素浪人ばなし(花山の巻三) |
見れぬなら、読んでみよう「素浪人シリーズ」のあらすじ。53〜78話 |
月影の巻一・二・三・四・五 / 花山の巻一・二・三・四 / 天下の巻 / いただきの巻 |
みなさまの記憶に頼るという、管理人お得意のパターンで行く予定です。 こんな話があった、このへんだけ覚えてる、ここ違うかも、何でも結構です、 多少の間違い、不安は物ともせず、掲示板に書き込んでくださいませ。 ちょっとだけご注意:引用文の場合は、著作権の関係から、全文書かないでね。部分引用はOK。 みなさまご自身の言葉で語る場合は、何でもOKです。 |
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Merci beaucoup! 手作りキャスト表については、相談屋さま(企画・制作)始め、キンちゃんさま(大部屋さんご担当)、長沢威さま(キラ星女優さんご担当)、 右京大作さま(出演者のその後の活躍ご担当)、大地丙太郎監督(花園ひろみさんご担当)、どらおさま(栗塚旭方面から。ノンクレジットがお得意)、智蔵おっかさんさま(ノンクレジット再発見ご担当)の皆さまのご努力により、制作されております。 お名前の後の(NC)は、ノンクレジットで出演者として紹介されてない俳優さんです。 ●各お話に出てきたが、タイトル横に貼り付けてあります。(相談屋さまのご提案) |
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「ドカンと一発春がきた」 (第53話) <キャスト> 平凡太郎=落ち目な山賊を廃業した頼りない御大将、赤岩の熊吉 里井茂=熊吉の子分で大きい方の、大ボケ 二見忠男=熊吉の子分で小さい方の、小ボケ 野村昭子=大吉をスカンピンと見破った、めでたがりやな茶店のばあさん 山岡徹也=あこぎな山賊、黒谷の大五郎 国一太郎=半次を打ちそこなった武を叱った、大五郎の一の子分 島田秀雄=『お頭、ありゃ本物の大砲ですぜ』黒谷の子分で鉄砲使いの、常 藤長照夫=半次の右の目玉を打ちそこなった鉄砲使いの、武 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=荒井岱志 撮影=脇武夫 計測=長谷川武次 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=宇佐美亮 助監督=尾田耕太郎 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 正月三日。茶店にやって来た大吉の機嫌が悪い。茶店のばあさん(野村昭子)は、『正月早々スカンピンでブーたれてるくちですだか』 と見事に懐具合を見破った。そこへ半次が三日ぶりに大吉を見つけ、新年の挨拶を言うが、ますます機嫌が悪くなる。 正月のことを聞かれた大吉は、おからを肴に酒をたらふく飲んで、一息入れていたと調子の良いことを言うが、背中に茶店のばあさんの ニタニタした視線を感じ、半次同様貧乏な正月だったことを小声で打ち明ける。ところが半次は大吉の予想に反し、初打ちで三両も稼いでいた。 大吉の態度がころっと変わり、今年のお前は『泥棒でいえば石川五右衛級の大物になる』と持ち上げ、大出世の前祝いを次の宿場で挙げよう と誘ったまでは良かったが、近道をしようと山道を選んだのが災いし、行けども行けども無人の山道。出るのは半次の大敵くもばかり。 やっとの思いで家を見つけ、道を尋ねるために中に入る。いきなり頼りない二人の男に襲われるが、何もせずとも二人は自滅。 奥では二人の御大将にあたる男(平凡太郎)が目を閉じ、耳を塞ぎながら『それ行け。行ってちょうだい』と掛け声を出している。 その男、何をしてるのかと尋ねる半次を突き飛ばし、刀で半次の頭を切りつけた。『旦那さようなら』といまわの際の半次を笑う大吉。 男が慌てていて結果的に峰打ちだった。どうやらこの男、大吉半次をあこぎな山賊黒谷の大五郎の一味と間違えたらしい。 家の中に誘い込んで勝負をかけようとしていたところに大吉半次が入って来てしまったという訳だ。さっそく山賊退治に手を貸そうとする半次だが、 こちらの三人も実は同業だった。 冗談じゃないとばかりに家を出る二人は、今度は外の山賊たちに三人の助っ人と間違われ、鉄砲を打たれ脅される。(大吉シャックリ) 慌てて家の中に戻る二人を、中の三人は大歓迎。外の山賊が襲ってくるが、鉄砲部隊は外のため大吉半次の敵ではない。外に退却した山賊。 今度は兵糧攻めに打って出る。中の三人、御大将は赤岩の熊吉、子分は大きい方を大ボケ、小さい方を小ボケといい、山賊稼業も落ちぶれ、 堅気になるなら熊吉と夫婦になってくれるという’おこんちゃん’も出来たことだし、最近足を洗う決心をしたとのこと。仲間の山賊に山賊稼業の 挨拶に行ったところ、黒谷の大五郎だけが、仲間を裏切るとは何事だというこで、命を狙われているとのことだった。 足を洗うならと再び手助けを決意する半次だが、外の鉄砲にはさすがの大吉もお手上げの始末。 熊吉が、昔爺さまが代官所からかっぱらって来たという大砲を発見。『向こうが鉄砲ならこっちは大砲でどかんと行こうじゃないか。 どかぁーぅんと!』大吉は爺さまの代の弾がまともなはずがないから乗り気ではないが、半次は大喜び。結局大砲を打つマネだけとう 心理作戦を決行。棒切れに布を巻き火を付け、外の山賊を脅かす役目はもちろん半次。突き出した大砲の上にまたがり、脅える山賊相手に、 嬉しい嬉しい半次兄さん。楽しい楽しい半次兄さん。『マネだけだぞ』という大吉の声にも生返事。 導火線に火をつけると大砲の弾が飛びだすとは知らなかったらしい。 ドカーン 真っ黒な顔で立ち尽くす半次。大吉は半次に無事を尋ねるが、何回聞いても返事無し。 『この大ばかたれが!』やっと我に帰る半次。半次の怪我の功名で外の山賊は鉄砲を置いて退散。戻ってきた黒谷の大五郎一味も 鉄砲がなければ、大吉半次の敵ではなかった。命拾いした熊吉は喜んで、すぐに祝言の打ち合わせに町まで出かけて行った。 チャッカリした野郎だとあきれる半次だったが、『チャッカリしてるのはあの男よりおめえだよ。さっきは大砲で俺までぶち殺しかけたくせ しやがって』『いやあ旦那。分かった、分かったからもうその話はやめてくれぇ。ハッハッハ。いやあ俺もねえ、戌年の正月に大砲をぶっ放す とは思わなかったよ ウォホッ』『んー、このっバカタレがぁ』(二人大笑い)(相談屋さま 2002年10月26日) コメント:小屋の中の半次兄さんの声がやけに割れていたので、『フィルムorテープの保存状態が良くなかったのか?』 と一瞬思いました。しかしよく見て(そしてよく聞いて)いると、小屋の中のシーンはアフレコではなく生録(っていうのでしょうか?) のような気がしました(そのため、若干音質が劣った?)。(相談屋さま) 山小屋の場面で音声の調子が変わった・・・・?たしかに変わりましたね。思うに、野外での撮影と、スタジオ内、すなわち屋内での撮影の違いが 原因でしょうか?「ごめんよ」と言いながら山小屋の入り口に向かって進んでいく半次と、それを眺めている大吉との二人の後姿をとらえたカットは、 これはどう見ても野外です。すぐ次のカットは、半次が「ごめんよーごめんよー」と言いながらピョンピョン背伸びして中をうかがう場面ですが、 このとき、スタジオ内のセットに切り替わっています。ここで半次の声がエコーがかかったように変化したように思います。 劇中、野外の小屋とスタジオのセットをうまくつないで撮影されています。小屋の扉に注目してください。節穴の位置が違うのが分かります。 詳しいことは分からないので素人のカンですが・・ ラストの立ち回りでの曲は、「月影」第2シーズンの後期で盛んに用いられていた楽曲です。また、予告編の音楽としても毎回流れていました。 この曲にのって「さてさて次回の素浪人月影兵庫は・・・」というナレーションがはいったのです。(「月影」第2シーズンの初期の予告編BGMは 一定しておらず、「酒が嵐を呼んでいた」の予告編なんか「いっぽんどっこの唄」のインストゥルメンタルでした) 物置から大砲を引っ張り出し、入り口に設置するシーンで勇壮なマーチ風の曲が流れますが、これは「月影」の第2シーズンの第2話 「心に虹がかかっていた」で、兵庫と半次とゲストの舟橋元の三人が、捕らわれた土田早苗を救出すべく敵陣に殴りこみをかけるときにも 使用された曲です。ちなみに、このときの半次は襷をキリリとかけた喧嘩仕度で、とてもカッコよかったですよ。(キンちゃんさま) 最後のテーマ曲での場面が、第51話「富士のお山が知っていた」と同じで、二場面だけ、富士ロケのものになっている。 見どころ:大砲をぶっ放した後の半次兄さんの放心状態が面白い。次回予告編で、このちゃんが化粧直ししてもらっているところなどの、 ロケの模様が見られる。(じゅうよっつ) 山賊に包囲されて袋のネズミになった山小屋で見つけた大砲。マネだけのはずが玉をぶっ放してしまった半次の姿。でもこの一発のシーンを 見ると何かストレス発散になります。(あまぎそよかぜさま 2005年5月29日) 「初恋の味は苦かった」 (第54話) <キャスト> 和崎俊也=旅籠で半次の横っ面を張り飛ばした銀さんこと、流れ雲の銀二 悠木千帆=半次の初恋の相手、おきんちゃん 新井茂子=岩場でも寝ることができる心中偽装娘、おちか 戸上城太郎=十手持ちの親分、浜川の為五郎 土屋靖雄=赤鰯(あかいわし)が右手に輝く金谷生まれの物知り坊主、一本どっこの仙太 大城泰=『兄ぃ、そう息巻くんじゃねえよ!』半次の面をジロジロ覗いた、浜川一家の子分 牧淳子=大吉半次を特別室に案内し、おからを運んできた旅籠の女中 <スタッフ> 脚本=森田新 監督小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 美術=宇佐美亮 助監督=山村繁行 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=長谷川キイ 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 渥美の国は伊良子岬にやってきた大吉半次のご両人。半次は若い二人連れが岩場に寝ているのを心中者と勘違い。その晩の旅籠で『好き好き』 の声が聞こえる隣の部屋の様子に聞き耳を立てる半次の目の前にくもが現われ、びっくり仰天襖を倒し隣の部屋に倒れこむと、隣の二人は 伊良子岬の、銀さん(和崎俊也)、おちかちゃん(新井茂子)と呼び合う例の二人だった。どすけべ野郎と男に横っ面を平手打ちされる半次だが、 大吉は大好物のおからの到着に、それどころではない。 駿河の国の茶畑にやって来た二人。『おれの国の茶畑だ』と叫び涙ぐむ半次。生まれ故郷焼津からは一里と離れていないらしい。半次は七年前、 町のためにならない役人を五人痛めつけたとかで故郷焼津には戻れない体だった。しかし、焼津にいる初恋の相手’おきん’ちゃんのことを考えると 胸が切なくなるのだという。ところが大吉が、半次にやられる町役人がいたことを信じないので、半次は証を立てるために証人探しを開始した。 やっと金谷(かなや)の生まれで’仙太’という(頼りなさそうな)同業を見つけ、七年前の出来事を問いただしてみた。 『その焼津の半次っていうあんさんはよ、五人の役人に大怪我させてよ、とっ捕まってニッコリ笑って磔(はりつけ)になっただよな。カッコいい』 半次ガックリ、大吉大笑い。仙太はお詫びに半次の役に立ちたいというが、半次にその気はない。この件で喧嘩になるが、仙太の抜いた刀が 赤鰯(あかいわし:赤さびが浮いた状態の刀)(大吉シャックリ)。赤鰯と勝負する気のない半次は大吉に相談。大吉は、半次が焼津の土を 踏めないなら、仙太にひと肌脱いでもらい、この付近で初恋の相手とご対面を提案。 待ち合わせの場所でそわそわする半次だが、初恋の相手はなかなか来ない。やっと赤ん坊を背負い、両手に二人の子供を従えた’おばさん’ (悠木千帆→樹木希林)がこちらに走って来る。半次のイメージには程遠いそのおばさんに名前を尋ねると、『わっちゃ’おきん’だがね』 厳しい現実にとうとう半次失神。 おきんちゃんは半次に昔の面影がないので、『あんた、風呂屋の三助やめていつからヤクザになったんかね』と問いただす。身に覚えのない半次が 住んでいた場所を言うと、『あ〜っ思い出した。そんじゃあんた、いっつも青っ洟たらして、寝小便ばかりたれるんで、尻ぶっ叩かれて泣いてた 辰五郎長屋の半次さんじゃにゃぁか?』と半次違いが判明。おきんちゃんは初恋の相手、風呂屋の三助の半次さんからの呼び出しと思い、 急いで会いに来たのだという。ガッカリきたおきんちゃんは子供を連れて帰っていった。大吉止め処もなく大笑い。 翌日、半次は、渡世人の集団に断りもなく顔をじろじろ眺められ、礼儀知らずだと因縁をつけるが、十手を預かる浜川一家の親分為五郎 (戸上城太郎)に子分の無礼を詫びられ、かえって恐縮。聞くところによると、東海道の赤坂の宿で問屋場を襲い、二人を殺し二百両を奪って逃げた 遊び人、流れ雲の銀二を追っている途中との事で、そのため半次の顔を改めたのだという。大吉が、その男は女連れで、しかもその名はおちか ではないかと尋ねると、親分の顔色が変わった。どうやら伊良子岬の二人が犯人らしい。親分は賞金五両を出すといって立ち去る。 ほどなく二人を発見した半次、さっそく銀二を捕らえにかかるが、銀二にはアリバイがあった。実は為五郎自身が真犯人であり、 あこぎな十手持ちの親分にことごとく楯突く銀二は、犯人としてでっち上げられたのだと言う。そこへ為五郎一味が現われ、女共々殺っちまえ と子分に指図するが、その一言を聞いた大吉、大事な犯人を捕まえずに女共々殺すとは無茶だなと言い、銀二の無罪を確信。 浜岡の砂丘を舞台に切り合いが始まる。半次は砂に足を取られながらも子分を退治。大吉は砂場でも足を取られることなく、用心棒や親分を 豪快に成敗。銀二の無事を喜び、駆け寄るおちか。『良かった銀さん、あのオジサンたちが為五郎をやっつけてくれて』 ダンナはともかく自分までオジサン扱いされた半次は、近頃の娘は恩人に対する礼儀を知らないと文句を言うが、 『まあそう怒るな。お前も初恋の女が三人もの子持ちになっとるんだから、結構いい年のオジサンじゃねえか。』 『わかった、わかったよ。もうその初恋の話はやめてくんなよ。おれもう聞いただけで身の毛がぞぞーとよだつんだから。』 『ほう。身の毛がよだつとは、またえらく敬遠したもんだな。』二人大笑い。 コメント:日本縦断ロケシリーズ東海編第二弾。半次の初恋のお相手は樹木希林さんでした。(相談屋さま 2002年11月4日) エンディングのシーンは、前回と同じ、富士ロケの2シーンを含んだもの。 見どころ:おきんちゃんと話すとき、ごく自然に変わった半次兄さんの静岡弁。 旅の場所:渥美の伊良子岬(愛知県)→焼津から1里もない茶畑(以下は静岡県・金谷の仙太に会う)→いろは地蔵そば(おきんちゃんに会う) →三保の松原(大吉半次が浜川の親分から銀二の事を聞いて別れた直後,CMに入る直前の富士山が映っているシーンby相談屋さま)→ 浜岡砂丘(殺陣シーン)(じゅうよっつ) 「大酒喰らって冴えていた」 (第55話) <キャスト> 花沢徳衛=酒中毒の父っつあん、與助(よすけ) 井上清子(以前は藍芳、いただき当時は光川環世 thanks右京大作さま京さま)=半次に財布だけ拾ってもらった與助の娘、おみつ 高桐真=『蛇の道は蛇に寄れっていうからな』島帰り三人組の親分格 中田浩二=おみつ目当てに居酒屋で父っつあんに酒を飲ませようとしたごろつきの兄貴分、勘太 市村昌治=居酒屋で『ようし、表へ出ろ!』勘太の子分、為五郎 千葉敏郎=『喜平次って名前の男を知らねえか?』島帰り三人組の一人 山村弘三=大吉の言葉を真に受け、翌日はおからを置くようになった、居酒屋のおやじ 玉生司郎=橋の上で大吉を刃物で刺そうとした、島帰り三人組の一人 波多野博=半次の財布と信用をスリ取った勘太の子分、金八 小柳圭子=旅籠の女中、お徳姉さん <スタッフ> 脚本=松村正温 監督=荒井岱志 撮影=脇武夫 計測=宮川俊夫 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=宇佐美亮 助監督=尾田耕太郎 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 大吉は、酒中毒の大工の與助が、居酒屋で宿場のチンピラにからかわれているのを目撃した晩、偶然、與助の娘・おみつの働く旅篭に泊まり、 おみつから、父親の相談を持ちかけられる。居酒屋でも、「すまねえ、おみつ」といいながらも「人間にゃ、地面に流れた酒でも飲まずにはいられねえ ような、そういう苦しみっていうのがあるんですよ」と大吉にこぼしていたが、おみつにも父親が1年前から酒を飲みだし、それが段々ひどくなる 理由が分からない。相談料はあまり払えないが、もとのおとっつあんに戻してくださいと真剣に頼むおみつに「何とかやってみるよ」と相談を引き受ける。 翌日、まずは與助が酒を飲みだした原因を探ろうと、「手ぶらでは行けんだろうがい」と居酒屋による大吉。おまけに昨日、「おからをバカにするような 店は繁盛せんぞ」と大吉にたしなめられた居酒屋の亭主が、今日からおからを始めたという。「俺はオヤジさんを見直したぞ」と、大吉は早速酒とともに 5、6人分のおからをつめるように注文するが、半次は猛反対。「置くに事欠いてなんてものを置いてくれるんだ」とオヤジに詰め寄り、「旦那、 いけないよ、冗談じゃないよ。旦那と酒とおから、この3拍子が揃ったらどうなるか、俺は考えただけで、ぞーっとするよ」「俺はくろうとだ。 酒におぼれて仕事を忘れるような相談屋だとおもっとるのかよ」「思ってる、思ってる。一旦おからが入ったときの旦那は、常日頃の旦那と 違うんだから。どうなっても俺はしらねえぞ」 それでも結局、おからを肴に、與助と大吉は酒を飲み、「バカタレ」「おから野郎」と、半次が様子を見に来た頃にはすっかりできあがってしまっていた。 與助はおみつのことが本当に可愛いらしく、娘の話になると、「俺と一緒にしねえでくれ」と懸命になる。そして、ふと「おみつは本当の娘じゃねえんだ。 おらあもうだめだい。20年前のあん時から今日があるのは分かってたんだい」と漏らす。しかし、それ以上聞こうとしても、與助はがんとして口を 開かず、そのまま寝てしまう。與助は寝言で「丑松、喜平次が悪かった」とつぶやく。 その頃、宿場のちんぴらは、喜平次を捜して宿場にやってきた島帰りの3人と、喜平次捜しと問屋場の押し込みのために結託していた。島帰りの 一人はおみつの働く旅篭にも喜平次を捜しに来て、それで、おみつは父親が寝言で「喜平次」とつぶやいた事があるのを思い出し、それを大吉に 話した。大吉は、島返りの3人と與助が関係があるとにらみ、3人に、「喜平次を探しているのはあんたたちか、丑松は誰だ」とカマをかけると、 案の定、大吉を襲ってきた。その足で、與助の元に行った大吉は、相変わらず何も話そうとしない與助を諭す。「とっつあんの心が知っていることは、 一生とっつあんにつきまとって行くんだぞ。そいつを酒でごまかして振り切ろうたって、ますますとっつあんがだらしなくなっていくばかりだ。おみつぼう だって、とっつあんがこのままじゃ幸せになれねえんだ。泥沼から逃れようと思ったら、よっぽどの決心が大事なんだぞ。その決心はとっつあんが 自分自身でつけるんだ」 その言葉に目が覚めた與助は、島返りの3人をススキヶ原に呼び出す。「覚悟は出来ているよ」と、3人の前に座る與助。元喜平次と名乗っていた 與助は、20年前、丑松に押し込みを誘われ、怖くなって名主に相談したことから、4人は捕まり島送り、その後丑松は島で死んだ。おみつは、 丑松の娘で、難産で母親をも亡くしたおみつを、江戸を逃げようとする與助が連れたのだった。 しかし、3人組とチンピラは喜平次に問屋場の押し込みを手伝え、さもなければ、既に手下がつかまえているおみつにすべてを話すと脅す。 「その返事は俺がしてやるよ」話を聞いていた大吉が姿を現す。そして、おみつがちんぴらに連れられて。その後を運良くというか、悪くと言うか、 おみつの護衛に失敗した半次が追いかけてきて、半次に気をとられているチンピラに大吉の鉄扇が飛ぶ・・・ 「おみつぼうの用心をつけて置いたのに、全く頼みがいのない奴だな」「すまねえ、すまねえ」「言い訳は無用だ、行くぞ、ほら」と半次をせかして 先に歩き出す旦那。「なんだ、てめえだけいいカッコしやがって。あ、そうか、おみっちゃんの相談料受けとらねえわけか。さすが旦那だ、そうこなくっちゃ」 「花山さま、相談料」「おみちゃん、要らない、要らない、要らないってよー」といいながら旦那を追いかける半次。その行方に與助とおみつが頭を下げる。 コメント:複線として、半次は、おみつがなくした財布を拾い、給金を前借りした財布の中身500文が入ってなかったため、身の潔白を証明しようと 自分の財布から500文をおみつに渡そうとして、自分の財布がなくなっていることに気づく。財布の落とし主が、「年の頃なら17、8、9。いやもう ちょっと上でもいいな。色が白くて髪はカラスの濡れ羽色、目元ぱっちりおちょぼ口」と想像してすっかり楽しくなっているところに、想像通りの おみつが現れたのに、そのおみつの信用をなくしてしまって「道に迷ってべそかいてるマメだぬき」そっくりに嘆き悲しんでいるところを大吉に拾われ、 夜、そのおみつが大吉に相談しているところへ、大吉を探してやって来た半次、大吉に、「おめえのその間抜けづらを見たらな、悪いことだけは 出来そうにない男だぐらいのことは分かってくれるよ」とさんざんコケにされ、「旦那の世話にはならねえ」と部屋を出ていこうとするところにクモ。 エンディングのシーンは、前回と同じ、富士ロケの2シーンを含んだもの。 見どころ:このちゃんと品川さんの掛け合いは、最近、ほんとに、自然で面白くなってきた。 