素浪人ばなし(月影の巻五)

見れぬなら、読んでみよう「素浪人シリーズ」のあらすじ。
月影の巻一・五 / 花山の巻 / 天下の巻 / いただきの巻 
みなさまの記憶に頼るという、管理人お得意のパターンで行く予定です。
こんな話があった、このへんだけ覚えてる、ここ違うかも、何でも結構です、
多少の間違い、不安は物ともせず、掲示板に書き込んでくださいませ。
ちょっとだけご注意:引用文の場合は、著作権の関係から、全文書かないでね。部分引用はOK。
みなさまご自身の言葉で語る場合は、何でもOKです。
Merci beaucoup!
お名前の後の(NC)は、ノンクレジットで出演者として紹介されてない俳優さんです。
キャスト表については、中村半次郎さまのご協力をいただきました。

 ●各お話に出てきたが、タイトル横に貼り付けてあります。(相談屋さま、きざくら&ようめいしゅさまのご提案)


「黒い筈が白だった」 (第二シリーズ 第79話)

凶悪な殺人事件で、大酒のみの仙太郎に疑いがかかる。


「一人残らず臭かった」 (第二シリーズ 第80話)

兵庫と半次が泊まろうとした宿が、見知らぬ武士たち取り囲まれ、泊まり客らは身を震わせていた。武士たちが誰を狙っているのか?
誰一人として口を割らない。

市村昌治さん、この人も一度見たら忘れられないお顔の脇役さんであります。ドングリ眼とエラの張ったマスクが売り物。
劇中では半次兄さんは彼のことを「タコ」とよんでらっしゃいましたが、どちらかというと「オコゼ」だと思います。(キンちゃんさま 2003年3月1日
(いっとう怖いシーンは?という話題で。3位「野に幸せが・・・」の刺客乱入シーン、2位「大吉」の「男が男に・・・」の虚無僧登場シーンにつづいて1位がこのお話の刺客襲撃シーン。深夜、川止めのためにすし詰め状態になった小屋の戸を蹴破って四人、同時に裏口の戸も蹴破ってこれまた四人、抜き身で押し込んでくるのです。つまりはさみうちです。蹴破った戸口から、外の景色がチラッと見えるのですが、これが真っ暗な闇。そこへものすごい豪雨が滝のように降り注いでいる。怖かったです。で、三つに共通なのは、いずれも「無言」であること。人間、無言になったら怖いでっせ。(キンちゃんさま 2009年7月24日)


「笑う角には鬼が来た」 (第二シリーズ 第81話)

半次が悪党に間違えられ、兵庫が悪党をとらえる。


「マリモもあきれる恋をした」 (第二シリーズ 第83話)

美しいアイヌ娘に惚れたり悪徳商人を懲らしめたり。

日本人とアイヌ娘の恋、アイヌ娘は言い伝えのある温泉に二人で入って愛を誓い合うといったアイヌ伝説を披露した。
アイヌ民族同士の会話が出て下に字幕が表れれ洋画を見ている気分だった。(清貴さま 2004年2月26日)
「マリモもあきれる恋をした」一部分だけ思い出しました。アイヌの家か小屋みたいなところで、部族の長みたいな人物がいた。その長が酒を出すと言ったら兵庫が例のごとく腹一杯おべんちゃらを言う。長は、お世辞を言わなくても酒は出す。と言ったとたん頭をかくシーンがありました。半次が同席していたかどうかは思い出せない。多分居ったと思うが、誰か覚えている御仁がおられましたらどうかご教示を。観てみたいなマリモちゃんを(yukimente2005さま 2013年6月5日)


「はるばる秘密が追ってきた」 ((第二シリーズ 第84話)

この作品は、「マリモもあきれる恋だった」同様、北海道ロケです。高い費用出して北海道くんだりまででかけたのだから、二、三本撮らにゃあ損だ。なんてみみっちい理由ではないでしょうけれど。とにかくロケを強調してか、やたら広い景色の中で展開されます。ゲストの藤岡重慶は、息子(さて、この子が金子光伸だと思っていたのですが・・・)と二人で荒涼とした平原の小屋に住んでいます。悪役のときと違い、藤岡さんはキリッとして、意志の強い厳格な男を演じます。毛皮をまとい、猟師の恰好をしていますが、実は侍。藩の不正の証拠を握ったため、狙われているという設定です。妻を殺され、息子と二人で逃亡生活、身を隠していたのです。そして、藩の不正を正そうと機会をまっているのです。この父子に兵庫と半次が力を貸し、藩の刺客をやっつける、というのがおおまかな(ホンマにおおまかやな)ストーリーです。ラストで、遂に藩の追っ手が親子に迫る場面の描写は、サスペンスに満ちたカメラワークで秀逸でした。追っ手の刺客は二人。編み笠(十兵衛がかぶっている深いヤツでなく、阿波踊りや佐渡おけさを踊るときに女性がかぶるペッタンコのヤツです)をかぶり、旅装束で、二方向からゆっくりと小屋に近づいてくるのです。
北海道の広い地形を利用して、望遠レンズで撮影。じりじりと接近してくるのが不気味でした。二人という少人数からも分かるように、この刺客、二人とも相当な遣い手なのです。一人は半次と藤岡重慶が必死で闘って、なんとか仕留めます。もう一人は兵庫の担当。半次がカメラ手前にダダッと駆け込んできてその向こうでにらみ合っている兵庫と敵の姿を、固唾を呑んで見守るという構図も新鮮でした。
この作品、斬る人数は強敵二人。土佐ロケの大吉「風の岬に・・・」も二人。きっとカラミの人たちを大勢連れて行く予算がなかったんダァー。
刺客の手がついに伸びてきて、藤岡が「もはやこれまで」と戦う決心をしたとき、「父上、これを」と言って、刀を渡すところなんざ、金子(吉延)クンだったと思うんですがねえ。(キンちゃんさま 2005年6月4日)


「タダ酒のんでも冴えていた」 (第二シリーズ 第85話)

二人がある堤防工事の不正を暴く。


「似ていた相手が悪かった」 (第二シリーズ 第86話)

半次は与力に頼まれ、顔が似ている獄死した大悪党円蔵の身代わりになる。円蔵の手下をおびき出す作戦だ。
唐丸かごに入れられた半次ら一行に兵庫、も加わり街道をぶらりぶらり。


「寝言がケガのもとだった」 (第二シリーズ 第87話)

旧友にあったばっかりに人さらい事件に巻き込まれる二人。


「どっこい坊やは生きていた」 (第二シリーズ 第89話)

亭主が、人買い一味とグルになって妻を売り飛ばそうとする。


「お酒が海を渡っていた」 (第二シリーズ 第90話)

タイトルはドライアイスの煙の中、ガラス製の洋酒のビンが真ん中にデーンと置かれて、そこへ「お酒が海をわたってきた」とクレジットが出ます。
(キンちゃんさま 2004年2月23日)
半次が旅先で知り合った人から「ギアマン」と言う洋酒を手に入れるがそれが事件を呼ぶ (清貴さま 2004年2月22日)

「乞食が一番いばっていた」 (第二シリーズ 第95話)

半次が払えない酒代の不足を払ってくれた利兵衛は、本職が乞食。おまけに兵庫と半次に酒をおごる。
しかし、彼の知らぬ間に、盗んだ茶碗が荷物に隠されていた。


「泣く子とお酒に弱かった」 (第二シリーズ 第96話)

居酒屋の兵庫の元に、旅籠吉野屋から侍に追われてきた半次が飛び込む。襲われる理由はない。
その後、吉野屋で働いていた男が侍に斬られていた事実が分かった。何かあると見た兵庫は、半次とその夜、吉野屋に泊まるが、不思議なことばかりが起こった。


「やっぱりお前はバカだった」 (第二シリーズ 第97話)

半次が助けた行商人たちは、スリ団。怒る二人。


「嫁ももらわずガキがいた」 (第二シリーズ 第98話) 

