素浪人ばなし(月影の巻三)

見れぬなら、読んでみよう「素浪人シリーズ」のあらすじ。
月影の巻一・三・ / 花山の巻 / 天下の巻 / いただきの巻 
みなさまの記憶に頼るという、管理人お得意のパターンで行く予定です。
こんな話があった、このへんだけ覚えてる、ここ違うかも、何でも結構です、
多少の間違い、不安は物ともせず、掲示板に書き込んでくださいませ。
ちょっとだけご注意:引用文の場合は、著作権の関係から、全文書かないでね。部分引用はOK。
みなさまご自身の言葉で語る場合は、何でもOKです。
Merci beaucoup!
お名前の後の(NC)は、ノンクレジットで出演者として紹介されてない俳優さんです。
キャスト表については、中村半次郎さま、京さま、キンちゃんさま、A師匠さまのご協力をいただきました。
 各お話に出てきたが、タイトル横に貼り付けてあります。(相談屋さま、きざくら&ようめいしゅさまのご提案)


「星は朝まで酔っていた」 (第二シリーズ 第27話) (thanks南まさとさま)

<キャスト> 今井健二橋場一家の当たり屋のやくざ・シカ(と聞こえる) 遠山金次郎橋場一家の用心棒・カドワキ(と聞こえる) 
堀正夫=
橋場一家の親分・虎太郎 源八郎居酒屋・みの吉のおやじ 古林泉→小林泉=手術ミスで死んだ太郎吉の母親  
坂東京三郎
最初に当たり屋に絡まれた役者風 賀川泰三橋場一家の当たり屋の、台詞が多いやくざ 
小早川敦子
消去法でいくと、息子・彦市がひどい熱だと道庵にすがった母親 松浦武男彦市の父親 
渡辺文雄
=蘭方医・道三?道庵? 
不明男27−1(NC)
=橋場一家の当たり屋のやくざ。クレジットの消去法では、春日弘 or 森谷敏宏、兵庫第一20話にも登場
不明男27−2(NC)=橋場一家の当たり屋のやくざ、兵庫第一20・21話にも登場
疋田圀男→疋田泰盛(NC)っぽいが・・・=役者風(坂東)を乗せていた駕籠屋
前川良三(NC)=医者へ向かう当たり屋一行の様子を覗う女連れの町人風かつ、橋場一家のやくざ(尻込みする虎太郎の右)
島田秀雄(NC)=男女を乗せていた駕籠屋  不明男27−3(NC)=当たり屋に同行途中で兵庫達に助けられた手拭い被り、兵庫第一13話にも登場
宮城幸生(NC)に見える=手拭い被りを乗せていた駕籠屋  井上茂(NC)に見える=カドワキ・当たり屋3人と共に道庵の元へ現れた橋場一家のやくざ
不明男27−4(NC)=兵庫第一の3話の不明男3-1(NC)=橋場一家のやくざ、兵庫第一21話にも登場
大城泰(NC)=シカを斬った橋場一家の用心棒2  立花雄吉か?(NC)=橋場一家の用心棒3
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=三船良男 美術=奈宮聖二 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=工藤昭 美粧=林三郎 結髪=河野節子 装飾=藤井達也 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=秋田実 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
大酒のみの医者・道三は、開業した頃に地元のやくざの息子を死なせたことから、やくざの当たり屋のいいなりになって、法外な治療費をとっていた。
何かあると感ずいた兵庫は、道三をしかりつけ、子供の手術が見事成功し、道三に再び医者としての道を歩ませる。
<あらすじ>
にぎやかな宿場町にぶらりとやって来た兵庫。珍しく懐が暖かいのか、とある居酒屋で酒を飲んでおりました。そこへのっそりと入ってきた異様な男、渡辺文雄。格好は侍ですが、腰のものは差していません。男はおやじが持ってきた一升枡の酒を冷のまんま、無言で一気飲みしてしまいます。さすがの兵庫も呆然唖然の飲みっぷりなのです。男は酒代を置くと、ものも言わず、千鳥足で出て行きました。店の親父が言うには男は毎日やって来ては、一升の酒を、肴もなしで飲んで去って行くのだとのことです。
さて、居酒屋を出た兵庫、今度は往来のど真ん中で、当たり屋グループ(=橋場一家)が駕籠の客に因縁を付けて金をせびろうとしている現場に出くわします。当たり屋であることをすぐに見破った兵庫、わざと「医者に連れてってやろう」と言います。当たり屋のリーダー格、今井健二はオーバーに「あ〜いてえよ〜、いてえよう〜」とわめき続けています。兵庫たちと当たり屋どもが最寄りの、あまり流行ってなさそうな開業医を訪れてみると、出てきた医者はなんとさっきの飲んだくれ男、渡辺文雄(=道庵役)ではありませんか。(以下じゅうよっつ加筆)渡辺は、めんどうくさそうにやくざの申告通り骨折だと診断。しかし、兵庫が脅すとやくざはあわてて走って逃げて行く。道庵に何か腑に落ちないものを感じた兵庫は、落ち合った半次とともに道庵が、墓参りをしているところを発見し、道庵事情を話し出す。(加筆ここまで)