「昔の美人が揃っていた」 (第56話) <キャスト> 牧冬吉=美人ばかりのお伊勢参りの御一行を世話する男、佐七 赤木春恵=美人8人衆の中では最年少で半次に惚れた、肌も艶々のおたつさん(59歳) 滝那保代=美人8人衆の一人で、200両を無くした、お元さん 梅津栄=相談屋稼業がさっぱりの大吉から酒手をせしめようとした、海鳴りの辰 永田光男=身なりの立派な旦那、実は山犬どもの首領 入江慎也=関所の役人 大里ひろ子=御酒と、お肴はお見繕いでお結構と注文を受けた、居酒屋のお姉ちゃんさま 白川浩三郎=美人の御一行を何気なくつけている旅人姿の公金強奪の一味 泉春子=大吉が『おい、あんたたち』と言った時、7人中左から5番目の美人 大江光=美人8人衆の一人で、200両が見つかった時『良かったねお元さん』の面長美人 金森あさの=?? 和歌林三津江=大吉が『おい、あんたたち』と言った時、7人中真中の美人 日高綾子=美人8人衆の一人で、200両が見つかった時『お互えに200両無事で良かっただな』の美人 川端愛子=?? 不明 女56−1=大吉が『おい、あんたたち』と言った時、7人中左から2番目の美人 女56−2=大吉が『おい、あんたたち』と言った時、7人中左から3番目の美人 200両が見つかった時,『お互えに200両無事で良かっただな』美人の一人が言った直後に、大吉が『おい、あんたたち』といった瞬間、 おたつさん以外の美人7人が一斉に大吉の方に顔を向ける『セブン・ショット』があるのですが、 左から1番目(手前) 日高綾子さん 『お互えに200両無事で良かっただな』 左から2番目(奥) (不明) 左から3番目(手前) (不明) 左から4番目(奥) 和歌林三津江さん 左から5番目(奥) 泉 春子さん 左から6番目(奥) 大江 光さん 『よかったねお元さん』 左から7番目(手前) 滝 那保代さん (お元さん) としました。もっとも1〜5番目の女優さんに関してはちょっと自信がありません。 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 地回りの海鳴りの辰一味を軽く痛めつけた大吉・半次の腕に「こらすごい」としきりに感心し、二人の後を居酒屋まで付けてくる男がいる。 どうやら大吉の得意先らしいこの感心屋の気持ちを更に惹きつけるために、「明るく上品に注文するんだ」と大吉に言われ「居酒屋のお姉ちゃん さまや、お美しくておきれいでござんすでござんすね。居酒屋のお姉ちゃんさまや、あっしどもは、御酒を召し上がりたくてへえらしてもらったッて 訳なんでござんすよ。居酒屋のお姉ちゃんさま、そう言うわけでござんすから、なにとぞ、おねげえいたしますでござんす」大吉の頭を抱えさせ 「なにをかいわんやの心境」にさせた半次の言葉は、感心屋には「女に対する言葉遣いがバカが付く程丁寧」と映り、早速二人に依頼が来る。 男は、女ばかりの伊勢参りの団体を率いる佐七で、道中不用心だから、用心棒をやってくれと頼む。しかも、「一行はおたつさん始め、別嬪揃い」 と聞き、半次は即、話に乗り、あまり乗り気でない大吉も半次に拝み倒されて引き受けることになった。 しかし、翌朝、佐七に指定された次の宿場の茶店に行くと、そこには、別嬪は別嬪でも、元別嬪の”ご年輩”が8人。半次は、ガックリ来て この仕事を断ろうとするが、もらった前金はすでに飲み代に消えている。二人は用心棒として、同行することになる。(道中、半次はおたつに 気にいられ、道中慰めてやる夫婦になってもいい、と言われ、あわてて逃げる。おたつがまだ59歳と知り、大吉シャックリ。) その夜、一行の一人が、持っていた200両がないと、騒ぎ出す。大吉が寝床を調べて、200両は無事だと分かるが、どうやら、老女たちは各自、 200両持っている様子だ。その時、大吉は、この騒ぎを遠くから鋭い目つきで見ている男に気づく。 翌日、検問がある。御用商人が藩に上納する公金1600両が城内で強奪され、運んでいた4人が殺害されたという。それを聞いた大吉は ハハンとくる。奪った金は、ほとぼりが冷めるまで待つか、遠くへ運ぶかが必要になる。「奪われた金は1600両だろうが、婆さんたちは何人いる?」 「そりゃ8人に決まってるじゃないか。・・・1人200両もってるから、2の4の・・あ!1600両じゃねえか!」半次はすぐに佐七と婆さんらを 犯人かと疑うが、佐七や婆さんには4人の人間を殺せそうにはない。 「おい、佐七、てめえ誰に頼まれた?」笠の台が飛ぶような大事件に巻き込まれたことを知った佐七は、あわてて事情を話す。佐七は失業中の 役者で、身なりのよい男に伊勢参りの引率をしてくれと頼まれたのだそうだ。そして、婆さんたちも、御伊勢さんへの大枚の寄付と騙され 強奪された公金を運んでいたのだ。 「ど悪党やろう、どこにいるんだろうね」「うん。そこにいるよ」大吉の差す方向の茂みから、先ほどから様子をうかがっていた男たちが姿を現す。 あの目つきの鋭い男は、見張り役だったらしい。・・・ 「佐七の野郎は?」「とっくに逃げたよ」「じゃあ、婆さんたちは?」「ほれあそこだよ」必死になんまいだなんまいだと拝んでいる婆さんたち。 「どうだろね、もうケリはついたってのに、念仏なんかとなえちゃって」「念仏に送られて役人に届けに行くか。あ、おまえな、おたつさんのそばが よかったら、ここに残ってもいいんだぞ」「冗談じゃない。ここに残るくらいならおら、死んだ方がましだ。行こうよ、行こうよ」先走る半次を笑う旦那。 コメント:最後の悪人をやっつけるシーンは二人とも峰打ちだが、半次兄さんは刀を抜いて、峰打ちサイドをチェック。そうか、半次兄さんの刀は 真っ直ぐだもんなぁ。 佐七からもらった前金で、派手に前祝いとしゃれ込む二人。半次が珍しく「この旦那、おからが大好きなんだよ。なかったらひとっ走り行って 買ってよ、大皿に盛って・・」と気を利かせる。が、はたしてその後、大吉がおからを食べられたかどうかは定かではない。 エンディングのシーンは、前回と同じ、富士ロケの2シーンを含んだもの(以降ずっと)。 旅の場所:15万石酒井さまの御領内 「母は異国の人だった」 (第57話) <キャスト> ジェリー伊藤=『オッカサン』を連発するオランダ人、ドニケル・ウィルマン(通称:ドンケル) 三条美紀=ドンケルの母で日本人の、お竹 浅川美智子=鼻にはちょっとばかし自信がある、『あたしも好き好きドンケル大好き』旅籠のお姉さん 中村錦司=ドンケルを斬ろうとした、本当は金目当ての浪人 戸板幸男=半次に応対した、お竹の息子 関真吾=半次たちにお竹の住んでいる家の場所を教えた百姓 石月真子=カフェも開店してしまった、茶店のばあさん 西岡江里子=ドンケルが最初にウィンクした娘 岡美芸子=ドンケルが興味を示したので、半次にあっち行けと追い払われた娘二人組(画面右) 紙谷外美=?? 不明 女57−3=ドンケルが興味を示したので、半次にあっち行けと追い払われた娘二人組(画面左) <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=長谷川武次 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=山村繁行 記録=佐藤利子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 母を捜して旅をしている異国人に、大吉、半次が巡り逢います。 「ドニケル・ウィルマンね〜」と異人が自己紹介します。半次は、「ドン、ドン、ドン、ドン?」と、わけのわからぬ受け答えをします。 「ドニケル・ウィルマンね〜」と、またもはっきりと名乗ります。 「ドンと蹴りゃ、ういるまん?」と半次。「ドニケル・ウィルマンね〜」と、再三答えます。 そして異人は「おかぁ〜〜さんっ!と、何度も恋しい母親のことを叫びます。(多分日本人の母のことを) 大吉のことを「おからだんな」と何度も呼んで、ずっこけていましたね。(ZAPOさま 2002月1月12、14日) 茶店で異人に握手されて歴史的な大事件と騒ぐ半次を、大吉は、「おっ、こらだいぶ真剣な顔しとるが、ここに来たんじゃねえかな。 そうなると、この頭は回復の余地はねえぞ」と、まったく信じないが、二人のほうへ、その異人が浪人たちに追いかけられて逃げてくる。 「日本の国が紅毛人にあらされても平気だというのか」と異人を斬ろうとする浪人たちは、大吉に峰打ちで痛められてあきらめて引き上げたが、 異人の方は、言葉も通じず御難にあって助けられた二人の後をずっと付いてくる。とうとう、その日の旅篭を決める段になって、ほおって置くわけにも行かず 「おまえちょっと聞いてこい」「とにかくな、泊まるにしてもだ、割り勘にせんと後で揉めるといかんからな、その点ははっきり念を押すんだぞ」 と大吉に細かく難題をふっかけられた半次は、「オランダ人の旦那さんよ、あーそーこーは、はーたごーと言って、客を泊めるところだがよ、 俺たちここに泊まるんだよ。旦那、どうするかい?なんなら一緒に泊まってもいいんだよ。ただし勘定はわーりかんと言ってよ、めいめい持ち でよ」と話すと、「オウ!」と握手、即座に話が成立した。 それもそのはず、この異人旦那、通じない振りをしていた日本語がぺらぺらなのだ。風呂で「ゴンベが種まきゃカラスがほじくる・・」と歌っている所を、 二人に見られ(大吉シャックリ)、問いつめられ、「ヤイヅノ、そうどならんでもよかではないか」と、事情を話し出す。名前はドニケル・ウィルマン、 ”オカラダンナ”がにらんだとおり、長崎の出島のオランダ屋敷で書記をしており、江戸へ将軍に挨拶に行くカピタンのお供でやって来た。同じ職業 だった父親と日本人の母親に出来た子供で、母に会いたさに日本に来て、このたびやっと許しを得て、母親探しをしているところだった。 母は、篠山の在の清瀬村にいることが分かっており、「それなら明日の昼過ぎには着くぜ」との半次の言葉に感極まった声で「オッカサン!」と叫ぶ。 翌日、あの浪人たちが再び襲ってくる。本当の狙いはドニケルが母のためにとためた100両だと知り、二人は今度は容赦なく、浪人たちを斬るが、 ドニケルは「ヤイヅノ、カッコいい!」、大吉のマネをしたりと、しきりに感心。 そして清瀬村に着く。ドニケルは、母に会う前から涙している。母のお竹を訪ねると、その家はかなり裕福な家で、お竹の息子が出てくる。人目を 避け月見地蔵にやって来たお竹を、ドニケルは一目で母と確信する。「オッカサン!」しかし、お竹は、「私はウィルマンなどという異人は 知りません」と帰ろうとする。「オッカサン、オッカサン、オッカサン」と母を追おうとするドニケルを二人が止める。お竹には、23年連れ添った 夫と5人の子供の幸せな家庭がここにあったのだ。 「今日までこの日のために生きてきたが、まぶたの母は知らぬ存ぜぬ、ああ、情けなやー」と嘆くドニケルを見て、半次は、もう一度乗り込もうと するが、大吉が止める。「よさんか、幸せな一家がめちゃくちゃになってしまう。この旦那の気持ちはよく分かるが、旦那にもそんな権利はない はずだ。」「分かってるよ、オカラダンナ。私は悲しくてもあきらめるよ。オッカサンに一目会えて、それで満足するよ」「それでこそ旦那だ。一目と 言わずによく見ていけ。おっかさんが見送ってくれてるぞ!」振り返ると、離れたところからお竹がこちらを見ている。 「オッカサンが見送ってくれた!ああ、オカラダンナ、ヤイヅノ、オッカサンが見送ってくれた!私はもう何も思い残すことはない、ウレシイヨ!」 「旦那よお、さっきのまんまじゃ俺、あんまり”ドン蹴る”旦那がかわいそうでよ、これでよかった」「ああ、俺もなあ、さっきはお滝さん一家が バラバラにならんかと、ひやひやし通しだったぞ」二人の後ろを、振り返り手を振り去っていくドニケルをいつまでも見送るお竹。 旅の場所:篠山の在の清瀬村 見どころ:最後の「おっかさんが見送ってくれてるぞ」の台詞は、かなり浪花節調でいい。浪人たちを倒した後の目の細め方も素敵!(以上じゅうよっつ) 久しぶりにちょっとヘビーな場面がありましたね。ジェリー伊藤の金を狙う浪人どもとの一回目の立ち回り場面がそれです。だいたい「素浪人 シリーズ」の立ち回りは前半と後半一回ずつあって、前半一回目は刀を抜かずに、無手勝流か鉄扇で、痛い目に遇わせる、または軽くいなすかです。 そして二回目ラストの立ち回りで刀を抜いて斬り捨てる、とまあこれが基本パターンと言えましょう。ところが、今回は、一回目から刀を抜きました。 しかも「半次!お前は手をだすなっ!」と叫んで半次を制しました。これは、相手が見境無く飛び掛って来る殺気だった連中であること、もしくは 腕がたつこと、よって半次にケガをさせまいとする大吉の配慮であると考えられます(あるいは、半次が邪魔で自分が思うように働けない?)。 また、金目当てで外国人を襲うという人の道に外れたことをする侍どもに対する怒り、つまり、侍の面汚しは自分の手でこらしめてやるという 気持ちの大きさの表れともとれます。なんにせよ、緊張感あふれる場面でした。(キンちゃんさま) ドンケルが始めて日本を話した時の、大吉のビックリした顔が良かったです。この旅籠でのシーンも生録のような気がします。(相談屋さま) 何の変哲もない、面白い事などこれっぽっちもない街道の茶店で突然偉人に握手されて有頂天になっている半次の姿。いつ見ても そこのところだけ何度もテープを巻き戻してしまいます。(あまぎそよかぜさま 2005年5月29日) 「先生様が一番ヘマだった」 (第58話) <キャスト> 西尾三枝子=イモの姉ちゃんでお種の娘、おしま 露原千草=相談屋の半次先生様に手紙を読んでもらった、三造やおしまの母、お種 山田桂子=半次の最初の客で『先生様』とお呼びした、ぐうたら亭主を立ち直らせたい女房の、おつね 江見俊太郎=押込み強盗の一味で、南蛮の壺目当てに三造を誘拐した男、彌九郎(やくろう) 青山隆一=お種の息子で誘拐された、三造 八代郷子=『だって花山さま達、有名なんですもの』料亭夏乃の芸者 三浦徳子=半次先生への苦情客を取り次ぐ、料亭夏乃の女中 三根川佳=?おつねの亭主で、唐辛子入りの酒を飲んで目をむいて倒れた、大酒喰らいの松太郎? 正司花江=半次先生に、愛想尽かしのされ方の相談に乗ってもらった料亭夏乃の芸者 波多野博(NC)=三造を引っ立てて来た二人組の画面左側の男+大吉の辻相談屋行列の先頭にいた男 木谷邦臣(NC)=三造を引っ立てて来た二人組の画面右側の男 島田秀雄(NC)=お種の亭主で死んだ押し込み一味の首領 内藤康夫(NC)=おしまの殺された叔父さん、仙造か?? 東孝(NC)=半次先生さまの辻相談屋の行列に並んでいたメンバーの2番目 伊藤好光(NC)=同じく、4番目の若い男 宮崎博(NC)半次先生さまの辻相談屋の行列に並んでいたメンバーの5番目 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=小谷恒義 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 「ついてねえ」半次が、貧乏でついには神さんに供えた芋にまで手を出そうとして、こともあろうに別嬪のねえちゃんに目撃されあわてふためいて いた頃、大吉は、宿場で相談屋が大いに繁昌し、長い待ち行列ができるほどだった。2ヵ月前、この宿場の有力者のこじれにこじれた見合いを まとめ、その名声が高まったというわけだ。半次が声をかけると、「ほれ、これ見ろ、これ、これ」と見せた大吉の袂には、半次がヒエーと驚く金が。 しかし、あまりの人気にさばききれない大吉は、半次を「ここにいる男はだな、一見たががゆるみっぱなしでまるでしまらん顔をしとるがな、 顔に似合わない物知りでな、俺と同じ相談をやっとるンだ。」と、紹介し、机を並べて手伝わせる。 「いくら物知りでも、相談屋つとまるかな」と最初はおそるおそるだった半次兄さん、旦那のマネをし、客から「先生さま」と呼ばれ、ポンポンと相談が 片づき、夜、久しぶりに料亭で酒を飲む頃には、「どんぴしゃり適切な答えをした」と自ら「相談屋の大天才に違いないんだ」とすっかり嬉しくなり 大吉の心配にも、「焼いてやがんだな」と余裕綽々。しかし、兄さんの余裕はそこまで。やって来た芸者の相談に、酒をくらい、げーげー戻し、 ガラの悪い言葉で旦那にくだを巻き、最後にへの一発もかまして旦那をあきらめさせよと答えて、あきれられた頃から怪しくなってくる。 昼間相談に乗ったおつねが半次を家へ有無を言わさず引っ張っていくと、亭主は目をむいて倒れている。半次が、ぐうたら亭主を働かせるには、 まず酒を止めさせなければならない、それには、まず酒をたらふく飲ませて、そのあと唐辛子のたくさんはいった酒を熱燗で飲ませろと、答え、 その通りに実行した結果だった。「おめえ、ほんとにそんなこと言ったのか」と旦那はシャックリ。しかも唐辛子入り酒を5合も飲ませたと聞いて、 「飲ませる方も飲ませる方なら、飲む方も」と再度シャックリ。(医者を呼びに出る半次の前にクモ) おつねの一件がようやく片づいて料亭に戻ると、今度は、お種が半次を待っていた。お種は昼間自分の家に投げ込まれていた手紙を、読んで もらおうと、相談に来て、半次が手紙を読んでやったのだった。しかし、息子の三造が戻ってこないので、気になってもう一度手紙を読んでくれ とやって来た。半次は、「たいしたことないんだ、始めの方ちょっと難しいんだ。ぺぺっとだいたい読んじゃった。パパーと判読で行っちゃった、 判読で」と大吉のその手紙を見せるが、読むなり、大吉は真顔になる。 「本日暮れ六までに南蛮のツボを陣場原へ持参のこと。持参なきは三造の身に異変があるべし」南蛮のツボはお種にはまったく心当たりがない。 ちょうど奉公先から戻って来た娘のおしまは、手紙を読んで「やっぱり」と言ったきり、押し黙ってしまう。そこに、再度脅迫の手紙が投げ込まれる。 まったく心当たりも手がかりもない一件に、さすがの大吉も為すすべがみつからないが、夜明け、おしまがお種を連れて出ていく。二人が入った おしまの叔父の家では、叔父が殺されていた。 衣類の行商で留守がちだったお種の亭主は、かなりの稼ぎで、2年前に仕事を辞めこの宿場に移ってからは蓄えで暮らしていける程だったが 1年前に他界した。大吉は南蛮のツボはこの亭主と関わりがありそうだとにらみ、父親とその弟は、衣類の行商を隠れ蓑として、悪事をやっていた との推理に、お種は激怒するが、おしまは「おっかさん、その通りよ」とようやく口を開く。おしまは、父親の押し入った先に遊びに行っていて、 偶然、父親と同じ薬指のない首領格の男を見たのだった。 おしまの心当たりから南蛮のツボが見つかる。父親一味が奪い取った2000両の隠し場所の図面が入っているはずだ。「ああ、これは図面だな」 と大吉がワザと聞こえるように言い、「え?これ図面てことは」と不思議がる半次を制止する。 既に、かつての一味がそこまでやって来ていたのだった。三造と引き替えに、図面を渡す。しかしそれは図面ではなく、お種の亭主が改心して 押し入った先に金は返したという手紙だった。「頭は、おめえたちと違っていい方へ気が変わったんだ。そうとは知らずお宝の夢を見に来るとは ご苦労なこったな」・・・ 「おとっちゃんは悪い人なんかじゃないよね」と母を問いつめる三造に、大吉は言う。「三造、おとっちゃんは悪い人なんかじゃねえよ、うん。」 「ほんとだね」「ああおじちゃんはウソはつかんよ」「三造、この俺も保証するぜ」「よかった、おいらおとっちゃんがもし悪い人だったらどうしようと そればかり思っていたんだ。おっかあ、よかった!」おしまが二人に頭を下げる。「おい、行こう」半次は、決まり悪そうに、頭を下げながら去る。 見どころ:岡惚れの男と夫婦になるため、旦那をあきらめさせる方法を芸者に答える、半次兄さんの熱弁。旦那との掛け合いは、このところ抜群。(以上じゅうよっつ) わたしの好きな回のひとつです・・・中盤からは「南蛮のつぼ」をめぐって、だんなの推理が冴えるミステリアスなお話です・・もとはと言えば、半ちゃんが引き受けた相談から招いた災難でしたが、だんなはさんざん半ちゃんを罵っていましたし、半ちゃんも「おらぁ腹をかっき切ってもいい」などと大反省していましたが、もとはと言えば、だんなが悪い!!花山さん!80%はあなたが悪い!だって、相談屋が繁盛して自分一人ではさばききれなくて、半ちゃんに頼んだのはだんなでしょう?^^最初は半ちゃんは「自信がない」と言っていたのを無理にだんなが勧めたんですよ!どう考えてもだんなが悪い!!!!!!!!三造が誘拐されて、半ちゃんをいっぱい責めてたけど、むしろ「焼津の・・・おれがお前に相談屋を勧めたのが悪かったよ・・・すまん・・おれの責任だ・・」と一言あってしかるべきですよ・・子供の時からこの回を見たとき、なんで半ちゃん責められなきゃなんないの・・・といつも思っていました・・・(花山のだんな、反省しなきゃ!!)半ちゃんファンとしてはかえすがえす納得のいかないだんなの態度でした・・ですから半ちゃんを腹を切らなくていいよ!さあみなさんはこの放映を見てどう思われます??^^ ついでに言うと「貴様とおれとは逆だった」で半ちゃんのコメントにあるように「常日頃から侍と旅がらすという立場を利用して俺をこきつかってるんだぞ!」と言ってたように、だんなは半ちゃんを少し見下しすぎの感があるように思います・・もちろん半ちゃんを心底好きで、相棒と大事に考えているのはわかるんですが、、反省もしなきゃ!半ちゃんが預けた金も勝手に使うしね・・^^ (きざくら&ようめいしゅさま 2009年4月10日) 旅の場所:沢部宿(奥州街道・宮城県栗原郡金成町沢辺のことか?) コメント:前半のシーンは生録のようだった。 (59話の)予告編の冒頭のシーン(若殿の乗った駕籠の行列のシーン)は、本編には無かったシーンでした。