<キャスト>
 太田博之=星影兵之助 牧冬吉=居酒屋梅の屋の朝吉おじさん事、星影兵衛 沢宏美 楠本健二=武者修行と称して悪行を働く道場主・安原彦太郎 汐路章=鬼坊主の玄海 国一太郎=酔って兵之助に絡んだ安原の門弟 千原万紀子 波多野博(NC)=鬼坊主玄海の仲間のヤクザ
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=川端清員 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美枝 装置=松井三郎 助監督=久郷久雄 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=服部尚雄・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>
ネコ嫌いで十剣無統流と言えば間違いなく兵庫、と言う半次と若侍の早とちりで、兵庫が姉弟の父親に間違われる。
<あらすじ>
大野宿へ行く途中、兵庫は、絡んできた鬼坊主の玄海の一味を軽く伸したのだが、その後を通った若侍は、それを見ていたく感心。
たいした腕前の御仁に違いないと、そこにやってきた半次に話す。半次が、これだけの腕前で、この街道をつい半時前通った浪人といえば、兵庫に違いないと見当すると、若者は、是非、その御仁に会わせて欲しいと頼む。
若者の名は星影兵之助(「なんだかどっかできいたことのある名前だね?」と半次)、母は他界し、父・兵衛は、兵之助がまだ生まれる前に江戸に剣術修行の旅に出て、姉と2人で暮らしている。
「あのお方は、何流をお使いになるのです?」「旦那野郎のことでござんすか。ちょいと珍しい流派でございましてね。十剣無統流の達人なんでございますよ」十剣無統流ときいて顔色の変わる兵之助。「そのお方の名前は何と?」「月影兵庫ってんでござんすがね」「似ている」そしてさらに半次に問う。
「半次殿、その月影殿は江戸で剣術の修行をしたとは言っておられませんでしたか」「その通りだ。下谷の方の道場で何年か師範代もしてたって言ってましたよ」「母上の言葉通りだ・・・半次殿」「へいへい」「もしや・・・もしやその月影殿とやらは・・・ネコ嫌いではありませんか」今度はびっくりしたのは半次。「こりゃどうなってんだ。そのとおりでござんすよ」「父上だ!」「ち、父上!?」「まず父上に間違いない。父上はやっぱり生きておられたか!」
兵之助は、兵庫の名前が似ていることと、父親も十剣無統流の修行のために江戸にいた事、そしてネコ嫌いまで同じ兵庫を、父・星影兵衛に間違いないと断言する。
半次も、ここまで来たら信じないわけには行かない。「それによ、旦那ぐらいの年だったら兵之助さんくらいの子供があっても不思議じゃねえし。何もかもぴったりの上にネコ嫌いと来ては疑う余地がねえや・・・そういや旦那大酒ぐらいだったが、あの酒も女房子供を捨てて剣の道に走った寂しさを紛らわすための大酒だったにちげえねえ」としんみり。「そうですか。父上は寂しさを紛らわすためにそんな大酒を飲むようになっていたのですか」「そうなんでござんすよ。そういや旦那、いやお父上はですよ、飲んでる最中にふっと寂しそうな面しやがって・・いや、寂しそうなお顔をしなさることがあったんで」
剣のために妻子を捨て、しかも十剣無統流で自分の名前を天下にあげる事ができずに失意のうちに、気心の知れた半次と日本国中をさまよっているという履歴まで勝手に作り出し、 2人は早速、半次を待つ兵庫のいる居酒屋・梅の屋へ向かう。
もちろん、兵庫には身に覚えがない。が、違うと言っても、兵庫がばつが悪くて見え透いた芝居をしているのだと思いこんでいるのだから、始末に負えない。姉の雪乃にもあってくれと、無理矢理連れて行かれる。
「だいたいおめえは、旅ガラスのくせに独り者と女房持ちの区別もつかないのかよ。毎日顔をつきあわせているこの俺が、女房子供持ちに見えると言うのかよ」「そりゃ見えねえよな」半次は段々、勘違いだと気づき始める。
兵之助の姉に間違いを説こうとすると、そこにネコ。ネコを怖がる兵庫を見て、姉の雪乃まで、兵庫を父親に違いないと確信してしまう。「お父様」「父上」とすがりつかれて、半次と”送別会”をするからと梅の屋へ逃げ出す兵庫。
しかし、本当の父上は、別にいた。梅の屋の板前の朝吉だ。朝吉は、同じ大野宿で父と名乗れずに暮らしていたのだ。
そこに、雪乃が、兵之助が酔った侍に絡まれていると助けを求めに来て、朝吉が、兵之助の危機を救う。そのまま、姉弟の母親の墓に向かい、真実を告げる朝吉。それをきいた兵之助姉弟は、今度こそ、父上を見つけたのだった。
そこに、先ほどの侍が、武者修行と称して悪さを働いて回る道場主・安原を連れてやってくる。・・・
「見事だったよ、あんたの十剣無統流、上段霞斬りはまさに入魂の一刀だったよ」「これも、あなたのおかげです。さっき、兵之助を助けてくれたおりのあなたの剣が、私の心にカツをいれてくれました」改めて再会を喜ぶ親子。
「良かったじゃねえか、ほんとの父上が分かってよ」「ああ良かった。おれはおまえにまで早とちりされてよ、一時はどうなるかと思ったぞ」「俺も早とちりというか、生涯の大とちりだな」「何が生涯の大とちりだよ、しょっちゅう大とちりばっかりやっているくせに」「しょっちゅうやってるとはひどいじゃねえか「なんだ」わははは・・と笑い出して、親子の再会を邪魔しないように声を潜める2人。
<見どころ>
兵庫にやられる鬼坊主の玄海。
兵庫に「この野郎」と立ち向かうと蹴飛ばされ、また立ち向かうと蹴飛ばされ、遂に、自ら立ち向かったまま倒れてしまった玄海、そこに落ちていた玄海の財布の中を見ると、何と3両もの大金が。「こりゃ驚いたな、3両もある。しかしなんとまあ、全財産30文そこそこの俺に3両近くも持ってる奴が酒手をたかるなんて、話が違うわい。世の中まちがっとる」そこで玄海が気づき、「あのですね、その財布は俺のもんだ」「地回りのくせして3両ももちやがって」「頂戴、頂戴」「ほれ」安心して財布を握り再び気絶する玄海。
兵庫と対面した兵之助と半次。
「兵之助でございます」「半次、この若いのは何を言ってるんだ」「兵之助さんは血を分けた子供じゃねえか」わらいだす兵庫。「今はただ兵之助と呼んでください、父上。兵之助はまだ夢を見てるようです。こうして父上にお会いできるとは、兵之助は幸せ者です」と涙ぐむ兵之助。「弱ったなあ、こりゃあ」「おい旦那、そう照れるんじゃねえよ。さあ、しっかり抱いて名前を呼んであげなよ」「このバカ野郎。早とちりの脳天すっからからんの半次めが!」「どうして兵之助すまなかったと素直に言えないんだ、この」「人違いだと言ってるじゃねえか」「人違いだと、とぼけるな!父上野郎が」と、てんでらちが明かない。
「父上」と呼ばれて不承不承兵之助の住まいに向かう兵庫の、いかにも迷惑そうな顔が、何となくかわいい。
最後の武者修行の道場主や門弟とのシーンでは、兵庫が上段霞斬り、そして朝吉が上段霞斬り、半次まで、上段霞斬りのまねっぽいやつがでてくる。牧冬吉さんのシリアスで剣が使える役は、素浪人シリーズでは珍しい。すきっとした殺陣シーンは、「隠密剣士」の時のようで懐かしい。
<迷子のお話>にも少しあります。(以上 じゅうよっつ)
「嫁ももらわずガキがいた」「空前絶後の恋だった(99話)」見ました!いや〜、どっちも面白かった〜。というか、兵庫(このちゃん)の魅力満載!!
刀を「カチッ」と峰の方に返すところが本当にかっこいい。というか、今さらですが、刀の扱いがすべてにおいて本当にかっこいい!!
それから「嫁ももらわず・・」の最後のシーンの人差し指を顔に持ってくるところが超超かわいい〜!!ラブリーです(*^_^*)。
牧冬吉さんの殺陣って初めて見ました。お墓参りをしている時の背中がスッとして、本当に姿勢がいいですね。(鈴雪さま 2009年8月30日)
<旅の場所>
大野宿(大和五条=現在の奈良県五條市の城下ちかく)


「空前絶後の恋だった」 (第二シリーズ 第99話) (兵庫に)(半次に)(いれずみ)

<キャスト> 高森和子=兵庫に女傑とほめられたおしま 園佳也子=料亭”とみや”の女将”早合点のおたか” 土方弘 有川正治=いかさま博打の喧嘩で兵庫が痛めた浪人 池田忠夫 波多野博=いかさま博打のヤクザ 白川浩三郎 芝本正
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=川端清員 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美枝 装置=松井三郎 助監督=久郷久雄 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=服部尚雄・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
街道でおしまに一目惚れした半次、誠心誠意つくし、遂におしまも半次に惚れた。しかし、夫婦になる決意までしたおしまの背中には、半次の嫌いな女郎蜘蛛の刺青が・・・。
<あらすじ>
「棒で頭をかちーんとぶん殴られた」ような衝撃で、街道を行く半次が一目惚れして「本格的にしびれ」て「頭が火のように燃え」た相手はおしまねえさん。
しかし、おしまは、半次の告白などてんで相手にせず、「おふざけでないよ。ここらにすむムジナにでも惚れるがいいさ」と啖呵を切って去っていった。
半次は「まだ燃え残りがくすぶる」頭を抱えて、3年前の春先に2人で来たという宿場の居酒屋で兵庫を待つが、懐かしがる半次とは反対に、オヤジはまったく覚えてないし、旦那もなかなか姿を現さない。
それもそのはず、兵庫はそのころ、半次の一目惚れの相手のおしまと、懇意の料亭で「五臓六腑が感激して後をやいのやいのとせがむ」勢いで飲んでいた。おしまがいかさまの地回りを巴御前の再来かという強い腕で痛めているところを兵庫が目撃し、用心棒の先生が出てくるにいたって助太刀した礼だった。
クモがあらわれて半次のことを思い出しながらも飲み続ける兵庫、一方、もう一時も待たされている半次は「街道でよれよれのじいさんかなんか助けて一杯ありついたに違いねえ」とネコを放り投げながらいらいらし始める。ようやく2人のことを思い出してきた居酒屋のオヤジが、兵庫らしい浪人が小粋な女と”とみや”という料亭に入っていったと言いだし、半次がその料亭に怒鳴り込む。料亭のおかみ”早合点のおたか”によると、2人は今夜にでも祝言をあげそうだという熱々ぶりだときき、女将が止めるのもきかず旦那のいる部屋へ。旦那は案の定、楽しげに飲んでいた。しかも相手が何と、おしま。女将以上の早合点で、半次はおしまに、「ふざけんのはたいがいにおし。男のおっちょこちょいは大嫌い。おんもでお泣き」と再びあきれられ、形勢不利を打開すべく、旦那を別室に呼び、真意を確かめようとする。
そのときおしまが差さしこみで倒れる。何とか取りなしてくれと頼む半次に、兵庫は、「半の字、これはひょっとするとおまえにとっちゃ、またとない機会かもしれんぞ。おまえ行ってな、おしまさんを介抱するんだよ。通り一遍じゃダメだぞ、献身的に看病するんだ、献身的に。そうすりゃおしまさんの気持ちも変わるかもしれんぞ」「ようし、俺行って来るよ、献身的にやってくるよ」意気込んで部屋へ向かう半次。「あのバカ、まるで敵討ちにでもいくように張り切りやがって」
兵庫に言われて、半次は、夜通しおしまの背中をさすり、懸命におしまの看病をする。
「半次さんてほんとは親切な方なのね。あたしって人を見る目がないバカだったのよ」だんだんと半次にほだされてくるおしま。
明け方、お茶を持ってきた半次に、おしまは昨日のひどい仕打ちを謝り、「こんなに親切にされたこと初めてなんだよ」と泣き、半次さんさえよければ、と言う気持ちになる。
しかしおしまには、夫婦になる前に半次に告白しなければならない事があった。「浅はかだったんだよ」と後ろを向いて脱いだ背中には、紅蜘蛛の入れ墨が。半次はあわてて料亭から逃げ出し、兵庫は笑いがこらえきれない。
「これだけの顔を持ちながら女とは縁がねえんだよ。この世には神も仏もねえのかよ」と嘆いている半次と、「おまえのところは先祖代々からそう言う血統なんじゃないのか」と笑いがとまらない兵庫、そんな事を話しているうち、向こうで、昨日のいかさま野郎を相手におしまが劣勢だ。尻込みする半次に、「おまえ本格的に一目惚れしたおしま姉さんを見殺しにする気か」「分かったよ」「月さま、半次さん!」「およよ(と逃げる半次)」連中は、以前におしまがこらしめた悪行三昧の川北一家に雇われたらしい。・・・(半次はおしまにすがられるたび、「わあ〜」と斬り合いどころではなくなる)・・・
「月さま、ありがとうござんした。またおかげで命拾いをしました。これを機会に必ず堅気に戻ります」「是非そうしなさい」「はい。(半次の方へかけよる)半次さん」「おいおいおい、、なんだよ(と逃げ腰の半次)」「そんなに邪険にしないでおくれよ。必ず足を洗うから、もう一度考え直しておくれ。クモの入れ墨は目をつぶっておくれよ」「と、と、とんでもねえよ」「そんなつれないこと言わないでおくれよ」「そばに寄るんじゃねえ、よるなってば」「なんとか目に触れないようにするから、ね、半次さん」「助けてくれ〜」「半次さん」逃げ出す半次を追いかけるおしま。「半の字の奴、とことん紅グモにたたられやがって、しまらん奴だ。あはははは」と笑う兵庫の前にネコが。
<見どころ>
半次兄さんが珍しくもてるおしまとの会話。徹夜の看病に感激したおしまは
「昨日の夜のことほんとに怒ってない?」「昨日の夜のこと?」「大バカなおしまがあんたの悪口言ったことよ」「そんなこと、これっぽっちも思っちゃいませんよ」「よかった。そいじゃもう一つきいてもいい?」「ああ、よござんすよ」「昨日の昼間、街道筋であたしのこと一目惚れしたっていったでしょ」「ひゃははは(と頭をかく半次)」「あれ、ほんと?」「ほんとだなんてひでえや。俺、おしまさん一目見たとき、脳天がかあーっと燃えしまってそいで、体にがたがきちまってよ。そりゃもう、ものすごい一目惚れで、今でもこれっぽっちもかわっちゃいないんだ。・・あ?俺、胸の内うち明けちゃった。アアア、こっ恥ずかしい」「半次さん、それほどまでにあたしのことを。嬉しい。好きだよ、あたしも半次さんが死ぬほど好きになっちまったんだよ」「ほ、ほ、ほんじゃ俺を?」「あい!」そんなふうに献身が稔った半次は、天にも昇ったような心地で旦那にそのことを告げる。
その後、おしまは、兵庫と半次の前で告白。「おしまは半さんの真心に打たれましてね、半さんさえよければ夫婦になろうと思うんですよ。」「ほお!そうかい。そりゃあ、めでたいというか、不幸というかまあ。」「おい旦那!」「いやあ、めでたいではないか」やくざの足も洗うと決意するおしまは、「実はね、一つ断って置かなきゃ行けないんだけど・・・」と、入れ墨したことをうち明ける。「浅はかだったんだよ。ひところは紅グモのおしまと言われて得意になってね」「べ、紅グモ?」後ろを向いて着物を脱ぎ、背中を見せるおしま。「うわ〜でたあ!」そこにはでっかい紅グモの入れ墨が。(以上 じゅうよっつ)
「空前絶後の・・」では、半次にいさん、惜しかったですね〜。今度こそ相思相愛の人と祝言を挙げられるかと思ったのに・・。「入れ墨の蜘蛛ぐらい、生きていないんだし、いつもは見えないんだからいいじゃない!」と一瞬は思いましたが、もし自分だったら・・と考えた時に、相手の背中に、自分がこの世で一番嫌いなものがあったら・・やっぱりダメかもしれないです。(鈴雪さま 2009年8月30日)