渡辺は、かつては将来を嘱望されたエリート医師でしたが、ちょっとした医療ミスから患者を死なせてしまった暗い過去を持っているのでした。そして、それがもとで、やがて虚無的になり、いつしか酒におぼれるようになってしまったのでした。
と、そこへ、依然と同じ瘰癧にかかった少女が運び込まれてきます。一刻も早く手術しなければ命に関わることは明らかです。「先生、うちの子供を助けてやってくだせえ」父親に泣きつかれる渡辺。「だめだ。今のわしにはできない。手が震えて言うことをきかんのだ」兵庫がきびしい表情で言います。
「あんた医者だろうが!目の前に死ぬかもしれない人間がいるんだぞ」その一言で何かが吹っ切れたように顔をグッと上げた渡辺。
「手術の用意だ。」
こうして少女の手術が始まりました。兵庫と半次も助手につきます。ところがそこへ、当たり屋グループが親分と仲間30人くらいを引き連れて押しかけてきます。仕返しに来たのです。半次がタンカをきります。「やいやいてめえら!見てわかんねえのか!人ひとり生きるか死ぬかの瀬戸際なんだ。あとでゆっくり相手してやるからちっとの間待っていやがれッ「持ってけ」二人は刀を渡し武装解除されます。緊迫した手術シーンが続きます。そして、ついに、手術は成功しました。晴れ晴れとした表情で兵庫を見る渡辺。兵庫もゆっくりうなづきます。
手術に成功した道庵はもう橋場一家とは手を切ることを伝えに。が、もちろんそんな話が通じる相手ではない。兵庫と半次は橋場一家相手に
二人の刀は反対側の部屋に放り投げられ、たちまち始まる大乱闘。兵庫は素手で片っ端から敵をたたきのめしていきます。半次が刀を取り返しました。「旦那〜ほれほれ刀」刀を握ってからがまた強い。数十人たたっ斬って、残り5、6人「えい面倒だ」とばかりに2秒ほどでババーッと斬り伏せてしまいます。信じられないスピードです。コマ落としかなと思ったけれど、カラミの動きやバックの風に揺れる暖簾を見ればそうでないことは一目瞭然です。てなわけで、ラストの殺陣だけでも十分見る価値のあるエピソードであります。(キンちゃんさま 2003年3月31日 一部じゅうよっつ修正)
<見どころ>
このラストの立ち回りで、兵庫の旦那は、やくざ者数十人を斬ったあと、残り、5、6人を面倒だとばかりに2秒ほどでしかもワンカットで切り伏せてしまいます。あっけにとられるスピードでしたよ。(キンちゃんさま 2003年2月24日)
「星は朝まで酔っていた」のラストの殺陣をもう一度ご覧ください。兵庫のスピードが速すぎて効果音が追いついていません。遠山金次郎を斬っていないのに斬った音が使用されていたり、もう効果マンが「速すぎる!わしゃもうついていけんよ」と適当にやってる感じです。昔、映画村で、効果音を付けているところを画像で紹介しているのを見たことがありますが、スタッフがモニター画面を見ながら、タイミングを見計らって、竹刀を振り回したりしている画像でした。今はどうか知りませんが、いちいち画面に合せて、その都度その都度、音を入れているとの説明だったので意外に思いました。てっきり、あらかじめ録音している音を被せていくものだとばかり思っていたからです。このへん、詳しくご存知の方がおられましたら、またご教授ください。(キンちゃんさま 2007年12月14日)
キンちゃんさまが仰っているように、ラス立ち時は効果音と映像が合ってないですね(笑)もうお手上げなんで好きにして・・状態だったんでしょうか(笑)(南まさとさま 2009年5月17日)
子供のころ、いっしょに見ていた姉が「はやい〜」と素っ頓狂な声を上げたのを思い出しました。このラス立ち、前半は兵庫は無手勝流でバッタバッタとやっつけますが、兵庫は「柔術の心得もある」という設定なのでしょうか。とにかく刀がなくても強い兵庫に、子どもだった私は本当に心酔したものです。
ところで、この作品の半ばで、われらが半次兄サンが当たり屋一味と外でケンカする場面がありますね。例によって滅茶苦茶の度胸剣法で暴れまわりますが、半次のドスの先っぽが近くの旅籠だか小間物屋だかの日覆い(何て言うんでしょうか、ホラ、屋号かなんかを染め抜いて店先に張り出してある布製のヤツ)にチョコンと当たってしまうんです。演出ではなくて、勢いあまって本当に切っ先が当たったらしいのですが、そのとき、ずぶりと穴があいちゃうのがハッキリ映っています。すごいもんですね。あれって竹光でしょうに、かなりの威力があるもんなんですねぇ。障子や襖に穴があくのはよく見かけますが、布ですよ。これがもし役者さんに当たっていたらケガするでしょう。殺陣とは、見ている分には楽しいですが、やっているほうは命がけですね。いや、それにしても何回見ても新たなる発見がありますなあ、兵庫には。(キンちゃんさま 2009年5月18日)