(相談屋さま) 「女ごころに弱かった」 (第59話) <キャスト> 左時枝=若様に一目ぼれされた、居酒屋の酌女、おまつ 潮万太郎=若殿の件で大吉に相談を持ちかけた須賀家のじい、堀田平左衛門 名和宏=左頬にホクロのある武士、伊庭継之助(いば・つぐのすけ) 菅沼赫=バカ殿様、いや若くはないが若殿の、千之助 島村昌子=おまつの働く居酒屋の女将 武原英子=『酒』が『茶け(ちゃけ)』に聞こえた茶店の娘、おとき 月形哲之介=郷士風三人連れの一人で、おまつを呼び出し斬った浪人、桑田 北原将光=泣く子と強盗には手を出せなかった役人 伏見和子=?? 森章二=女の子を人質に取った強盗の片割れ 田中一美=人質の女の子の母親 壬生新太郎=郷士風三人連れの一人で、大吉が待てと叫んだ時、左側の浪人(茶色の袴) 和田昌也=『おいおいそいつは大変だ、勘定はここに置くよ』の居酒屋の客 林三恵=大吉に客のあることを告げた、旅籠みよし屋の女中 美柳陽子=半次に、人質事件の経緯を話した女 光英宏美=?? 淡路康(NC)=郷士風三人連れの一人で、大吉が待てと叫んだ時、右側の浪人 榎原政一(NC)=大吉とじいの話を盗み聞きしていた継之助に耳打ちした侍 春藤真澄(NC)=居酒屋の酌婦で、おまつの一目ぼれ話が真実と分かった時、四人中画面右端の女 不明 女59−2=人質の女の子、おゆき 女59−4=おまつが奥方になったら江戸に呼んでと頼んだ酌婦 <スタッフ> 脚本=松村正温 監督=佐々木康 撮影=脇武夫 計測=長谷川武次 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=中島哲二 助監督=曽根勇 記録=宮内喜久子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=中道正信 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 強盗から無事子供を救い出した腕を見込んで、この辺りを領地にもつ旗本の須賀家のご用人・堀田平左衛門が、大吉に相談に来る。須賀家の 若殿が、先月の梅見以来、臥せって、何を聞いても答えないと言うのだ。半次が賭場ですってんてんになって帰って来たため、今宵の旅篭代さえ ままならない二人は、とにかく若殿に会いに屋敷に行く。若殿は、大吉の見込み通り、「お医者様でも草津の湯でもの口」で、梅見の帰りに駕籠から 見た娘を見初めたのだが、その娘がどこの誰だかまったく分からないので、誰にも言えずにいた。大吉は、不惑の年(40歳)にもなってそんなことで 為すすべを失っている頼りない、ひねた若殿にあきれて、商売をキャンセルして出ていくが、半次は、平左衛門から、前金を受け取り、その娘を 探し出すことを引き受けてしまった。「この先どうなっても、おれは知らんぞ」と心配する大吉だが、二人の話が耳に入った居酒屋の酌婦・おまつが、 「若様に一目惚れされたんだもん」と言い出す。しかも、その所と場所が、若殿の話と一致するのだ。(大吉シャックリ) 半次が、これは間違いないと、おまつが嫌がるのも解せずに、若殿を連れてくると、若殿は「違う、帰る」と言い出すし、おまつはおまつで「だから 会うのはイヤだっていったでしょ」と泣き出す。二人の間に入って、何が何だか分からない半次は、おろおろ(その先にクモ)。 大吉には、若殿が見初めたのが、おまつでなくおまつの近くにいた娘だったと分かった。おまつが心配で、再び居酒屋に向かうが、その途中、 おまつの「助けて!」という叫び声。浪人3人が逃げ出した。おまつはとぎれとぎれの息の中で、大吉に真実を話す。若様がおまつを見初めたというのは ウソで、貧乏に育ってお金を稼ぎたいと酌婦になったが、思うようにいかず、客の気を引こうと、そんなウソを言ったと。最後に本当に見初められたのは おときちゃんで、おときちゃんは宿場のはずれの・・と言ってこときれる。 大吉は、おまつの遺体を居酒屋に運び、「俺は許さん」と、「女の可愛いウソ」のためにおまつを殺した犯人捜しに出る。大吉には心当たりがあった。 先日、若殿の相談を受けた帰り、屋敷からずっと二人の後をつけてきた侍がいた。その男は、今、須賀家の屋敷から出てきた。しかも、大吉が カマをかけると、あわてて否定して去っていった。平左衛門によると、この男・継之助は、自分の妹を若殿に押しつけ、取り入って、出世しようと 考えているという。平左衛門と大吉の話を、部屋の外で聞いている気配が。 継之助の元に、約束の金をもらいに来たあの浪人3人が来る。あわてた継之助が「下手をすると酌婦のおまつをやったのがばれるかもしれん。」 と話している後ろで、「ああ、その通りだ」と大吉。やはり、継之助が浪人におまつを斬らせていたのだった。・・・ 若殿が騒ぎを聞きつけて、出てくる。それを、平左衛門が「危のうございます」と奥へ引き取らせようとするのを大吉が止める。「止めるな、とっつぁん だいたいな、この騒ぎはあんたがしっかりしてないからこうなっちまったんだぞ。しっかりしないから、罪もない一人の娘が死んじまったんだぞ!」 その言葉に若殿は目をさますし、礼を言う、平左衛門。 宿場はずれの茶店、二人に注文のお酒でなくお茶を持ってくる娘。「酒って言ったんだけど、ちゃけって聞こえたかもしんねえな。ねえちゃん別嬪 だな、名前はなんて言うんだ?」「おときって言います。」「なかなかいい名前だ・・・・あ〜!おときぃ!?そいじゃ、・・」不思議そうに半次を見つめる おときに大吉が言う。「おい、ねえちゃん、何でもねえんだよ。このにいさん、ちょっと酔ってるんだ」「旦那、なぜ止めるんだよ、おときって言えば、 あのうらなりのトーガンやろうが一目惚れした・・」「バカタレが!おときといったってな、同じ名前はいくらでもあるんだよ。そっとしとけ、野に咲いている レンゲはな、野原に咲かせておくんだよ」くすっと笑うおとき。やっと意を介した半次が笑い出す。 見どころ:半次がおまつの若殿様の話を聞いているうしろで、シャックリで飲んでしまった瓢箪に、とっくりから酒をつぎ足している大吉がひょうきん。 斬られたおまつに何度も話すのを止めさせ、医者に連れて行こうとするが、おまつの希望で、最後までおまつの話を聞く大吉。 賭場ですっかりすった半次兄さんが、寒いので、旅篭の掛け軸を着ていて、そのヒモに火鉢の火がついてあわてているシーン。 「災難ひろうバカもいた」 (第60話) (←メニューだけ) <キャスト> 芦屋小雁=将軍様の落としだねには程遠い、くっぴんの丑松 夏珠美=おからがあるのに無いと言って大吉を追い出した居酒屋の娘で丑松の妹、お咲 高城淳一=『黙れ、問答無用だ』と言った三人組お武家の長で、他の二人の兄、叔父、松島 佐藤京一=印籠を狙う悪党の親分、川端弥九郎 有川正治=半次を見つけて顔色の変わった三人組お武家の一人、松島藤之助(まつしま・とうのすけ) 松田明=半次の尻をこん棒で叩いた、居酒屋の隣のおじさん 佐名手ひさ子=ほうきを振りかざし大吉たちを泥棒呼ばわりした、居酒屋の隣のおばさん 平沢彰=賭場でツボを振っている男 志賀勝=川端一味の一人で、『兄さん』と言った人質のお咲を制止した浪人 高並功=『その印籠が無ければ我が家は御取りつぶしになるかもしれんのだ』三人組お武家の一人、島田源三郎 井上茂(NC)=博打で大もうけし別嬪のねえちゃんのこと想像して歩いている半次を奇異な目で眺めながらすれ違う通行人 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=佐々木康 撮影=脇武夫 計測=長谷川武次 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=中島哲二 助監督=曽根勇 記録=宮内喜久子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=中道正信 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 半次は賭場でつきについて、「他にも何かいいことがあるかもしれねえな、例えば別嬪のねえちゃんが・・」と楽しげに街道を歩いていたが、 ついていたのはそこまで、やたら「おひけえなすって」「ありがとござんす」「ご立派!」を繰り返すぐっぴんの丑松という同業に出会い、身ぐるみ 脱いだ丑松の持ち物を押しつけられ、軍資金二分を有無を言わさず貸したところから、半次の災難は始まった。 まず出会ったのは、大吉。着物や刀を抱えた半次に「古着屋に転向したのか」とからかわれ、訳を話すと、「おまえなぜそれを早く言わんのだ バカタレが!」と、”寒さしのぎの祝い酒”を強要される。 入った居酒屋では、最初は愛想がよかったねえちゃん・お咲が、半次の持っている着物を見るやいなや、180度態度が変わり、泥棒扱いした上、 隣近所を総動員して、大吉ともども、居酒屋から追い出す。 大吉は、注文したおからが食べられず、「こんな無体な非人道的な話があっていいのかよ、バカタレが」と未練たらたらだし、半次は追い出された 意味もわからないまま、今度は、3人の侍に、問答無用に襲われる。侍たちは、半次の腰の印籠を狙っていたようだ。大吉が印籠を見てシャックリ。 半次もよく見ると「おーおー、こら三つ葉葵だな。待てよ・・わあ!たまげた!」その上、クモに出くわす。 印籠の持ち主、丑松を訪ねるが、家から出てきたのはお咲。お咲は牛松の妹で、丑松が、誰彼見境なく身ぐるみ脱いで借金し、賭場でするのを 繰り返すため、大吉と半次も、借金を取り返しにきたたちの悪い奴らだと勘違いしたのだった。しかし、三つ葉葵の印籠を兄が持っていた いきさつは分からない。 半次から借りた2分もとうにすり居酒屋でぐでんぐでんになっていた丑松に性根を入れようとして、半次はちょっと心配になる。「旦那、大丈夫だろうな。 まかり間違って将軍様の落とし種ってことはねえだろうな」「あの顔が、将軍様の落とし種って顔かよ」「ちげえねえ、よーし、そうと分かったら思い切り しごいてやる」今度は命で1両貸してくれと、「蛙の面にションベン」の懲りない丑松に、半次は、牛松の持っていた印籠がとんでもない代物であった事を 示す。丑松は、この印籠を、3日前、この辺りの悪党川端弥九郎に斬られた、浪人とヤクザの二人連れの近くから拾ったのだという。この由緒ある印籠は、 浪人がもてるものではないから、おそらくあの侍たちが家宝にしている印籠を、川端がこの浪人とヤクザに奪わせ、口封じに二人を殺したと 考えられた。 丑松の家に帰ると、お咲の姿が見えず、お咲の命と引き替えに印籠を持ってこいとの、弥九郎の手紙が。「俺がバカだった」とようやく目が覚めた 丑松を連れ、表へ出ると、そこに例の侍3人が来て、大吉に見事不名誉な盗難を見透かされ、すべてを肯定する。そして、6人は、指定された 場所へ、印籠を持っていく。 しかし、あくどい弥九郎は、短筒を出し、印籠を求める。「目には目をという言葉を知っているか。ではお言葉通り、印籠を返そう」大吉は後ろにいる 侍たちに印籠を投げ、弥九郎がハッとした隙に鉄扇を投げて短筒を落とす。・・・ 侍は無事印籠を取り戻すことが出来、丑松はお咲に再出発を誓う。「でも3日坊主にだけはならないでね」 「旦那、ぐっぴんの兄い、『3日坊主にだけはならないでね』喰らってるぜ」「そう言えば、あのぐっぴんの兄いは、3日坊主のような顔しとるな」 「おいおい、ぐっぴんがせっかく足洗うって言うのに、縁起でもないこというなよ。しかしよ、よく見りゃ、本当にそんな顔してるな」 見どころ:最後の殺陣で、このちゃんはいろいろな手を見せてくれる。ちょっとスピード感に欠ける気がするが、それでも、手を理解するには、 十分速すぎる。このごろ、殺陣のシーンでも、コメディー要素が入ってきた。半次兄さんが、弥九郎の落とした短筒を即拾い、逆に弥九郎一味を 脅そうとするが、「バカが、玉もねえのに」、それに気づかない兄さんは、優勢に立ったつもりが、弥九郎らに追い込まれ、「旦那あ」と逃げてくる。 (以上じゅうよっつ) コメント:この頃の「花山大吉」のラストの殺陣で目立つのは、大吉と半次にプラス何人かの味方がいることです。「月影」のころは半次と二人だけで (ときには兵庫一人だけで)何十人もバッタバッタと斬りまくっていたものですが、「大吉」では、その形態が崩れてきています。半次や高城淳一や 有川正治の立ち回りに殺陣シーンの半分以上を割いています。そして大吉はといえば、4,5人斬っただけ。大体、殺陣そのものが「月影」に比べて 縮小されているようです。「月影」では毎回二、三十人は斬っていましたが、「大吉」では、せいぜい十人前後ですものね。それだけ近衛さんの体調が 日に日に悪くなっていったんでしょうねえ。そのことを考えると胸が痛くなってしまいます。 (キンちゃんさま) このエピソードでは丑松の家の壁に「歳子丙暦陽大」(太陰暦ではなく)と書いた暦が貼ってあることについての面白い洞察:「天保暦」(旧暦) ならばドラマの中の時間を表すだろうが、あの「歳子丙暦陽大」は「太陽暦」(新暦)で、恐らくドラマを作っている(当時の)現代人達:スタッフ、 キャスト(特にゲスト)の時間だったのではないだろうか。例えば何かのアニバーサリー。よって、ドラマの中の時計とは無関係。あの回の エピソードに参加されたどなたかが昭和11(1936)年:丙子生まれでその収録か放映の月(ひょっとしたら当日)に当時で34「歳」の誕生日を 迎える事になり、茶目っ気をだしてああいう暦を作り「分かるかな、このナゾナゾ?」とこれ見よがしに画面に映したのでは?だから、大っきく 「タイヨー暦」とことわっているのでは? なんて思ったんですよ。(MICKさま) 「姐ちゃんヤクザは凄かった」 (第61話) (←多分無事解決後、食べたはず) <キャスト> 東山明美=大吉が血しぶきをあげて地獄に逆落としされた、姐ちゃんヤクザのさくら吹雪のお花 市村俊幸=大吉のために念仏を唱えた和尚 金井由美=おからのある居酒屋の娘、おはま 土屋靖雄=さくら吹雪のお花の子分で、大利根(おおとね)一の殺し屋の先生、勘太 山口幸生=濱川一家の親分 滝恵一=居酒屋で大吉の一人前のおからを撒き散らした濱川一家の兄貴分 柳川清=濱川一家に痛い目にあっている居酒屋のおやじで、おはまの父 阿波地大輔=濱川一家の凄腕の用心棒、荒川人十郎 宮城幸生=半次に最初に切りかかったり、居酒屋で『兄貴、ここには誰も居ないぜ』と言った濱川一家の子分 日高綾子=大吉のために瓢箪に酒を入れた茶店のばあさん <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=佐々木政一 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=中道正信 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 大吉と半次は、茶店で時を前後して、さくら吹雪のお花とその子分・勘太に会う。大吉も名前負けしそうな派手でげんのいい名前のお花は、 やたらと威勢がよく、半次が大吉の名前を出したところ、「おまえさんもあの男の後を追いたいのかい」と、さも大吉を斬ったような口振り。こんな 小娘に大吉がやられるはずがないと思っていた半次も、川に流れる「花」の字の瓢箪を見つけた時には、きっと、シャックリでもこきだしたところを バッサリやられたんだと、泣く泣く、坊主に読経を頼む。 (実際、お花に啖呵を切られて、大吉はシャックリ、半次は大吉を地獄へ送ったといわれ たまげついでにクモ) だが、「花山さんの旦那さん、迷わず成仏して下さいよ」と拝んでいる半次の後ろから、「半次てば!」とちゃんと足のある旦那が声をかけ、 命の次に大事な瓢箪を見つけて、坊さんを押しのけて瓢箪にほおずりする。大吉は、茶店を出た後、「不覚というか錯覚というか」腰につけた つもりが瓢箪を落としてしまい、「もし見つからなければ、これから先一生、シャックリがで通しになる」と、あわてて探していたところだった。 大吉に事の次第を笑われ、しかも坊さんに渡した一分のお布施も戻ってこず、これもあの、さくら吹雪のアマのせいだと怒っているところへ、 そのふたりが、喧嘩支度で現れる。半次が文句を言うと、「濱川の飼い犬は遠慮なく殺してやるよ」と返し言葉、勘太が勝手に大吉と半次に かかってきて自滅した後、事情を聞くと、お花の父親である夜桜一家の親分は、金のためなら何でもする非道な濱川一家の目の上のこぶで 多勢(12〜3人)に無勢(1人)で、濱川に斬られた。二人はその無念晴らしに行くという。大吉と半次は、お花らを迎え撃つために近頃濱川一家 が雇ったという用心棒に間違えられたのだ。 そうと分かれば、と、半次は早速助太刀を申し出て、二人を率いて濱川一家に乗り込むが、濱川には大勢の子分と用心棒がいるばかりか、お花と 勘太は怖がって、半次にすがりつき、半次は動きがとれず、一時退散するはめになる。 一方、ヤクザ同士の喧嘩はごめんと、助っ人を断り半次に絶交を言い渡された大吉は、居酒屋でおからを10人前と酒を注文したが、店のおはま がおからを運ぶ時に、半次らを追う濱川の子分らが家捜しに来て、おからを落としてしまう。おはまの話では、濱川一家はこの辺りの店から毎月 2分を取り立て、払わなければ店を打ち壊したり、人殺しまでする、おはまの父親もそれで右腕を失っていた。 「俺はちょっと出かけてくる。酒とおからは帰ってからゆっくりやるから、頼んだぞ」「ハイ」 大吉が濱川のバカタレどもを掃除しに来たと知って喜ぶ半次だが、助っ人でなく町の人のためだと言われ、「こっちも助っ人を頼んでたまるかい」 そこへ、一家が用心棒を引き連れてやってくる。・・・ お花は、大吉に、「あたいバカだった、花山様に言われたことが骨身にしみました、刀を差すのは今日限りでやめます」と話す。半次も大吉に ちょっと具合悪そうに言う。「旦那が半分は俺たちを助けに来てくれたんだッてことはよく分かってたんだけど、なんて言うかこの、かっこがつかなlく なって怒鳴っちゃったんだ。いやあまったく、申し訳ねえ」「今さら謝っても遅いと言いたいところだが、おまえのバカさ加減に免じて許してやるよ」 「ありがてえ・・・あ!バカさ加減はひどいじゃねか、ははは」 居酒屋では、おはまがたっぷりの酒とおからを用意していた。 見どころ:旦那の殺陣は、フットワークが近頃つらそうに見えるが、腕のほうはさすがだ。用心棒(阿波地大輔さん)と刀を交えて向き合っている とき、意表をついて相手の刀をむんずと掴み屋根へ突き刺し、斬る。(以上じゅうよっつ) 大吉旦那が見せた、落した瓢箪を見つけた時の安堵の表情が最高でした。日ごろ思うのですが、近衛十四郎さんって、殺陣はもちろん凄い のですが、喜怒哀楽などを出す演技もすばらしいものがあると思います。今回、最後の最後で,用意された大盛りのおからに喰らいつくシーン を見たかったと思ったのは私だけでしょうか?(相談屋さま) 半次兄さんの仁義(途中まで):「てめえ生国とはっしまするところ駿河でござんス。駿河の国は焼津でござんス。渡世につきましては、 一本どっこの旅ガラスにござんス。姓名の儀は半次と申しやす。(ここでちょっと首を傾げてかわいく)よろしくお願いしやす」 コメント:いままでのおからの注文は5〜6人前だったが、今回は10人前。大吉のおから中毒が進んできたのだろうか。 旅の場所:勘太の仁義の中に、「大利根の下総、流れを洗う酒井」とある。 「あきれた病気にかかっていた」 (第62話) <キャスト> 牟田悌三=息子長八のおねしょの件で相談にのってほしかった居酒屋のおやじ、長助 松木路子=半次がベタぼれの居酒屋の娘で八公の姉ちゃん、おみの 万里昌代=酒造問屋の徳兵衛の後妻、おかる 左卜全=牛や馬なら得意だが、半次にはさっぱりお手上げの獣医 鮎川浩=酒屋の長八とは犬猿の仲、酒造問屋『大和屋』の主、徳兵衛 五味竜太郎=『おい素浪人、改めて素面(すめん)の時にこの決着を着けよう』三人組浪人の一人、牛島 加島こうじ=甘酒をおごらせるのが得意な居酒屋の息子、長八(通称:八っちゃん、八坊、八公) 三木豊=最初に麻疹を発病した酒造問屋の息子、徳ちゃんこと、徳七 丘路千=最後に大吉に刀を折られた、三人組の中の長髪浪人 森源太郎=冒頭、最初に大吉に斬りかかった三人組浪人の一人 上村明子=徳坊ちゃんの様子がおかしいとおかるを呼びに来た酒造問屋の女中 伊東好光*=大吉の瓢箪に酒を入れた酒造問屋の小僧、定吉 下元年世=居酒屋のおやじを召捕った役人 *伊東(伊藤)さんの表記に関しては、昭和42〜46年にかけての10本の出演作品のデータが手元にあるのですが、「伊藤」表記と「伊東」表記の 二つが前後に混在し、どちらが正しいのか、誤植なのか改名なのかも不明でして、おまけにその手元の10本の比率も「伊藤=5本」「伊東=5本」 と同数なので、さらに混乱に拍車をかけてくれています。ただ、同一人物である事だけは確かです。(どらおさま) <スタッフ> 脚本=松村正温 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=佐々木政一 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=中道正信 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 向かい合った居酒屋の長助と酒問屋の徳兵衛は、幼なじみだが、長助が徳兵衛の後妻を気に入らず、以来すっかり犬猿の仲で、今日も徳兵衛の ネコのことで酒の肴にもならない喧嘩をし、飲んでいた大吉をあきれさせる。一方、その子供・長八と徳七は仲良しで、今日も、一緒にコマを回して 遊んでいた。その仲間に入れてもらった半次は、八坊の姉・おみのが居酒屋でお酌をしてくれるときき、子供たちにおごっていた甘酒もそこそこに 居酒屋へ向かうと、そこでは大吉が飲んでいた。「あちこち探し回ったんでござんすよ」と心にもないことを言っても、大吉には半次がここに来た 目当てが分かっている。それに、長八まで一緒になって半次をからかうのだが、半次の様子がどうもおかしい。