそうな半次。
<見どころ>
半次は、城下町から三峯山までの図面を描き、得意げに旦那に見せるが、「ウナギの這ったあとかと思ったぞ」と言われ、すっかり気分を害する。そこで盗人怪しい一団に襲われて、覚えがないかと問われた半次、「旦那こそ胸に手を当てて・・」兵庫は実際に手を当てて「覚えがねえな」と、またからかわれる。そして、旦那を置いて歩いていく先に、涼しい顔をして旦那が立っているのを見て、「あれ?ちきしょう、やっぱりてめえか、いつの間に俺を追い越しやがった?」「じつはな、あそこからここへ抜ける近道があったんだよ」とまたまたからかわれる。「とっとといきやがれ」「ではお先に」と行こうとすると、ネコが。今度は半次が気をよくして笑いながら先を行く。(以上 じゅうよっつ)
境内の立ち回り無茶苦茶格好よかった!!何度も何度もリプレイしてその度におもわず『かっこエー』ここは関西のイントネーションで・・何でこんなに格好ええのん!とその後の胸に手を当てての一言・・このギャップ好き好んでやっていたわけではないとはとても思えないんだけど 本当かなー?(のりりんさま 2007年6月21日)
十四郎さんは本当に素敵ですね!月影兵庫を観るのは今回が初めてなので本当に毎回毎回しびれています。
兵庫が半次に橋の上で会うとき、十四郎さんはエノコログサ(?)を口にくわえますが、めちゃかっこいい!!!「きさらぎ無双剣」で「尾張61万石か...」と言って稲ワラ(?)をくわえるシーンを思い出しちゃいました、ほんと十四郎さんってどんな仕草もすべて素敵!(meeさま 2007年6月23日)
<迷子のお話>にも少しあります。
キンちゃんさまより、衣装についてのおはなしが、34話「一発屋が待っていた」にあります。


「野に幸せが咲いていた」 (第二シリーズ 第13話) クモもネコも無し

<キャスト> 鈴木光枝=二の丸 加藤忠 鈴木昭生 坂口祐三郎=鳥居家の家臣・結城信二郎 近松克樹 有馬宏治 汐路章 波多野博 北川俊夫 佐々木愛=千勢
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=北村良一 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
兵庫と幼なじみの荒井修理之助の娘・千勢は、鳥居家の家来・結城信二郎と将来を誓い合っていた。が、兵庫が訪ねたその晩、修理之助は何者かに襲われ、千勢が実は鳥居家のお姫様だと言い残して死ぬ。鳥居家では跡取りの千勢と双子の姉が死んで、千勢に鳥居家から迎えが来るが、千勢にその気はない。兵庫と半次は、二人を添い遂げさせるべく、鳥居家を説得するが、そこに、自分の血筋を跡目にしようとたくらむ江戸家老の一派が・・・。
<あらすじ>
半次は、男たちに囲まれて困っていた千勢を救ったときから、千勢の美しさにぞっこん。その千勢が書道指南の病気の父に代わって書を教えているきくや、兵庫に「旦那と道中するのはやめにしたぞ。」と言い残して、字を習い出す始末。そんな、子供たちに混じって悩ましい目つきで字を書いている半次を見物すべくやってきた兵庫は、そこが、兵庫の幼なじみの荒井修理之助の家だと知る。
しかし、二十年ぶりの再会に酒を酌み交わした夜、覆面の侍たちが数人、突然修理之助を襲う。そして修理之助は最期に、千勢がほんとうは自分の子ではなく、鳥居家のお姫さまだと言い残して死ぬ。
千勢の悲しみも癒えぬうち、すぐに、鳥居家から迎えが来る。鳥居家では、千勢の姉が亡くなったため江戸家老が自分のせがれを跡目にしようと争いが起きていて、早く千勢に帰ってきて欲しかった。昨日修理之助を襲ったのも江戸家老の一派のようだった。しかし、千勢は母・二の丸を拒み、城に行こうとはしない。
千勢の恋人の信二郎は鳥居家の家来として、千勢の迎えに来ていたが、一旦引き上げた二の丸の命によって、千勢の後見人である兵庫を斬りに行く。「あんた俺が斬れるか」兵庫に「お家が大事かもしれん。しかしそのために千勢さんがどうなってもいいのか。たとえお姫様であっても、もう少し千勢さんのことを考えてやったらどうだ。千勢さんに必要なのは心の支えだ、あんたなんだ」と言われ、信二郎は脱藩して千勢と一緒になることを決意する。
その夕、再びやってきた二の丸と家老に、二人は城へ行くつもりはないと告げ、兵庫も「千勢さんは物心ついたときから寺子屋の娘として育ったんだ、あんたのしらん幸せに囲まれてな。あんたいったい自分の産んだ子をいったいなんだと思っているんだ、あんたに親心のかけらでも残っているんだったらようく考えるんだ」と説得する。そこへ、鳥居家の跡目をねらう江戸家老の一派が襲ってくる。「おい旦那、恋に破れた男の執念がどういうものか見せてやる」と一派に向かっていく半次。
もはや、二の丸は二人を止められないと知り、「しあわせに暮らすがよい」と言い残して去っていく。そのとき初めて千勢は「母さま」と呼んだ。 千勢と信二郎をうらやましげに見ている半次に、「所詮及ばぬ恋の滝のぼりだよ」と兵庫。「色はにおえど散りぬるを、だ。な?」と力無く納得する半次。
<見どころ>
半次が千勢のことをしつこく居酒屋のオヤジに聞いているところへ兵庫が入ってくる。「俺はこれからの人生について考えているんだ」と言う半次の言葉を聞き。兵庫は大笑い。「おまえは字を知らないだろうけどよ、おまえのはな、”珍しい”と書いて珍生というんだ」「その手だ!」と千勢に会うきっかけをつかんだ半次、「ここの勘定はらっとけよ!」と旦那をおいて急ぎ出ていく。困った旦那。
この回、兵庫は幼な友達と会うのだが、その会話から、20年むかし、兵庫は江戸の平川町にすんでいたと言っている。(以上じゅうよっつ)
一生懸命手習いしている半次兄さんを見て爆笑する兵庫が可笑しかったっす。月影兵庫であそこまで大笑いしたのって初めてなんじゃ・・??先日の「あきれた病気に〜」の時の大吉ダンナに匹敵するぐらいのレベル(笑)でしたねん。いゃあ・・やっぱり近衛さんの笑顔は最高です!!
さらに後半はうって変わって、二の丸様に意見する兵庫の口調が良かったっす。言っていることはシビアだけど決して頭ごなしじゃなく、しかも相手におもわず耳を傾けさせるような説得力があるんですよね。
あとラス立ち時、最初は半次たちに任せていて、いよいよ・・になった時におもむろに抜刀、あっという間に相手方を峰打ちにするのがめちゃ格好いい〜。近衛さんのお身体のことを心配しなくてもいいし、兵庫の立ち回りは安心して見ていられて嬉しいです。(南まさとさま 2009年4月19日)
感動しました!いいお話です・・・千勢さんを愛する結城信二郎 よかったですね!結城役の「坂口祐三郎」さんは当時、同時期に「赤影」役で子供たちの大ヒーロー(わたしもですが・・^^)だったんですが、そのブームの中で、こうして時代劇にもちゃんと出演されていたんですね!驚きました・・・もっとも赤影では最強の役ですが、今回はちょっと頼りげのない侍役でしたが・・(実際、悪役に刀で傷を負い、赤影ファンとしては情けなかったですがね・・)でもいい青年を演じてました・・ あとは平日毎回「花山大吉」を見ている私としては、やっぱり半ちゃんと月影のだんなの関係が対等なのがうれしいです!花山では完全に、半ちゃんを見下していますものね・・・具体例として、この「野に幸せが・・・」では、半ちゃんがだんなに居酒屋で「千勢」さんの話をして、習字を習いに行こうと決心して、居酒屋を出るとき月影のだんなに「ここの支払い頼んだぜ!」と言って出て行って、だんなが「ギャフン!!?」となった光景がありましたが、花山ではぜったいありえないと思いました(笑)逆に半ちゃんがだんなに、おごらされるというシーンが圧倒的でしたものね・・・やはり 月影シリーズではこういうように、だんなと半ちゃんは対等の立場だなとこういうシーンからも感じました・・今、平日と日曜日で半ちゃんとだんなの関係はそれぞれ異なり味わえるといううのも奇妙であり、うれしく感じます!ちなみに月影のだんなが、半ちゃんが千勢さんから習字を習っているとき、だんながすだれの隙間から顔をちょいとのぞかせて、笑っている表情が最高でしたね!!(笑)(きざくら&ようめいしゅさま 2009年4月20日)
佐々木愛さんと鈴木光枝さん:佐々木愛さんは現在も舞台で活躍中のようですが、新劇界の重鎮であった鈴木光枝さんの娘さんですね。月影兵庫の「野に幸せが咲いていた」は実の親子で共演していたわけです。(長沢威さま 2009年2月24日)