兵庫の道三をしかりつける怒った顔がいい。怖い。決して大声を張り上げるわけではないが、懸命の説得は、力がある。
「わしはダメなヤツなんだ」「たしかにダメなヤツだ。だが、それですましていたらますますダメになってしまうぞ。」「このワシにどうしろというのだ」
そこに、息子が高熱を出した母親が入ってきて、道庵にすがる。断ろうとする道庵に、「子供を見てやるだ!」と。子供は前に手術を失敗したのと同じ、瘰癧にかかっていた。「隣の医者ならこの子を助けられるというのか?」「無理だ」「それならできるだけのことをやってやったらどうだ」治療室のふすまを開く。「おい、長崎にいた頃を思い出せよ、夢があったはずだ、いい加減忘れていた自分を取り戻したらどうだ、さあやるんだ」道庵は、治療室へ入っていく。この兵庫のことば、じーんと来る。
キンちゃん様が言われるように、四方八方からのやくざを、くるくるかわしスピーディーに斬っていく最後の殺陣はお見事!としか言いようがない。)じゅうよっつ)
松方兵庫の時(テレビ朝日系2007年7月〜9月放送)に喜平(品川隆二さん)が着ていた着物が「星は朝まで酔っていた」の時(の半次=品川さん)と同じ物だったことにお絵描きしていて(のりりんさまの絵はこちらです)気が付きました。びっくり!(のりりんさま2011年6月8日)


「磔柱(はりつけばしら)が待っていた」 (第二シリーズ 第28話)  