「こら!」と八坊を追いかけようと してめまいを起こす、顔色も悪い。それでもおみのちゃんのこととなると「『将を射んと欲すればまず馬を射よ』と言うだろ」と、気力で張り切るが 「おめえなんか、馬どころかのろのろ牛でも仕留めることはできんぞ」と言われ、「腹立つなあ、いらいらしてきた」と立ち上がると、倒れてしまう。 普段病気になどなったことがなく、すっかり弱気になった半次は「俺、旦那の腕に抱かれて死ねりゃあ本望だ、あの世と言うところが仮にあるとしたら、 俺、先に行って待ってるよ」と眠ってしまう。 それからしばらく経って、大吉が「どんな案配だ」と半次の様子を覗くと、半次の顔に斑点が。「おめえその顔は、麻疹じゃねえかや!」と シャックリ。シャックリが止まってからの大吉は、「頭の程度も子供並みだと思っていたら病気まで」と笑い通し。しかも、麻疹は半次だけではなく、 仲良しの長八と徳七もかかっていた。「流行ってるんですね」というおみのに、「流行るもいいところだ。いい年かっぱらった男まで麻疹を患って るんだからな」かぶった布団から半次が恥ずかしそうに顔を出す。 おみのが、一人看病するのも二人も同じだからと、半字の世話を買って出て、半次も「俺、おみのちゃんに看病してもらうよ」とそれでも色気だけは 忘れない兄さんだが、大吉は、大人の麻疹はたちが悪いからと、半次に早くここから出ていくようにと催促する。「旦那あ」「ダメッ!」 しかし、布団をはうクモに、「おい兄さん、クモが見舞いに来ているぞ、クモが」と声をかけても「おみのちゃんが見舞いに?どこだ、おみのちゃん」 と半次が高熱の錯覚にうなされている晩、徳兵衛の店に賊が入り、有り金残らず奪われ、現場に落ちていたタバコ入れから、長助が手引きをしたと疑われ 捕まった。相談に来たおみのに、長助を返してもらうには真犯人をつかまえるしかないと、大吉は酒問屋の徳兵衛のことろへ向かい、徳兵衛に、 見つかったら盗まれた200両の1割を礼金でという相談を持ちかけ、家の中を調べる。 大吉には、だいたいの見当はついていた。「本日休業」の看板を掲げたおみのの居酒屋で飲みながら、向かいの問屋から出てきた徳兵衛の おかみ・おかるが出ていくところを確かめ、後をつける。その行く先は、三人の浪人のいる旅篭。おかるは、大吉が捜査に乗り出したことから 早く引き上げようと浪人らに催促しに来たのだ。4人の行く先を遮る大吉。「女、その小脇にした金の包みをこっちへ渡してもらおうか。俺は、 その中から1割礼としてもらうことになってるんだ」・・・ 長助は無罪放免になり、悪い女に騙されていたと目が醒めた徳兵衛と長助の仲は、再びもとどおりになる。 「ちゃんが帰ってきたよ」「そうか。嬉しいだろう八公」「あたりめえだい。半次のおじさんも分かり切ったこというない。だから子供みたいに麻疹に なるんだ」「このガキは、こら!」すっかり元気になった半次が、これもすっかり元気になった長八と徳七の後を追いかける。と子供たちは、おみのら の元へ逃げ込み、大人げないところをおみのに見られた半次は照れ隠しに笑う。奥で酒を飲んでいる大吉も笑う(そしてなぜか、お猪口を口にくわえる)。 見どころ:なんとかおみのに看病してもらえないかと旦那をすがるような目で「旦那あ」と見る半次に、「ダメッ!」と言う大吉、最後にお猪口を くわえてみせる大吉はお茶目。賊の行く先を遮る動作、そのあとのまるで悪人のような台詞が、かっこいい!(以上 じゅうよっつ) 半次あにぃはハシカを患って大笑いされていたけれど、ハシカは命取りに成る病気だったのにね。旦那さん、少し笑いすぎじゃ。(ともえさま 2009年4月17日) みなさん仰っているように、確かにダンナ笑いすぎ・・っていう気もするのですが(笑)いかんせんあの笑顔につられて知らずこちらも笑ってしまうのが快感で、例のシーンはかれこれ7、8回見直してます(^^ゞ見る度に限りなく幸せになれるところをみると、どうも大吉ダンナの(というか近衛さんの)笑顔には脳内麻薬分泌作用があるような気がします(笑)あと思ったのは、あの話が作られた約40年前は、ハシカなんて本当に子どもが誰でもかかる病気の1つにすぎなかったんだなぁ・・ということ。多分、大人になってから罹る人なんてほとんどいなかったんでしょうね。なので半次兄さんの描写も「タチが悪い」より「珍しい」にウエイトが置かれていて、予防接種が普及した反面、抗体を持っていない谷間の世代が存在して、殊更「大人のハシカが危険」という認識になってしまった今とは隔世の感があります。なのでダンナがあそこまでウケまくっているのは、決して薄情だからじゃないんですよ〜・・きっと。(←これが言いたかった(笑))(南まさとさま 2009年4月18日) コメント:次回第63話の予告編には、鹿児島ロケ風景あり。 「火を噴く島に惚れていた」 (第63話) <キャスト> 平井昌一=手負いの侍、伊庭新八郎 桃山みつる=語りたがらない武家娘、雪乃 茶川一郎=蜘蛛合戦用の蜘蛛を探していた目玉ばっかり男 曽我町子=蜘蛛合戦野郎のかあちゃん 神田隆=『見ざる聞かざるでいることじゃのう』浪人たちの親玉、室部十太夫 千葉敏郎=『新八郎はどうした?』新八郎を探している浪人 遠山金次郎=冒頭、雪乃や大吉に最初に斬りかかった浪人、吉本 乃木年雄=『おさいじゃんせ』の父っつぁん 浜本孝=??大吉に最初に斬られた浪人か?? 西山清孝=新八郎を探す浪人一味の一人で、小屋の中に最初に入って来た赤い着物の浪人で最後は半次に斬られる 藤沢徹夫(NC)世羅豊(NC)藤原勝(NC)+芸名不明の俳優(雪乃の前に現れた浪人一味の画面右端にいた浪人)=街道で大吉達が会った、 千葉、遠山、西山を含む浪人グループ <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=佐々木政一 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=中道正信 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作=NET・東映 協力=鹿児島市西桜島村 鹿児島ロケ(素浪人日本縦断ロケ第6弾?)。 薩摩の国を目指す二人だが、半次は道を間違って反対方向に進んでいるのではないかと不安。通りがかりのとっつぁんに聞くと、”お賽銭 じゃらじゃら”とか”踊り踊ってる”ような言葉が返ってきて、「海の神さまが今朝あたりぷーなんてへぇぶっこいたりしてよ、そこんとこ俺たちが早立ちの 勢いで渡ってしまってよ(大吉シャックリ)」とこれは知らぬ間に海を越えて外国に来てしまったと、大吉が薩摩弁だと説明しても、不安は収まらない。 そんな半次も、道の開けたところで桜島を見て、「ちがいねえ、絵で見た桜島だ!」と薩摩の国であることを確信。桜島に一目惚れする。 が、絶景とは裏腹に、通りがかった旅姿の武家娘・雪乃の前に、7〜8人の殺気を帯びた浪人たちが立ちはだかる。どうやら、男たちは 新八郎と言う男を追っているらしいが、その行方を知らない雪乃を、おとりとして無理矢理連れて行こうとしているらしい。大吉が雪乃を救うが、 雪乃は、事情を話さず礼を言って去っていった。 半次が、雪乃がもし半次に相談してくれて、問題を解決したら、「感謝が信頼に、信頼が思慕に変わって・・ついに足を洗って、所帯をもつ、なんて事を 考えただけ損ぶっこいた」と、またまた現実離れした想像で大吉に笑われていると、林の中で、”目玉ばっかり”の男が木に登っている。半次が 怪しがって近づくと、男は加治木のクモ合戦のためのクモを捕っているのだと、クモを捕りだして、半次に見せる。「出たあ!早く捨てろ!」「あんたは こげんかわいかクモが怖いとか」その上、居酒屋で”あれ払い”のために、大吉に勧められるまま飲んで(大吉はおからにありつく)、だんだん 元気を取り戻しつつあった半次は、入ってきた目玉の”クモ当て野郎”に再会した上、その男がジョロウグモならず女郎と楽しんでいる事を知ってやって来た 男の女房が、怒ってはじいたクモが半次の手に噛みつく。 その晩、二人が今宵の宿に決めた小屋で、先客の若侍が斬りかかってくる。大吉が山勘で「新八郎というんじゃねえのか」とカマをかけると、 男も雪乃同様、事情を話さないまま、小屋を飛び出していく。この侍にとっては運良く、その後すぐ、昼間の浪人たちが、ここにいるはずの新八郎 を捜しに来たが、大吉は知らぬそぶりで通す。 さんざんだった日が明けて翌日、間近に見る桜島に半次はまた感激、旦那も誘って、桜島に渡る。大きな岩がごろごろ、しかも、吹き出したときには 真っ赤に焼けていたんだと大吉に聞かされ、「桜島はえれえ力持ちなんだなぁ。「『色男、金と力はなかりけり』なんていうが、桜島はちがうんだね」 とたまげる。 その二人の元に、雪乃と新八郎が姿を見せる。大吉と半次が浪人たちの仲間ではなかったことを知った二人は、非礼を詫び事情を話す。 新八郎の父と例の浪人の統率者・室部十太夫は剣仲間で、病床の父の元に諸国を門弟を連れて修行に歩いていた室部が訪ねてきた。しかし 修行とは名ばかり、実は、父の金が目当てで、新八郎が留守にした隙に父を殺し、金を盗んでいるところを許嫁の雪乃が目撃、それを知らせに 出た雪乃と、新八郎は、室部らに狙われることになったのだ。ここを死に場所として闘う決意の新八郎。そして、その室部らが、姿を現す。・・・ 「やったあ、新八郎さん、やった!」見事に仇を討った新八郎は、雪乃と手を取り合う。「旦那、桜島に来て、まさか仇討ちの助っ人するとは思わなかっ たよ、しかしよかったな。あー俺、これで昨日からのもやもやがスッキリしたね」「どうだい、そのスッキリしたところで加治木のクモ合戦でも見に 行くか」「冗談じゃねえよ、クモ合戦はいけねえ、クモ合戦は」「そう飛び上がるなって。見ろ、おまえの一目惚れの相手がわらっとるゾ」桜島を 見上げて半次は「あーぽっぽっ」 旅の場所:峠を超えると福山(鹿児島県姶良郡)→桜島 「三人揃ってバカだった」 (第64話) <キャスト> 鈴木やすし=黒川一家の三バカ兄弟の長男の辰ちゃんこと、辰造 市川和子=弟たちを心配している三バカ兄弟の姉、おきよ 竜崎一郎=子供達の憧れの的、代五郎親分 北条清志=三バカ兄弟の次男の采ちゃんこと、采一(さいいち) 杉山光宏=三バカ兄弟の三男の鹿ちゃんこと、鹿(しか) 青山宏=居酒屋で大吉に吉坊の両親の話をした酔っ払いの客 北見唯一=孫の吉松が釣って来た鯰(なまず)の卵の生姜煮を出した、居酒屋のおやじ 吉川雅恵=半次を『やいとの半次』と間違えた、三バカ兄弟の家の手伝い婆さん、おくま 海老江寛=『ほえはぁ(ホレた)』三バカ兄弟の親父、黒川の繁造大親分 賀川泰三=おきよを連れて行こうとした代五郎一家の子分 榊原大介=?首を吊って死んだ、吉坊の父っつあん、伊七? 高寺正=『半の目に張っておくれよ』大吉にシャックリを出させたサイコロ博打ごっこの子供四人組の一人、吉松 河内保人==『だってカッコいいもの』サイコロ博打ごっこの子供四人組の一人 三沢孝年=『おじさん、代五郎親分の賭場を覗いたことねえんだろう』サイコロ博打ごっこの子供四人組の一人 岩田克啓=『おいらもだ』サイコロ博打ごっこの子供四人組の一人 川谷拓三(NC)=おきよが代五郎の子分に『言わせておけばいい気になりやがって!』と言われて連れて行かれようとした時、奥にいる子分の一人 不明 女64−1=舌を噛んで死んだ、吉坊の母親 西田良(NC)=用心棒(最後の方に出てくる) <スタッフ> 脚本=松村正温 監督=井沢雅彦 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=太田雅章 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=中道正信 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行主任=中久保昇三 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 半田宿の黒川一家の三兄弟は、病気の父親から元代貸しの代五郎が奪った縄張りを取り戻そうと、「旅慣れた」「顔が広い」半次に黒川一家の 客分になってくれと頼む。おだてに乗った半次は、大吉にも応援を頼もうと、大吉の待つ居酒屋へ行くが、先刻この兄弟に同じ事を頼まれ一喝して 断った大吉から、半次の任侠道は単なるおっちょこちょいだと言われ、怒って「誰が頼むか!」と出て行く(そこにクモ)。 半次と別れた大吉は、代五郎の子分らに絡まれているおきよを助けるが、おきよは三兄弟の姉で、三兄弟とは逆に、何とかして弟たちが堅気に 戻ってくれないかと、大吉に相談を持ちかける。 大吉は、一計を案じ、黒川一家で働くおくまに芝居をさせ、代五郎一味が、三兄弟が助っ人を集めて縄張りを取り返そうとしていると知り、殴り込みに 来ると駆け込ませる。大吉は「自分でまいたタネは自分で刈れ」と、不安げな三兄弟が自分たちで片をつけるよう、半次を連れて去る。 半次は、一家を助けると言った前言を翻して出てきたし、おきよのことも心配で、平然と酒を飲む大吉を、薄情だとなじるが、そこにおきよが来て すべてがうまくいって、兄弟は堅気になると誓ったと聞き、これが芝居であったことに気づく。「おめえ今頃気づいたのかよ、俺はまた、勘のいい 兄さんのことだからよ、もうてっきり気づいているのかと思ったてたよ。」面白くない半次は、「俺はもうしらねえぞ」と出ていこうとするが 「おい兄さんて。おまえ酒飲んだんだろうがい。俺はホンの口汚ししかのんどらんのだ。大方おまえが喰らったんだから、金を払え、金を。」 と言われ、「何が口汚しだ、がばがば喰らいやがったのはてめえじゃねえかい」「おい、焼津のて。おめえおきよさんに飲み代払わせるつもりかよ。 どうなんだよ、ほら!」「まるで脅迫じゃねえか。払やいいんだろ、払や」とは半ばやけくそで払って出ていく。 しかし、子供でも博打遊びをし(大吉、子ども誘われしゃっくり)、代五郎親分にあこがれているという、ヤクザに毒された宿場の風景を目の当たりにし、更に、代五郎がその子供の一人 の父母を始め、宿場の人々に無理矢理賭場で遊ばせ借金を作らせ、死に至らしめたり嫌がらせをしているという話を聞き、「このまま捨てて置く わけにはいかんな、どうやらどぶさらいをすることになりそうだ」と大吉が立ち上がる。 その頃、芝居と分かった三兄弟が、面目躍如に代五郎のところへ縄張りを取り戻しに向かったと、おきよが大吉に報告に来る。三兄弟は、 へっぴり腰で代五郎らに斬りかかるが、逆に斬りかかられそうになったところに、大吉の鉄扇が飛ぶ。刀をたたき落とされた代五郎が、大吉の 突き出す刀を恐がり「助けてくれ、待ってくれ」と、大吉に蹴られ、逃げていく。それを見ている子供たち。 そこへ、おくまから三兄弟が代五郎の所へ向かったことを聞いた半次がやってくる。「どこだい喧嘩は?なんだい、喧嘩の片棒は旦那だったのかい 俺にはヤクザの喧嘩の片棒なんかかつぐなと言っておいて、こりゃなんだ」「焼津の、喧嘩はこれからだ。代五郎を叩き斬ってな、この宿場の どぶさらいだ!」「これだから、旦那との旅はこたえられない。行こうや!」「どうやら向こうからお出迎えのようだ」・・・ 「旦那あ、やったぜ!」おきよに抱かれて震えて見ている三兄弟。「何だい何だい、このくらいのことでガタガタ震えやがって」「焼津の、もうその ぐらいでいいだろ。おいおめえたち、喧嘩があんなくだらんもんだと分かったら、きれいさっぱり足を洗うことだな」「へい」 子供たちが大吉の元へやってくる。「おいらたちもう博打はしないよ」「うん」子供らに頷く大吉。「おい、行こう」「うん」なんとなく子供が気に かかる半次。 見どころ:最近の旦那と半次のやり取りは面白い。三兄弟を堅気に戻す芝居後の、大吉と半次の居酒屋でのやり取り。 次回(65話)予告編には、このちゃんと品川さんがディレクターズチェアーみたいなのに座り、見物人たくさんの中で、谷明憲さんと思われる 人物が殺陣の説明をしている場面がある。 旅の場所:半田宿(愛知県半田市または徳島県半田町か) 「南の果てでもめていた」 (第65話) <キャスト> 姿美千子=半次をおじさん呼ばわりする、政吉を探している娘、お糸 加賀邦男=二人の門弟と違い礼儀正しいように見える前島道場の道場主、前島大三郎 谷口完=お茶代わりに槍を振舞った廻船問屋濱屋の主人、五左衛門 山岡徹也=お糸を連れて行こうとした、髪を後ろに垂らしている前島道場の門弟、吉兵衛(よしべえ) 玉生司郎=花山様だけに来てもらいたかった濱屋の番頭、清兵衛 広野みどり=浜に上がった土左衛門の年老いた母親 世羅豊=前島道場のもう一人の門弟で、腰から手拭いを下げている浪人 藤原勝=お茶代わりに槍を振舞った二人組浪人の一人で、画面左側(口髭有り) 藤沢徹夫=お茶代わりに槍を振舞った二人組浪人の一人で、画面右側 西山清孝(NC)=?? <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=佐々木政一 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=中道正信 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=吉川義一・宮川輝水 制作:NET・東映 協力:指宿市 半次が、開聞岳を見て感激したのもつかの間、見たこともない妙な木が生えているのを見て、あれ(=開聞岳)は目の錯覚だったかも、と他の国 に来ちまったんじゃねえかなと不安になり、大吉を必死で探していると、「おめえいったい何しとるんだい?」と聞き慣れた声。わらじのヒモを締め 直していてはぐれたばかりなのに、今生の別れから再会したたかのような喜び方をして、「またどこかよその国に来たと早のみこみしてあわてとった んだろう」と図星を指される。 その大吉と半次が薩摩富士を眺めていると、政吉という許嫁を探している娘・お糸が見かけなかったかと二人に尋ねる。「おじさん」と呼ばれた半次が 「知るけえ」と答えると、政公は浮気してるに違いないとぷりぷりしながら去っていった。そのお糸が今度は、開聞岳に感激している半次と大吉の前に、 2人の侍に追いかけられて来た。侍たちは、枕崎の前島道場の門弟で、お糸を酒の酌をさせようと無理矢理連れて行こうとしていた。大吉が相手 になるが、そこに前島大三郎が現れ、門弟たちの無礼を詫び、2人を連れて行く。半次はその礼儀正しさに感心するが、大吉は今ひとつ、いい印象を 受けない。 鹿児島の城下に住むお糸は、枕崎の廻船問屋・濱屋に働きに行った許嫁の政吉が、仕事が終わった後も帰ってこないのを心配して、捜していたが、 濱屋を5日前に出て、その後、長崎鼻までの心当たりを探しても、政吉が寄った気配がない。それはおかしいと、大吉と半次も、一緒に濱屋へ向かうが、 手がかりは全くない。が、その濱屋の主人・五左衛門から、大吉は、濱屋を脅している奴らを片づけて欲しいと、用心棒を頼まれる。 「不心得者にゆすられる弱みでもあるのか」との大吉の問いに、「叩けばホコリが出るかもしれませんなあ」と答える濱屋だが、もともと一人 無視されて面白くなかった半次が「帰ろう」と言っても、「何といっても20両だからなあ」と大吉は用心棒を引き受ける。半次は、「てめえのような野郎はな 小判をがりがりかじって胃のふをじゃりじゃり鳴らして、糞詰まりで死んじまえ!」と捨てぜりふを吐いて出ていこうとしたところにクモ。 怒り心頭の半次は、お糸が待つ居酒屋に戻っても、大吉への怒りが収まらない。そこにどざえもんが上がったと声が聞こえる。しかし、政吉では なかった。やって来た大吉が、死体に泣き伏せる老婆に聞くと、船大工の息子は、濱屋へ働きにいっっていたが帰ってこず、心配してこの老婆が 捜しに来ていたのだった。それを聞いた大吉はぴんと来る。「政吉は10中8、9生きている。」大吉は、濱屋の土蔵に見張りがいて中に人の気配が していた事を話す。濱屋の正体をしった政吉らが、押し込められているに違いない。「濱屋の正体って一体何だい?」「それが判らんから用心棒を かって出たんだろうがい」「なるほどそうだったのか」二人は、濱屋の正体を暴き、政吉を助け出すための打ち合わせをする。 7つ半、大吉は、五左衛門らとともに、濱屋をゆする奴らの退治に出かける。出てきた相手は、あの、道場主・前島とその門弟たちだった。 「おぬしはいつから抜け荷買いの用心棒になった」前島の言葉に、大吉は濱屋の正体を知る。「抜け荷買いとは大したホコリが出たもんだな」 「無駄口はやめて早く20両お稼ぎなさいまし」「ではそうするとするか」・・・ 「お見事でございました」濱屋をゆすっていた侍たちを片づけた後、大吉が濱屋に向かって言う。「心にもないお世辞の次はどうするつもりだ。 早くその懐のものを出したらどうだい」「では」と濱屋は短筒を出し大吉に向ける。「うまくいくかな」その時、ずっと大吉たちを影で追っていた半次が 飛び出し、濱屋に刀を突きつけ、短筒をたたき落とす。・・・ 政吉たちは仕事中、ご禁制の積み荷を見たために、逃げだそうとした一人を見せしめに殺し、残りは土蔵に押し込めたと、濱屋が白状する。 「お糸坊、すぐ町へ帰って、役人を連れて濱屋へ行くんだ。土蔵から早く政吉たちを出してやれ。」感謝感激したお糸は、大吉に抱きつき、 大吉シャックリ。「花山さまどうしちゃったの?」「どうもこうもねえんだよ、何でもないから早く行きなさい、ほれ」「じゃあまたね」と走っていくお糸。 「どうだい旦那、あの喜び様は。お糸坊よかったな。」「ああ、よかったがよお、しかし、今度という今度は、俺、おまえにえらい目にあわせられる ところだったぞ。」「そら何だい?」「おまえ濱屋で俺に言ったろ、ほれ、小判をがりがりとか。あんな目にあわせられて、俺たまるかよ。」 「申し訳ねえ、俺、腹立ち紛れに素っ頓狂なこと言っちまって。まったく申し訳ねえ。イヤッハッハ!」 