「生まれた時から曲っていた」 (第二シリーズ 第14話) 

<キャスト> 山城新伍=吉三 三島ゆり子=吉三の恋人・おもん 本郷秀雄 清川玉枝 楠本健二=薬売りに変装した三人組の一人 川路誠 鈴木金哉 入江慎也 重久剛 井関悦子
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=奈宮聖二 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=藤井達也 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=秋田実 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登


<大筋>
今日も旅先の宿で、ごろりと横になっていると、やにわに飛び込んできたのは、スリの吉三。500両を強奪した飛脚殺しのぬれぎぬを着せられ捕り手に追われているという。一方、半次は吉三に50両すられてかんかん。べらんめぇ口調で、宿に怒鳴り込んできたのを兵庫は、「まあまあ勘弁しろ」と、事件の究明にのっそり立ち上がった。兵庫の好意で、幼なじみの恋人おもんと久しぶりの逢瀬を楽しむ吉三は、いい調子のもんだ。この間にも兵庫は、あやしい三人組に取り囲まれて、鋭い三寸釘の襲撃を受けていた。事件は意外と奥深い背景を持っているようだ。(キンちゃんさま)
<あらすじ>
兵庫が居酒屋で飲んでいると、そこに岡っ引きが入ってくる。何でも、街道で飛脚が殺され50両が奪われたそうだ。犯人は既に捕まり、懐に50両と飛脚の鈴をもっていた。
そこへ、人相の悪い3人が入ってくる。この3人、兵庫が街道を通った際に、もの陰に隠れて街道の様子をうかがっていた連中だ。
さらに飛脚殺しで捕まった吉三を、スリに育てた父親代わりという男が入ってきて、吉三は人殺しなどできる男ではないと言い張る。
この男の意気込みに、兵庫はちらちらと3人組を見ながら、焦らずに証拠を探せと言うのだが、男は、このままでは獄門台に行くにちがいない吉三を命に代えて籐丸かごから救う。
逃げる吉三は、お地蔵さんの元で休んでいた兵庫にかくまわれ、旅籠へ。スリで稼いだ52両と道で拾った鈴をもっていただけだと話す吉三は、なるほど極悪人の面ではない、それどころか、追われているというのにどこか人ごとのようで、兵庫に、3年間あえなかった恋人・おもんを連れてきてくれと頼む始末。おまけに同じ旅籠に泊まっていた半次の財布をすり、半次からは大目玉。
兵庫は、居酒屋で会った3人組が怪しいと調べていた。3人組が自分たちに目をつけている兵庫を見張っているのも分かっていた。
しかし、旅籠の部屋にとどまれと言い残したのに、吉三はのんびりと風呂につかり番頭に顔を見られて、役人に通報され、おもんの家で落ち合う約束で、兵庫はおもんと吉三を逃がす。
そこへ、3人組がやってくる・・・。
無事犯人を捕まえた兵庫に、「おじさん、じゃねえ旦那、ありがてえ」と喜びのあまり泣きだす吉三。
<見どころ>
吉三は兵庫に、「おっかねえ顔をするなよおじさん」「おじさんどうして俺の名前しってんだ?」と、つい「おじさん」呼ばわり。
「じゃあ家おしえるから呼んできていくれよ」「俺がか?」「早く行って来ておくれよ」と兵庫に恋人を呼んでこさせる。「ことわっとくがね、おもんちゃんべっぴんだからね、変な気おこしやがったらしょうちしねえぞ」「ばかやろ、いい加減にしないか」「でっけえ声だすなよ」
半次の財布をすったときも、悪びれもせずに、かえって大声を出す半次を「しーっ!」と諫める。兵庫が吉三のために半次に頭を下げても、吉三は「お兄さんおまえさんちょいとしつこいんじゃねえか」と、半次に手を焼かされているような顔をしている。兵庫は二人も手のかかる男を前にしてあっちを向いたりこっちを向いたりでちょっと大変そう。
しかし、その吉三もかなわないのがおもんの母親。都合のいいときだけ聞こえない振り(?)の母親は、「おもんちゃんをください」と襟を正して頼む吉三に「分かってるよ分かってるよ」と迎え入れ、「ところでもらってもらうのに、なにもなくっちゃ行けないと思ってね」「いえ、あっしはおもんちゃんさえいただければ」「そうはいかないよ。でね、あたしゃあこの子のためにね、かつおぶしだけはもたしてやりますよ」と、ネコをもらいに来たと勘違い。それが終わると、「隣の空き家を見に来た人か」「こりゃだめだ」「何がだめだって?」と、これはちゃんと聞こえる。
その後、兵庫と半次が来たときには、兵庫を婿と間違え、「いい婿をえらんだもんだ」と喜び、吉三はむくれる。
三人組をやっつける時は、兵庫がおとりとなり3人の注意を引いている好きに、半次が斬り込むと言う珍しいパターン。(以上 じゅうよっつ)
スリの吉三はゲストの山城新伍で、つまり、スリで手癖が悪いので、小指が曲がっているというわけです。あやしい三人組というのが真犯人で、行商人やお遍路さんの格好をしていますが、手裏剣の名手やら、仕込み杖の使い手やらがいて、兵庫も思わぬ苦戦を強いられます。めでたく悪人たちを退治したとき、山城が兵庫のそばに駆け寄ってきて、「やったやった!」と欣喜雀躍します。半次は「お、おい、俺もやったんだぜ」と不服そうに自分をアッピールします。「うん!やった。やったやった!」と、山城も取って付けたように言います。このあたり、第二東映で気心の知れた間柄のせいか、息もピッタリ。文で読むより、実際に見ないとその可笑しさは伝わりません。(キンちゃんさま 2005年5月17日)


「悪魔が刃を研いでいた」 (第二シリーズ 第15話) 
(thanks 南まさとさま)