<キャスト> 原健策=目明かし・川崎の仁平 大川栄子=仁平の娘・おみよ 岸正子(→加賀ちかこ)=料亭・ふくべ(?)の女将で次郎吉の女・おまき 稲吉靖(→稲吉靖司)=疾風(はやて)の次郎吉 小田部通麿=稲妻小僧 有川正治=人斬り天狗 佐々五郎=半次に財布を渡した旅人風  小田真士=兵庫たちを召し取ろうとした与力  波多野博=料亭で次郎吉と一緒にいた派手な着物の男  不明女28−1(NC)=芸者1 不明女28−2(NC)=芸者2 江上正伍(NC)=料亭で次郎吉と一緒にいた黒い着物の浪人 不明男28−1(NC)=次郎吉の寝蔵にいた右頬に傷のある男=27話手拭い被り 橋本明に似ている(NC)=次郎吉の寝蔵にいた浪人 不明男28−2(NC)=半次が”人斬り天狗”と間違えた浪人 成瀬正孝(成瀬正)さんではなさそうだが・・
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=脇武夫 照明=松井薫 録音=小金丸輝貴 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=上野徳三郎 美粧=上田光治 結髪
河野節子 装飾=高橋清彦 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
街道で20人もの人を殺して金を奪ってきた”人斬り天狗”と”稲妻小僧”に間違えられた兵庫と半次は、盗人のなわばり争いに巻き込まれ、役人からも追われるはめに。身の証しをたてるため、二人は本物の天狗と小僧を捕まえる。
<あらすじ>
兵庫と半次は、とある宿場で、原健策演じる老目明し・川崎の仁平から十手を向けられ、「御用だッ」と突然言われます。御用呼ばわりされる覚えのない二人、目明しはぜんそく持ちの高齢で、息切れさえしています。しっかり者の娘・おみよが付き添っていますが、真剣な表情からどうもふざけているのではなさそうです。兵庫たちは適当にあしらって、その場を退散しますが、二人は人相のよくない5、6人の連中にも襲われました。 「半の字、お前、また何かやらかしたんだな」「じょ、冗談じゃねえぜ旦那。お、俺はなにも・・・」どうやら二人は誰かとまちがわれているようです。
すぐに謎が解けました。兵庫と半次そっくりの人相書きを貼った立て札が、町の辻に立っていたのです。読んでみると、素浪人風の”人斬り天狗”と渡世人風の”稲妻小僧”の二人組みの凶悪な辻斬り強盗がこの近辺に出没するので、見つけた者はすぐに番所に知らせよ、とあります。と、そこへ役人が捕り方を20人くらい引き連れて、「御用」「御用」と取り囲んでしまいます。兵庫は必死で弁解しますが、頭の固い役人は耳を貸そうともしません。「やむを得ん。お役人どのにはしばらく眠ってもらおう」刀をゆっくりと抜いた兵庫。峰に返すや、捕り方どもを片っ端から気絶させてゆきます。このシーンはコマ落としで撮影しているのでコミカルな殺陣です。BGMまでテープの回転を早くしてありました。
やがて、原健策親子がまた登場しますが、二人を強盗と間違えてなわばり争いをふっかけてきた”疾風の次郎吉”らを兵庫たちがとらえたのを見て、疑いも少しずつ解けてきます。そして、兵庫は本物の悪党コンビを捕らえることを条件に1日時をもらいます。その悪党らは、兵庫らが越えられた矢取川で川止めをくらったあと、こっちに向かっていると思われました。早速神社の境内で待ち伏せする兵庫と半次。娘・おみよが差し入れてくれた酒を飲みながら、余裕たっぷり、今や遅しと待ち受けます。いよいよ本物の悪党コンビが現れました。これが、本当に兵庫と半次そっくりのコスチュームなのです。浪人は月代を伸ばし、袴姿で一本差し。渡世人は三度笠に道中合羽を手に持って、というスタイル。もちろん別の俳優さんが演じていますから、顔だけは全然違います。「俺たちゃなあ、てめえらのおかげで三尺高い磔柱に上るところだったんダ!」という半次のセリフが妙に印象に残っています。この回、半次は「三尺高い磔柱」というフレーズを連発しますが、磔柱ってもっと高いんじゃないのかなと、コドモゴコロにも思いました。三尺は99センチですよね?閑話休題。素浪人コンビVS悪党コンビの対決が展開されます。自然と、兵庫は悪党浪人を、半次は悪党渡世人を、と分担が決まります。役人も手を焼くだけあって、悪党の腕もなかなかです。しかし、結局、兵庫たちが勝利をおさめます。(キンちゃんさま 2003年4月6日 一部じゅうよっつ修正)
<見どころ>
兵庫と半次を強盗と間違えてかかってくる役人を、次々峰打ちしていく兵庫。四方八方の相手に手際よく峰打ちしていく様はさすが〜!
第二クール終わり頃から、兵庫と半次のコミカルな会話の内容もおもしろく息も合ってきた。ネコやクモも肝心要なシーンで現れて、どのシーンもあまりシリアスにならない具合にお話が進む。
<旅の場所>
矢取川をこえた野川宿のあたり?(・・どこだ?)