見どころ:久しぶりの剣豪(直新蔭流)対剣豪設定の殺陣。 旅の場所:開聞岳が見える場所→薩摩富士→開聞岳→枕崎→開聞岳(以上じゅうよっつ) コメント:藤原さん、藤沢さん、世羅さん、それと西山清孝さん(西山さんは今話ではノンクレジット出演)の面々は、第63話にも揃って出演なさって いたので、近衛さんや品川さん、スタッフと一緒におそらく九州ロケにずっと同行していたようですね。宿泊先の旅館の宴会場で、藤原さん達が 酒を飲みながら、近衛さんと殺陣談議でもする機会があったのかな、などと勝手に想像してしまいます。福本さんは本で近衛さんについて語って いらっしゃいましたが、他の斬られ役の俳優さんの近衛さん思い出話もぜひ聞いてみたいところですね。(どらおさま) 「想い出だけが泣いていた」 (第66話) <キャスト> 藤岡重慶=都島一家の用心棒、一刀流にその人ありと言われた堀越左馬之助(ほりごし・さまのすけ) 須藤健=なかなか言葉の出てこない都島(みやこじま)一家の親分 瀬良明=おようの勤めている居酒屋のおやじ 岡部正純=茶店で半次に『さっきは無様をさらしたくせに』と言った都島一家の兄貴分 田中弘史=都島一家に痛めつけられていた人足 有島淳平=都島一家のお人かいと聞かれて『だったらどうしたい』と答えた子分 中野淳=大吉の死んだ息子、花山大作(当時七歳) 赤松志乃武=綾の不注意で死なせてしまった息子、堀越一之進(当時六歳) 中山美根子=おようの芸者時代の朋輩二人組の一人(画面左) 木暮実千代=左馬之助の女房『およう』、大吉の女房『綾』(二役) <スタッフ> 脚本=森田新 監督=井沢雅彦 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=林春海 録音=渡部章 美術=寺島孝男 助監督=太田雅章 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=早川重三 装飾=中道正信 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行主任=中久保昇三 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 唯一大吉が旅へ出る前のエピソードです。 大吉は、江戸で町道場を開いていた剣客であるとともに、綾という夫人とのあいだに大作という7歳になる息子を儲けた家庭人でもあったんです。 しかし、そんな幸せな生活も、流行り病による大作と夫人の死によって一挙に崩壊してしまい、その痛手を癒すために、 大吉は道場を師範代に任せて放浪の旅へ出たんです。 ちなみにこの回は、凄腕の浪人(息子を不慮の事故で亡くす)役の藤岡重慶と少し刃を合わせるだけで、大吉のチャンバラ場面はほとんどなく、 ドラマの最後に悪徳やくざ達を叩き伏せるのも、藤岡重慶だったような記憶があります。 (三四郎さま 2002年12月23日、相談屋さまにより一部修正 2002年12月24日) ある宿場、半次があわてて大吉を捜している。「おやじよお、おめえんとこに花山の旦那、いやあの、酒の肴におけら、じゃねえや、おからを注文する 浪人来なかったか」あきらめかけた頃、子供の相撲を微笑んで眺めている大吉を見つける。 半次は、この宿場の都島一家が素人衆をいじめているのを助けたことで、昼の8つに、腕の立つ用心棒とやり合うことになってしまったのだ。 「男にしてやってくんな」と剣術のさわりだけでも教わりたい半次に、「そいじゃあ、おめえ今まで男じゃなかったのかよ」とからかいながら「それなら 教える手はただひとつ」と教えてくれたのは、「後ろを向いてずーっと走る」つまり三十六計逃げるが勝ちだ。 怒った半次が大吉にくってかかっていると、宿場の茶店で、その都島一家と用心棒に出くわす。大吉を見て、一家の親分は用心棒の旦那を呼ぶ。 用心棒は大吉とすれ違いざまに刀を抜き、大吉がよけた先の提灯が落ちる。大吉は一旦押さえつけられた刀をはね返し、用心棒の刀が飛ぶ。 「たって決着がつけたくば、今一度八つ時に会おう」と刀をさやに収める大吉。 その用心棒の様子を先ほどから心配げに見ていた女がいる。そして用心棒の行く先を見つめる女を、大吉が驚き見つめ、つぶやく。「綾・・」 その様子を見た半次が、「旦那、あのねえちゃん知ってるのか?」大吉が我に返ったように低い声で否定する。「いや」(半次は命拾いして助かったと 喜び、「俺が負けたらどうなるんだ」と大吉に言われ、「勝ち目はないわなあ」と抱きついた提灯にクモ) 二人が入った居酒屋にはその女がいた。大吉が女を呼び止め、先ほどの用心棒の事を聞こうとするが、「左馬さんなんか死んじまえばよかった」 と泣いて、出ていってしまう。居酒屋の主人の話では、女は、用心棒・堀越左馬之助の女房で、およう。最近宿場に来たのだが、二人は別々に住み、 ほとんど口もきかないのだという。「何、堀越左馬之助?」一刀流にその人ありと言われた達人の道場主のはずの左馬之助がなぜ?。 大吉と半次が、おようの住む長屋を訪ねると、おようが位牌を抱いて泣いていた。大吉は、左馬之助がどうして道場主をやめ、自らの名が泣くような ことをしているのか納得できない、力になりたい、と、おように申し出、おようは事情を話し出す。 芸者だったおようは、左馬之助と夫婦になり、道場主の妻として、息子・一之進にも恵まれ楽しく過ごしていたのだが、目を離した隙に一之進が 馬に轢かれなくなってしまった。それからの左馬之助は、おようをなじり酒に救いを求めるようになった。おようは、息子のためにももう一度、 左馬之助に立ち直って欲しいと願い、以来3年こんな生活を続けているのだが、「もう精も根もつきてしまいました」と泣き伏す。「話はようく分かった。 俺は亭主殿に会いたいんだが、案内してもらおうか」 住まいとする荒れ寺で、左馬之助は酒を飲んでいた。「一之進をなくしたあんたの気持ちはようく分かる」「分かってたまるか」という左馬之助に 「いや、分かるんだよ」と、大吉は穏やかに自分の過去を話し始める。「俺はあんたのように名前は売れていなかったがな、江戸で町道場を開いていた。そして今から5年前に流行病のために妻と子を一緒に亡くしてしまったんだよ。息子の大作は7つだった。俺は師範代に道場を譲って、旅に出た。 なぜ旅に出たかは、あんたにはよく分かるはずだ。そして今まで風まかせの旅を続けた。左馬さん、俺も旅に出た頃は、浴びる程酒を飲んだもんだよ、 しかし、いくら酒を飲んでも、体に染みついた想い出は忘れられないもんだ。しかし、それでも俺は飲んだ。つまるところ人間なんて弱いもんなんだな」 そして、左馬之助が想い出を消すために飲み、その酒代を稼ぐために用心棒として腕を売っていることが、ヤクザを喜ばせ弱い者を困らせることに なっていることと、何とか立ち直って一之進の供養をしたいというおようの気持ちの真実を諭す。「俺の言うことはそれだけだ。もしあんたが用心棒 を続けるというなら、あんたとの約束通り、決着をつける」 居酒屋に戻った半次が大吉に尋ねる。「水くせえよ、俺ちっともしらなかっったよ、それほんとかい?」「ほんとだよ」半次は、あ!と思い出す。 そう言えばあのとき、大吉はおようを見て「綾」とつぶやいた。「分かった!旦那のかみさんってのは、おようさんに似てるんじゃないのかい?」 「ああ、よく似てたよ」「祝言を上げたのは12年前だ。当時は俺も道場を開いたばかりでな、若かった。そして綾は俺には過ぎた嫁だった。」 大吉は、再び、遠い目になる。(回顧シーン) 流行病で一緒になくなった女房と子供のにおいのしみついた道場で暮らすのが耐えられなかったのが、大吉が道場を捨て旅に出た理由だった。 「イヤ分かる、いくら独り者の俺だって、いてえほど分かるよ」「いつもバカばっかり言っちゃあ、おからを肴に酒喰らってる旦那にそんな過去があった なんてねえ。旦那も可愛そうな男なんだなあ、惚れた女房と息子に一緒に先立たれてしまうなんて」と半次もしみじみと涙を流す。「おい、何も 涙入りで同情してくれんでも結構だよ」「何減らず口叩いてんだ」 しかし、そろそろ8つ時、二人は、居酒屋を出て、約束の場所へ向かう。そこには喧嘩支度の一家と、左馬之助。「やる気かね?」「ああ、やる気だ」 しかし、左馬之助が相手にしたのは、都島一家だった。・・・ おようが左馬之助の所へ駆け寄る。「花山殿」「よかった、俺もこんな嬉しいことはないよ。」2人は頷く。「では、花山殿、拙者はこれで失礼する ごめん」仲良く去っていく2人を見送る大吉と半次。「旦那、さすがに達人の旦那だけあって、分かったとなるとさっぱりしたもんじゃないか。ああ、 よかった」微笑み頷く大吉。 見どころ:過去を話すワントーン落ちた低い声のいつもと違った大吉と、それをしみじみと聞く半次兄さん。大吉の抑えた中にある感情の出し方が いい。コメディーだけでない所を見せてくださる奥の深い年季の入ったお二人、さすが! 「伜にゃ過ぎた母だった」 (第67話) <キャスト> 宝生あや子=半次が焼津のお袋の代わりに親孝行した、死んだ政吉のお袋 新井茂子=虎太郎に連れて行かれそうになった、政吉の妹、おふみ 和崎俊也=棺桶担いだ渡世人、政吉 丹羽又三郎=政吉を斬った用心棒 藤尾純=後ろめいたところがある、二足わらじの江古田の虎太郎親分 木下サヨ子=通夜の席におからを出した棺桶屋の女房 寺下貞信=回想シーンで虎太郎にいじめられていた百姓男 浜伸二=回想シーンで『後の事を考えてものを言っているんだろうな』江古田一家の子分 楠三千代=回想シーンで虎太郎にいじめられていた百姓女 多々良純=通夜の席で大吉とおからを食い散らした棺桶屋のおやじ 不明 男67−1=虎太郎がおふみを連れて行く理由を尋ねられた時、右にいた子分 <スタッフ> 脚本=松村正温 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=小野岡道秀 美術=宇佐見亮 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=山田勝 装飾=縄田功 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 棺桶背負った政吉に喧嘩相手の一家の用心棒と間違えられた大吉と、その喧嘩を見にやって来た半次は、政吉の最期を見とる事になり、政吉から 女物の財布に入った10両を上州の自分の家へ届けてくれと頼まれる。上州・児玉郡の政吉という以外に手がかりはないが、やよい宿で、桶屋を 見つけた半次は、棺桶を背負っていたくらいだから、桶屋の倅ではと、桶屋のオヤジにきく。「あんな極道の息子はとっくの昔に忘れちまった」との答え、年の頃も一致するし、顔のほくろも確かめた。間違いないと、財布と遺髪を渡し、政吉が亡くなったことを知らせる。 二人は悲しむ両親を前に早々に引き上げようとするが、通夜に酒でも、酒の肴はおからがたいてあったろう、と言う言葉を耳にした大吉は、すぐさま半次の不安もよそに、「とっつあんは寂しいんだ」とか息子の供養になるとか言って、その晩は、おからを肴にオヤジと大吉で向かい合う。 しかし、悲しみに酔いつぶれるとっつあんの前で、素手でおからを掴み酒を飲む大吉は、半次にヤクザ稼業の親不孝を諭し、半次をジッと見る。 「焼津の、おめえ本当のところ、焼津へ帰る気持ちはねえのか」「ないって言ったら、旦那怒るか?旦那、俺本心言うとね、ただこうやって旦那と旅をしていたいだけなんだよ。」「バカタレが、俺と一緒に旅をしたって、得になることは1つもないんだよ。腐れ縁だよ。思い切って焼津へ帰れ、焼津へ。」わざと突き放すように大吉は言う。「俺のこと思ってそう言ってくれるのは嬉しいけどよ、旦那が生きてる限り、俺どこまでもついていくからね。」「おめえという奴は、死ななきゃ治らないバカタレだよ。」 その時、とっつあんが起き出して息子の思い出ばなしをし出す。「ここんところにぽつんと可愛いほくろつけやがって」「おいとっつあん、そのほくろは反対側だろうがい?!」(大吉シャックリ)政吉は政吉でも、政吉違いだったと分かり、二人は平謝り、両親は大喜び。 後日、いまだ手がかりのつかめない二人が途方に暮れているとき、ヤクザ連中に追いかけられる娘・おふみを助ける。おふみを追いかける 八州取り締まりの十手を預かる二足のわらじの江古田の虎太郎は、十手をカサにやりたい放題で、おふみは役人の妾に差しだそうとされるところ だったのだが、行かないと村人や残してきた母親がひどい目に遭うと言う。おふみは、2年前まで政吉という兄と母の3人暮らしだったが、政吉は、 無理を言う江古田の子分を間違って傷つけたことから村を出ないといけなくなった。財布を見せると、政吉が村を出るときに有り金手渡した おっ母さんのものだという。「兄さんは元気でしたか」「死んだよ、その男ならな」 「こんな事なら、あのときあの川原で、政吉に手を貸してやるんだった。俺はこの娘と母親に、取り返しのつかねえ借りをつくっちまったようだな。 あんた、俺たちを村へ案内してくれ」「村へですか?」「俺はあんた達を守ってやらなきゃならんような気がしてきたんだ。」 政吉の死を知らないおふみの母親は椿を一枝持った半次を政吉と見間違い、おふみにも「あのころを思い出したい」と頼まれ、半次は一晩だけの 息子・兄を買って出る。「焼津の、おめえ亡くなったお袋に孝行するつもりでな、ここのお袋さんに尽くしてやれ」「うん」 風呂の火番(その時クモ)から肩たたきまで、せっせと親孝行する半次に、「半次さん、おまえさんはきっと気だての優しいお人だよ」と言われて、 「おっ母さん、そう思ってくれるかい。俺、そんな・・どうしたらいいか」と思わず席を外して泣く半次も、その夜、焼津の海と母親の夢を見て目が醒める。 「おめえその気になったら、思い切って焼津に帰るんだな・・さあ寝るか。」 翌日、江古田一家は、大吉と半次を捕らえにやってくる。半次が道を遮る。「ここから先は一足も行かせねえからな!今日はこの焼津の兄さんはな ちょいとばかり派手に暴れさせてもらうぜ」・・・ 「旦那、やった。俺胸がスーっとしたよ」「おい焼津の、この分じゃおめえ当分焼津には帰れそうにねえな」「当たりめえだよ。おら、この爽やかな気分を 味わいてえばかりに、旦那と一緒に旅をしているんだ」「命知らずのバカタレが」二人は笑う。 おふみが心配してやってくる。「おふみさん、兄さんが死んだことはお袋さんにはずっと内緒にしとくんだな。」「はい」「それじゃあな。兄さんの分まで お袋さんの面倒を見てあげるんだぞ」歩き出した旦那の後を追おうとして、半次があ、と、おふみの方に振り返り、戻る。「おふみちゃん、お袋さんによ、ありがとうござんした、お袋の味を思い出させてもらってありがとうござんした、達者で暮らしてくんなって、そう言ってくれよ」 見どころ:前回に引き続き、旦那と半次のしみじみ場面。きっと本心では半次が自分と一緒に旅を続けて欲しいと思いながらも、半次のため、焼津に帰ったらどうだと諭す大吉の言葉とその裏にこもった情、半次兄さんの、お袋さんや家族の優しさに浸り、愛するものをヤクザから守りながらも、それでも大吉と旅を続けたいと振りきる複雑な気持ちが、このちゃんと品川さんだからじーんと来るシーンの数々。(以上じゅうよっつ) 花山大吉の『倅にゃ過ぎた嫁だった』。最後、大吉はヤクザを斬ってるんだけど、効果は「バシバシ、バシッ」と、棟打ちで叩く音になってます。(三四郎さま 2007年8月20日) このエピソードも、メチャ笑えますよね。死亡報告しに行った家で旦那はオカラを食い散らかして凄かったよんヾ(^△^ゞ(ともえさま 2009年4月17日) 「天国のお袋が笑っていた」はおげんばあさんちょっと行いがよくなかったですが、この「伜にゃ〜」のほうはいい母親でしたね・・妹も母親思いの娘で、いっそ半ちゃんと結婚して義理の息子になってもいいかなと思うぐらい、母親と相性が合っていた感じがします。妹も半ちゃんちょっと気に入っていたようだし・・・(兄としてだけかな??^^)(きざくら&ようめいしゅさま 2009年4月27日) 旅の場所:上州・やよい宿(児玉郡=こだまごおり) 「道は地獄へつづいていた」 (第68話) <キャスト> 宗方勝己=人質になった松平家勘定所元締め、川端源之進 岸久美子=半次に胃の腑に効く薬をくれた、別嬪のおみつ 原健策=捕まっていた大悪党、地獄の吉兵衛 三田登喜子=瘤付きの姉ちゃんで三吉のおっ母さん 楠本健二=大吉との道連れは願い下げの悪党、雷・甚九郎(いかずち・じんくろう) 安藤三男=すぐ胸板を持ち出す、鉄砲マサ 佐藤京一=早く道しるべを元に戻しておくべきだった、人斬り安(『人斬り』は予告編より) 鈴木金哉=川端源之新に体当たりでぶつかられた、鉄砲使い 小山田良樹=半次に言わせると、『身代金の請求』に山を下っていった男 寺下貞信=??* 藤沢宏=地獄の吉兵衛を連れてきた松平家町奉行所与力、吉見作太郎 比嘉辰也=コマ回しが得意な子供、三吉か?? 松田春子=枕を高くして寝ることができる茶店のばあさん 和田昌也=大吉半次が小屋に入った時、鉄砲で撃たれた町人 淡路康(NC)=2役。鉄砲使いトリオの一員で、最後は半次に真正面からズドーンと一発、鉄砲で撃たれてしまうも、すぐに意識を取り戻し? それまで首に巻いていたお洒落な赤いマフラーを今度はハチマキ状にキリリと締めて気合も入れ直して?すぐさま戦線復帰、元気一杯に与力に 斬りかかってゆくという、気迫あふれるネバーギブアップぶりを見せてくれる。 不明 男68−1=耳が聞こえない町人=川口喬(NC)か??* *寺下さんが見あたらず川口さんが出ておられる事についてのどらおさ間の推理:、もしや出演予定だった寺下さんが『舞台公演などの都合で 出演できず→川口喬さんが急遽代打出場→クレジット変更忘れ』、などという事もありえるかな?とふと思いました(実際に、他の東映京都作品でも、 明らかに出演されていないと思われる役者さんの名前がなぜかクレジットされているケースがたまにあります)。寺下さんと川口さん、それにこの回で 与力を演じた藤沢宏さんのお三方は、東映所属ではなく、同じ関西芸術座の役者さん達なのでそんな推理をしてみました。 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=荒井岱志 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=佐々木政一 録音=小野岡道秀 美術=寺島孝男 助監督=尾田耕太郎 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=山田勝 装飾=縄田功 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=谷明憲(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 自称重体で、胃がしくしく痛みめまいがする半次は、大吉が、昨夜居酒屋で飲まされた水でわった酒で二日酔いしたためだと言っても、「大の苦手 がごそごそしてやがるぞ」と一発で効く薬を調合しても、道ばたに転がって苦しんでいたのに、通りがかった別嬪のねえちゃんに胃薬をもらって、 たちどころにけろり(あまりの変わり様に大吉シャックリ)。名前も告げず立ち去った奥ゆかしい娘の後を見ながら、半次は胃痛の代わりに胸痛を覚える。 次にその娘にあったのは、茶店。娘の名前はおみつ、先を急ぐおみつはここでも饅頭でもおごろうと思っていた半次に会釈をして早々に立ち去る。 「二度も続けて会うなんて、二人は縁があるんだな」「あるある、大ありだよ」「旦那もそう思うか!」「あー、そう思う思う、大思いだよ。ばからしい」 おみつが忘れられない半次をいい加減に相手しながら、「古谷宿まで1里8丁」と書いた道しるべに行き着く。しかし、道しるべが示した道は、 以前にここを通ったことのある大吉には見覚えのない道。進むと、道は狭く、そま道になる。 山の中の大きな一軒家を見つけ、道を聞こうと二人は戸を叩くが、人の気配はするのに誰も応答しない。中にはいると、そこには、町人が三人、 侍、母子、それにおみつが声を潜めていた。半次がおみつとの三度の再会を喜んでいると、後ろで鉄砲の音、続いてぞろぞろと人相の悪い男達が 入ってきて、大吉と半次は刀をとられ、他の7人とともに1つの部屋へ座らされる。道しるべは男達が、人質を集めるために動かしたのらしい。 なぜ人質を集めるのか?状況を見るうち、大吉には読めてきた。 子供の遊んでいた駒が男達の鉄砲のそばに転がり、男達は子供を斬ろうとする。が、その子を守ろうとした大吉が鉄扇で相手を威嚇すると、 撃つのをあきらめた。外へ出ていった男の一人が帰ってきて、仲間内に耳打ちする。「うまくいってるぜ」「あとは朝5つを待つばじゃりじゃねえか」 また、男の一人に無理矢理酌をしろと連れられそうになったおみつを、大吉と半次がかばおうとした時、我慢しきれないと言った表情で「この三下 野郎、片づけるぜ」と言う言葉。「やっぱりか」 どうやら、大吉と半次に吐いた「こんな要りもしねえ雑魚」と反対の「値打ちものの鯛」の人質は、若侍・松平家勘定所元締め・川端源之進のようだ。 昨日松平城下で捕まったという極悪党の”地獄の吉兵衛”と、その一味の話を茶店で聞いていた大吉は、この男達が、吉兵衛の手下で、親方を 救い出すために、取引のための人質を集めたのだと、分かる。源之進を人質にとられていることは松平家の恥、だから、相手は取引に応じるはずだし、 男達は取引がすむまでは源之進を含めた人質全員を殺すことも出来ないでいる。 大吉の種明かしに、源之進は、矢も楯もたまらず、男達に向かっていこうとする。大吉は、源之進のほおを叩きそれを止める。取引は朝5つだ。 恥をさらすか、かえすか、それを決めるのはその時だ」と勇む源之進の肩を叩く。 そして約束の朝、役人4人に連れられた吉兵衛がやってくる。しかし、一味は、吉兵衛を取り戻した後、役人を襲い、人質を殺そうとかかる。 