<キャスト> 名和宏=小野原辰馬 細川俊夫 伊吹友木子=道場主の妻・おやす 朝海千景=居酒屋兼宿屋・目貫家の娘おみよ 山村弘三 矢奈木邦二郎 末広恵二郎 鷹司譲紀 香月凉二
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
道場の跡目を巡って、道場主をが殺された。2年前道場を離れ修行から帰ってきた道場主の弟が犯人と疑われるが、兵庫と半次は、師範代と道場主の妻の言動に疑いをもつ。
<あらすじ>
曲がったことの嫌いな半次は、茶店にいる侍・辰馬の刀が斜めに立てかけてあるのを直そうとし、刀を交わすはめに。そこに、この宿場にいる友人を訪ねてやってきた兵庫が止めにはいるが、侍は、刀をおさめようとはせず、兵庫と立ち会うことになる。兵庫とは互角の勝負、勝負がつかずに一旦預かりとなり、侍は、「いつでも小野原道場へこい」と言い残して去った。
実は、その小野原道場こそ、兵庫が友人を訪ねて行く場所だった。
兵庫が道場に着くと、道場は騒然となっている。道場主・小野原無二斎と兵庫の友人の高弟・田代一角が、道場主の舎弟・辰馬に殺されたという。師範代の堀江城五郎が兵庫を招き入れ、ことの次第を説明する。
気性の激しい辰馬は2年前、無二斎から世間を見てくるようにと言われ旅だち、昨日ふらりと戻ってきた。無二斎と立ち会った後、2人は一角とともに酒を酌み交わしたが、堀江が、言い争う声を聞いて部屋に行くと、辰馬が去り、二人が殺されていたという。
自分の女・おみののいる居酒屋兼宿屋・目貫家の2階にいた辰馬は、敵討ちにやってきた門弟たちを追い払い、自分が殺した証拠があるのか、証拠をもってきたら相手になると兵庫に言い捨て、兵庫はもしかすると辰馬が犯人ではないのではないかと思い始める。
夜、辰馬は目貫家を抜け出す。兵庫がついていくと、そこは小野原道場。
気配に気づいた堀江らが小野原流極意皆伝の一巻が奪われたと言う。道場を継ぎたい辰馬が盗んだのだと堀江は言う。
さらに、無二斎と一角の葬儀が行われた夜、辰馬は、「あなたの体に聞きたいことがある」と、無二斎の妻・お安の部屋にしのびこむ。堀江らはあくまで辰馬を犯人と扱うが、どうやらお安も彼女をかばう堀江も、同居のお安の父親・北川左衛門も、何かを隠しているようだと、兵庫には思えてくる。
そして、 辰馬が帰って来ないことが心配な目貫家のおみのに、「たとえばよ、おめえたちが以前人目をしのんで会っていた場所なんか案外そうかもしんねんな」と半次がかまをかけたのが功を奏し、辰馬の居所をつきとめた半次は、そこで辰馬がおみよに、兄を殺してはいない、盗もうとした皆伝書は文箱にすでになかったと、真実を話したのを聞く。
兵庫は、「目星がついた」と辰馬を道場へ呼び出す。
道場では、北川が自害していた。父親の遺骸に泣き伏せるお安に、「お安殿、あんたは何もかも知っている」と兵庫が現れる。
道場の門下生を相手に刀を抜く辰馬を制止し、兵庫が真犯人を暴く。無二斎らが殺された日、辰馬と兄ら三人の酒宴で、兄は道場の跡目を、自分に勝った辰馬に継がそうと考えた。以前から跡目をねらっていた堀江は面白いはずがなく、辰馬が居酒屋に戻ったあと、無二斎と一角に薬を飲ませて2人を殺害したのだった。堀江と通じ無二斎との夫婦生活がはうまくいってなかったお安は、堀江と共謀していた。事情を知った北川は苦しみ、辰馬に真実をうち明けようとしたがままならず、自害した。さらに半次が、堀江の部屋から証拠となる皆伝書を見つけだす。・・・
「こんなものに用はない、こんなもののために道場は汚されていた。こんな汚れた道場を継ぐ気にはなれん。俺は一生この身を野に置くつもりだ。」と皆伝書を捨てる辰馬。「おまえさんがどうするかと思ってな、だまってその一巻を渡したのだが、どうやら2年間は無駄ではなかったぞ。だがおまえさんの喧嘩っぱやいのは玉にきずだぞ、なあ半次」「おう、そうだよ、おめえさんね・・」と説教を始めようとする半次に「おめえもだ!」と遮る。3人が笑う。
<見どころ>
半次が刀の立て方に文句を言ったのを機に始まった兵庫と辰馬のやり合い。
名和さんは松竹のころは町人役、お年を召してからは悪代官役が多かったので、シャープなお侍役は新鮮。でも、さすがに時代劇の年期が入っておられて、このちゃんとの殺陣は、お二人とも息をのむ気合いとスピード!さすが〜!(以上 じゅうよっつ)

なかなかシリアスでしたね。兵庫の推理も冴えて事件は解決したものの、結局道場に関わる人物は全て死亡してしまい、あれでは辰馬でなくても継ぐ気にはならんよなぁ・・などと思いながら見ていました(笑)その辰馬と兵庫が冒頭で斬り合うシーン・・凄かったです〜。近衛さんも名和宏さんも早い早い!!スロー再生しながら感激してました。2人が最初に刀を合わせた時に火花が出るんですが、あれは合成なんですよね??ひょっとして本身同士で本当に・・なんてことは・・ないかやっぱ。それにしても、細かいところまで凝っているなぁ、と感心しきりです。(南まさとさま 2009年4月26日)


「嵐が母を呼んでいた」 (第二シリーズ 第16話)

大名の子だねを宿したばかりにお家騒動に巻き込まれた娘の用心棒を引き受ける。

*このエピソードは特に殺陣シーンが多かったように記憶しています。堀雄二は武田鉄矢ふうにふうの総髪で、神道無念流の達人という設定。
兵庫は二刀流で応戦し、これを倒しますが、半次が「旦那、すげえ技だな」と感心して兵庫が「むっふっふ」と照れ笑いするシーンがあります。
*花園ひろみの演技は素晴らしかったですよ。兵庫と半次に命を助けてもらいながらも、人間不信に陥っている彼女、最初は「聾唖者」のふりをして兵庫たちと一定の距離を置こうとします。「おい半の字、この女(花園)がいるかぎり、俺たちまで巻き添えを喰っちまう。そこで俺はいっそこの女を斬ろうと思う」という兵庫の言葉にたちまちおびえるひろみ嬢。それを見て兵庫がニッコリ微笑んで言います。「あんた、やっぱり耳も聞こえるし、しゃべれるんだな」ひろみ嬢は観念して力なくうなづきます。(2003年2月24日、3月23日 キンちゃんさま)

兵庫は身ごもった若い娘の用心棒をひきうけることになった。この娘は三万五千石のさる大名の子を宿したが、その大名が突然乱心、お家乗っ取りを企む家老一味にお腹の子供ともども命を狙われていたのだ。
さる街道筋で、月影兵庫は深手をおった武士から一人の娘の身柄を託される。事情のわからぬまま、兵庫はその娘を目的地まで案内する途中、素性の知れぬ武士団の攻撃を再三受け、兵庫は首をひねった。娘はどうやら妊娠しているらしい。もしや高貴の人の子を宿し、お家騒動に巻き込まれたのでは・・・兵庫はカンを働かしたが・・。(京さま 2016年3月13日)


「河童が夢を探していた」 (第二シリーズ 第17話) クモもネコも無し(thanks 南まさとさま)