「尼さん酒を飲んでいた」 (第二シリーズ 第100話) 

<キャスト> 坪内美詠子養照院の尼さん・安寿(thanks トプ・ガバチョさま) 田島和子 千葉敏郎=郷士・荒川十蔵 鶴田桂子 阿波地大輔=荒川の家臣・半九郎 有馬宏治 高橋芙美子 崎山陽要 西田良(NC)=荒川の家臣
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=羽田辰治 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=川端清員 記録=佐藤利子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美枝 装置=松井三郎 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=服部尚雄・宮川輝水 監督
長谷川安人
<大筋>
兵庫は、侍に追われている、縁切り寺へ駆け込む寸前のおちよを助ける。おちよの夫は、前夫の弟で、兄嫁に惚れて兄を毒殺していた。
一方、半次は、縁切り寺の前で、寺の尼さんにおだてられて産婆を呼びに行かされた。
<あらすじ>
半次が、養照院の尼さんから「粋なお姿どすなあ」と呼び止められたのはいいが、「はやく産婆さんを呼んできておくんなはれ!」とせかされ、何がなんだか分からないまま神経痛の産婆さんを背負って戻ってくると、寺の前には、兵庫がいる。兵庫は、街道で家臣の侍たちにいやいや連れ戻されようとする士・荒川家の嫁おちよを助けて、ここまで連れてきたのだ。2人がうろうろしていると、今度は尼さんから「急いで産湯をわかしておくれやすな」と言われ、2人は台所で湯を沸かすことに。(クモが出てきて半次がいなくなったため、兵庫もしょうがなく火をくべることになる)。これ以上、こき使われてはたまらんと、出ていこうとする2人を「一緒にお祝いをしておくれやすな」とまた尼さんが呼び止める。
「お酒でも飲んでいただこうと思ったのに・・・」の誘い文句に兵庫が乗らないわけがない。その晩は2人して、尼寺の世話になることになった。
しかし、兵庫には鯛、半次はめざし、翌朝も、袂を持ってもらい手ぬぐいを差し出される兵庫に続いた半次は、「だだっ子みたい」とかまってもらえない。えらい差別に半次はちと面白くない。
兵庫が助けたおちよは、士・荒川家の長男の嫁に来たが、夫が1年足らずで亡くなり、その後、腹違いの弟・十蔵の嫁になったのだが、十蔵が兄を毒殺したことが分かり、この縁切り寺の尼寺に逃れてきたのだった。
乗りかかった船と、兵庫が、十蔵の毒殺の証拠をつかもうと荒川の屋敷に入り込んで調べ、半次が昨日生まれた赤ん坊の調子が悪いと産婆さんを迎えに行っている間、おちよをあきらめきれない十蔵は、家臣たちを尼寺によこす。おちよは、おちよ付きのおみつという女中が人質同然に捕らわれているのを知り、自ら屋敷に戻る覚悟をする。
産婆を尼寺に置いて、慌てておちよの後を追いかける半次。しかし、おちよとおみつを守って、懸命に家臣たちに立ち向かう半次も、すぐに形勢不利になってくる。危機一髪の時、兵庫のクルミが飛ぶ。兵庫は、毒殺に使った薬と、薬問屋と十蔵のやりとりを示した手紙を証拠に突きつけ、十蔵に上段霞斬りを見舞わす。十蔵は、腹違いの兄との扱いの違いを恨みに思っていたのだ。
無事、尼寺を出て実家に戻るおちよとおみつ。頭と腕に包帯をした半次と兵庫が、尼さんとともに、2人を見送る。
「すっかり世話になったな」「あんさんお強おすなあ。お顔までわての初恋だっお方にそっくりどす」「そうか。どうりで最初に俺の顔を見たときに。ふうむ。俺に似ているとなると、きっと相手も高貴な顔つきだったんだろうな。いってえ何をやってたんだ。」「京の六角下がったところで馬力引きしていた”ちょうやん”いうお方どした」「何?馬力引き」「あっははは!旦那あ!とうとう馬力引きのちょうやんになっちまいやがった」と、半次は嬉しそう。
<見どころ>
産湯をわかすため懸命に火をおこそうとする半次だが、火が消えそうなのに火吹き竹が見つからない。「旦那、火吹き竹、火吹き竹」「どっかにおきわすれたんだろうがい!」「俺知らないよ」「落ち着いて考えて見ろ、俺はたしかにさっきどこかで見かけたぞ。(確かに。旦那は自分でもっているのだ!)そこらにねえのか」(と二人して辺りを探し回る)「ああ、いけねえいけねえ、消えちまう」(2人で竈に向かってふーふー)「あれ?おい旦那、」「なんだい」「なんだこれは!これ!」(と旦那が手にもつ火吹き竹を取り上げる)「あったじゃねえか(←このときの旦那の顔がかわいい)」「俺にバカだとか落ちつけだとかこきやがってほんとにまったくこのお」「ぐずぐず言わずに吹くんだよ。俺だってお産の手伝いなんか初めてだい」その後、クモが出てきて兵庫が代わりに湯を沸かすことに。
兵庫のいない一人きりで、おちよとおみつを守ろうとする半次兄さん!頭と腕に怪我を負いながら必死で6〜7人の侍相手に戦う。弱いけど、その男意気がかっこよくて、思わず「半次兄さんがんばれ!」
細かいところで、面白いところがたくさん。例えば、冒頭、たちションの旦那が、「ウルシでもあったかな。道徳的に悪いこととは分かってるが・・・」と手を掻き掻き出てくる。しかしまあ、そんなことまでやらせるとは・・・。半次兄さんが産婆さんを背負っ尼寺に戻ると、「早く!」早く!」と急かされ、「産婆が壊れても知らないぞ」ナイスセリフ!
<旅の場所>
下和田(山梨県)

「見当違いもひどかった」 (第二シリーズ 第101話) 

<キャスト> 矢野潤子 花ノ本寿=駆け落ちの男・弥平次 小笠原弘 永田光男=旅籠に乗り込んできたヤクザの親分 松岡与志雄 入江慎也 松田春子 岡本隆成=1両を落とした三吉(thanks トプ・ガバチョさま) 三田一枝=モテモテ団子を勧める茶店のばあさん
(thanks トプ・ガバチョさま) 香月凉二=お菊を追いかけてきたやくざのリーダー格
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=羽田辰治 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=川端清員 記録=佐藤利子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美枝 装置=松井三郎 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=服部尚雄・宮川輝水 監督=長谷川安人
<大筋>
狂言スリと見当をつけて、兵庫と半次が旅籠の隣の部屋から見張る若い男女、実は、気分次第で奉公人を手打ちにする殿様から逃げ出した女と、相思相愛の男だった。
<あらすじ>
街道で、半次は頭巾をかぶった若い女を、兵庫は若い男を、それぞれ、2〜3人のやくざ達から追われているのを助けるのだが、2人とも、助けられた後、礼も言わずに姿を消した。
その話を、今日から”モテモテ団子”を売り出した茶店で珍しく酒ではなく茶を飲んで話していると、茶店のばあさんが、それは、狂言スリではないか、この辺りには、男と女が首領の、追いかけられた振りをして懐中物をするスリがいるのだと話す。2人とも急いで懐を調べてみるが、幸い何も摺られてはいなかった。
その日入った小さな宿場の1件しかない居酒屋で「おれと居酒屋とは親戚づきあいも同じなんだ、昼間から親戚の心配して何が悪いんだよ」と、半次を懸命に誘う兵庫だが、そこに男の子が泣きながらやってくる。三吉というこの子は、父親の2ヶ月分の給金・1両を受け取って帰る途中、無くしてしまった、家に戻れないと言うのだ。
同情した半次が、若い男か女が誰かに襲われるところを見なかったかと三吉にきくと、そんな気もする・・・と言うので、きっと三吉の1両は、狂言スリの仕業に違いない、と、三吉を家に連れて行ってやり、両親と三吉に、そのスリから1両を取り戻してくださいと拝まれる。
その手前、居酒屋で、向かいにあるこれも宿場に1件しかない
旅籠・吉田屋に、その若い男女が入って行くのを見張ることにする。もちろん、兵庫も、「ちびちび飲みながら」の見張りとあり大喜び。しかし、肝心の男女は入ってこず、20本も徳利を空けた頃、兵庫が、何も遅くなって旅籠にはいるとは限らない、もう早くに入っている事だってあると言いだし、旅籠の番頭にきくと、たしかに、もう既にそれらしい男女が入っていた。
訳を話して隣の部屋を取った2人、隣とのふすまをそっと開けてみると、そこには、「お菊さま」「弥平次」と熱々ぶりの2人が。とても、スリの頭とは思えない。駆け落ちか?心配してやってきた番頭も、「それ(狂言スリの話)は私も、年寄りからきいたことがございますが。なにしろ40年も前の話でございますからね」何と、茶店のばあさんが昨日の事のように話したスリは、40年も前のことだったのだ。
そんなとき、隣に昼間2人を襲っていたやくざらが入って来て、2人を無理矢理引き離し、連れていこうとする。
やくざらを追い払い、訳を聞くと、菊は、下田御殿の殿さま・下田正元が狩りに来た折りに目にとまって以来奉公させられていたのだが、そこの殿様は気分次第で奉公人を殺してしまうこわい殿様で、菊も返事が悪いと髪を剃られてしまった。弥平次はそんな菊に同情し、一緒に逃げようとしてくれたのだが、菊がここで疲れきってしまったのだ。自分はもう覚悟したが弥平次だけでも、という菊を励まし、2人を逃がしてやろうと旅籠を出ると、そこに、先ほどのやくざらが正元とともに戻ってくる。・・・・
2人は、礼を言い、喜んで旅立つ。
「あれ?旦那、ここはかたがついたとして、肝心の三吉の一両いったいどうするんだ」「俺にきくやつがあるかよ」
そこに、三吉が父親とやってくる。弱る2人だが、三吉は、懐にしまったと思った1両は、店に忘れてきていたと告げる。「そうかい。なにはともあれ良かったではないか」「よかったな、おい。うははは」
<見どころ>
狂言スリがでるときいて、あわてて懐を調べる兵庫と半次。「ああ助かった」半次の財布はしっかり残っている。兵庫も「俺のも、全財産一文もかけずに健在だぞ」「おい旦那、びた銭5〜6枚取り出して健在だとか大騒ぎするんじゃないよ。みっともねえじゃないかよ」「何がみっともねえだよ。これだって天下に通用するお宝なんだぞ」「それだけじゃわらじ一つかえねえじゃねえか」決まり悪そうに銭を見ている旦那は、相変わらず貧乏。
居酒屋で早く一杯やりたい兵庫は、三吉が1両落としたと泣きながら困っていても、なかなかあきらめきれない。半次が送って行ってやるというと、居酒屋に未練たらたらで三吉につきそうがおもしろくない。しかし、半次の、狂言スリの仕業に違いないという推理にはあまり納得しないものの、「居酒屋でちびちびやりながら張り込もうじゃねえか」と言われ、「お。兄さんはいいこと言う。そのセンは最高だぞ」と喜ぶ。居酒屋でどんどんやっていると「俺たちは張り込んでるんだぞ」と半次に言われ、「バカだなおまえは。大きい声を出す奴があるかよ。だいたいな、入ってくる早々、目を皿のようにして旅籠を睨み付ける奴があるかよ。張り込みというのは相手にわからねえように、さりげなくやるモンなんだ」「そうかい。ほんじゃいってえ、どうすりゃいいんだ?」「居酒屋でさりげなく張り込むには、まずうまそうに酒を飲むことだろうが。(と飲んでみせる)」「うまそうにな」「ああ。俺を見ろ俺を。心ならずもうまそうに飲んでおるだろうが。(注ぐ)心ならずももうカラか」あきれる半次。「張り込みの酒と言うのは案外酔いがまわるもんだな」とすっかり夜もふける。
品川さんの最後の殺陣シーンで、突いた相手から、ぐっと刀を抜くシーンがあるが、なんとなくこのちゃんのやり方に似てるかも。