その時、鉄砲を恐れずに源之進が相手にぶつかる。・・・ 役人は、大吉と半次に礼を言うが、大吉は笑って「いやいや、悪党一味を始末できたのは、鉄砲に体ごとぶつかったこの旦那の気迫のおかげだよ。 礼を言うならこっちに言いなさい、こっちに」と源之進を讃える。 「しかしよ、旦那、俺一時はどうなるかと思ったよ。うまくいってよかったな。」「ああ、よかったな。これでおみっちゃんに祝言話がなかったらよ、 おまえも言うことなしだったがよ。しかし例えなくてもだ、おまえのことだ、もてる気遣いは絶対にないんだから同じだい。」おみつを男達から かばったとき、半次は、おみつに許嫁がいることを告げられ、頭を抱えたのだった。「おいおい絶対にはねえだろ、絶対には。」 旅の場所:古谷宿まで1里と8丁のところから、山に入ったところ コメント:遠い山には雪。あんな着物で撮影なんて寒かったろうなあ。(以上じゅうよっつ) 当時の番組紹介に「ハイジャックされる大吉と半次」とあったのを覚えています。日本赤軍の「よど号のっとり」事件からヒントを得たので しょうな。ところで、鉄砲を突きつけられて「胸板をぶち抜くぞ」と脅される場面で、大吉は「いちいち胸板をもちだすな」と軽くいなしますが、こういうところが 「素浪人シリーズ」のスゴイところです。状況としては、武装解除されている大吉のほうが断然不利です。にもかかわらず、完全に大吉のほうが 相手を呑んでいますよね。そしてこれは近衛十四郎なればこそ可能なのです。例えば高橋英樹あたりだと、眉間にシワを寄せて例のクサイ発声で 「飛び道具とは卑怯だぞ」としか言えないだろうと思います。剛柔軟を併せ持った近衛なりゃこそ生きてくる場面といえるでしょう。(キンちゃんさま) 「天国のお袋が笑っていた」 (第69話) <キャスト> 万代峰子=『はんじ』ちょっと苦いお袋の味を半次に味わせた老婆、おげん 北川めぐみ=流れ星の辰の妹、おすみ 近藤正臣=すぐにかーっと燃えてくる性質の渡世人、流れ星の辰 五味竜太郎=『身代わり殿、行くぞ!』大吉に最初に斬りかかった悪党浪人 酒井哲=おげんにイタズラ(?)しようとした町人 楠義孝=喧嘩の途中に舟の修理が完了した渡し場の船頭 江上正伍=『ならば斬られても異存はあるまいな』大吉を流れ星の辰の代わりに斬ろうとした浪人 松田明=軒下に吊るしてあった干し柿をおげんに盗られた男 森敏光=おげんの哀れな身の上を語る場となった居酒屋のおやじ <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=小野岡道秀 美術=宇佐見亮 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=山田勝 装飾=縄田功 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 自分の誕生日というのに、ひどい二日酔いで苦しみ休んでいる半次は、なぜか怒って半次を無視して通り過ぎる大吉に「花山さまの旦那さま」 と下手に下手に、記憶のない昨日のことを聞きだすと、昨日は、誕生日の前祝いだからと大吉を誘い、居酒屋のねえちゃんが自分に気があると 勘違いして酒をがばがば飲み、奥に逃げたのをオヤジに祝言を上げるから連れてこいと、店の食器は片っ端からたたき壊すわ、店に火をつける とおどすわで宿場中を騒がせたという。大吉が宿場の連中をなだめ相談料をすかっり使ってオヤジに飲み代と迷惑料の1両1分払うと、半次は どこかに姿を消していたということで、大吉はすっかりおかんむり。「うすら大バカタレ!」「恥さらしが!」と手厳しい。(こっ恥ずかしがっている半次の前にクモ) 小さくなって大吉のあとを猪名の渡しまで来ると、流れ星の辰という渡世人が、渡し船の修理をしている船頭をせかしている。その自分勝手さを 責めた半次と喧嘩が始まるが、辰は、お袋が病気で4年前間違いを起こして以来帰ってない国に戻る途中だったことを思い出し、それならと 喧嘩中止で、3人は、辰の故郷の岩切村に行く。 ヤクザを捨てて妹と家に戻っていく辰を見送った半次は、すっかりお袋が恋しくなり、「辰つあん、今頃、おっ母さんと手を取り合って喜んでんだろうなあ ああ、辰つあんがうらやましいや。俺は手え取り合って喜ぶお袋なんかいやしねえや。」半次は、5つの時に、母親と死に別れていた。「でもおら、 2つだけ、はっきり覚えてる。1つはお袋の首の耳の後ろにほくろがあったことだ。お袋はきっとよくおんぶしてくれたんだなあ。それともう1つ 覚えてるのは、お袋の臨終の2〜3日前の事よ、なぜそこだけはっきり覚えているのかわからねえが、俺その時お袋の枕元にいたんだ。そしたら お袋が俺の手を取って、『いい子になるのよ、いい子にね』って、お袋そう言ったんだ。」半次は泣く。「その声が今でもこの耳に残っているんだ。 それなのにおら、ぐれてこんなざまになっちまって。旦那あ、おら、お袋に会いてえ。今生きてれば60近い年だが、ああ、おら、お袋に会いてえ。」 そこに、町人風の男に追われた老婆・おげんが来て、半次が助ける。(老婆が男にいたずらされようとしたと聞き、大吉シャックリ)おげんの首筋に ほくろを見た半次は、お袋と重なり、おまけに、おげんのぐれた息子のために家も田畑もなくしてしまったと言う話を聞き、「誕生日にお袋と同じ ほくろのあるおげんさんに会ったなんて、これも何かの縁だ」と、おげんにたらふく食事をさせ、孝行のまねごとをする。半次は、おげんと別れ際 「半次と呼んでやっておくんない」と頼む。「半次」目をつぶった半次は「ああ、お袋だ、お袋の味だ!おげんさんありがとうござんす!」と感涙にむせぶ。 しかし、その喜びもつかの間、半次は、店を出たおげんが、あちこちの軒の下のものを頂戴しているのを働いているのを見る。「おげんさん、おめえは」 半次に見せた涙も身の上話もうそっぱちだったのだ。半次はおげんの胸ぐらを掴んで手を上げる。「よくもこの俺を騙しやがった挙げ句、芝居 がかって俺の名前を呼んで、心まで踏みにじってくれやがったな」だが、半次は上げた手をおろし、おげんを放す。これまで騙され続けてきた おげんは、騙される方が悪いと捨てぜりふを吐く。「黙れ!黙りやがれ!俺は、俺の胸の中にしまっておいた一番大事なものをおめえに 踏みにじられたんだ。しかし、おらもう、おめえを責めやしねえ、おめえを責めたらきっと天国のお袋が泣くにちげえねえからだ。行け、とっとと行け!」 しかし、背を向けた半次を見い見い、去っていくおげんは、印籠を盗んだため浪人3人に捕まり、斬られそうになる。思わず半次は、代わりに 自分を斬ってくれと浪人の前に体を投げだす。浪人の一人が刀を振り上げたとき、大吉の鉄扇が飛んできた。「焼津の、無駄死にはよせ」 大吉は、昼間から戸を閉めたままのこの宿場が、この浪人達の、ゆすり、人殺しを恐れていることを聞きだしていた。「それなら俺は、何も素直に 斬られるこたあねえや」・・・ 「半次さん、ありがとうよ。あたしゃ、人に助けられたなんて生まれて初めてだよ、ありがとうよ。半次さん、あたしゃ間違ってた。もう決して人様を 騙したりしないよ。この通り、おまえさんに誓うよ」おげんは半次に手をすりあわせる。 「おげんさん、だいぶこたえたようだな」「こたえたのはいいが、俺拝まれるのは弱えや」「そう言うな。おげん婆さんにとっては、おまえは生き仏 だからな。それはそうと、おまえ、なんでこんな婆さんの身代わりになる気になったんだ」「俺にもさっぱりわからねんだ。俺なんだか、かあーっと なって飛び出しちまったが、これ、やっぱりお袋のせいじゃねえのかねえ」頷く大吉。半次は寂愛しそうに、おげんに目をやった。 見どころ:このところ、半次兄さんの台詞には泣かされっぱなしだ。 いちばん感傷的になったというのは なんてったて69話「天国のおふくろが笑っていた!」でしょうね!なんてったて半ちゃんのおふくろ代わりの人が出てくるんですものね!ほんと半ちゃん このとき親孝行してましたね!最後の背中の「ほくろ」涙が出ました…(きざくら&ようめいしゅさま 2009年4月4日) 半次兄さんの、お誕生日の前祝で大酒飲んでみだれ捲くったって、旦那さんがぼやいてましたね。「おえぇぇぇ〜〜〜・・、アタマイテェ〜〜・・」とか言って、祠の脇に座ってたら花山の旦那さんが通り掛ったので話しかけたら完全にシカトされてました。茶店で半次あにぃ〜〜ったら、大勢の観客?の面前で、旦那に徹底的に怒られてたりしてね。後半で母親と同じところに、ホクロのある婆さんを面倒観てたらこそドロ?だったりしてのぉう。笑いっぱなしだったけど、近藤正臣さん「富士山・・」の時も思ったけど、若くて動きが機敏でしたね・・。(ともえさま 2009年4月5日) 旅の場所:猪名の渡し近辺→渡ったところから3里にある岩切村。流れ星の辰の話から、中仙道から昼夜を問わず急いで20日ほどの距離。 コメント:CM後の音楽が2回程、以前のゆっくりしたものになっていた。(以上 じゅうよっつ) 半次が大吉に死んだ焼津のお袋の思い出はなしを語る場面で流れていた曲って、素浪人月影兵庫のテーマソングですよね。(相談屋さま) 「味方の中に敵がいた」 (第70話) <キャスト> 伊藤栄子=奉行所に捕らえられた兄さんを心配する、妹のお志乃 山本豊三=友造の無実を知る生き証人、猟師の清太 高桐真=頭ごなしに大吉を素浪人呼ばわりする勘定方の役人 神戸瓢介=街道筋じゃグーンと知られた雲助、後棒の半次 山田桂子=茶店を営む領内随一の世話焼きばあさん 尾上鯉之助=印籠を落とした、うかつな悪党 田畑猛雄=街道筋ではちっとは知られた雲助、先棒の鬼ゴン 水木達夫=手代(奉行の次に偉い役人)殺しの下手人として捕まったお志乃の兄、友造 浜崎満=半次とは気が合わない金山奉行所の門番 林浩久=若く気の弱い金山奉行 岡本遵子=奉行と懇意の大吉を迎えた、料亭三浦屋の女中 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=柾木兵一 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=小野岡道秀 美術=宇佐見亮 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=山田勝 装飾=縄田功 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 茶店の婆さんに素寒貧を見抜かれて苦戦する大吉の前を、さいの目がつきについて駕籠に乗ってきた半次は、はずんだつもりの駕籠賃が少ないと 同名の駕籠かき”後棒の半次”らと言い合いになり、旦那に「半次と名乗る奴はどこへ行ってもお粗末なのしかおらんようだな」と笑われているすきに 後ろからがつんと殴られ気絶する。目が覚めた半次は、「旦那が名前を侮辱したせいで殴られた、くそったれおからが」とくってかかるが、大吉に 「俺がいなかったらどうなってたんだい、殺されてたら何もかもぱあなんだぞ、感謝の他なにものもねえはずだろうがい」とやり返され、それは もっとも「ありがとうござんす」と礼を言うことに。 ついでに「それはそうとしてだな、金山景気にわく宮部宿に繰り込んでだ、おまえの感謝の気持ちを酒に託してだ、俺はいっさいを水に流してだ、素直に 受け取ることにしようではないか」と、大吉はさっさと茶店を発つ。「俺やっぱり、感謝の気持ちを酒に託さなきゃいけないのかなあ。どうもその辺が スッキリしないところだな。口じゃあおから旦那にかなわねえし。ここは酒に託すとするか。しかし俺、いつも中途半端に旦那に妥協してダメな男だ。 どーおしようもない」と落ち込むとクモ。 というわけで居酒屋を探していた二人は、奉行所を追い出される娘・お志乃を見て助ける。お志乃の兄で山師の友造は、裏の物置にあった見覚えの ない血刀のために、奉行所の手代・瀬川殺しの嫌疑で捕まったという。瀬川が殺された昨日の朝〜昼過ぎ友造と一緒にいた清太を証人に得て、 二人は、奉行と勘定所の役人達がいる料亭に直談判に出向くが、年若く経験も浅い奉行に代わって取り仕切るのは、昨日、金を引き取るために 到着したばかりの勘定所役人ら。大吉の言うことを真に受けない態度に歯がゆくなった半次が、思わず、証人は清太と言う猟師だと告げたが、 その直後、清太は黒覆面の2人連れに襲われる。そして、真犯人究明の手がかりが、清太や茶店の婆さん、殺害現場から浮かんでくる。 奉行所の中心であった手代の瀬川は、昨日やって来た勘定所役人らと面識がある唯一の人物であったこと。瀬川の殺された現場には、犯人の ものと思われる印籠が落ちていた、すなわち殺したのは、二本差しであること。 さらに、半次は何が何だか分からないままついてきたが、昨日恐ろしいうめき声がしたという天狗の森では「俺の読みに狂いがなければこの森の 中に仏が7つ8つ眠っているはずだ」と言う予告通り、死体が見つかる。 「こりゃいってえ?」「まだ分からないか。この5人が勘定方の役人でな、残りは車引きだよ」金盗人は、勘定方の顔をただ一人知っている瀬川を 殺して犯人を友造にしたて、勘定方を襲い役人になりすまして金を丸ごと盗もうと企てたのだ。 そこに、奉行所から金と下手人・友造を受け取り、 引き上げる、役人に化けた盗人達が通りかかる。「どうやら連中がやって来たぞ、隠れろ」 盗人らが、この森で、最後の邪魔物、友造を消そうとしたとき、大吉の鉄扇が飛んだ。「驚いたかねニセ役人殿。金山を舞台にして役人を殺して 一芝居うつとは、あんたたち、なかなかの悪党だが、殺しの現場にこれを落としたとはうかつだったな」放った印籠に顔色が変わる。・・・ 無事を喜ぶ友造、お志乃、清太が、二人に礼を言う。「これでまあ、めでたしめでたしだな」「ああ」「おら、今度と言う今度は旦那を見直したよ。 旦那の読みは冴えてた。いやありっぱ、りっぱ」「何がりっぱりっぱだよ。冴えてるも何もな、根本的におまえとはここのできが違うんだから、一緒に して褒める奴があるかよ」「おい、根本的に違うは、ひでえじゃねえかい。そりゃ言い過ぎだい」(以上じゅうよっつ) 見どころ:今日の「味方の中に敵がいた」を見ていて思ったんですが、この話41話「頭の中味がいかれていた」とよく似た設定ですね・・・41話のほうは、半ちゃんが眠り薬を盛られている間に、半ちゃんの刀に血をつけて殺人現場に置いておいて、犯人に仕立て上げ、最後は結局犯人は役人だったという展開でしたが、今回も、娘の兄が見覚えのない血のついた刀で犯人にしたてあげられるというところがそっくりで、真犯人も役人だったというところも同じでした・・・ただ今回はもうひとオチあって、偽役人だったとういのはユニークでしたね^^ あと冒頭の茶店のばあさん、「山田桂子」さん、今までも茶店のばあさん役でおなじみですが、だんなに「すかんぴん!」呼ばわりするところは、53話「ドカンと一発春が来た」のばあさん(これは野村昭子さんでしたね・・・)のせりふや雰囲気がまったく同じでした^^このようにずっーと見ていると、ストーリーや設定に共通点もあるものですね!(きざくら&ようめいしゅさま 2009年4月27日) 旅の場所:宝来山(=金山)のある宮部宿 「女房にフラれるバカもいた」 (第71話) <キャスト> 青柳美枝子=半次とめでたく結婚(?)し、大吉にはおからをご馳走した女、お藤 松木路子=半次に営業用のお世辞を言った居酒屋の娘、おきみ 稲吉靖=十勝の伝蔵親分に目をかけられている地回り、時雨(しぐれ)の勘太 永田光男=お藤を妾にしようとした、聞きしに勝るワル親分、十勝の伝蔵 日高久=半次の盗み見を注意した茶店のおやじ 島田洋介=いちゃつき夫婦で、茶店でお饅頭を早く飲み込む癖のある夫 今喜多代=人が見ていようと構やしない、いちゃつき夫婦で妻の、おまつ <スタッフ> 脚本=森田新 監督=井沢雅彦 撮影=羽田辰治 計測=山口鉄雄 照明=林春海 録音=小野岡道秀 美術=宇佐見亮 助監督=久郷久雄 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=山田勝 装飾=斉藤寿也 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 池の前でしゃがみ込み、石を投げてはため息をつく半次。「今日は夫婦が仲良くする記念日かなんかかねえ」と思う程、あつあつの夫婦愛を当てつけられ「あーおら、かみさんの手料理の味が味わいてえ」と今後の事を考えこむ半次に、大吉は「かみさんの手料理の味を味わうにはまず、かみさんをもらわんことには味わえんのだからな、かみさんを持つにはだ、例え爪のアカ程でもおまえに好意を持つ天下無類の物好きが出んことには、こら持てんのだからな。考えるだけまったく無駄というもんだ」と、半次の胸の中を吹き抜ける空っ風を退治すべく、居酒屋へ向かう。 ところがその居酒屋には、おきみという別嬪で愛想よしの娘がおり、半次はおきみの”営業用のお世辞”を真に受け(期待してくわえた箸にクモ)、 すっかりその気になって「もう少し気を入れて気に入りあって、高砂や〜と言うわけには行かないもんかね」と持ちかけると「あたしのような若い娘が どこの馬の骨か分からない中年男の渡世人と夫婦になると思ってるの?ばかばかしい。いい加減にしてよ、おじさん」とあっさり蹴られ、ラウンド終了。 「無駄な努力はよせ」と忠告した大吉には大笑いされ、頭に来て一人居酒屋を出ると、十勝一家の地回りがいちゃもんをつけてきた。ちょうどとさかに 来ていた半次は、軽々こいつらを痛めつけ「しかし俺ってよ、腕の方もなかなかだし、つらだって・・・水も滴ると言うわけにはいかねえが、結構イカしてるしよ、何で女にもてないんだろう」と再び沈み込む。ふと気づくと、こちらに向かって片目をつぶって合図している別嬪の女・お藤がいる。 周りには半次の他誰もいない。ほおをつねってもいたいから夢ではない。お藤は、先ほどの半次の腕前に惚れ込んで、「男の魅力がぎらぎら 輝いているみたい」とか「めまいがする程血が騒いだ」と半次に積極的に寄り添ってくる。始めは慎重だった半次も、「こりゃあえれえ事だ」 「半次さんみたいな人が現れるの待ってたの。半次さんお願い、私と夫婦になって」と抱きつかれては「あーあああー生きててよかった、俺死んでも もう思い残すことはねえ」と気を失ってしまう。 半次は早速居酒屋へ戻り、旦那にお藤を紹介する。「あたしもう、半次さんにしびれちゃって」というお藤の言葉に大吉はシャックリ。半次とお藤が 帰り、一人居酒屋に残った大吉はつぶやく。「奴のかみさんになるとは、世の中には物好きもいたもんだ」 居酒屋を出た大吉は、女物の上っ張りを引っかけている”夫婦焼津”に呼び止められ、家に来てくれと頼まれる。お藤が是非に旦那に来て欲しい と「うまいおからが作ってある」という話、大吉が断る訳がない。 しかしお藤は、夫婦になって最初の晩だというのに、「頭痛がする」「今夜は一人にして」と、二人を置いて隣の部屋に引っ込んでしまう。半次が 様子を見ようとしても、襖も戸も開かないし、すっかり切なくなった半次は、「これいってえどうなってんだ」と「富士のお山のてっぺんから谷底に 突き落とされたみたい」だと旦那に泣きつく。 「かみさんがおまえを部屋に入れないのは、入れたくねえからだい、そしてだよ、戸が開かんのはおまえのかみさんが開かんようにしているからだろうがい」つまり、半次の腕前を見たお藤は半次を用心棒代わりに利用しようと夫婦話でつったのだが、欲求不満の固まりのようなその用心棒が気味悪く なって、用心棒の用心棒に大吉を呼んだと言うわけだ、と大吉が推理すると、「当たっちゃった」と隣からお藤の声。しっかり築いたバリケードから 出てきたお藤が言うには、半次が昼間痛めた十勝の親分は、十手をカサにやりたい放題、お藤は親分に妾になれ、イヤなら廓に売り飛ばすと 脅され、この家を借りて身を隠していたのだが、今朝、子分に見つかったため、恐くなったのだった。「女房と思いこませた方が命がけで守って くれるでしょ」と言われ、食われた、とガックリする半次。そこに、お藤をお迎えの、十勝の親分が・・・。 「助かった」と小躍りして喜び、二人に礼を言うお藤。半次はあっけにとられて言う。「おーお。どうだろうねえ、ぴょんぴょんはねて喜んじまって」 「しかしよお、おめえってやつは、やっぱりとことんまで女に縁のない奴だ」「そう言ってくれるなって。あー俺ついてねえ」 見どころ:大吉の殺陣師は、このところ谷明憲さんから土井淳之祐さんに代わったが、動きも振りもいい!(以上 じゅうよっつ) 半ちゃん途中まではよかったのに、大オチがあって最後にガックリ・・・で気の毒でした。どうも話がうまく行き過ぎると思いました・・・さて、今までの半ちゃんがふられるパターンとしては 1.最初からまったく相手からその気なしのパターン。「このおじさんと?!」などとあきれられることも多い!(いちばんこのパターンが多いかな?) 2.気に入られた相手が娘ではなくて、実はその母親だったり年増の娘の方だったりとい うパターン。半ちゃん大ガックリ・・・・ただし「海にもぐれぬ海女もいた」で は曽我町子さん演じるおしまのおっかさんにはふられていたけどね・・・^^ 3.途中まではめずらしく相思相愛だが、最後に相手からひじ鉄砲を食らわれるパターン。(「胴より首が長かった」「目玉が火事でもめていた」など) ただこの「女房にふられる・・・」では新しいパターンで、最後に天国から地獄へまっさかさまというぐらいの衝撃でしたね・・・でも考えたら、ちょっと半ちゃん若い娘ばかりに言い寄ってばかりだもの・・・だんなもしょっちゅう言っているように・・・もっと年を考えなきゃね^^ 現に上の2のパターンのように年増の方にはけっこうもてているんだからね・・「昔の美人が揃っていた」ではなんとおたつさん(赤木春恵さん)という年配の59歳の女性からほれられたしね・・・(笑)やっぱり同年代以上にはもてるんですよ・・・半ちゃん!