<キャスト> 大村文武=記憶を無くした侍・平田源三郎 岸本教子=源三郎の許嫁・おまき 千葉敏郎=幾野代官所の侍・宮原 大邦一公 近江雄二郎 志茂山高也 川浪公次郎 鷹司譲紀 香月凉二
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=北村良一 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>
半次が身投げと思い救ったのは記憶を無くした侍、公金横領の罪をなすりつけられてもなんともしようがないこの男を、二人が助ける。
<あらすじ>
太郎池の畔で「冷たそうだな、仕方がない飛び込むとするか」と迷っている侍がいた。
半次はすっかり身投げものと思い引き止めるのだが、そうではない。男は、この池で今朝、ずぶぬれになって倒れていたのだが、自分が何者なのか、何をしていたのか、すっかり記憶を無くしてしまったというのだ。「まさか河童の岡上がりじゃあるめえし、このかたりガッパ」半次は、そんなことあるはずがないと男を信じない。そうこうしているうち、侍の一団が「平田源三郎」と呼びながら、尋常でない雰囲気で半次と男を囲む。
「私は平田源三郎というのか」自分を見知るものを見つけ喜ぶ男だが、侍たちは、男を人影のないところへ連れて行き容赦なく斬りかかってきた。源三郎は、公金200両を横領して逃げたと言うのだ。
通りかかった兵庫のおかげで、侍たちは一旦引き上げたが、一杯飯屋につれていった源三郎は、「おい平田!平田源三郎・・・さん?」と試しに半次が呼んでも、ばくばく飯をほおばり気づかないさま、どうやら本当に記憶を無くしているらしい。そこへ今度は、女が源三郎の名前を呼びながら入ってくる。女は源三郎の許嫁のおまきで、おまきによるとやはり、源三郎は公金200両を横領したらしい。自首すれば命だけは助けると代官に約束を取り付けたおまきは、兵庫と半次を横領の仲間と思いこみ、源三郎を連れて行こうとする。
兵庫は、女にカマをかけてみる。「源三郎はどこの家中だ?」「牧野さまのご家来です」「牧野家の家老はクチキゴエモンとかいったな「はい」クチキと言う名は兵庫の口から出任せだった。先ほどの侍らがえらく焦っていたのをどこか怪しいと思っていた兵庫は、これで侍たちやおまきががウソをついていると分かった。
案の定、おまきに連れて行かれた先で、源三郎は、先ほどの侍たちに斬られそうになる。自分がそんなひどいことをしたのなら、斬られてもしょうがないと覚悟を決めているところを、あとを追ってきた兵庫と半次に救い出される。源三郎が公金を横領したというのもウソのはずだ。
夜、命だけは救うと言う代官の言葉をいまだ信じているおまきが、再び、源三郎を連れ出しに旅籠へ忍び込んでくるが、源三郎が侍たちに斬り殺されそうになり兵庫と半次に救われたと聞き、おまきは代官にだまされていたと気づき、ことの次第を話し始める。事実は、公金横領ではなく、6ヶ月前に江戸から幾野の代官所にきた源三郎が銀を横流ししていた罪で追いかけられていると言う。世にしれると源三郎を助けることができなくなる、幾野の代官所の名誉のためと、隠密に源三郎を追っていると言い含められていたのだ。さらに、朝までにおまきが連れてこなければ代官たちが斬りに来るという。
兵庫は、銀を横流ししていたのは、本当は代官一味で、それを知った源三郎はその筋に届けようとして、太郎池の淵で彼らと争いになり池に落ちたのではないかと推測するが、しかし、肝心の源三郎の記憶は全く戻らない。
期限の朝、兵庫は太郎池に源三郎を連れて行き、荒療治に出る。刀を抜くと、源三郎に容赦なく斬りかかる。必死で逃げる源三郎だが、目をとじ、開けると、ふと、心配そうにたたずむ許嫁のおまきの名前も、自分が、代官の銀の横流しを届けに大阪城代に向かっていく途中襲われたことも、すっかり思い出していた。そこへ、悪代官一味が・・・。
<見どころ>
記憶を無くした男を演じる大村文武さんのすっとぼけた味がいい。公金を横領したと言われ、「わしはそんな悪いことをした男なのか。それはひどい」と人ごとのようにつぶやく。「事実なら私はあきれ果てた男だ」「ちぇ、てめえで感心してりゃ世話ねえや」と半次にもしばしばあきられる。
その半次と源三郎をかばうために侍たちを痛めつけた兵庫、2人の話を聞き断片的にことの次第を理解し始める。「半の次、俺にはよくわからねえが、自分に愛想を尽かしている平田源三郎と言う男が公金200両を横領した、で、さっきの侍たちが源三郎を追ってきたというわけだな」「そうよ」「すると平田源三郎というのは追っ手に追われて当然の男だ、斬られても文句の言えない男ということになるな」「そのとおり!」「半の字、おまえはなぜそう言う男をかばったんだ」「え?いやそれは、まあ、行きがかり上、つい・・」「あきれたヤツだなおめえは。それじゃあ追っ手を追っ払った俺は200両の片棒を担いだも同じじゃねえか」「なるほど、そうなりやがんなあ。旦那、どうしよう」半次が源三郎を責めると、「私はとんでもない男らしい」と、またも人ごと半分の源三郎。その後半次は、思い出させるには、と、太郎池で捕まえた河童の見せ物小屋へ兵庫と源三郎を連れて行き、兵庫と源三郎にあきれられる。
(以上 じゅうよっつ)
記憶を失った源三郎のなんともとぼけた言動がナイスでした。考えてみれば、今でこそ記憶喪失という単語で誰にでも説明できるけど、当時はそういう事が起こりうるなんて、なかなか信じられなかったでしょうね。まぁでも、半次兄さんの「カッパの見せ物を見物すれば治るかも」というのは、当時としてもちょっと発想が飛びすぎだと思いますが(笑)見せ物小屋のシーン、呆れて顎をなでている兵庫の様子が可笑しかったっす。(南まさとさま 2009年4月26日)


「道は白く続いていた」 (第二シリーズ 第18話)

3日前から2人のあとをつけてくる美女。半次と反対に、兵庫は不安でならない。

兵庫の回想シーンがあるんです。兵庫は一人の武家娘から父(兄だったかも)の仇と誤解され、執拗に「いざ尋常に勝負せよ」、と挑まれるわけですが、兵庫にはさっぱり心当たりがない。結局、当時の目撃者が現れて、ここで回想シーンとなるのです。ですから、兵庫の回想ではなくて、目撃者であるお百姓の回想といったほうがが正しいのですけどね。それで、回想の中の兵庫も、やっぱり同じように旅をしている。さて、このとき、もうすでに半次と出会っていたかどうか、この辺ちょいと気になりますね。で、山道で突然、武者修行中らしき若侍(=兵庫を仇と狙う武家娘の父親か兄)から、「立ち会ってもらおう」と真剣勝負をいどまれる。兵庫はにべもなく断りますが、血気盛んな若侍は聞く耳持たず、しゃにむに斬りかかってきます。最初はかわしていた兵庫でしたが、遂に長刀を抜刀するや峰打ちで相手の胴を打ちます。相手は「ンムグッ!」とうなって、口から血を出しながら倒れてしまいます(つまり、死んだのです)。そのときの近衛の「しまった。強く打ちすぎたか。」というセリフが実に印象的でした。これは、悪人でもない男から理由もなく斬りかかって来られたことによる、兵庫の動揺が、峰打ちの力加減を誤らせた、と解釈すればよいのでしょうか。あるいは、この兵庫はまだ若き日の兵庫であって(まさか!)腕が未熟だった、と解釈すればよいのでしょうか?とにかく無益な殺生をしてしまったという無念さと剣に生きる者の哀しみのようなものがこめられていて、忘れられないセリフです。この証言によって、誤解も解け、娘もあだ討ちを諦めるわけです。目撃者のお百姓は、さらに、「このお侍さま(兵庫のこと)は、去っていくときにも仏様に手を合わせて行かれましただよ。」、と終始兵庫を弁護します。その映像は実際にはなかったのですが、近衛の合掌するところも、さぞ格好よかったろうなと想像します。
ちなみに、この「道は白く続いていた」のワンカット、白い仇討ち装束の娘の刀を兵庫が手ではっしと受け止め、娘をグッと睨んでいるスチール写真は、番組冒頭のオープニング画像によく使われていました。本編のオープニングではなくて、テレビ局が用意したオープニング(たいてい静止画像を背景にして、タイトルが書いてある。)のほうです。昔は、どの番組でも、テレビ局のオープニングではじまったのです。現在だとほとんどのドラマは、本編のオープニングから始まるのが普通ですよね。 (2005年5月17日 キンちゃんさま)


「お墓の底が抜けていた」 (第二シリーズ 第20話) 