「大口たたいて抜けていた」 (第二シリーズ 第102話)

<キャスト> 茶川一郎=財布の中味が石だらけの旅籠客、目玉の浪人 利根はる恵 原健策=巡礼の老人、実は枕探しの”地獄のおじい”一団の頭 佳島由季 岡高史 北見唯一 宮城幸生 村田天作 藤長照夫 藤川清子 京唄子=カッパ堂のお歌、実は枕探しの緋牡丹のお歌 鳳啓助=カッパ堂の平助、じつは枕探しのカッパの平助
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=篠敦子 
衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美枝 装置=松井三郎 助監督=岡本静夫 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行=藤野清 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>
年の暮れも近いのにすかんぴんの兵庫と半次が、やっと見つけた仕事は、マクラ探し退治の用心棒。兵庫は仕事をそっちのけで旅籠屋の客の浪人と酒を飲みはじめた。その夜の客は、口の大きい歌子とカッパに似た男、巡礼姿の老人たちだが、皆怪しそうだ。
<あらすじ>
金を取られそうになって助けられた巡礼の老人・陣兵衛が兵庫を拝んでいたころ、半次は、賭場ですってすってんてんで「どうかツキを回してください」と神さまを拝んでいた。半次と別れて2日、今日もし酒を飲めなければ3日飲まないという”不名誉な”新記録が生まれてしまうと泣きを入れる兵庫のため、2人は、まず、茶店の五作とっつあんにきいた割のいい作衛門のうちの井戸掘りの仕事に向かう。
しかし、高額報酬にはしっかり訳があり、昨日井戸を掘っている最中に一人倒れ、助けに入ったもう一人も倒れたという曰く付き。おまけにそこの娘が”身の毛のよだつ”ネコを懐に入れていたため、この仕事はおじゃんになる。
次に、茶店の五作とっつあんがすすめたのが、居酒屋兼旅籠の松屋で、最近街道で被害の出ている枕探しの一団を捕まえる仕事。前に雇った侍が1両も払ったのに捕まえ損ねたと心配する女将の目の前で、箸を縦2つに斬ってみせ、「金をくれなどといわんぞ、適当に飲ませてくれてな、泊めてもらえばとっつかまえてみせるぞ」と言う条件で、雇われることに。
その日、そこには、父親の有り余る遺産で旅をしているという目玉の浪人、バカがつくほど丁寧な物腰の、でも”口”の話にはやたら耳ざとい女・お歌とその夫平助のカッパ堂、兵庫が昼間助けた巡礼の老人などが泊まることになった。
夜、一人見回りをやるのもばかばかしくなって、旦那と浪人ののこした酒を飲んだ半次も含み、3人とも眠ってしまった後、ふと目を覚ますカッパ堂夫婦。実は、この夫婦は、”緋牡丹お唄”と”カッパの平助”と呼ばれる枕探しで、今近在で名をとどろかせている”地獄のおじい”の一団の先駆けをして、枕探しをやろうとやって来たのだ。しかし、夫婦が部屋を回っても、どこの布団にも財布がない。、
ただ一つ、兵庫と飲んでいた浪人の財布だけがあって開けると、中は石ころばかり。そこに、「枕探しだ!」の声が聞こえ、宿泊客が集まってきて夫婦はおろおろ。
夫婦は、浪人が「有り金残らずやられた」と申告するので、「うそこけ、おまえの財布の中身は、これ、石ころやないけ」と思わず言い返し、自ら枕探しだとばらしてしまったが、大物ではない雰囲気に、他の宿泊人の財布に関しては無罪だと分かった。
次に兵庫は、枕探しを見つけるために、宿泊客全員のいる中で、「実は、各部屋の前にスミの粉をまいた。枕探しの足の裏は、ことさらたっぷり汚れているはずだ」と話す。と、とたんに落ち着きがなくなる巡礼の老人。
老人の部屋の天井裏を探すとそこから宿泊客の財布が出てきた。「地獄のおじいとは俺の事よ」正体をあらわす老人。仲間もでてくる。・・・
実は、スミの粉はまいていなかった。兵庫は、昼間の件で、金を持っていなさそうなただの巡礼の懐を悪党がねらうのはおかしいと、老人を怪しく思いカマをかけたのだった。
それぞれの財布を持って兵庫に礼を言い部屋へ戻っていく泊まり客たち。
”目玉の”浪人は、街道筋のやっかい払いができた”目出”たい日「”大目”に見ましょう」と、女将から今回は酒の勘定を勘弁してもらえることに。
ふと懐に手をやりハッとするカッパ堂夫婦。地獄のおじいがとった財布を見ながら、「あら、あの財布!・・(懐をさがして)ない!わてのや」「あ、わてのもあるわ」「よかったよかった」と喜ぶ平助、「「枕探しが枕探しに財布抜かれるなんてきいたことないわい。開いた口がふさがらんわい」とお歌。「あんたふさいだ方がいいよ」とお歌に言って「よけいなことぬかすな」と、妻にびんたをくらう。そのやりとりを見ていた兵庫と半次。「旦那、こりゃいいや。枕探しが枕探しに財布に抜かれるなんてよ、こりゃたしかにきいた事ねえ」「しまらん枕探しだなあ」
<見どころ>
半次に2日ぶりに会った旦那は、会ったとたんに「このバカ!能なしの大とんまのすっとこどっこい」と機嫌が悪い。「二日ぶりに会ったこの俺になんの恨みがあるんだよ」「俺はな、おまえに会うことだけを頼りにこの2日間過ごして来たんだぞ、それがなんだよ、やっと会ったと思ったら裸なんかになりやがって。おい。おまえは俺をどうしてくれるんだよ。」「なんとまあすさまじいねえ・・どうしてくれるってよ、オケラなんだからしかたなかんべ。俺にあって酒が飲めねえからって、湯気たてて怒る事ねえじゃねえか。」「俺はな、おまえと別れてからこの2日間というもの飯は2度ほど食ったが1滴の酒ものんどらんのだぞ。この俺が2日も1滴ものまんなんてことが許されていいのかよ」と半なき状態になる兵庫。何でも、今日も飲めないと3日酒を飲まないと言う新記録になるらしい。
障子にぶつかったり、寝ている人を危うく起こしそうになって子守歌を歌ったりのドジな枕探しの夫婦を演じるのが漫才の鳳啓助さんと京唄子さん。お歌が大きく息を吸い込むと「わあ、吸い込まれる、吸い込まれる」と悪党が吸い込まれる風になる、当時のはやりだったなあ。
今回は悪党とは言え盗人なので殺陣も、痛める程度なのは残念だが、理にはかなっている。
<迷子のお話>にも少しあります。
<旅の場所>
色原宿?いろは宿?


「腕白小僧が泣いていた」 (第二シリーズ 第103話) 

<キャスト> 金子吉延=三左衛門、三公 竜崎一郎=玉屋の力造 美田園子 小田部通麿=力造の子分・まさ 和田昌也 森本隆 楠郁子(侑子の間違いか?)=おなか 西田良(NC)=最後の殺陣シーンに出てくる力造の子分
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=柾木兵一 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=佐藤利子 
衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美枝 装置=木村雅治 助監督=浜比呂志 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 監督=長谷川安人
<大筋>
喧嘩も口も達者な腕白小僧・三公は、ケガで寝たきりの父親を一人で看病していた。母親の話になるとひどく反発する三公に、兵庫と半次は、何かあると、問題解決に乗り出す。
<あらすじ>
子供の喧嘩を止めようとした半次は、逆に頭をぽかりとやられて、兵庫に「お粗末を通り越しとるぞ」と大笑いされる。
「まだ痛むのか、いかんなあ。そうそう、以前きいたんだがな、頭の打ち身には意外と酒がよく効くらしいぞ。」「なにい?酒がよく効くだと」「これはな確かな筋からきいたんだから間違いはねえぞ、うん。唐や南蛮あたりでは頭が痛いときには酒を飲んで治すそうだが、1升も飲んだらけろりと治るそうだ」」と、兵庫はしきりに居酒屋へと半次を誘うが、本日の半次はオケラ、しようがなく、持ち合わせ23文で居酒屋の梅の屋に入ろうとするが、徳利1本の値段が24文で、1文足りない。「酒飲みはおしなべて善人が多いんだぞ」と、酒を飲んでいる居酒屋の女将おなかに、「1文負けてく飲ませてもらえんもんかな」と頼む兵庫に、「ここは、おかみから十手を預かる玉屋の力造親分の店だ」とつめよる子分ども。半次は恥ずかしいやら、ほおっておけないやらだが、兵庫は、表に出て軽く子分どもを痛め、その腕前を見ていた力親分に用心棒として誘われる。
酒には心惹かれながらも、いさぎよく断り居酒屋を出た兵庫はまだ、親分の誘いをことわったことを”反省”している。
そこに、長屋から煙が。すわ火事か、と思って急ぐと、魚が焼かれたままほったらかしになっていた。
その家には、寝たきりの病人が一人きりで、そこに戻ってきたのは、半次をぽかりとやった子供・三左衛門(三公)だった。
三公は、仕事場で材木が落ちてきてケガして以来寝たきりになってしまった父親・六左衛門を半年間一人で看病していて、そのうっぷん晴らしに喧嘩をしたり、魚を焼いたまま遊びに行ったりしていたのだ。半次をぽかりとやったお詫びにと、父親が寝込む前に買っていた酒を飲んでってくれと言う三公の言葉に甘えて、その晩は三公の家に泊まることになる。天狗さまが時々届けてくれる金のおかげで働かないで暮らすことができるというが、「母親はどうした?」ときくと、「しらねえなあ、そんなもん」とひどく反発し始める三公、しかし、深夜、三公が寝言で「おっかあ」と言うのをきいて、やはり母が恋しいんだと、三公をいじらしく思う半次。
そこに、玄関口で音が。これが天狗さまのようで、どうやら去っていった影は、三公の母親と思われた。
翌朝、隣のおみつに三公の母親について尋ねると、母親は、居酒屋・梅の屋のおなかで、父親がケガをしてすぐに、夫と子供を捨てて玉屋の親分の元へ行き、居酒屋をまかされているのだという。半次が子供の元に帰ってくれと頼んでも、兵庫がケガをした頃に何かあったのではないかと尋ねても、お節介はやめてくれ、帰ってくれというおなか。
きっと、父親のケガと、母親の家出、玉屋の間には何かあると睨んだ兵庫は、「お袋は(三公を)捨てていったのではないかもしれんぞ」と、今度は三公を連れて居酒屋へ向かう。
しかし、一足早く、おなかは、意を決した顔つきで調理場から包丁を持ち出し、玉屋に向かっていた。
半年前、玉屋は、自分の言うことをきかないおなかを手に入れるために、六左衛門に大けがをさせ、子供も同じ目にあわせると脅しておなかを我がものにしたのだった。子供さえ助かればと耐えてきたがもう我慢できないと、親分に包丁をかざし殺そうとするが、逆に捕まってしまう。しかし、外では、兵庫と半次、三公が、その話を聞いていた。・・・
母親としっかり抱き合う三公。「しかし旦那、よかったなあ」「坊主の父親は気の毒としか言いようがないが、かみさん手ずからの看病をうければ、きっと持ち直すぞ」「そうだよな。坊主、嬉しいだろうな」「そりゃあ嬉しいに決まってるよ・・・半次、そろそろ行くか」「ああ、そうしようぜ」
<見どころ>
今回も、子分相手なので、このちゃんは、懲らしめると言った感じで、さっさと相手の連中に峰打ち(親分だけは別)を食わせていく。ちゃんと、侍相手の緊張した殺陣とは違うお顔や、対処の仕方、さすが〜!
<ロケ地>
前半の小さな路地は、亀岡市、穴太町ですが、半次が子供のけんかに巻き込まれ、兵庫がにやにやしているバックは、岩倉叡電駅からすぐの御旅橋付近です。お堂もそのままですが、現在ではロケは不可能なくらい近代化された住宅地です。フルにロケをされていたので私も3回目くらいで「あっ」と気づきました。いやぁ懐かしい風景でした。他には新撰組血風録の紅花緒や少し上流で菊一文字もロケされていました。(京さま 2016年3月28日)