設定ではたぶん30代半ばくらいでしょうが、今と違って当時ではもういい中年のおじさんだものね・・・反省しなきゃ・・(でも現代でも男っていうのはいつまでも若い娘が好き!というのは共通ですがね・・・^^ 気持ちはわかります) 結局、花山大吉最終回まではこのフラれどおしという設定でしたが・・・お咲き坊が登場してからはちょっとおとなしくなりましたが・・・きっと心の中ではだんだんお咲き坊を気に入ってたんでしょうね!(きざくら&ようめいしゅさま 2009年5月1日) 「ドケチ娘はなぜ泣いた」 (第72話) <キャスト> 北林早苗=女あんまに変装していたドケチ娘、おこん 鶴田桂子=女郎屋に売られた生き証人で與平の娘、お鈴 清水一郎=お鈴のお父っつあん、大工の與平(よへい) 西山嘉孝=宿場女郎の身の振り方の一切を取り仕切る、箱田の銀造親分 小倉康子=女郎屋『勝乃屋』の女将 国一太郎=與平の金の出所が気になった女郎屋の男 上杉高也=與平の後をつけ、おこんを斬ろうとした箱田一家の子分 賀川泰三=女あんまの懐に入っている金に御用が御有りのヤクザ 小津敏=結局半次が六百文払う事になった、居酒屋『いなか』の亭主 牧淳子=半次に若い女のあんまさんを紹介した旅籠の女中 槙美千代=?? 村田天作=居酒屋でおこんの話を盗み聞き、夜中忍び込んだ枕探しの男 不明 男72−1=大八車で半次の腰の蝶番を外した車引きの男 女72−1=おこんは上州屋のお嬢さんだと大吉に話した、旅籠『叶屋』の女中 <スタッフ> 脚本=松村正温 監督=井沢雅彦 撮影=羽田辰治 計測=長谷川武次 照明=林春海 録音=小野岡道秀 美術=宇佐見亮 助監督=久郷久雄 記録=石田芳子 編集=島村智之 装置=山田勝 装飾=斉藤寿也 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 昨夜の夢の別嬪の姉ちゃんに鼻の下を長くしていて危うく大八車に轢かれそうになり、腰の蝶つがいをはずして歩けなくなっている半次は、 通りかかった大吉に旅篭に抱え込まれる。若くて宿場で評判の女のあん摩がいるというので、またまた鼻の下を長くして待っていると、そこに現れたのは、 ”おっそろしくうす汚ねえ”女・おこん。「ついてねえ日はついてねえなあ」とぼやきながら、今日が揉み納めというおこんのあん摩を受けていて、 クモ。いつものごとく「出たあ!クモクモ、旦那あ」と助けを呼ぶと、「クモ?どこに?出たあ!」と目を見開いたおこんが半次にすがりつく。おこんは、 女のあん摩だったら珍しいから金になると、3年前からこの城下であん摩をしだしたのだという。 翌朝、大吉と、”お医者さんみたいなクモ”のおかげで腰の具合がすっかり治った半次の前に、見違えるようにきれいな旅支度のおこんが姿を現す。 3年間溜め込んだ大金を懐にしているおこんは、二人と同道を願い、半次は喜ぶが、大吉は「俺は他人の懐の用心まで責任は持てんよ、それでも あんたがついて来るというなら、追っ払いはせんよ」と歩き始める。 その晩、半次が居酒屋へ誘うと、始めは「飲めないもの」と言っていたおこんが、グイグイ飲み出す(それを見て大吉シャックリ)。そして「気持ちよく 飲んでよ、お金はあるんだから。お金さえあればもう誰にもバカにされないわ。金で受けたうらみは金で返してやるの」と言うのもで、半次はすっかり その気になったのだが、いざ、勘定の時「こんなに食ったり飲んだりしながら安いわなあ・・・オヤジ、この店は何というんだ?・・・いくらだった勘定は?・・・」と、おこんが支払ってくれるのをそれとなく催促するのだが、おこんは「酔っ払っちゃった」と知らんぷり、、旦那には早く払えと言われるしで、 「あんなどタヌキみたいなの、もう付き合わないぞ」となけなしの金を払うはめになった。 深夜、寝静まったおこんの部屋に、男が盗みに入る。大吉に見つかり事なきを得るが、礼にと差し出す1両を大吉は断る。「そいつは引っ込めておけ。 だけどなあんた、どんな恥をかかされたか知らんが、金で人を見返そうなんて根性はあまり見上げたもんじゃないぞ」 翌朝、二人の部屋に2両の包み金が置いてある。朝早くに旅立ったおこんのこころざしだった。旅篭の女中は「上州屋のお嬢さんでございません」 とおこんのことを見知っている様子。上州屋はひとつ先の宿場の大きな油問屋で、4年前火を出し宿場の半分が燃えてしまって、それを苦にして 主人が自殺、娘は行方知らずになっているのだという。 一方、国に戻った上州屋のおこんは、亡き父親の無念を晴らすべく、女郎屋で働く大工の與平の娘・お鈴を50両払って身請けしようとしていた。 お鈴は、4年前の火事が、上州屋に代わって油の取引を自分のものにしようとたくらんでいた箱田一家の付け火によることを唯一知る目撃者で、 それを知った箱田に、與平の借金のカタだと「50両耳をそろえて持ってきな、そうすればいつでも返してやるぜ」と、女郎屋に連れて行かれていた。 箱田に襲われそうになったおこんを救った大吉・半次は、事情を知り、お鈴の身が危ないと、女郎屋へ向かい、目撃者のお鈴を消そうとやって 来た箱田とぶつかる。「俺はな、火付けをして宿場の半分を焼き払い、その罪をなすりつけた挙げ句の果て、油問屋をそっくり自分のものにする ような、そんなやつは許しておけねえ性分なんだ」・・・ 二人に頭を下げるおこんと與平、お鈴。三人に頷き微笑んで旅立つ二人。 見どころ:このところ、このちゃんの殺陣が復調して冴えてる!体調がよかったのかなあ。それとも無理されてたのかなあ。 「喰い逃げ野郎はツイていた」 (第73話) <キャスト> 牧冬吉=橋場宿の市村屋の伊助を騙る、おから好きの食い逃げ野郎 御影京子=危ないところを大吉に助けてもらった、料理屋『春駒』の娘、お春 桑山正一=お春の父で、大吉半次に二年間の雑役を命じた料理屋の主人 戸上城太郎=金を見た瞬間は心底嬉しそうだった、地獄組の頭 服部哲治=大吉を二度まで『ドさんぴん』と呼び、大吉の機嫌を決定的にひん曲げた男 藤山喜子=地獄組の話をしたあと妙な目つきで半次を見た、茶店のばあさん 小田真士=『何だ、あんたは昨日の』と大吉に親しく声を掛けられ、慌てた地獄組の浪人 藤長照夫=お春を誘拐しようとしたり、金箱を持ってきた子分のために障子を開けた地獄組の浪人 大里ひろ子=おからを運んで来て、大吉と伊助の仲を取り持った料理屋の女中、お咲 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=小野岡道秀 美術=宇佐見亮 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=矢野昇 装飾=斉藤寿也 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 大吉が、かどわかされそうになったお春という娘を助けたことが縁で、お春の父親が経営する料理屋に上がると、そこには半次がいた。 半次は、昼間茶店で知り合った、街道筋一番のお大臣・橋場宿の市村屋伊助のきれたわらじを買いに行ったお礼にと、この料理屋ですでに 一杯気分。半次の金策のあてがあると言う言葉に、昨日から「相談屋稼業も特別休業にして」「珍しく持つものも持たず」素うどん一杯食ったっきりで いらいら気分の大吉と、「いつものように俺の懐あてにしておから食いっぱぐれて火を噴いてんじゃねえか」という金策には失敗した半次がもめそうに なったところに、伊助が仲介に入る。ご一緒にという伊助の誘いを断っていた大吉だが、そこに具合よく、おからができあがり、伊助も大好物と知り、 すっかり意気投合して二人はおからを食らい始める。 伊助の「三人で心ゆくまで飲みますからね、どんどん持ってきてくださいよ」と言う大盤振る舞いに、すっかりごちになって(半次の酒にクモ→気絶)) 目覚めた二人のもとに、お春の父親が勘定書を持ってくるが、その金額たるや、18両2分。「言われてみれば食った様な気がする」とかすかに 二人の記憶に残っているように、昨日は、鯛のお頭23匹(うち大吉は12〜3匹)、どうしても蒲焼きが食べたいと夜中に20人の人手を集めて ウナギ取らせ、芸者衆にはずんで6両2分と、どうやらそれだけのことはやらかした模様。 しかも、ごちになったはずの伊助は、50両入った財布を二人に預けたからと、先に発ったのだが、半次も大吉も、そんな財布は受け取った覚えがない。 どうやら、伊助はかたり、つまり、石で膨らんだ財布で大店の亭主だと半次に信じ込ませ、二人を残してドロンと無銭飲食を計ったようだ。 「おやじ、まあそう言うわけだ」と笑って亭主の方を向く大吉を、おやじはグッとにらみ詰め寄る。「この始末は一体どうして下さるんですかね!」 挙げ句、18両2分のうち、3両2分はお春を助けた礼とし、15両を、「2年間、雑役をしていただきましょう」と言われ、大吉シャックリ。 うすらボケ、おからボケ、と互いのせいだと言い合いながら、気の乗らぬ姿で薪を割る二人に、お春が、まずは犯人をつかまえてきたらと、 裏木戸を開ける。 さっそく、伊助捜しに出ると、伊助は、昨日の茶店でのんびりタバコを吸っている。半次に捕まったとたん、伊助は辺り構わずおいおい泣き出し、 実は、自分も同じ目にあってこの3月働かされ、これでは間尺にあわないと、つい仕返ししてしまったのだ。ごめんなさい、とまたおいおい泣く。 二人が無事、伊助を連れて料理屋に戻ると、玄関に、昨日お春をかどわかそうとして大吉に痛めつけられた浪人の一人が座っている。どうも様子が おかしい。中にはいると、お春親子を脅し、金を強奪しようとしていた昨日の男達が。この男達・地獄組は、昨日、かどわかしで金を取ろうとして大吉に 邪魔されたため計画を変え、直接盗みに入ったのだ。・・・ 「花山さま、ありがとうございます」「おい、18両2分の旦那も連れてきたぞ」「もう18両2分なんかどうなったっていいんでございますよ」ということで、 大吉と半次は、めでたく雑役から解放される。「私の処分はどうなるんでございましょう」と心配そうな伊助に半次は「決まってるじゃねえか。てめえは 罪滅ぼしに向こう5年間ただ働き!」「5年間!?」とまた泣き出そうとするところに「泣くな!」と言われ、泣き笑いする伊助。しかし、命の恩人の二人を 引き合わせてくれたのだから恩人の一人ですと、伊助も解放される。 「旦那、あのかたり野郎、うめえことしやがった」「ああ、あのかたりから命の恩人に一変してよ、あの旦那は大つきについとるぞ」「ちげえねえ、こりゃ かたりや、おおつきだあ」 見どころ:このちゃんのスピーディーな殺陣はもちろんだが、品川さんの身軽で時に型を見せてくれる殺陣もいい。 はきはきした品川さんと、気の弱い伊助を演じる牧冬吉さんののらりくらりのやり取りも面白い。(以上 じゅうよっつ) いやあ、予想以上に迫力満点の殺陣でしたね。全盛期の近衛十四郎を思わせると言っても過言でないくらいの動きでした。戸上とはスクリーンで 数々の名勝負を演じているのでイキもぴったりという感じで、それに、おからに眼の色を変えるときの演技も「おっ!のってるな!」と思わせるほどでした。なんだかこの回の近衛さん、久々にすごく充実しているな、という印象です。やっぱり元気で豪快な素浪人の近衛さんを見ているとファンとしてもうれしい限りです。(キンちゃんさま) 旅の場所:今崎宿(1つ上った宿場は、橋場宿) 「祝言挙げたら嫁逃げた」 (第74話) <キャスト> 三角八郎=自己嫌悪の本家で火ダルマの兄さん、はやぶさの秀(ひで) *二本柳俊恵=消えたおよしちゃんとは仲良しの居酒屋の娘、おみねか 時美沙=祝言の晩に逃げてしまった秀のかみさん、およし 江見俊太郎=一両の祝儀を弾んだ郷士の瀬川 河上一夫=押込み一味を追っている、十手持ちの親分 柳川清=秀とおよしちゃんの結婚には反対だった居酒屋のおやじ 武田禎子=半次を愛しているお嬢様を迎えにきた女 山口朱実=半次を愛しているお嬢様 滝譲二=瀬川の屋敷で、半次たちに最初に応対した侍 藤本秀夫=『おい亭主、勘定だ』居酒屋で勘定を催促した侍 森源太郎=大吉に向かって『おっ、貴様は! 狼藉者だ』の侍 *第18話『渦まで左に 巻いていた』の、二本柳敏恵さん:弁当のおかずにおからを持参したジンクロベエの妹、いや本当は娘のお浜 に似ている(名前も一字違い)ので、ひょっとしたらといろいろ調べてみると、1972年に、二本柳敏恵 → 二本柳俊衣(にほんやなぎ としえ) と改名なされています。 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=脇武夫 計測=山口鉄雄 照明=谷川忠雄 録音=小野岡道秀 美術=宇佐見亮 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=島村智之 装置=矢野昇 装飾=斉藤寿也 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=水巻春江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 この回特筆すべき点があまりなく、最後の殺陣が後半のものにしてはなかなかのもの(確か悪役の郷士の家には7〜8人いることになっていた のがイザ殺陣のシーンとなると倍近い15人ほどに増えてたりする)な点を除くと、冒頭の半次と気のふれた娘さんとのコミカルなやり取りが 傑作です。娘さんにウインクされた品川=半次さん、俺もやってみるかとばかり両目をパチパチしてみせるときの演技がもう〜絶品です。 抱腹絶倒間違いなしです(錯乱坊さま 2003年3月2日) ↑のねえちゃんに「愛している」と言われたのを本気にしてしまい「俺自己嫌悪に陥った」と歩いているところにぶつかったのは、「自己嫌悪の本家 は俺だ、でっけえ顔して自分で自分に愛想つかすな」とくってかかるはやぶさの秀。あまりにアホンダラを連発され頭に来て半次が刀を抜くと、 今度は「さあ殺せ」と座り込み、がんとして譲らない。困っているところへやって来た大吉まで「おまえが斬れ」と言われ(大吉シャックリ)、「こんなのに 関わってたら人殺しの罪に問われて島流しは請け合いだ」とサッサと退散する。しかし、気になって二人が戻って見ると、今度は、油を浴びて 火だるまになって派手におっ死ぬ所。大吉に「大の男が自殺とは情けねえ奴だな」と言われ、「りっぱなわけがあるんだ」と理由を話し出す。 2日前、幼なじみで相思相愛のおよしと祝言を挙げた秀が、婚礼も済み、やっと二人っきりになれ、寝酒を借りにいって家に戻ってみると、およしが消えていた。 以来、行方不明。一言もなくかみさんに逃げられ「テメエでテメエに嫌気がさしてこの世から消えようと思った」と、再び火だるまになろうとする秀に 大吉がみぞおちに一発食らわし、半次が次の宿場まで運ぶハメに。「ケッ。あのおから、何かというと俺にいろんなもん背負わせやがって」 と抱え上げた秀のほおにクモ。 落ち着いた先はおよしと仲良しだったおみねの居酒屋。おみねの話では、祝言前、およしに変わったところはなかったという。好きあって夫婦になった のに突然かみさんが姿を消すのはおかしいと、大吉は、およしの元の住まいを訪ねるが、異常はない。「もし誰かに連れ去られたのなら、ここが 荒らされたことも考えられるからな」「わかんねえな、そりゃどういう事だ?」半次にはさっぱり大吉が読めない。「まあ、おめえは何も、考えん方がいい だろう、どうせ考えても無駄なんだから」「ケッ、あのおから、また人を軽蔑したようなことぬかしやがって。二言目には人をおちょくりやがんのが。 ありゃあこれから厳重に注意して早いとこなおさせないといけねえな」横でおみねにくすっと笑われ半次も照れ笑い。 およしの店に戻った二人は、店の売り上げの小判を調べにきた十手持ちの親分の話を聞く。3月まえ、高田屋に押し込みが入り、2000両と人 の命が奪われた。高田屋では小判にはすべて、目印に傷を入れていたので、盗人がこの小判を使い出す日を待っていたのだが、3日前、とうとう ある料亭で使われ、その足取りを追い始めたが、その後、こちらの動きに気づきピタリとでが止まってしまったのだ。 秀の新居に行ってみると、金目のものはないはずなのに荒らされ放題で、何かを探した様子。何を探したのか?「ひょっとすると」捜し物が金だと したら・・祝言の祝儀だとしたら・・。 おみねが、およしが郷士の瀬川から祝儀として、3日前に1両もらったことを思い出す。秀が持っていたその小判には傷が見つかる。瀬川一味が、 奪った金を使い出した3日前、およしに金を渡したが、役人の目が光り出したと知り、あわてておよしをさらった。が、小判はなく、家を探したと考えら れそうだ。それなら、およしは瀬川の家にいるはずだ。・・・ 無事戻ったおよしと抱き合う秀。「旦那、どうだろうねぇ。あの2人、いつまでも抱き合っちゃってよ。しかし、あの兄いよ、俺たちが通り合わせなかったら 真っ黒焦げになっておっ死んでたところだぜ」「あの男のことだ、今頃はあの世でよ、しゃばに戻る手を考えてたこったろう。」「あの世で、しゃばに 戻ろうと?こりゃいいや。ば〜か」気づいて後ろを向くおよしと秀。 コメント:この橋はいつか見た橋・・ということで、冒頭〜の舞台の橋は、よく使われる橋。川原の護岸工事、どうしようもなかったんでしょうねぇ。 「世の中呆れた奴もいた」 (第75話) クモもしゃっくりもおからも無し <キャスト> 新克利=呆れたものぐさ御武家、又三郎 柴田美保子=ものぐさ侍を追っている武家娘、早苗 神田隆=『たかが素浪人を斬って何になる』名張家家老職、南川十左衛門光森 増田順司=滅多斬りにされた家老、頼母(たのも) 月形哲之介=居酒屋でものぐさ侍を斬ろうとしたが肘で押さえ込まれた侍、野村 遠山金次郎=居酒屋でものぐさ侍を斬ろうとしたが、斬り掛れなかった侍 市川裕二=患者を診て首を横に振った漢方醫(漢方医)、緒方松庵 柴田和子=ものぐさ野郎の勘定の際に固まってしまった居酒屋の姉ちゃん 森敏光=半次に怒鳴られ、脅えて奥に引っ込んだ茶店のおやじ <スタッフ> 脚本=森田新 監督=井沢雅彦 撮影=羽田辰治 計測=長谷川武次 照明=谷川忠雄 録音=小野岡道秀 美術=中島哲二 助監督=太田雅章 記録=篠敦子 編集=島村智之 装置=矢野昇 装飾=斉藤寿也 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 半次は居酒屋で、黙って湯飲みを差し出し酌を催促するものぐさ野郎の侍に出会う。この侍、突然襲ってきた侍を刀ごと肘で抑えて、さらに酌を 要求するという腕の立つ大ものぐさ。そのことを大吉に話すと、ものぐさ野郎が悪党なら、酌をした半次も一味と思われかねないぞ、と脅され、 ちょっと不安になっていると、そこへ、先ほどの侍と仲間が通りかかる。 半次がものぐさとは知り合いではない、行方は知らない、と言っても、大吉が半次の非礼を詫びても、侍達は、無礼討ちにすると、半次に刀を 抜いて向かってくる。 半次には、面白くない。先ほどのものぐさ野郎といい、突然向かってきた侍達といい、さらにはいつも懐をあてにするくせに自分をさかなにする大吉 までも、「侍はみんなくそったれだ、侍がどれだけえれえか知れねえが、何の罪もない人間を無礼討ちとは何だ、俺だって人間なんだぞ、それを 虫ッけらみたいにたたっ斬ろうとしやがって」と、収まらない。 そこに再び、先ほどのものぐさ野郎がやって来るが、どうも様子がおかしい、武家娘の姿を見て、あわてて逃げ出してしまった。 その夜、二人が飲んでいると、突然「逃がすな」という声とともに、部屋に昼間の武家娘が「かくまってください」と入ってくる。娘が隠れたと同時に、 これも昼間の無礼討ちの侍たちが入ってくる。侍達を率いるのは1万2千石・名張家家老職の南川十左衛門で、家捜しを始めようとするが、大吉が 「その首をかけて押入を開けてみるか」と出ると、黙って出ていった。 武家娘・早苗は、追われているわけは話そうとしないまま、南川と腹心に襲われる危険があるため、大吉・半次と道中をともにすることになる。ところが、その道に、老侍が滅多斬りにされ倒れている。同家・家老の頼母だった。頼母は、「南川にやられた、又三郎さまを何としても連れ戻すのじゃ、さも なければお家は」と言ってこときれる。その遺言を聞いた二人に、早苗は、事情を話し出す。名張家の殿様には子供がおらず、一番血筋の近い 又三郎が跡を継ぐことに決まっていたのだが、同じく血のつながった南川が、又三郎をなきものにし、お家を乗っ取ろうと策謀し始めた。又三郎は、 生来の変わり者で常々大名などまっぴらと言っていたが、この策謀に嫌気が差して、家を出たのだった。 三人は、又三郎がいると思われる山小屋に向かい、家老が又三郎を連れ戻してくれと言いながら死んだこと、早苗も危うく殺されかかったことを 告げる。「大名家の跡取り殿の家出は、そこらの長屋のものの家出とは違う、俺の言いたいのはそれだけだ」 そこに、三人をつけていた南川一派がやってくる。・・・ 「俺はわがまま者だった、これからお家に戻る。ものぐさはものぐさなりにこれからは尽くすつもりだ」 「旦那、これでめでたしだ、よかったじゃねえかい。」「うん」「しかし、驚いたねえ、あのものぐさ野郎、じゃねえな、ものぐささんが1万2千石の 跡継ぎとはね・・でえじょうぶかねえ・・あれで大名がつとまるのかね?」「そりゃあ大名なんて、誰でもつとまるもんだよ。実を言えばだ、あのものぐさ 殿ならりっぱにつとまる」「おいおい、大名なんて誰でもつとまるものなんて、言っちゃいけないよ」「それよりおめえ、あのものぐさ殿に敬意を表して だ、おめえのあれも俺のあれも、出なかったじゃねえかよ。」「そういや出なかっな、助かった」 見どころ:早回しかと思う程の、このちゃんの殺陣! コメント:大吉が半次をおだてるときには、「半次さん」と呼ぶ。おからのない旅篭をけしからんと言った大吉に、「おからはあとで口直しに 食いに行けばいいじゃないか」と半次が言ってくれたので、「旅篭について人間的にグッと成長したな。」