<キャスト> 江田嶋隆 国一太郎=溝口藩に買い取り状を売ろうとした菊池藩・高山 永田光男 近松克樹 中村伸子 徳田実 真木祥次郎 小柳圭子 浅野誠 橋本明 松田利夫 南都雄二=妻の骨壺を無くす飴売りの男
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=小金丸輝貴 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=亀倉正子 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=曽根勇 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
”夫婦あめ”売りの男の持つ包みには、大事な妻の遺骨の他に、菊池藩が領民を救うために買った南蛮渡来の薬の買い取り状が隠されていた。
その書き付けを巡って、男はねらわれ、兵庫と半次がこの男を助ける。
<あらすじ>
半次が菊池藩のある宿場に来ると、大事そうに包みを抱えた飴売りが、橋のたもとで悲しげに川面を見ている。
てっきり身投げかと心配して男をつけると、男は居酒屋に入り、包みに「お玉」と呼びかけながら酒を飲み、「そこから手をだして(酒を)ついでえな」と泣く始末。男は、最愛の妻を亡くし、その遺骨を妻の故郷に持ち帰る途中だった。
ところがこともあろうに、半次と別れた男は、その骨を無くしてしまう。
「お玉、どこへ行った?」とアワ食って居酒屋に戻ってきた男のために、半次と、同じ居酒屋で飲んでいた町人と女が、徹夜で骨を探してやるが、骨を立派なふくさに包んでいたのが間違いの元、やくざが、坊さんが、女が、次々と金目のものと思いこんで持っていっては骨と分かって戻しにきて、とうとう見つからずじまい。見つかったのは翌朝、半次の徹夜明けをからかう兵庫の行く先をふさぐように現れたネコ、そのネコのそばに捨てられてあった。
喜んで、もう酒は飲まないと言いながら旅だつ男。兵庫と半次も、一緒に探した男と女も旅だった。
なにやら大変なことが起きたらしい厳しい取り締まりの領境を無事に通り過ぎると、そこに昨日の、骨をもった男がみえた。と、男を囲む大勢のものたち、男の骨を奪おうとする。昨日の骨探しに協力した男女も含まれている。
兵庫と半次が追い払って事なきを得るが、骨に何かあると睨んだ兵庫、男に骨を調べるように言う。「あんたらみんとくれ、ワシ一人のお玉やから」と、隠しながら骨の中を調べると、そこには見知らぬ外国の文字の書かれた書き付けがあった。先ほど襲った男たちが盗んだものらしい。昨日居酒屋で、隙を見て飴屋の骨に隠し入れ、領境を通過させたようだ。
「どんなことがあっても、お玉に手えださんようにな」と念を押されながら、男に代わって半次が骨を持ち、兵庫と二人、再び先ほどの奴らが来るのを待つ。
そこに現れたのは、一人の男。男は、金でその書き付けを買い取ろうとするが、兵庫は「これほどのモンが50両じゃ安いぞ、あいにく俺はオランダ語が読めるんだ、長崎で医者の家に居候してたんでな」「これを、あんたたちに代わってあるところに届けるぞ」とカマをかけ、それが、菊池藩がオランダから幕府に内密で買い付けた薬の買い取り状で、男たちはそれを犬猿の仲の溝口藩に売ろうとしていたことが判明した。・・・
あわてて領境からやってきた菊池藩大番頭・岩代半之丞の話で、それが、3年前領内で流行った病気を治すために幕府に許可を得る暇もなくオランダから買った薬の買い取り状であることが分かり、兵庫は快く、その書き付けを渡す。
事件は無事解決、今度こそ
男は、骨を胸に、妻の故郷に旅立った。「おもしれえやろうだ。これでやっと縁切りになったな」「おまえ今晩から寂しくて寝れんぞ」「冗談いっちゃいけねえや」
<見どころ>
妻の話をする男と半次の、セリフのようなアドリブのようなやりとりが面白い。南都さんの玄人漫才と品川さんの負けまいとついていく素人漫才(?)の掛け合いの間がいい。お骨を巡って盗んだり戻したりする脇役さんたちも面白い。「持っていったヤツは赤くなったり青くなったり神妙な顔をしてうろうろしているぞ」と笑いながら話しているのを、陰で見ている骨泥棒。
「外国って、どこの?」「10里もいけんね。」「歩いていけんの?」と、オランダ文書を見て半次に問うすっとぼけた飴屋、大吉の「風の岬に鬼がいた」の大吉と半次のやりとりを思いだした。
最後の戦いで、半次の懐にクモが。「旦那あ!」と助けを呼び、兵庫が走って助けに行く辺り、これから先のコメディー調の始まりのようだ。(以上じゅうよっつ)
この回のゲストは南都雄二さん。といってすぐに「はは〜ん、あの人ね」と合点のいく人はロバのパン屋を知っている人です。あ、よけいに分かりませんか。南都雄二さんを知っている人は、マッチ箱で検便してもらった世代の人です。え、ますますワカラン?失礼しました。
南都雄二さんとは、かつて、たいへん人気のあった関西のコメディアンであります。ミヤコ蝶々さんと一時、夫婦でした。字が読めないのでいつも「これ、なんという字?」と訊いてばかりいたからそれをそのまま芸名にしたとのことです。善良だが気が弱く、そのくせ女好き、てな役を得意としていました。まったりとした芸風で、今、ちょっとこんな芸人さんいませんね。
南都は寝るときも首から遺骨の箱をぶら下げていて、半次が何か言うたびに「そんなこと言うたかてなあ、おまつ」「どないしよう、おまつ」などと遺骨に話しかけるのです。兵庫も「けっ」とあきれるしまつ。シリーズの中ではちょっと異色かもしれませんが、上方喜劇ふうの味わいで面白いと思います。(キンちゃんさま 2003年4月2日)

<出演された中村伸子さまのお話>
当時はビデオもなかったので、本人も今40年ぶりに見て懐かしがってます。
この出演回は殺されなかったので気に入ってる…と先ほど申しておりました(^_^;)(つぐひろさま 2007年7月15日)


「用心棒が待っていた」 (第二シリーズ 第21話) 

<キャスト> 戸上城太郎=赤間一家の用心棒・大村 明石潮=正明寺・和尚 三島ゆり子=居酒屋の娘・お菊 佐藤蛾次郎=お菊の弟・太郎吉 藤尾純 河上一夫 川路誠 太田順己 名護屋一 西田良(NC)=青田一家の若い衆の1人
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=小金丸輝貴 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=相原鉄郎 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=佐々木康