「命がけで飲んでいた(終)」 (第二シリーズ 第104話) 

<キャスト> 宮園純子=道庵の娘、実は公金強奪の頭道庵の女・およし 藤岡重慶=蘭方医・中山道庵、実は公金強奪の一味の親方 五味竜太郎=兵庫に片目を斬られた凄腕の浪人・渡利久馬 島田秀雄 玉生司郎=兵庫を迎えにきた文太夫 大城泰 奥野保 野村鬼笑 浅野公恵 山本豊三=半次と昔旅をしていた松吉
<スタッフ> 原作=南條範夫(週間大衆連載) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=平山善樹 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=寺島孝男 編集=島村智之 装飾=甲田豊 記録=篠敦子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美枝 装置=松井三郎 助監督=岡本静夫 擬斗=谷明憲・東映剣会 進行=藤野清 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>
腕の立つ浪人の相手をして腕にケガを負った兵庫、蘭方医・道庵に診てもらった義理で、その娘・およしに人斬りを頼まれるが、半次の昔なじみ松吉=山本豊三が血だらけで現れ、彼らが御用金強盗一味と分かる。およしは、頭の道庵をも裏切って、金を独り占めしようとたくらみ、兵庫を誘っていたのだ。
<あらすじ>
街道を、「旦那、財布が落ちてる〜」「20〜30両は入っていそうだぞ。今夜の飲み代確実だ」と二人して落ちてる財布をみつけて喜んだのもつかのま、ただの布っきれと分かりぶうたら歩いていると、向こうから、凄腕そうな浪人・渡利がやってくる。
浪人は突然、兵庫に斬りかかる。兵庫の「無用な争いはしたくない」という言葉を聞きいれず、またもや襲いかかり、兵庫は左腕に、渡利は、右目に傷を負う。
その後、いつものように居酒屋に入った兵庫と半次だが、升で出てきた冷や酒を喜んで飲み干そうとして、兵庫の左腕に痛みが走る。
「これは、医者に見せた方がいいかな・・・」半次には理由を告げずに1両借り、蘭方医・中山道庵をたずねると、庵は、傷が骨に達しているので、腕を失いたくなければ酒はやめるよう兵庫に告げる。
一方半次は、旦那と別れて、松吉という昔の仲間に出会うが、今では堅気になって問屋場で働く松吉は、半次にあってひどく嬉しそうなのに、なにやら落ち着かない様子。しかも、今夜は都合が悪いが、きっと明日には問屋場で会おうと言いのこして急いで出ていってしまったのに、翌日、半次が問屋場に向かうと、松吉、半次へと3両を置き、ここを辞めて荷物をまとめて出ていっ手しまったあとだった。
おかしく思った半次は旦那に相談に乗ってもらおうと居酒屋へ誘うのだが、酒を止められている兵庫は、(相談の場が)居酒屋じゃないとダメかとか、夕べ飲み過ぎたとか、果ては半次に思いやりがないとか、ネコが出たとか、あれこれいいわけをつけ出て行ってしまう。その後、半次は、兵庫が、医者の家に入るのを見かけ納得する。「そうか!やせ我慢はりやがって。これで分かったぞ。これで急に世の中が楽しくなった」
ところで、兵庫は、兵庫と浪人の勝負を見ていた道庵の娘・よしに、人を10人ばかり殺して欲しいと頼まれていた。辱めを受けたからというのだが、娘の態度を不振に感じた兵庫が、自分でも確かめたいので時間をくれと即答を避けると、およしは不満げ、調査を始めた兵庫は、およしが、今度は渡利となにやら話をしているところを目撃する。
何かあると睨んだ兵庫は、およしに、人斬りを引き受けるとカマをかける。しかし、およしは案の定、「なかったことに」と断る。さらに、「腕の立つ浪人に興味があるようだが、何をたくらんでいるのか」という兵庫の言葉にハッとするおよし。道庵宅からの帰り道、兵庫はしびれ薬をもられ浪人に斬りかかられる。それは、部屋の外でおよしとの会話を聞いていた道庵が、兵庫を襲わせたものだった。
兵庫が医者に酒を止められていることを知った半次が、兵庫にわざと酒の大盤振る舞いをした翌日、代官所のご用金が浪人達によって強奪されたと言う話が舞い込む。兵庫は、大金を盗んでも遠くへは運べないはず、一時どこかに隠すのだろうとにらみ、大八車を探しに行くと、そこに瀕死の松吉が。「兄貴すまねえ」と謝る松吉。道庵は長崎で、密貿易をやっていたわるで、およしは道庵の女、松吉は、問屋場で怪我をしたときに、医師の道庵に助けられた時の恩で、公金強奪の仲間にさせられたのだった。半次にあったことで、一味の悪事を代官所へ告げようと決心しこんな目にあったのだ。「兄貴、3両の金もらってくれたかい?その金は決して変な金じゃねえ。昔兄貴に世話になった礼だ」「いつだって松を信じてるよ」「兄貴、楽しかったな。もう一度一緒に旅をしてみてえ」事切れる松吉。
その頃、公金を盗んだ道庵とその一味は、およしと片目の浪人・渡利の裏切りにあっていた。およしは、はじめ、兵庫と組もうとしたのだが断られて渡利に話をもちかけていたのだった。そこに、兵庫がやってくる。およしと道庵が相撃ち、その隙をついて兵庫は渡利を倒した。
一件落着した翌日、海辺を歩く兵庫と松吉のお骨を持つ半次。「久しぶりの海だ。やっぱりいいねえ。」「ああ」「松吉おまえの故郷はもうすぐだ。」
と、海を見る兵庫に、侍が駆け寄る。「兵庫さま!」「文太夫!かようなところでいかが致したのじゃ」
「兵庫さま、伯父上様が、ご老中松平伊豆守さまが、突然に」「伯父上が、いかが致した」「は。急の病にて先月半ばお亡くなり遊ばしました。」「え、伯父上が!」「旦那、旦那が、ご老中松平伊豆守さまの甥だって?」「ともかく一刻も早く江戸のお屋敷へお帰りくださいませ」「うん、分かった」
「旦那あ」急なことにあわてる半次。「半の字、と言うわけだ。俺はすぐに江戸に帰らなければならない。」「俺も一緒に行くよ!」
「そう言うわけにはいかんのだ」と静かに首を横に振る兵庫。「伯父上には子供がなくってな。ひょっとすると俺が跡を継がなければならんかもしれん。そうなると俺も今までのように気ままな旅はしておれんのだ。」「そんな!俺は旦那のいねえ旅なんて考えられないよ」
「そうだだをこねるな。俺だってな窮屈な屋敷暮らしなんぞ思っただけでもぞっとするが、しかしこうなれば仕方がないんだ。」「旦那そこを何とか、何とかなんねえのかい」「半の字、人間はけじめが肝心だ。そのけじめをつけるときが来たんだと思ってな、お互いにあきらめようじゃないか」「旦那あ・・・・」泣き崩れ旦那にすがる半次。「旦那あ」「半の字、別れに一杯やりたいところだが、そうもしておれん。さあ、離してくれ」「いやだ。俺やだよ、俺やだよお!」兵庫も涙をこらえている。「おい、いい加減にしろ」背中を向け強く半次に言う。「旦那あ」泣き笑いの顔で兵庫が振り向く。「体に気をつけろよ。おまえけんかっ早い性分に生まれついてるんだから。(再び背中を向ける)分かったか」「・・分かったよ。旦那、もう一度、もう一度よおく顔みせてくれ」「なんだよおまえその顔は」兵庫はいつも通りに笑って振り向くが、半次は涙が止まらない。「達者でな」泣き崩れる半次を置いて歩き始める兵庫「旦那あ、旦那あ、旦那あああ!」
<見どころ>
酒を止められた兵庫と半次のやりとり。
医者に酒を止められたのに居酒屋の前で足が止まってしまった兵庫、「バカ、何で足を止めるんだよ。俺は当分酒とは縁のねえ男なんだぞ(と、自分の頬をぴたぴたたたく)」「旦那あ!松吉がきえちまいやがったんだ。おまけに3両って大金を俺にくれやがって」その相談に乗って欲しいと居酒屋に誘う半次に、「いやあ。もう夕べ言ったこと忘れたのか。おめえとはいっさいつきあわねえことにしたんだぞ。」と、夕べ借りた1両のことで言っあったことを持ち出し、居酒屋行きを避けようとする。「何もそうムキになることないじゃないかよ。お互い水に流そうや」「いやいや。俺は一ぺん言い出したことはひっこめん性分なんだ」「悪かった、俺が悪かった。謝るからよ、仲直りにいっぺえつきあってくんな」と兵庫を居酒屋へ押し入れる。「おい何すんだよ」「おいねえちゃん、酒だ酒だ」「半の字、松吉の話だったら何も居酒屋じゃなくたってできるじゃねえか」「実はきのうおまえと別れてから反吐を吐くほどのんじまって、今日は酒の面見るのもいやなんだよ(と、食卓にのの字を書いている)」「俺は今日飲みたくねえっていってんだ」「まあ、いいからいいから」と兵庫に注ぐ半次。杯の酒を我慢している兵庫の前で、うまそうに酒を飲みはじめる半次。兵庫は半次が思いやりがないから松吉も逃げるんだと言うと、そうかいじゃあ反省しようと、またもやうまそうに酒を飲む半次。兵庫はまったく面白くない。「どこが悪かったか教えてくれ」と頼む半次に「自分で考えろ、それが分からなかったら目えかんで死ね」あげくはいもしないネコをでっち上げ出ていく。
兵庫が酒を止められている知り、半次は、兵庫をいじめて楽しもうと、旅籠の前で待ち伏せし仕掛ける。
「旅籠の明かりが待ってるよ」と旅籠に兵庫を連れ込み、半次は、向こうの部屋ではどんちゃん騒ぎをさせ、こちらでも酒を20〜30本頼む。どんどん飲んでと言うと、何と、兵庫は「半次、おまえってやつは話せる奴だなあ、いやあ見上げた奴だ」と、小鉢で飲み始めるではないか。びっくりしたのは半次。「どうなってんだ」「実はおめえから借りた1両で治療を受けて、医者から酒をとめられてたんだ。今夜は思いっきりのむぞ」「旦那、酒は傷に良くないんだよな」「あいつはどうやらほんとの医者ではねえぞ。毒をもって毒を制するということもあるからな」とどんどん飲んでいる兵庫。「旦那、俺悪かったよ。俺旦那が医者にかかってたの知ってたんだ。旦那が困る顔みていじめてやろうと思って。旦那、頼むから酒飲まないでくれ。」「はははは!おまえと言う奴は。そうだったのか。分かったよ、無茶飲みはせんよ20〜30本というところでやめとくことにするよ」「旦那、俺なんだかんだいったって頼りにしてんだ。長生きしてもらいたいんだよ」と涙声になる半次、「バカだなおまえは。俺がこのくらいの傷で死ぬとでも思っているのかよ」「おらね、旦那が好きなんだよ。かけがえのない友達だと思ってんだ」と泣き出す半次のまえにクモ。
<最終回の思い出とご感想>
御用金強盗一味を成敗する兵庫と半次。兵庫は実は松平伊豆守のおいで、伊豆守が危篤の為、子供のいない松平家の跡目を継がなければならなくなってしまう。江戸へ帰る彼と半次の涙のわかれ。
わずかな記憶ですが、兵庫と半次の別れの場面は水辺でした。海なのか、湖なのか、景色の良いところだったように記憶してます。
半次兄さんも確か泣くんですよね〜、私ももちろん泣きました、、、。 (ひろちゃんさま 2002年4月5日)
最終回放送は、1968年12月28日だったんですね。...ということはやっぱり私は
6歳で、幼稚園の年長さんだったことになります。私も、突然最終回がやってきたっていう印象でした。確か当日の新聞表示で「終」となっていて、父が私に教えてくれたんだと思います。見る前から「今日で終わりなんだ...」と心して見ていました。でも、キンちゃんさまがおっしゃるように、兵庫と半次はいつもと変わらない様子で....。「ホントに今日で終わるの??」って、間違いであって欲しいと願ってました。ところが!...やっぱり別れがやってきました。忘れもしない海辺の場面。「旦那〜〜〜!」と大泣きの半次さんと共に、私もテレビの前で大泣きでした。
あ〜あ....大好きだったのに、終わってしまった....と落胆していると、次週予告になぜかまたこのちゃんのお姿!え〜!また見れるの??どうなってんの?という状態でした。あんなに面白かったのに、なんでリニューアル(?)するんだか、子供心にわけがわかりませんでしたね。
1番好きだった、猫の場面を見れなくなり、...同じこのちゃんが演じているけれど、私は断然、大吉より兵庫が好きでした。今でももちろんそうです。 (ひろちゃんさま 2007年11月27日)
兵庫の家来が海岸だったかのそばを「兵庫さま〜!」と走ってきて、事情を説明し、いとも簡単に兵庫が納得して、泣く半次を置いて行ってしまうシーンしか記憶にありません。それよりもその次の週からの予告で「花山大吉」というのが始まるという告知で大喜びしたのを覚えています。(花山小吉さま 2002年5月8日)