とか「顔の方もよ、うすらが影を潜めてぐっと 締まってきたぞ」とか褒めだし、「まあ、半次さんもいきなさい、ひとつ半次さんもよ」と猫なで声で半次に酌をする。 旅の場所:名張家御城下で、2里程先に、岩木山(?)がある。(以上 じゅうよっつ) 半次と大吉の関係:この回を見て特に感じたことですが、焼津の半次というキャラクターのポジションが絶妙ということです。ともすれば、半次の ような登場人物は「うっかり八兵衛」的なキャラクターとして位置づけられてしまいがちです。時代劇好きの私が「水戸黄門」を最後まで好きになれ なかったのは、権力をかさにきているという以外に、この八兵衛の存在がどうにも目障りだったからです。演じる高橋源元太郎氏自身は嫌いでは ありません。(中略)しかし、「黄門」の劇中でヘマをしでかしたり、主人公の足を引っ張ったり、食い気の話ばかりしているときの八兵衛=高橋元太郎 のアホぶりと演技の稚拙さは見ていて腹立たしくなってくるのです。(黄門ファン、八兵衛ファンの皆様、気を悪くしたらすみません。これは私の 個人的な意見です) そこで、焼津の半次です。半次も八兵衛的なキャラの一面を確かに持っています。しかし、八兵衛が純然たる狂言回しにしか過ぎなかったのに対し、 「月影」や「大吉」では半次をそうは描かなかった、ここがスゴイと思うところなのです。渡世人である半次は、侍の大吉、兵庫とまったく対等の関係で 位置しています。今まで侍と渡世人というコンビがあったでしょうか。身分制度のきびしい江戸時代にあって、特異な取り合わせですよね。ここらも シリーズ成功の一因でしょう。 さて、半次は旦那と比べたら、さすがに旦那の方が「俺の上手をいく」のですが、半次は半次で結構筋金入りのヤクザとして設定されているのです。 なんといっても、兵庫や大吉と出会うまでは一人で旅をしていた訳ですから、旅慣れていることは確かですし、腕も度胸もそこそこあります。博打も勝つ ことはあるし、渡世人の作法も一通りわきまえているようです。決して駆け出しの三下野郎でもないのです。極端な言い方をすれば、半次一人でも、例えば 「旅がらす・焼津の半次」とか「いっぽんどっこ・焼津の半次」なんてドラマに単独主演できるであろう技量ももちあわせているのです。おっちょこちょいでは ありますが・・・。 で、今回の半次。大吉に向かって「俺は侍なんて大嫌いだ!」と言い放ちます。「侍はみんな糞ったれだ!だから旦那だってそうだ!」「俺だって人間なんだ!」 ここでの大吉は笑っていなしますが、最後の立ち回りシーンでは、神田隆に向かって「お前たちは二本ざしの面汚しだ!」といささか自己批判めいた セリフをちゃんと用意しているのです。先の半次の叫びを受け止めた証拠でありましょう。大吉と半次が対等であるということです。 近衛さんの殺陣は今回も冴えてましたね。連続して三人をドバドバドバッと斬るカットには久々に溜飲が下がりましたよ。「たっぷりと地獄をみせてやる」という 大吉の(珍しく過激な)セリフもカッコよかったなあ。 茶店で床几に腰掛ける際、大吉は腰の刀をグッと水平にして座りますが、そのとき、刀がいかに長いかよくわかります。でも兵庫の刀はもっと長かった ように思います。 チャンバラが始まると、はじめに斬りかかって来る敵を例の鉄扇で軽くいなしますよね。そして、鉄扇をおもむろに腰に差し、次いでゆっくりと刀を抜く。 その鉄扇の差し方がまた重厚でカッコいいんです。(キンちゃんさま) 「大金持ちほどケチだった」 (第76話) <キャスト> 吉田義夫=三人の手懸を連れている、ケチの上にドがついた大金持ち、源助 姫ゆり子=殺されても源助旦那のそばを離れないつもりの手懸の女、おかつ 町田祥子=半次に『お願い、私をどこでもいいから連れてって』と頼んだ源助の手懸の女、おふじ 藤岡重慶=『死にたくなくば図面を渡せ』ド悪党のお頭 三浦徳子=『お二人のお供は私がするから結構よ!』源助の手懸の女、おなみ 有川正治=青い手拭いを首に巻き、『駕籠に酒手は付き物』が信条の、最後は大吉にのされた雲助 宮城幸生=大金持ちの源助をそれとなく付けている男 浜伸二=赤い手拭いを首に巻き、最後は半次にのされた雲助 野崎善彦=味自慢の昼飯弁当を売りそこなった茶店のおやじ 関真吾=旅篭『十丸屋』の番頭 三田雅美=半次の顔は清太郎に比べればまるで劣るので遊びたくない女の子、お蝶 <スタッフ> 脚本=森田新 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=小野岡道秀 美術=宇佐美亮 助監督=太田雅章 記録=高木弘子 編集=川上忠 装置=矢野昇 装飾=斉藤寿也 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 ため息混じりにとぼとぼと歩く半次は、大吉に、どうせ飽きもせずにねえちゃんにやに下がってふられたんだろうと言われ、思わず、「おじちゃん の顔、清太郎に比べればまるで劣るんだもの」と、男友達が遊んでくれなくて泣いている10にもならない女の子に言い去られたことをばらしてしまい、 大吉に笑われること、笑われること。しかし、あまりにションボリしている半次を見て、ふられ自殺でもしかねないと、大吉は半次を慰めにかかる。 「おまえはな、確かに女にはもてんようにできとるというのは、厳粛なる事実だよ。かといって、なにもおめえはクズじゃねえぞ。」半次が大吉の方に 耳を傾け始める。「つまりおまえは、女には徹底的にもてんが男にはもてる、男の中の男というわけだ」「俺は男なんかにはもてたくねえ。何とか、 女にもててえ」「そう実感を込めて言うなって。男に惚れられる男、男を売る稼業としてだ、おめえ文句はあるめえが。女には縁がなくても、男子の 本懐というものだ。」「そうかね、本懐かね?」ちょっと気分良くなってきた半次。「そうかあ、俺そんなに男にもてるかねえ」大吉は笑いをこらえながら 続ける。「ああ、そりゃもてるよ、だからこうして、俺のような二本差しが一緒に旅しとるんだろうがい。これはつまり、おまえに惚れとるからだぞ、うん」 「そうかねえ、旦那、俺に惚れてるかね?」「おい、いいかげんにしねえか、バカタレ。言いにくいこと何度も言わせにかかりやがって」「言いにくい事って? それに何度も言わせにかかってって、何のこと?」「いやいや、それはだな、いくら男同士でも、惚れてるとか腫れてるとかいうことはだな、言いにくいこと だろうがい、とにかく、兄さんは男が惚れる男だ」「そうかねえ、じゃあ、女にもてないのは男の中の男の宿命として受け止めて、目をつぶらなきゃ いけねえのかね。ほんじゃあ、つれえところだけどそうするか」 無事立ち直った半次兄さんと大吉は、クモ助と喧嘩しているとっつあん・源助と三人の妾を助ける。クモ助が酒手まで要求するので怖くなって目的地の 半分で下りたとっつあんは、当初約束の42文の半分から半端の1文を除いた20文から違約金と精神的苦痛と不愉快料を除いた2文を払うという、 徹底ぶり(三人も妾を引き連れてのお伊勢参りと聞き、大吉シャックリ、ついでに半次もくしゃみ)。しかも、お礼に心を込めた接待をさせてもらうから と、期待させておいて、出てきた昼飯は芋と茶(芋をほおばってクモ)。山師の源助は一山当てて千両箱が10もあると言うのに、”ド”がつくケチぶりだ。 しかしその夜、妾の一人が殺され、「金山の図面を渡せばよし、さもないときは、あと二人の女の命はもらう」と書いた手紙が見つかる。源助は、 二人に1日100文で用心棒を頼み、翌日、5人で道中をすることになる。そして、妾の一人・おふじがどこまで行けばいいのと、ダダをこね始めた時、 大吉は、もう一人の妾・おかつが、「昨日の脅迫状には図面は道中で受け取るッて書いてあったろ」とここが正念場とおふじをたしなめるのを聞く。 実は昨日の脅迫状にあったこの文句は、大吉が読まなかった一行だったのだ。「おかつさん、生きるも死ぬも、今日の道中の正念場にやって来た ようだな」そこに、おかつを源助の元に送りこんだ金山目当ての悪党らが、現れる。・・・ 「やー、女はおっかねえというか、まったくおっかねえだ」「今頃感心しても遅いよ」「そう言われると一言もねえ。これから気いつけるだ。花山さん、 半次さん、実は昨日、用心棒代は1日100文と約束しただが、今まだ昼じゃけ、半分の50文で勘弁してもらえねえだか」「そんな用心棒代なんか、 要らんよ」「何いらねえ?こりゃ助かった、ついてるだ、万歳!」「万歳?・・おい」と最後までのドケチぶりにあきれる半次、大吉は大笑い。 見どころ:引き続きこのちゃんの殺陣。フットワークの方も、抜群。 半次兄さんにとはいえ、このちゃんにあれだけ長い惚れゼリフは、珍しい。 旅の場所:お伊勢参りをかねて上方見物に行く途中にある野潟宿。(以上じゅうよっつ) ロケの場所:正直、漠然としてしかもうせないのですが、半次が子供におちょくられる場面、最後に悪党を伸す場面に至るまで滋賀県の湖南アルプス一帯 での撮影であります。大吉が鉄扇持って笑い転げている街道も昭和44年当時、そのままあの風景でした。あの街道は一般車は通行禁止、周囲は 砂防指定地で行政の巡回、工事車両以外は入れませんでした。あの道をずっと上れば田上山(たなかみやま)に行きます。奈良の都、平安京造成の 際に樹木を搬出してから現在まで花崗岩風化地帯となり緑の山に戻らなくなったところです。滋賀県の治山事業対策の最大のメイン現場です。 なお、あの撮影場所よりもっと下流の河原が「天下太平」のオープニング殺陣のシーンから肩にアニメ鳥がささやくまで打つっていたところです。 赤影の砂地の山のシーン、用心棒でも使われているところです。ただ結構広大な場所なのですべてのシーンを、現在ではここと特定するのは 至難のわざです。(京さま) 「心の中では泣いていた」 (第77話) <キャスト> 柳谷寛=大吉も絶賛するおからを作る、八卦見のとっつあん、烏堂(からすどう) 野々村潔=米問屋近江屋(おうみや)の主人 三条美紀=米問屋近江屋の女房、お徳 高野ひろみ=おから野郎の守り立て役の半次を笑った居酒屋の姉ちゃん、おすぎ 汐路章=近江屋から五百両をゆすり取ろうとしたゲジゲジ野郎、小平 五味竜太郎=『なかなかやるな、痩せ浪人』三人組悪党浪人の一人 宍戸大全=『酒だ、早くしろ』三人組悪党浪人の一人 木谷邦臣=大吉に酒を顔にかけられた三人組悪党浪人の一人 池田弘美=近江屋の大事な女の子、おみよ(烏堂の捨て子、おたま) 平川正雄*=『子さらいだ』、『近江屋の娘とか言っていたぜ』の男 牧野秀樹=『あのう、何かあったんですか?』の男 美柳陽子=子さらいの話が出た時、『恐ろしいねえ』と言った女 不明 女77−1=おみよを『こんなところ』に連れて来てしまった近江屋の女中、おしの *平川さんは「船越正雄→平川正雄→平河正雄」という順で改名されたようですね。(ドラおさま談) <スタッフ> 脚本=松村正温 監督=小野登 撮影=平山善樹 計測=山口鉄雄 照明=松井薫 録音=小野岡道秀 美術=宇佐美亮 助監督=山村繁行 記録=高木弘子 編集=川上忠 装置=矢野昇 装飾=斉藤寿也 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 「天に昇ったか、地に潜ったか」と旦那を捜す半次は、八卦見の烏堂のとっつあんに言われたとおり、間もなく大吉を見つける。 3日も酒を飲んでなくて瓢箪の酒までなくなった大吉も半次を見つけ、ほくほく。早速、居酒屋へ入ると、烏堂が弁当を広げていた。その弁当が 卯の花弁当(+梅干しとたくあん)。大吉の物欲しそうな目に耐えかねて烏堂がすすめるとこれが、「こんなうめえおからは初めて食べた」と大吉 をして言わしめる味付け。 そこに入ってきた、たちの悪そうな3人組、烏堂から5年前に有り金奪ったという。大吉は、この3人組が、再びとっつあんに斬りかかってくるのを 救い、その礼に家でおからをと、招かれる。とっつあんの家はノミだらけ。おまけにクモまで出て半次が飛び出していったあと、烏堂は、もそもそ する大吉に「ノミを退治する気になれないもんで」と昔のことを話し出す。 烏堂は、元は小さな旅篭を営んでいたがもらい火でやけ、妻にも死なれて途方に暮れ赤ん坊を連れて上方へ向かう途中、例の3人組に襲われて なけなしの金を奪われた。その上、流行目で目が見えなくなって、娘を神社の境内に捨てて、死のうとしたが死にきれず、戻るともう娘は居なかった。 その後、目も戻り、何とか易者として生計がたつようになったが、「今が幸せとはどうしても思えない、私は、一番大切なものを自分の手で捨ててしまったのです」 そこまで話が終わると、焦げ臭いにおいが漂ってくる。「とっつあん、なんか焦げ臭いぞ」「あ、しまった。旦那、ついうっかり話し込んでるうちに、 おからが焦げついてしまいました。こいつは、食えませんなあ」それを聞いた大吉はシャックリ。あわててとっくりから瓢箪に酒をうつそうとするが、 「いかんな、酒がはいらないじゃねえか、かゆいじゃないか」 翌日半次は、元近江屋で働いていた男・小平が、近江屋に、500両出せと脅迫しているのを見て、早速とっちめにかかったところに大吉が来る。 実は昨日、近江屋の女房から子供をさらおうとして大吉に痛めつけられていた小平、大吉を見て逃げ去る。 夫婦は脅されるわけを話そうとしないが、その直後、今度は本当に、小平に娘をさらわれてしまい、近江屋は、ようやく重い固い口を開く。近江屋の 娘・おみよは、子供が欲しいと夫婦が願掛けに通っていた神社で拾った子供だった。捨て子と悟られぬように気を使って育ててきて、この正月、 奉行の三男との縁談も決まった。しかし、使い込みで近江屋をクビになった小平がこのことに気づき、脅しをかけてきたのだった。近江屋は、 奉行に迷惑をかけないためにも、子供心を傷つけないためにも、小平のことは内々におさめたかったのだ。 誘拐の騒ぎを聞いた烏堂は、現場で近江屋のこの話を聞き、おみよが5年前に捨てた我が子であることを確信する。 大吉は、わざと、近江屋はもうほんとの子供でないおみよに興味はない、金は出さないと小平に告げ、小平と、近江屋の金に目がくらんで 強引に誘拐に割り込んだ例の三人組を仲間割れさせる手段をとる。・・・ 礼を言う近江屋に、「どこかで子供を捨てた実の親が手を合わせているかもしれんゾ」しかし、烏堂はその時既に、いつもの街道の八卦見の場所に 座っていた。「私は自分の娘を捨てた、畜生みたいな男なんだ、いまさら親とは言えない。遠くからそおっと幸せを祈ってやりたい。」 「旦那、でもよお、あの子供が物心着いたとき、生みの親か、育ての親か、どっちに着くか、ちょっと心配だなあ」「おめえが心配するこたあねえだろ」 「心配するよ、俺だって人の子だもの」「人のこって、おめえがかよ」「おいおい、そりゃあねえだろ」 見どころ:予告編で見ると、おっ、なんと、大吉が斬った悪人らしき浪人、両手に沖縄に古くから伝わる武具、トウンファーを持っているではありま せんか(トイファーやトンファーと表記することもある)。以前、宍戸大全さんのサイとの死闘が話題になりましたが、今度はトウンファーです! こういうのって、なんだか異種格闘技対決みたいで好きです。(キンちゃんさま) 「二人揃って足出した」 (第78話) <キャスト> 玉川良一=二人のお姉ちゃんを置いてがめつく稼ぐ居酒屋のおやじでイサムのお父(おとう)、弥平 鮎川浩=おからを置いてある良心的な居酒屋のおやじ、孫兵衛 渋沢詩子=最後は半次の付け馬になった酌女、おゆき 浅川美智子=大吉に向かって、おからを『そんな安いお肴は置いてない』と言った酌女、おはな 千葉敏郎=四十両で我慢すべきだった、イサムをかどわかした浪人組の首領 笹木俊志=イサムの喉笛を引き裂こうとした浪人 白木みのる=半次を三流の旅がらす呼ばわりした子供、イサム <スタッフ> 脚本=森田新 監督=長谷川安人 撮影=柾木兵一 計測=長谷川武次 照明=椹木儀一 録音=小野岡道秀 美術=宇佐美亮 助監督=久郷久雄 記録=佐藤利子 編集=川上忠 装置=矢野昇 装飾=斉藤寿也 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 擬斗=土井淳之祐(東映剣会) 進行=藤野清 現像:東洋現像所 プロデューサー=広渡三夏・宮川輝水 制作:NET・東映 ある宿場にやってきた半次は、釣りをしているイサム(勇?白木みのる)という「こまっしゃくれたガキ(半次)」に出会う。そこでさんざん 「三流の旅ガラス」呼ばわりされて怒る半次だが、またもその話を、怒りにまかせてあとで会った大吉にするものだからさらに大笑いされ、 大吉にも「三流」呼ばわりされバカにされる。しかし、その大吉の態度が一変する。半次がふところから小判を一枚出したからだ。 それを見た瞬間大吉「その小判、どうしたんだ。どっかで拾ったのか?それとも・・・(人差し指を一本出しカギ状に曲げながら)これか?」 と疑いの眼。半次が賭場で立派に?儲けたものだと言うと、大吉はコロッと「三流」から「一流」に格上げし、一緒の飲もうと 宿場の居酒屋に向かって進撃を開始する。 最初に入った(玉川良一)経営の店は「べっぴんのねえちゃん」が二人もいる半次お気に入りの店。大吉はオカラが無いので不機嫌だ。 金の無い大吉は仕方なくしばらくは付き合うが、「ほれた・はれた」と半次を持ち上げるねえちゃん二人に囲まれた半次の調子に乗った 言葉についに切れ、「おまえは俺にごちそうするためにこの店に入ったんだ。俺はこの店では飲まんから、その分を出せ」 と素敵な理屈をつけて、ついに半次から一朱獲得し、元の、オカラのある店で飲み始める。 一方、半次のいる店は冒頭に出てきた勇の家だった。勇にまたまた「五流以下」と言われながら、ねえちゃんが二人とも「三升酒」とも 知らず、「♪生まれて〜初めての〜♪ 天国の気分」なんて歌いながら気持ちよく飲んでいた。 朝、、目ざめた半次は「2両1分」の請求に青くなる。今や鬼の形相となったねえちゃんを付け馬に連れ、わずかな希望を持って 花山のいる店を訪ねると、大吉の方も1朱23文という「かわいげのある額(大吉)」アシを出していた。 二人が困っている所へ、(玉川良一)の店から息子の勇が誘拐されたと連絡が入る。(玉川良一)は勇を助けてくれたら 借金は取り消しにするといい、大吉が飲んだ店の主人(実は(玉川良一)の弟)も、甥の勇を助けてくれたら残りの金は結構だと言う。 そして、二人はあざやかに勇を取り返す。活躍した半次は勇に「二流の上」にまで評価していただけたのだった (花山小吉さま 2002年5月28日) 見どころ:冒頭・イサムと半次の会話。イサムの大人びたいいぶりに、くってかかる半次に、「おじさん、旅ガラスなんだろ?いっぱしの旅ガラスは ふらりと現れてふらりと消えていく、そこがカッコいいのよ。おじさんみてえにガキを相手に目をむいているようじゃあ、(口をピューと鳴らして)まだまだ 三流。修行が足りないよ。」「このがきゃ、黙って聞いてらなんて事を、こら!」「(ピューと半次を制止して)おじさんはそこが三流なんだよ。いっぱし の旅ガラスは、ガキに何を言われてもにやりと笑って消えてく」「野郎、三流三流こきやがって、この」「まあおじさん、そう湯気を立ててねえで修行が 肝心だぜ。おじさんだって修行次第で何とかいっぱしの旅ガラスになれるかもしれねえし、その顔だってぐっとしまっていい顔になるぜ」と去って いったイサムを見て、「ちくしょーあのガキ、二言目に(口を鳴らそうとするが鳴らず、フーフー)吹きやがってよ」 その後、大吉に思わずこのことをばらしてしまい、笑われる半次、「年中ぴーぴーしやがって、下の下の三流だい」と言われ、昨日賭場で勝った 一両見せる。とたんに大吉の態度が変わり、「それは兄さんご立派だ。俺はな、前後も左右も訂正する。昨日から兄さんは一流の旅ガラスだよ。 それは俺が保証するぞ」まだへそを曲げている半次に、「俺だってな、三流から一流に格上げするについてはだ、だいぶ抵抗を感じとるんだ。 それをつつくのは、人情に悖ることなんだぞ、うん。人道的見地からもつつくべきじゃないぞ」「人道的見地だと?何だそりゃ」「つまりだな、平たく 言えばだな、三流から一流に格上げしたについてはだ、兄さんがとやかく言うのはよろしくないと言うことだ。ということはだな、兄さんと俺の仲でだ、 そんなこと、詰まらんことは水に流してだ、早速宿場に行ってその一両で暑気払いにきゅっとやるのが人道的見地ということだな。そうと決まったら 兄さん、早速宿場に向かって進撃を開始しようではないか。」「なんだよ、わけのわからないことこいて、ポンポンポンポンしやがって」「いや、俺にも 分からんのだから、兄さんに分かるはずはないわな」 半次をおだてて居酒屋を探す大吉、オカラのある店を見つけ「あれがあるぞ」と喜んで入っていくが、そこにクモ「おれのあれがでたあ、旦那、 この店やめたあ」と逃げていく。次に半次の気に入った店は大吉の気に入らず、上のおからのある店に入り直した大吉は、おからはあるな」 「さっき木札をちらっと見たんだがな、売り切れとらせんかと思って急いできたんだよ。」「店のおからを全部買いきるからどんどん持ってきなさい」 と空になったおからの皿に囲まれて眠るまで飲み食べる。 大吉と半次の殺陣。半次兄さん、速い!(じゅうよっつ) 千葉敏郎との火の出るような殺陣、すごい迫力でしたねえ。刃と刃の打ち合う効果音も、いつもの「キーン」や「チャリーン」「バシッ」の他に、「ガキンッ」 という重い音が多用されていて、重厚な雰囲気を醸しだしていました。なんだかこの回、スタッフと出演者が一丸となって「大吉のチャンバラはまだまだ 魅せまっせ。」とアッピールしているように思えてきます。第一、カメラも大吉の全身をとらえたショットが多く、体調が悪かった(?)時期に上半身ショットの立ち回りが多かったのと比べると、自信のほどがうかがえますね。(キンちゃんさま) 旅の場所:増川宿 |
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