<見どころ>
●殺陣は一流、セリフは二流といわれている戸上城太郎との壮絶な対決がめっぽう面白い!この二人、映画では何度か対決してるんよね。
だから意気もぴったりで火の出るような決闘場面を展開してくれる。腕は双方互角、ところが突如ネコが出現して兵庫が取り乱してしまい大ピンチ!
「口ではポンポン言ってたけど、ほんとは旦那が好きだったんだよ〜」兵庫がてっきり斬られて死んだと思った半次が土饅頭の前で(もちろん他人の土饅頭)号泣する場面でのセリフです。最終回のそれと双璧をなす名場面です。そこへ兵庫本人がのっそりと現れ、「お前なにやってんだ?」これを見たとき12歳のキンちゃんポロポロ涙を流しましたよ。(キンちゃんさま 2003年2月24日、3月2日))
●半次が夢を見る。兵庫と強そうな浪人(戸上城太郎)の一騎打ち。ところが浪人は強く、兵庫はやられてしまう。
「だんなー!」絶叫と共に目覚める半次。その後、兵庫にその話をすると「世の中、強いやつはいくらでもいるからな。」兵庫の答えに不安になる半次。
そして立ち寄った宿場で、仏と崇められていたやくざの親分が実はワルで、一味と戦う兵庫と半次。ところが相手の用心棒の顔を見た半次は仰天!夢で兵庫を倒したあの浪人だ。「まさか、正夢じゃあ・・・」半次の心配通り、兵庫は苦戦し、浪人の鋭い剣は兵庫の腕、胸元をかすめ斬り、
血がにじみでる。「うわー!だ、だんなーどうしたらいいんだー」半狂乱(ピーか?)になる半次。
「おい!やいずの!焼津のて!」必死で防戦する兵庫が半次を呼ぶが、頭を抱えて泣く半次。「屋根だ!屋根の上のあれを!」兵庫の声に半次が見上げると、すぐ上の屋根にネコがいる。「こいつのせいかーこの!」石を投げてネコを追っ払う半次。すぐさま反撃し、浪人を倒す兵庫。
戸上城太郎は本当に強そうで私も半泣きで観てました。(久米仙人さま 2003年2月25日)
●この作品、近衛VS戸上の対決ものという視点だけで見ても十分おもしろいのですが、兵庫が死んだと早とちりした半次が、土饅頭の前で「口ではポンポン言ってたけど、俺は本当は旦那が好きだったんだよ〜。一生かけがえの無い友達と思っていたんダ〜」と泣き喚く場面や、ラストの対決で負傷した兵庫の腕に、半次が布を裂いて巻いてやる場面など、半次の性格設定が確立した作品として見てもおもしろいと思います。兵庫が用心棒に勝ったので、半次が俄然ハッスルして、残りのヤクザ数十人を「この野郎!」と叫びながらものすごい勢いで、一人で追っ払う場面もケッ作だし、5、6人のヤクザが兵庫のいる家に乱入し、反対側の出口から出てきたときには全員マゲを切られてザンバラ髪になっていたという笑わせるシーンもふんだんにあります。「素浪人シリーズ」の醍醐味が凝縮された、一粒で二度おいしいエピソードだと思います。(キンちゃんさま 2003年3月29日)
●「花山大吉」に似たよなストーリーありましたよね。「ネエチャンヤクザは凄かった」と、どの回か忘れましたが、やっぱり、子供を更正させるために人肌脱ぐみたいな感じの回が・・・。僕は、リアルタイムでは「月影兵庫」は最後の方しか記憶がないのですが、二人の崩れ方もこの位が丁度イイですね。
ウチの女房は「花山大吉」の時は、僕がどんなに「殺陣が凄い!」とか「面白い!」といっても、無反応どころか「いつまで見ているの?」って感じでした。昨日もそうでしたが、「月影兵庫」になったから隣で正座して見ています。特に第一シリーズでは「先に一人で見ないでねっ」って言う位でした。また殺陣も思わず「早い!。お父さんが言うように昔は凄かったんだねこの人!」って言ってました。彼女、変に思い入れがない分「正直」なのかも知れません。(青タン先生さま 2007年7月13日)
●あのもじゃもじゃ頭でない佐藤蛾次郎さん、貴重(?)な映像かも。ところで蛾次郎さんの後ろにいた若者2人のお1人、志賀勝さんのようなそうでないような・・・。どなたさまかおわかりになられませんか?
戸上城太郎さんの最後の命乞いのシーン。なんとなくジェームス・キャグニーの「汚れた顔の天使」を思い出してしまいました。もっとも、戸上さんはあっさり兵庫に斬られてしまってオシマイでしたが。(中村半次郎さま 2007年7月13日)
一つ気が付いたことがありましたのでお知らせしておきます。17分57秒、旦那の墓の両脇にある墓の建立年月が、右が昭和五年十月、左が昭和十八年九月となっておりました。ただそれだけなんですが(笑)。(鯉太郎さま 2007年7月22日)
<あらすじ>
兵庫が用心棒と戦って斬られた夢を見た半次は、翌日、1人斬って1両で雇われたばかりの青田一家の大酒のみの用心棒が、赤間一家の用心棒(=夢で見た用心棒そっくり)に斬られたと知り、てっきり旦那だと、寺に頼み墓を作り戒名まで書いて、赤間一家に敵討ちに向かう。
しかし、そこに現れたのが兵庫、「足はあるか?」と半次は涙を流して喜ぶ。自分の墓まで作られて気分の悪い兵庫は、こんな宿場は早々に立ち去ろうとするが、青田と赤間の争いが絶えず、子供たちに悪影響を及ぼしていることを知り、和尚の「大掃除をしようなんて考えぬがよい、早く行け」という逆の願いを込めた言葉に、二人は大掃除を始める。
まずは青田一家。用心棒として売り込んだ兵庫が、今晩の出入りのために若い者を鍛えると言い、打ちのめして戦えなくする。
戦力を失った青田一家は宿場を立ち去り、そのあとがまに”焼津一家”を置き、焼津の親分と兵庫が赤間一家に勝負を挑む。
二人に呼ばれた赤間一家の用心棒が、やってくる。半次が夢に見た、兵庫と用心棒の一騎打ち。赤間の用心棒にあこがれる子供たちも見ている。しかし、兵庫の形勢不利、屋根の上にネコがいて集中できないのだ。半次にネコを追い出してもらってから、ようやく相手を追いつめる。刀を失い命乞いをする用心棒に刀を渡し、戦いは続く、が、用心棒はまもなく兵庫の刀に倒れた。あとからやってきた赤間一家も、たじたじとなって逃げていった。
子供たちはようやく目が覚め、和尚にまた何か頼まれる前に、と、兵庫と半次はすぐに旅立つのだった。



「武士の涙は苦かった」 (第二シリーズ 第22話)

ある城下町、暴君が忠臣の妻を奪おうとしたために騒動が持ち上がっていた。


「酒が嵐を呼んでいた」 (第二シリーズ 第23話

このエピソード、シリーズ中に数多くある「酒がらみもの」の佳作であります。なんといっても見ものは近衛さんの「珍演」これにつきます。
とある宿場はずれ、兵庫の旦那、登場から冴えない顔つき。懐に入れた手でわきの下をモゾモゾかきながら、横目で居酒屋を見ています。
例によって酒は飲みたし、金はナシ。兵庫には食い気より呑み気なのでしょう。せめて半次がいればと思うのですが、その半次はなかなか現れません。「ええいままよ。そのうち半次がくれば少しくらい金をもってるだろう」と勝手に一人決めしてサッサと暖簾をくぐります。その店は、卓上にグイ呑み茶碗が山盛りにしてあり、客は好みの茶碗を選べると言うシステム(?)の店でした。さて、店内に入って座ったものの、一文無しなので、しばらく兵庫はソワソワしています。ここから兵庫の顔のアップになり、約30秒、近衛の珍演が始まります。まず兵庫は卓上のグイ呑み茶碗をひとつ手に取ると、舌でペロペロなめ始めます。そして次に何を思ったかそのぐい呑み茶碗をア〜ンと口の中に入れ、目玉をグルグル回します。さらにグイのみをば口から出したり入れたり、お茶目な一人芝居が続きます。これがなんとも可愛い!思うにこれ、近衛のアドリブかも。
監督あたりが「ハイ近衛先生、ここんとこ適当にお願いします」てな注文だしたのかも。
で、店の娘が(掲示板でもよく話題にのぼる柴田美保子さんだったかどうか記憶に自信ありません)注文をとりにきたので仕方なく銚子を一本頼むのですが、まだ半次は登場しません。チビチビやってるうちに、ついに文無しはバレて店の親父は烈火のごとく怒ります。「番所へ突き出す」と息巻く親父。そこへやっと半次が現れました。彼の姿を見るや、兵庫は「はんのじ〜」と半泣きになってすがりつきます。ここらの演技もワザとオーバーにやっていて、腹の皮がよじれるくらいの可笑しさです。ところが半次も博打で負けて素寒貧。結局、その店で薪割りをやらされるハメとなります。この後、物語は、謎の侍たちに追われる浪人、船橋元が登場して、兵庫が彼を救うというふうに展開していきます。悪役の楠本健二(チャンバラトリオの南方英二のお兄さん)と対決するシーンでは、打ち込んできた楠本の刀を兵庫は受け止め、そのままカラカラと巻き取ってしまう技(「三匹の侍」で長門勇もやっていた)も見せてくれます。また、薪割りをしている兵庫に娘が「どうぞ、少しご休憩なさって」盆にのせた湯のみを差し出す場面があります。「ありがとう」と兵庫が湯飲みをとると、「おおっこれは」お茶と思ったら酒でした。「いやあ、気が利くなあ」
わずか一杯の酒を本当に美味しそうに、最後の一滴まで(あのアゴ上下運動の呑み方で)呑むところを、カメラ回しっぱなしで撮影しています。
たかが一杯の酒を飲むのにこれほど念入りな描写をするとは・・・と、こども心に思ったものでした。(キンちゃんさま 2003年4月2日)


「花太鼓が鳴っていた」 (第二シリーズ 第24話) 

<キャスト> 加川淳子 阿井美千子 岩田直二 江幡高志=太鼓松 尾上鯉之助 北原将光 水木達夫 相原昇 川浪公次郎 唐沢民賢
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=小滝光郎 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=小金丸輝貴 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=相原鉄郎 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=佐々木康