兵庫はすご腕の浪人と斬りあって、相打ちになり、左手に重傷を負います(相手は左目を斬られる)。そして、医者から「酒を飲んだら命の保障はできん」と脅かされます。禁酒を余儀なくされたと知るや半次は兵庫の前で美味しそうにガボガボ酒を飲みます。一対一の対決シーン、たぶん迫力あったことだろうとは思うのですが、不思議なことにそれだけは印象に残っていません。それというのも、ラストのあの衝撃の2分3秒のせいでしょう。大いなる哀しみに包まれた感動のラストシーンが、他のドラマ部分を全部吹き飛ばしてしまったようです。(キンちゃんさま 2003年3月7日)
海辺で兵庫にお家の危急を知らせに駆け寄ってきた老武士の名前は「文太夫」でした。「おおっ!文太夫!文太夫では
ないかっ!」あの近衛十四郎の声が忘れられません。「月影」との訣別を意味するあの哀しいセリフを・・・。(キンちゃんさま 2003年10月13日)
最終回の別れのセリフはさすがに覚えてないのですよ。ただ、「もう今までのようにお前(半次のこと)と気ままな旅をすることはできなくなった。」という兵庫の言葉と、「俺も連れてってくれ。」という半次のセリフだけはハッキリ記憶にあります。そして、「いやだいやだ」と泣き叫ぶ半次の後頭部のマゲ(たぶさって言うんですか?)が激しく揺れていたことも妙に印象に残っています。勇壮なマーチ風にアレンジした「浪人独り旅」にのせて、力強く歩んでいく兵庫の後姿をとらえたショットに、半次の「だんなー」という呼び声が一声高くこだまして、「月影兵庫」は幕を閉じます。(キンちゃんさま 2003年10月14日)
(東映ch放送の最終回を迎えてのお話→)「月影」もとうとう残すところ、あと一本となってしまいました。心の中にまで秋風が吹き渡るようで、寂しい限りです。特に最終回は、いつも同様、笑いの場面がふんだんにあるので、なおさらラストの悲しみが増幅されるようです。今でも昨日のことのように覚えていますが、兵庫が重傷を負って禁酒したままだと思い込んだ半次が、意地悪しようとわざと酒をご馳走する場面、ニヤニヤしながら銚子を差し出す半次に、意外や兵庫は「では、こっちの大きいほうで」と言って、煮物の入った小鉢(中身を捨てて)で受けようとするではありませんか。「実はなあ、今日から酒を飲んでもいいと医者に言われたんだよ。フハハハハ」。半次はギャフン。この辺、二人の息はまさに絶好調。「本当に今日は最終回なんだろうか。新聞には『最終回、二人の別れ』なんて書いてあったけど、もしかして何かの間違いで、来週もまた『はぁ〜んがお〜いか〜ぜがぁ〜』で始まるんぢゃないだらうか。」なんて半信半疑だったものです。それほど最終回は唐突な印象でした。予告編も、大吉のときとは違って、最終回のことには一切触れていなかったし、本編の内容も最終回にしては地味でした(立ち回りも少ない)。ですから、ラストの海岸の別れのシーンは、付け足しという感が無きにしも非ずです。極端に言えば、どのエピソードの後にでもくっつけられるからです。(キンちゃんさま 2007年11月24日)
「兵庫」も終わりましたね。(中村)半次郎さまご指摘のとおり、別れの場面で振り向いたときの兵庫の表情のなんとすてきなことか。兵庫も涙声で半次に背を向けますが、彼も泣いていたんですね。ところで、「大吉」のときもそうでしたが、別れの余韻にひたったまま、いきなりいつものエンディングというのはいかがなものか。なんだか「テヘヘ。・・・というのは冗談だよう。来週もまた見てね」と言ってるようで、よけいに悲しみが増すぢゃないですか。(キンちゃんさま 2007年12月8日)
「兵庫は終わったけど、大吉が始まったぢゃないか、大吉を兵庫と思えばいいんだ、同じことやないか。」と、一生懸 命、自分で自分に言いきかせていた子供の頃を思い出し、目頭が熱くなってきました。けれども、結局、私は大吉には兵庫ほどの入れ込みができなかったので す。初めのうちは楽しく見ていましたが、エンディングの「風来坊笠」の歌詞に愕然となりました。半次の立場で歌われているこの歌の文句、「それがどうした 男に惚れた」というくだり。ああ、半次は兵庫を忘れて浮気しよった。かつて「俺は本当は旦那(兵庫のこと)が好きだったんだよ〜。一生かけがえのねえ友達 だとおもってたんだ〜。」などと言ってたくせに。いや、兵庫から別れ話を持ち出されたのですから、半の字に責任はありません。ただ、この歌詞を聴いたと き、それまでの兵庫(という作品)そのものが否定されてしまったように思えたのです。さらに、大吉のシャックリにもちょっぴり減滅しました。猫嫌いとは根 本的に違うからです。「猫が出るとピンチになる」というのと、「ピンチになるとしゃっくりが出る」というのとは、似ているようで実は大きく違います。兵庫 は猫さえ出なければ永遠にピンチにはならない。が、大吉はピンチが先にくるという図式です。シャックリはピンチの副産物なのです。ですから、子供の頃は単 純に、やっぱり大吉より兵庫のほうが強いんだ、なんて思っていました。そして、やがて私は(ませていったこともあって)大吉から遠ざかっていったのであり ます。いろいろ勝手なことをかきましたが、もし、私の近衛十四郎体験が「大吉」からスタートしていたら、もちろん熱狂的な「大吉」ファンになっていたことでしょう。 (キンちゃんさま 2007年11月25日)
観ました最終回...
あまりにも突然の別れ...半次さんも、リアルタイムで観ておられた皆さまも、”唖然!?”ですよね!BGに貴日さんのCDでの楽曲流れちゃうし...。
今だからいろいろな事情や制作秘話や大吉の第1話など知っているけど、当時ストレートにそのまま受け入れるには無理がありますよね...唖然としか言いようがない...。松吉の最期と半次さんの場面でも、普通だったらうるうるして当然のストーリー展開なのに...。 (meeさま 2007年 11月28日)
大人になって久々、ウルッときました。
半次の「旦那には長生きしてほしい。」旦那が大好きな気持ち伝わってました。このシーンにも男の友情を感じてぐっときたな。年の差があるから順当で行けば当然旦那の方が・・・と思うが、本当に本当に最高の相棒同士最後に兵庫の目に涙がうるんでたな。
言葉はいらないですね。普段死ぬほど笑ってこれだけラストに泣けるのはやはり名作です。涙涙・・・タオルいやバケツが必要だ〜と思うのでした。(ロイさま 2007年11月28日)
考えてみると、大吉旦那とは別れても江戸で再開出来る事もある、だから絶対一生の別れではない。お互い長い年月人生を見つめ直し、江戸でいつかバッタリ再開し、互いの人生話をしても悪くない・・・。花山の旦那なら、もし半次が成長してたら内心喜んでくれるだろうし。
しかし、月影の旦那なそうはいかないですね、あれだけの身分になると武士社会を考えて、実際町をふらつくわけにないかないだろうし、(部屋住み侍とかじゃないから)一生の別れだと思うのが普通、だからラストの悲しさも多いですかね。でも確かにさ爽やかという表現もあっていると思うし旦那にとって本当に半次と飲む酒の方が上手かったに違いない。
それだけ色々思いをはせる事が出来る時代劇だった事でしょうね。本当に今の時代劇に40年以上経ってもこれだけインパクトをファンに与え続けるって作品ないですね。 (ロイさま 2007年11月30日)
ついに月影終わってしまいましたね。リアルタイムで見てから相当の歳月が流れましたが記憶の奥にかすかに残っていた別れの シーンが再現されました。私も幼少ながら新聞のTV欄に「終」の文字があったのをはっきりと覚えています。新番組の予告も記憶にあり。そして花山大吉出会 いのシーン。背中の文字が「月」でなく「花」であるのを見た時の半次の姿。次々に記憶がよみがえってきます。 (あまぎそよかぜさま 2007年11月28日)
半次あにぃの気持ちが伝わってきましたねぇ〜・・。
あの医者はそうとう危ない医者だから言う事聞かずに、酒なんか平気で飲んでしまったのかも。
シビレ薬処方されたから呑んでも平気だと思ったのかもヽ(≧∪≦)それにしても、「酒なんか無くなれば良い・・・」とかブツブツ言ってたりして・・お別れのシーンは矢張り泪が出てしまいました 。・゜゜・(>_<)・゜゜・。続きの「花山大吉」見ようかなぁ〜(o^<^)o (智蔵おっかさんさま 2007年11月28日)
「素浪人月影兵庫」の最終回を見ました。いつもの笑いのゆったり安心して見られる「月影兵庫」とは違って、初めか ら「どうなる?」という緊張感の連続でした。実は私は、この最終回を見たのは初めてなのが、見たら気づきましたよ。旦那と半次との突然の別れのシーンは、 子供でなくても理解が出来ませんよね。
「花山大吉」の第一回で、「月影の旦那」のことを、どんな代物でも酒と名がつくものなら何でもいい、どうしようもない奴で……。とか言って、月影兵庫に似 ている花山大吉に魅かれていくという設定ですが。私は、焼津の半次の「月影の旦那」への愛情表現だと感じました。「月影兵庫」の最終回で、左手に怪我をし てお酒が飲めなくなった月影兵庫に、それとは気づかず、「どんどん酒を飲め」と言ってお膳立てをする。しかし、本当は医者に酒を止められていたのを知って いた。その上で、旦那が困る顔を見たいから、酒を勧める。しかし、旦那は意外にもがぶがぶ飲んでしまうから、半次はあわてて止める。焼津の半次はそういう キャラクターなんですね。
だから、この最終回の続きで「花山大吉」を見ないと、焼津の半次の深層心理は理解出来ないというわけです。焼津の半次は、「月影兵庫」にも「花山大吉」にも、深い友情を抱いていたのです。「男が男に惚れた」という歌は、両者に対して唄っているのでしょう。
これは、子供には理解が出来ませぬ。 (花鳥風月さま 2007年11月28日)
兵庫、ついに終わってしまいました。
皆様は兵庫とお別れで涙、涙でいらっしゃるのに申し訳ありませんが、私はとても爽やかな気持ちになりました。勿論、兵庫とお別れは私も残念です。でも、別れのシーンの兵庫がとても素敵でした。「人はけじめが必要」・・・気ままなくらしとはさよなら、これからは窮屈な人生、でも『やるときはやる』と凛々しいお姿。半次が顔を見せてくれと頼み、振り返ったときのその笑顔。なんとも清々しいお顔に、私の心もにっこり。颯爽と去って行く兵庫の後ろ姿は頼もしかった!!!ここのシーン4〜5回見直しました。
で、「大吉」の最終回ラストシーンを見直しました。兵庫のときと違ってやつれたお顔の十四郎様。
立ち去るときは左側にカーブしている道を歩いていって、姿を完全に消してしまいました。この大吉とのなんともさびしいお別れと違って、兵庫のお別れは明るかったです。兵庫が「俺も頑張るから、お前も頑張れよ。」と言っているように感じました。
兵庫も大吉もラストは半次の静止アップ。半次兄さんの存在の大きさをまたまた実感しました。兵庫が伊豆守の跡を継いだのなら、毎日お酒は飲めるけれど、「半次と飲んだ酒はうまかっなぁ。」と日々きっと思うはずです。
兵庫に伊豆守の死を告げる侍、何を思い間違えていたのか、覚えていた(と錯覚していた)より若かったというか玉生司郎さんだったのでびっくり。リアルタイムのときは玉生さんを全く知りませんでしたから、記憶に残っていませんでした。
五味竜太郎さんは兵庫・大吉の最終回に出ていらしたんですね。大吉の最終回ビデオを見たら、「いただき勘兵衛」の放送CMがあったので、「いただき勘兵衛」第1話を見てしまいました。そしたら、ここにも五味さんがゲストで出てらしたので、笑ってしまいました。 (中村半次郎さま 2007年11月29日)
3話飛ばして最終回を見てしまいました、あんなに、半次が泣いていたなんて昔は気が付かなかった。ティシュを手に ボロボロ泣いてしまいました。子供の頃には判らない、人との別れのつらさや寂しさがジーンときてしました。たぶん失恋に似た感じなんでしょうか・・無理で も諦めなければいけないせつなさ・・・さとちゃん(猫)が不思議そうに見つめていました。 (のりりんさま 2007年11月29日)

最終回やっと見れました。このシーン、三十数年前(再放送)の僕の記憶では茶屋から家来が追っかけてくるように記憶していましたが、あらすじにある「水辺」という印象はありませんでした。海岸沿いでしたが、家来の人が「茶屋」らしき所から出てきて何故か「ほっと」しました。(まんぼうさま 2007年12月2日)
兵庫の最終回、見ました。
前半のお話は全く覚えていませんでしたが、最後の砂浜が出てきたところで「あっ、見覚えのある砂浜だ!!」と思いました。「ああ、もうすぐ別れが来る・・」と何ともやるせない気持ちで見ていました。別れでは、やっぱり泣きました。半次は、あんな風に旦那の足にすがりついていたんですね。旦那も確かに泣いていました。目が涙でうるんでいました。でも、「もう一度顔を見せてくれよう・・」で振り向いた時の旦那の笑顔と「何だよ、おめえのその顔は・・。」いいなあ。「おまえは生来けんかっ早いんだから、身体を大事にしろ」「人間にはけじめが大切」どれも心にしみる言葉でした。
しかし、この一週間後に「花山」が始まったのね・・。見ていた人は(自分も見ていたのかもしれないが、全く覚えていません)嬉しいようなあっけにとられるような・・だったでしょうね。
最終回から一夜明けて。  ・「兵庫の毎週録画予約」を解除しました。うう、寂しいなー。  ・どこを旅しているか分からない兵庫なのに、文太夫はよく兵庫の通る海岸が分かりましたね〜。  ・「かようなところでいかが致したのじゃ」って急に兵庫の口調が変わったのが面白かった。  ・子どもの頃の記憶では、兵庫は画面の右側に向かって去っていった・・。ウン十年、そう思い続けていたので、頭の中ではまだ別れの図が修正できない。  ・兵庫には、帰るべきところがあった。待っている人たちがいた。素寒貧でも、無茶をしても、いずれ帰るところ(それもすごい待遇で)がある、だから兵庫はいつも気持ちに余裕を持っていたのですね。でも大吉は・・・江戸に戻ったものの、本当に落ち着くところ、迎えてくれるところはあったのだろうか・・。去り際も、兵庫はお付きの者を従えて。大吉はたった一人で。このちゃんのお年や体調のこともあるけれど、シチュエーション自体が、大吉はもの悲しい・・。
とりとめもなく、思ったことを書いてみました。(鈴雪さま 2009年9月20〜21日)
最終回、今やっと見終わったところです。正直見るのは気が進まなかったというか・・見たら否応なくこれで終わりだと思い知らされるんで、それが嫌さにちょっと躊躇してました(^_^;けどいつまでもそんなことをしている訳にもいかず、今日の夕方(^_^;ようやく一大!?決心をした次第っす。
で、感想なんですが・・みなさまと違ってこれが初見なうえに、大吉の方を先に見ていて、おまけに兵庫→大吉のいきさつも知っているという、何とも情報過多な(笑)状況だったので、その雑念が払いきれなかったのか!?ラスト5分に関しては、正直「あり得ね〜・・!!」という感じです(←すみません〜〜・・)だってあまりにもあまりにもあっさりし過ぎなんですもん。ストーリーもごく一般的で今までと何ら変わったところもなく、それだけにいっそう、とりあえず終わらせなきゃ・・みたいなとってつけ感が拭えなかったです。
とはいえ、無論兵庫と半次の別れは悲しかったんすけどね。
特に半次の気持ちになると・・今回の話の中で、兵庫があまりにも酒を飲むもんで、その身体を心配して、ダンナが好きで、かけがえのない友達だと思ってるから、長生きして欲しいんだ・・って言うじゃないですか。兵庫が去ってしまった後で、自分があんなガラにもないことを言っちゃったから、こんなに早くダンナと別れなきゃならなくなったんじゃないか・・な〜んてむちゃくちゃ悔やんでそう・・なんて思ったり。無論あのシーン自体がラストへの伏線なんでしょうけど、それだけに、見ているこっちも、あんなに大切な友達なのに、いきなり離れなきゃならないなんてあんまりや〜・・と、一緒になってうるうるしちゃいました。
それと、鈴雪さまもお書きになってらっしゃいますが、兵庫の涙ぐみながらのセリフもめちゃめちゃ良かったです。彼の方も半次のことを、心の底から大切な友達だと思ってたんだ・・というのが、今更ながらにひしひしと伝わってきました。でも、だからこそそんな半泣きの顔のままでは別れたくなかったんですよね。かと言って決して無理矢理作った訳じゃない、あの振り向き笑顔は本当〜に素敵でした。何というか・・近衛さんのお身体の加減もあるのか、おしなべて大吉(特に後半の)よりも兵庫の方が表情が豊かな気がして、そこがまたたまらなく魅力的なんですが、最後の最後で「とっておき」を見せて貰えて嬉しかったです。
けどそれだけに、いざこうやって終わってみると・・ああ、104話まるまる見たかったなぁ・・と。放送して下さった東映チャンネルさんには感謝していますが、半分が欠番では、今回のラストシーンと一緒で、あまりにもあっという間すぎてかえってストレスが貯まるっす(^_^;以前にじゅうよっつさまも仰ってましたが、徐々に作品としての勢いを増してきて、そのうち役者さんもスタッフも絶好調!!というのが明らか画面を通じて分かるようになるのに、その尤もテンションの高い状態でごっそり話数が飛んじゃうなんてあんまりです(涙)もし自分のところにも青いネコ型のロボットがいたら、ソッコーで1967年に行って後々に向けた原版管理を徹底してくるのに・・などと、最後は相変わらず変な妄想までしてみる始末・・(^_^;物事は強く願えば必ず叶うというけれど、兵庫を愛するみなさまの気持ちがいつか通じて、完全放送もしくは完全版DVD発売という日が来ることを信じたいです。(南まさとさま 2009年9月21日)
兵庫終わりましたね。なんとなく寂しい気持ちになりますが、今はDVDという便利な物があるのでいつでも見れる楽しみもあります。感動のラスト!大吉と同様二人の別れのシーンは最高です。何度見てもジーンと来るんです。以前兵庫は世界一のドラマだ、アカデミー賞もオスカーも間違いないと過大評価をしましたが、私が審査員だったらこのちゃんと半次兄さんに主演男優賞を差し上げます。時代劇を製作するスタッフさん少しは月影兵庫を見て勉強しろ。カーツ・渇(yukimente2005さま 2009年9月24日)
次回の予告:兵庫と半次の悲しい別れの余韻にひたっていると、養命酒だか黄桜だかのCMが終わるや、バーンと画面に「素浪人花山大吉」の文字が。「世の中上には上がいた」の画像がナレーションに合せて流されました。半次が大吉にネコを突きつけているところ、それを大吉がうるさそうに鉄扇で払いのけるところ、ゴロツキ浪人にからまれてシャックリが飛び出すところ、瓢箪の酒を飲んでホーッとため息をついて、みるみるキリッとした表情になるところ、浪人どもを斬り伏せるところ、おからをパクつくところ(手づかみでなくお箸でね)、多勢を相手に苦戦する半次と花園ひろみ嬢のもとへダダッと駆け寄り、二人をかばって悪人どもを睨みすえるところなどの画像が使われました。ナレーションは、さすがに全部覚えていませんが、「緊張するとシャックリが出る、おからが好物のウレシイ野郎」というフレーズがありました。「ウレシイ野郎」というのが妙に印象に残っています。第一話の予告なので、エピソードの紹介でなく、「大吉」の紹介といった感じでした。ナレーションの声は現在もなお、「大吉」予告編で活躍されている方(名前を知らないのに今気がついた!)と同じでした。(キンちゃんさま 2004年2月6日)


「危険な道連れ (ソノシートのために作られたお話 朝日ソノラマM-100) 
「月影兵庫と半次の前に、とつぜんあらわれた危険な道づれ!」「タアーッ、むらがる敵にむかって、兵庫の剣がひらめいた!」(表紙コピー)