<大筋>
妹をそばめにと脅されて追ってから逃げる兄妹を、太鼓の力を借り、高石藩の隠居一派から守る。。
<あらすじ>

青木一之助と文枝兄妹は、侍たちに襲われていたところを兵庫と半次に助けられる。病身の一之助はもう長くない息の下で、高石藩のご隠居に、文枝をそばめに、さもなければお家を取りつぶすと脅され、そのために脱藩し、追ってから逃げ、領外の遠縁の元へ行こうとする途中であると話す。一之助は、兵庫に妹を頼むと、事切れた。
翌朝、兵庫、半次、文枝は、すぐに旅立とうとするが、既に、追っ手は数を増し宿改めを始めている。半次がおとりになり、兵庫は文枝を逃がそうとするが、双方とも鉄砲隊にはかなわずなかなか逃げおおせず、兵庫は、ある老人の家に、半次は、”太鼓松”という、一之助を旅籠まで運んでくれた祭り太鼓打ちの男の家に逃げ隠れる。
追ってはさらに厳しくなり、町にはも高札がかかり、二人は外へ出られない状況になってきた。
兵庫たちをかくまった老人は、ご隠居の悪行を知っていて協力的だが、やくざものの息子・卯吉は、高札にかかった5両の金ほしさに兵庫たちを売ろうとし、その時の物音に気づいた高石藩の侍と鉄砲隊が、老人の家に。ようやくのことで、追ってから逃れる。
一方、半次は、鉄砲の音に兵庫がまだこの宿場にいることを知り、松の押す大八車の干し草に隠れて応援に来る。それに乗って3人で逃げようと言うのが半次の考えだったが、かくまったものは斬殺と言うおふれが出たとなるとそうはいかなくなった。3人をかくまった旅籠の女将や老人が心配だ。
「じゃあ旦那、みんなやっちまうつもりか?」「おまえ、やっちゃ行かんと言うのかよ。こっちが斬られるかもしれんが俺は決めたんだ。おまえ怖かったら干し草にもぐってろ。」「何を言いやがる。焼津の半次は男でござるってんだ、俺はやるよ」
そこへ、隠居一団が鉄砲隊を引き連れて、老人と息子、女将を人質に、文枝を渡せとやってくる。
「今から顔を拝ませてやる。その前にちょいと片づけるものがあるんだ」兵庫が合図の徳利を落とすと、松が威勢良く太鼓をたたき始める。
その隙に鉄砲隊の4人を斬り、鉄砲を奪い人質を助ける。「どんなもんだい、これで怖いもんなしだ」「今から兄さんの敵を討ってやる」「祭り太鼓を道連れに冥土におくってやらあ」・・・。
ご隠居と取り巻きたちは、残らずこの世から消えた。だが太鼓はまだ続いている。
「だんなどうしようもねえな、まだ叩いてやがる」「まあそう言うな鉄砲の始末ができたのは太鼓のおかげなんだ。まっつあんはおめえなんかよりずっとましだったぞ」「なんてこと言ってるんだよ。しかしちげえねえや、腹立つけど憎めねえ野郎だ」
<見どころ>
江幡高志さん、少しつり上がり気味のギョロリとした眼。口をとがらせて上目遣いに人を見る独特のスタイル。数え切れないくらい、テレビや映画に出ているアクの強い脇役さんです。たいがいは、こすっからい役が多いのですが、この話では得意の太鼓で飛び道具に苦戦する兵庫のピンチを救いました。(キンちゃんさま 2003年3月1日)
タイトルは、万華鏡のようなレンズで撮影した祭り太鼓が画面中央でクルクル回転しているというもの。ズンドコズンドコというドラミングをバックに「花太鼓が鳴っていた」と文字が出ます。ゲストは江幡高志さん。顔見りゃ「ああ、この人か」と納得するはず。いつものスタイルで「おらぁ、太鼓松っちゅうだよ。」と言って登場します。太鼓を叩くのがメシより好きという設定で、もちろんお人好しの善人です。
で、ラストの殺陣ですが、兵庫と半次は、悪徳役人たちと、祭りの準備を終えた宿場はずれで対峙します。相手は十数人。数で言えば、兵庫の敵ではありません。しかし、向こうには鉄砲が三丁あり、兵庫もうかつに手を出せません。そこで、一計を案じた兵庫、太鼓松に、そっと太鼓のしつらえてある櫓に登るよう指示します。じりじりと迫る悪人たち。兵庫は顔色ひとつ変えず「むっふっふ」と笑っています。迫る火縄銃。と、そのとき、「今だ松っつあん!」と兵庫が叫ぶや太鼓の乱れ打ち。驚いて櫓のほうに気をとられた悪人たちの一瞬の隙を突いて兵庫が踊りこみます。
あっという間に鉄砲を持った三人を斬り伏せるのですが、このとき、斬られた三人は、全員、うまい具合に、空に向けて発砲してから絶命します。
そんな都合よくいくの?なんて野暮は言いっこなし。後は大立ち回り。で、このとき、いつものBGMは流れず、代わりに松のたたく太鼓の乱れ打ちが流れます。
斬りまくる兵庫と、恍惚とした表情で太鼓を一心不乱に打つ松とを、パッパッと歯切れよく交互に映しながら、殺陣は終わります。
BGMを排して、太鼓のリズムだけで見せた、緊迫感あふれる殺陣でした。(キンちゃんさま 2005年7月17日)


「忍びの者が待っていた」 (第二シリーズ 第25話) 

<キャスト> 加賀邦男 新城みち子 塩崎純男 松田智江 河野秋武=河野道三 
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=尾田耕太郎 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=佐々木康