<制作スタッフ> 原作=南條範夫 脚本=森田新 音楽=阿部皓哉 =柳柊二・堀江 卓 効果=篠原利夫 協力=東映

<キャスト> 月影兵庫=近衛十四郎 焼津の半次=品川隆二 三郎=太田淑子 お菊=山口奈々 忍者=富田耕吉北川邦彦

「お〜い、月影の旦那ぁ…ちょ、ちょっ、待ってくれョ…」山道に兵庫を追いかける半次の声。自分の草鞋の紐を結び直す間も待ってくれずにサッサと先に行ってしまった兵庫にお冠の様子だが、「甘ったれんじゃないよ、急がないとこの雲行きじゃひと雨来そうだぞ」と兵庫は全く取り合わない。
なる程、先ほどからの強風に加え、遠雷までが聞こえて来ている。
「どうも俺ゃ雷の音を聞くと、おヘソの周りがヒクヒクして来んだよ…」さっきまでの腹立ちはどこへやらの半次。「馬鹿な事言ってないで急ごう。
俺はお前と違って生まれつき上品に出来てるんで、雨に濡れると風邪をひいちまうんだょ」「上品が聞いて呆れるよ」もういつもの二人に戻っている。
そこへひとりの少年が二人をめがけ飛び込んで来た。有無を言わさず黒い小箱を半次に預け走り去ろうとするが、辺りに漂うただ事でない気配を感じた兵庫は、少年を松の木の陰に隠れるように指示する。
間一髪、そこへ矢つぎ早に繰り出される手裏剣。怪しげな忍者の一群の登場だ。手裏剣を刀で薙ぎ払いながら応戦する兵庫に、半次は「後ろだぁ〜」とか「今度は木の上だぁ」とか声で加勢する。だが、矢張り兵庫は強い、強い。ひとり、またひとりと数が減く忍者。「退けっ」あまりの兵庫の手強さに退却していく忍者たち。
いつの間にか強風は止み、蝉の声が聞こえている。
「ハァァ驚いた…旦那、酷ぇじゃねえかよ。忍者に狙われてるんなら最初からそう言っといてくれりゃいいんだよ」「馬鹿、さっき坊主がお前に預けようとした箱があるだろう。忍者はあの箱を狙ったんだよ」一難去って文句を言う半次に、名推理を披露する兵庫。だが先程の少年の姿が見えない。ザワザワっと藪の中に何かが動く気配がする。敵か?それとも…一瞬、緊張が走る。そんな半次の頭の上に蜘蛛が…。
半次の悲鳴に驚いて少年が藪から姿を現した。「忍者に狙われるなんて、どんな悪い事をしたんだ?」頭ごなしにどやしつける半次を制した兵庫を見て「こっちの半次っていうおじさんより、お侍さんの方が話が判りそうだね」と少年。それを聞いてまたいきり立つ半次。
少年の名はさぶ(三郎)と言った。さぶから優しく事情を聞き出す兵庫。
それによると、薬草を採りに行ったら吊り橋のところで娘が怪我をして倒れていた。ひとりで背負って助けようとしたが子供の自分の力ではどう仕様もない。その時娘からこの箱を手渡された。他に助けを呼びに行ったら、何者かに後をつけられている気がして怖くなり、丁度そこへ通りかかった二人に箱を預けようとしたのだ…という。
箱の謎はひとまず置いて、二人はまずその怪我をした娘を助けに行く事にした。半次は娘が別嬪だと聞いて「旦那、お先に失礼…」と大ハリキリ。
山道を吊り橋に向かう半次とさぶ。しかし張り切って飛び出したものの道の険しさに音を挙げる半次は、もう一歩も動けないとその場にノビてしまった。
「ちぇっ、大人の癖にだらしないなぁ」とさぶ。「…だらしもからしもあるもんか…もう歩けねえ…」へろへろになりながらもクダラない駄洒落を言う半次。
その時、「…誰か、助けて〜」かん高い娘の助けを求める悲鳴が聞こえた。「あっ、あのお姉ちゃんだ」さぶの声に「こ、こいつはてえへんだ。
そ、それ行け〜ぇ」と一歩も動けないはずの半次が飛び出して行く。呆れるさぶ。
半次の目に音を立てて軋む吊り橋が飛び込んで来る。「こいつはハデな吊り橋だなぁ…」そこで、今まさに黒覆面の忍者が件の娘を連れ去ろうとしているではないか。
啖呵を切り、勢いよく斬り込む半次。だが忍者は仲間を呼び、娘は連れ去られてしまう。腕の立つ忍者に阻まれて娘を追えない半次。
「畜生、卑怯だぞっ」悔しさに吠える半次に、「忍者との戦いに卑怯呼ばわりは笑止だぞ」と余裕の忍者。半次、渾身の力で打ち込んだが逆に刀を飛ばされ、絶対絶命のピンチだ。「念仏でも唱えていろ…」今まさに忍者の刀が半次を貫こうとしたその刹那、兵庫の小柄が忍者目がけて宙を飛んだ。
断末魔の叫びと共に川に落下する忍者。
「危ない処だったな」「危ないもなにも、もう少しであいつらをやっつける事が出来たのに…」助けに来た兵庫に、礼も言わず負け惜しみを言う半次。
「フフフ…まあいい、とにかく向こう岸に渡ろう。吊り橋はどうも趣味に合わん」といつもの事とさらっと受け流す兵庫。
「一体、この箱の中身何だろう?開けてびっくり玉手箱か…」手がかりを得るために、兵庫と半次は全ての元凶の黒い箱を開ける事にした。
中から出てきたのは「変な書きつけと黒い玉」だった。それを火薬玉と調合書だと看破する兵庫。
また花火師新吉から良念に宛てた手紙が同封されていた。
「良念っていうと、あの岩山を削って道を造ったっていう偉い坊さんかな?」と半次。「そうらしいな…私の作った新工夫の火薬を、世のため人のため役立てて欲しい…」手紙を読む兵庫。
「するってぇと、こいつがドカンときた日にゃ…」半次のすっとんきょうな声のあとを続ける兵庫「ウム…我々など木っ端微塵だろう。さだめし凄い威力を持ってるに違いないぞ。何しろ忍者が狙うぐらいだからな」それを聞いた半次は「うぅぅ〜ブルブルブル…オィさぶ、この玉持つのはお前の役目だ」と全く大人気ない。
「ちえっ、弱虫だなぁ…でもおじさん、あのお姉ちゃんどうしたろう」と心配するさぶ。「恐らく奴等は人質の積もりで拐したんだ。我々がこの箱を持っている限り、必ず向こうからやって来る…」とそんなさぶを気遣う兵庫。
「そう言えばそろそろ忍者の臭いがして来た様だ。半次、子供を頼むぞ。そこの草むらに隠れるんだ」ただならぬ殺気だ。忍者の首領が現れる。
落ち着きはらって兵庫に取引を持ちかける首領。
「腕ずくでは叶わないと知って今度は取引か…」と兵庫。それを無視して「素浪人、その調合書百両で買おう」だが、「断るっ!…俺の物ではないこの調合書を勝手に売り渡す訳にはいかんよ」ときっぱり断る兵庫。
「どうしても譲らんと言うのか」唸る首領。「あんたも物判りの悪い男だな。断ると言ったら断るっ!」頑強な兵庫に、首領は人質に刀を突き付けて対抗する。
しかしその娘は自分の命はどうなっても構わないから調合書を渡さないでくれと兵庫に切願する。このままでは兵庫も下手に動けない。物陰で見ている半次たち、何とかならないのかオロオロしながら思案する。そこで半次、閃いた。「あ、そうだ…一か八かこの火薬玉を使って見るか…」
「さあ素浪人、その調合書を渡すか、それとも娘を見殺しにするか、五つ数える間に決めるのだ。…一つ…二つ…三つ…」忍者は娘を盾にして、じりじりと兵庫に迫って来る。このままでは手も足も出ない兵庫。「…四つ…五」その時、「旦那ーッ、今だ!」半次の声と共に件の火薬玉が爆発した。
一瞬、混乱する忍者たち。半次とさぶもつぶてで加勢する。兵庫がその機を逃すはずは無かった。たちまち乱闘になる。つぶてを受けた忍者、堪らず「卑怯だぞ」と漏らす。「忍者が卑怯とは笑止千万だ。やれやれっ!」いつぞやのお返しをする半次。
鬼神の様な兵庫の猛進ぶりにたじたじの忍者たち。最早、覚悟を決めた首領、兵庫との一騎打ちを申し出た。相手もかなり腕に覚えがあるらしい。
「オゥ、望む処だ」兵庫も受ける。
辺りが緊張に包まれる。二人の刀の音だけがこだまする。剣の腕は互角の様だ。「…だいじょぶかい?」心配するさぶに「当たりめぇよ!
天下の素浪人月影兵庫様だぁ〜い」と力が入る半次。その時、兵庫の剣が一瞬早く首領の体を斬り裂いた。
「ふふ…この勝負どうやら儂のものらしいな。さて、次なる相手はっ!」睨みを利かす兵庫に逃散する忍者たち。
「ばんざ〜い。おじさん強いんだねー」喜ぶさぶに「いやぁ、あの火薬玉の助太刀が無ければ危ないところだったよ。それより娘さんどうした?」と謙虚な兵庫。「それなら、もうちゃーんと半次のおじさんが飛んでったよ。美人だもんね」流石は半次である。
「本当に危ないところをありがとうございました。あたくしは花火師新吉の娘、菊と申します。父はこの花火を戦に使われまいとして忍者に斬られました。
あたしは父の志を継いで調合書を良念様にお届けする途中だったのでございます」「よし、判った。お父上が命を賭けて守った秘密、この月影兵庫が必ず良念殿にお渡ししよう」礼を言う娘、菊に優しく声を掛ける兵庫。その時、何処からか「にゃ〜ん」と可愛い声が…先ほどまでの二枚目は何処へやら、叫び声を挙げながら一目算に逃げ出す兵庫。それを見て不思議がるさぶに「ヘヘ、アハハ…あの月影の旦那はな、滅法腕は立つんだが、猫が嫌ぇなんだ、猫が…ハハハ」と説明しながらもおかしくってしょうがない半次。
「半次さんは蜘蛛が嫌いだし、月影さんは猫が嫌いだなんて、変なおじさんたち」さぶの言葉を聞いた半次。「変なおじさんたちか…なるほど、そう言われればそうかも知れねぇよな、アハハ…」半次の笑い声が暗雲晴れた空に響いていた。(貴日さま 2004年3月24日)

<劇画化された月影兵庫について>
絵物語ですが、私も読んだことがあります。絵を描いていたのは旭丘光二(あさおかこうじ)です。さいとうたかを氏の流れをくんではいますが、どちらかと言えば川崎のぼるの画風に近いです。ストーリーはオリジナルでなく、TVのエピソードを絵物語化したもので、私が読んだのは、「牢屋の中までもめていた」でした。ところが、同じ旭丘氏の絵物語で、「風」(現在スカパーで放送している栗塚旭主演の時代劇)を読んだ記憶もあるので、ひょっとしてTV時代劇を一本ずつ絵物語化していく企画だったのかな?なんて想像しています。もしそうだとすると、「大吉」があっても不思議はないわけですよね。ちなみに掲載誌はたぶん講談社の月刊誌「ぼくら」。
ところで、漫画(劇画)化された「月影兵庫」で私が知っているのは以下のとおりです。
1・「素浪人月影兵庫」(画・社領系明)
2・「素浪人月影兵庫」(画・さつま隼人)
3・「素浪人月影兵庫」(画・堀江卓)朝日ソノラマの中身として。
4・「素浪人月影兵庫」(画・旭丘光二)絵物語。
1は青年コミックスで、南條範夫の原作に忠実です。したがって半次は登場しません。小島剛夕ふうのタッチで、ラブシーンもあります。子供のころ、大金をはたいて買ったのにTVと違い、ガッカリした記憶があります。なお、同じ作者で「俺は用心棒」も劇画化されています。
2は、創刊したかと思う間に廃刊してしまった伝説の月刊誌「少年現代」に連載されたもので、残念ながら絵(さいとうたかをふう)がへたくそ。「一発屋が待っていた」と「馬子唄だけが知っていた」の二本を読んだ記憶あり。「少年現代」は、たしかTVの漫画化が「売り」だったように思います。
3、4は説明不要ですね。さて、ここで、注目したいのは、1以外は、すべて「近衛十四郎版月影兵庫」をもとにしているということです。原作を跳び越えて、「月影」といえば近衛十四郎!という公式が、当時すでに確立していたという証拠でありましょう。南條氏が頭から湯気をたてて怒るのも無理ないか。はっはっはっは。(キンちゃんさま)






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