<大筋>
兵庫と半次は突然忍びの者に襲われ、半次が大けが負う。
助けたのは医者の河野道三。半次の看病中、兵庫は、道三が夜中に薬を作っていたり、おかしな男が家の中にいたり、この庵を取り巻く怪しい気配に気づく。道三は、麻酔薬を作っていた。それをねらう忍びの者が2組いたのだ。
道三のお嬢さんへの恋心から自らが代わって麻酔薬を飲んだ半次は、やがて、皆が見守る中、眠りにつき、翌朝、目を覚ます。実験は成功した。しかし、外には、麻酔薬の処方をねらった忍びの者が・・。
<あらすじ>
兵庫の旦那が初めて忍者4人と戦います、。忍者はいずれも腕が立ち、兵庫も苦戦します。トランポリンやスローモーション撮影をふんだんに使って迫力満点。最後の一人は畳み返しの術を用いて仕留めましたっけ。
「先生よう、この薬苦えよう。今度は・・・もうちょっと・・・甘く・・・」(倒れる)忍者の手裏剣で重症を負った半次は河野秋武演じる医師に救われます。その恩返しに、医師が発明した麻酔薬の実験台に、命を張ってなるわけです。兵庫や医師がとめるよりも早く、サッと薬の入った湯飲みをうばい、飲み干してしまう半次。ちょっとカッコよかったですよ。(キンちゃんさま 2003年2月24日、3月2日)
とある山の中、のどかな山道をのんびり行く兵庫と半次の二人連れ。例によってバカ話をしながらの気楽な道中。と、急に兵庫が緊張した表情に。「ど、どうかしたのかい?旦那」「半次。気をつけろ。誰かが俺たちを見ているぞ」押し殺した声で兵庫がささやきます。「な、何言ってんだよ。誰もいねえじゃねえか」辺りをキョロキョロ見回す半次。「いいから黙って歩け。とにかく俺たちは誰かに見られてるんだ」そのとき、突如、二人をめがけて手裏剣の雨が!「あぶない!」目にも止まらぬ早業で抜刀するや飛んでくる手裏剣を次々と打ち落とす兵庫。ガキッ、バシッ、チャリーン。姿を見せない敵が実に不気味。兵庫は腰をグッと落として剣を体の正面に構えます。そのカッコよさ!ところが、手裏剣の一つが半次に命中し、彼は崖から転落して滑り落ちていきます。「おっ、半次!」攻撃が収まり、兵庫は半次を救出すべく、崖下に駆け下ります。半次は重傷でした。
そこへ、二宮金次郎みたいに薪を背負い、頬被りした異様な風体の男、河野秋武が通りかかります。「これはいかん。わしの家へ」半次は男の庵に運ばれ、手当を受けます。傷口を縫合するのを見て、兵庫は男が腕のいい外科医であることを見抜きますが、男は多くを語ろうとはしません。なぜか、こんな辺鄙な山中で娘と二人、ひっそり暮らしているのでした。兵庫と半次は、傷が治るまで、この庵にとどまることになりました。半次はこの後、片腕を吊ったまんまです。
ある日、兵庫と半次が散歩していると、またしても手裏剣に襲われます。「ここを動くな!」半次に言い聞かせると兵庫はダーッと走り出します。忍者どもが姿を現しました。黒頭巾三人です。兵庫は広い場所に彼らをおびき寄せました。スローモーション撮影によるすさまじい死闘が展開されますが、兵庫は相手の手を読むと言う感じで、あえて斬らずに追っ払うだけにとどめました。残された手裏剣を調べると、前に襲われたときとは別の形です。兵庫は忍者が二組いると断定しました。どうやら忍者たちの狙いは、兵庫たちではなく、道三だったようです。
その夜、兵庫は男を問いつめました。男はこの庵でひそかに麻酔薬の研究を進めていたのです。忍者ども(その主人)はそれを悪用するため、狙っていたのです。そして、今度は、娘が実験台になるのだと言うではありませんか。彼女ももとより覚悟しているとのことです。それを聞いた半次、助けて貰った礼に命がけの実験台を志願します。
娘周囲が止めるのを振り切って、薬の入った湯飲みをグーッと飲み干す半次。「先生よう・・・この薬・・・苦いよ・・・今度は・・・もっと・・・甘く・」半次はそのまま意識を失くし、倒れてしまいます。そのころ、庵の戸外では麻酔薬を狙う二組の忍者が鉢合わせ。黒頭巾三人と灰色頭巾四人です。
たちまち無言の乱闘が。黒頭巾たちは全員惨殺されてしまいます。灰色軍団強し!「みんな、奥へ隠れていろ。でるんじゃないぞ」兵庫はそう言い残して外へ飛び出します。さあ、月影史上に残る名勝負が始まります。忍者どもは腕が立ち、手裏剣、トンボ返り、宙返り、ジャンプなどで兵庫を苦しめます。トランポリンやスローモーションをふんだんに使った手に汗握るシーンの連続です。目覚めた半次も片手で闘いますが、歯がたちません。しかし、兵庫は相手の呼吸を計り、一人ずつ倒していきます。最後の一人を畳返しの技で仕留め、やっとケリがつきます。「イケね、旦那。また傷口が破れちまった〜」半次のセリフにホッとします。半次は完治するまで庵に残ることになりました。「半の字、俺は先に行くからな」このときの近衛の微笑む表情がまたイイ!こうしてこの物語は終わります。(キンちゃんさま 2003年3月27日 は修正2007年7月じゅうよっつ)
<見どころ>
半次のお嬢さんに対する純で懸命な心根がいじらしい。「つまらないやくざから足を洗って、いっそ、先生のお弟子にしてもらえねえかと思うんですがね」とお嬢さんに頼み込むところへ兵庫。「よせよせ。おめえは人並み外れたおっちょこちょいだ。医者にはむかねえよ。俺はな、なぜおまえが医者の見習いになろうと思ったのかちゃあんとわかってんだ」半次はなんとか旦那を口止めしようと焦る。「ほんとはお嬢さんにほれたんだろ」「旦那、頼むよもう」旦那がからかうので怒ると、「そんなに邪魔だったら出ていってやるよ」元気になるまでと思って残っていたと言う兵庫の話にぐっとなりながらも、「ああそうかい」と減らず口をたたく半次。兵庫が出ていこうとするとネコ。「お、こっちこい、こっちこい」と喜ぶ半次。
訪問販売の呉服売りに、お嬢さんの”許嫁”と言われいい気になる半次。金もないのに、「これあっしの贈りもんだ」と娘に渡すと、兵庫に金がないことを知らされていた娘は断る。すっかりメンツを無くした半次は、兵庫にまたしても目を剥く。
半次の純な恋心は、お嬢さんに恋人がいると分かっても薄れることはない。お嬢さんの代わりに自分を麻酔の実験台にと申し出るが断られる。「おまえさんにもしものことがあったら誰にわびるんだ」「誰にもわびてもらうことはいらねえ、自分でかってでたんだ。こっから先(指先)も文句はいわねえよ。俺だってひとつぐれえ世の中のためになることしたいや」そこへまた入ってきた兵庫を口止めしたい半次。「隠すなよ、半次。恋というものはいいもんだよ、たとえ片思いにしてもな」遂に、父娘が躊躇している間に、さっととりあげて飲んでしまう。
忍びの者とやり合った際に又傷口が開いてしまった半次に、「また介抱されたくてわざとやったな」といって二人で笑い、道三とお嬢さんの心配を和らげる。相棒が弱ったときの口は悪いが思いやったやりとりがいいよねー!
半次の懸命な気持ち、道三の医師として家族を犠牲にしても多くの人を助けたいという心根に胸をうたれた兵庫の、ワントーン低いしゃべりが、またいい。最後の腕の立つ忍者相手の殺陣もスピーディーな迫力!(あの構えはなんだ〜?)

見ごたえありましたね〜。半次さんも熱演で!手に汗握る場面あり、ほのぼのする場面あり、そして最後は旦那と半次が笑い合って!
よかったです〜。息子も満足気でした。きっとこれからも一緒に見てくれそうです(笑)(ひろちゃんさま 2009年5月31日)


「財布の紐がゆるんでいた」 (第二シリーズ 第26話)

女スリが2人づれの武士から抜き取った財布には大変な代物が・・。

「だめだよお兄さん、交通道徳は守らなきゃア」時代劇にあるまじきセリフであります。女スリ、宮地晴子さんが、駕籠に乗って木にぶつかった半次に言ったセリフ。もちろん半次は財布を掏られます。(キンちゃんさま 2003年3月2日)
セクシーな(すみません。他に言葉が見あたらないもので)女スリ、宮地晴子は、掏った財布がもとでヤクザから命を狙われます。それを兵庫と半次が守ってやるという明朗編です。このエピソード自体、水準以上の面白い作品なのですが、ラストに女性の近衛ファンが手で顔を覆って赤面すること間違いなしのケッ作シーンが用意されているのであります。ヤクザを全員やっつけた兵庫の強さにすっかりまいってしまった宮地晴子。命の恩人ということもあって、「ありがとう〜旦那〜強いのね〜」と兵庫にしなだれかかってきます。女は苦手の兵庫、思わず「あわわわ」と逃げようとします。そのとき、宮地が兵庫の袴をしっかりと掴んだものだから、そのままビリビリビリッ!袴の後ろ半分が見事に破れ、あわれ、兵庫のお尻がむき出し(もちろん生尻ではないですが)となります。私はかねがね袴の中がどうなっているのか不思議でした。
なんと!上に着ている着物がひざの上あたりでプツンと切れていました。私はてっきり、普通の着流しを裾でからげているのだとばかり思っていたのです。それなのに。目の前の兵庫はいつもの「雪月花」のワンピースで立っているではありませんか。兵庫は完全にパニック。「うおお、半の字!」半次は「うっひゃっひゃっひゃ〜」と大喜び。兵庫のお尻をペチッと叩くおまけつきです。いやあ、それにしても、確かにこの目で見ました。けど、本当は絶対に袴の中ってあんなミニスカートみたいになってないと思います。これも「素浪人シリーズ」一流のユーモアなのかな?
ちなみに、この話は前回の「忍びの者が待っていた」からの続きということを強く意識しており、手裏剣の傷の養生をしていて遅れた半次が、駕籠をとばして旦那に追いつこうとしていたという形をとっています。兵庫も開口一番、「思ったより早くよくなったんだな」と言って、半次をねぎらう(?)珍しいシーンがあります。(キンちゃんさま 2003年4月8日)







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