<ロケ地>
終わりのほうのシーンで、神社が出てきます。なんと、『享保三戊戌年』でした。享保三年は1718年、八代将軍吉宗の時代です。干支も合っていました。
神社の名前が知りたかったのですが、これまたどうしても読めませんでした。どこなんでしょう。当然京都の神社なんでしょうが。(中村半次郎さま 2007年7月27日)  →走田神社じゃないですかね?(鯉太郎さま 2007年7月27日)  →もう、御覧になられた方は、神社名をお読みになったと思いますが、走田神社(はせたじんじゃ)と言います。京都・ 亀岡市です。この付近は、保津川(桂川)に流れ込む小さな川がありゆっくり付近を歩かれますと、荒れ荒れ、待っていた用心棒や帰ってきた用心棒、燃えよ剣 から血風録のロケ地と思われるところがありますが、残念ながら昭和50年までに木橋はすべてコンクリートになりました。(京さま 2007年7月28日)
<大川栄子さん>
昨日久々上京。目的は37年前に放送のドラマ、走れケー100のファンの集まり。会にはケー100やキーハンターに出られた大川栄子さんも登場。そこでちょっと大川さんにお尋ねしました。「たしか月影に出られたことありましたね」大川さんやさしく答えていただきました「あの時はまだ高校生で京都まで母親と京都まででかけた時代劇出演でした」と。ろくりんさま 2011年11月14日)


「つけ馬の腰が抜けていた」 (第二シリーズ 第29話) 

<キャスト> 中村是好=居酒屋のオヤジ 小桜京子鷲津の半次が金を借りに行った家の向いの居酒屋の仲居 堀正夫=柳川の伝蔵 
近江雄二郎
=地回り・三度笠の源八 大木勝=柳川の伝蔵の用心棒 石丸勝也=上州沼田一家の親分・勝五郎 牧淳子=伝助は留守だと教えてくれた女 宮城幸生=大根の居合切り 倉丘伸太郎=鷲津の半次 那須伸太朗っぽい(NC)=沼田一家の賭場の箱番 平沢彰(NC)=源八と共に現れたヤクザ 畑中伶一(NC)=源八の手下のヤクザ 藤本秀夫(NC)=源八の家にいたヤクザ
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=脇武夫 照明=松井薫 録音=小金丸輝貴 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=桧垣久恵 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=草川啓 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
居酒屋の勘定を払うために、賞金5両がかかった悪党の伝蔵を探す。
<あらすじ>
この作品で、品川さんは、倉丘伸太郎さん(=鷲津の半次)と派手な素手の殴り合いを演じます。
ゴキゲンで居酒屋に飛び込んだ我らが半次兄さん、鼻歌まじりに酒を注文して、ふと壁に目をやると、竹の一輪挿しの花が曲がっているではありませんか。例によって半次は、つと立って、花をまっすぐに挿し直し席に戻りました。すると、それまで隅っこで酒を飲んでいた先客の渡世人(倉丘)、やおら席を立って、今半次がまっすぐ挿したばかりの花をまた曲げてしまいます。半次はそれを見るや鼻の穴をふくらまし、再度花を垂直に挿し直します。倉丘はニヤニヤしながらまたしても曲げてしまいます。二人はそんな調子で、それを二度三度繰り返します。そのうちに、ついに半次が爆発します。「やいてめえ!なんだって俺がまっすぐしたものを曲げっちまうんだ!」二人は外へ出て居酒屋の前で大格闘をおっぱじめます。
と、ここで倉丘は見事な「とびげり」を披露してくれるのです。当時人気の出始めていた「キック・ボクシング」(まだムエタイという呼び名ではなかった)をギャグに使っているんですね。脚がパーッと伸びて、一メートルはジャンプしましたよ。とてもカッコよかったです。二人は代わる代わる殴りあい、遂に拳骨どうしがぶつかって「アイテテテ・・・」。くんずほぐれつしているところへ、兵庫が通りかかるという展開です。半次と倉丘は、殴り合いがきっかけで、意気投合します。青春ものなんかによくあるパターンですね。(キンちゃんさま 2005年5月29日)
意気投合した後、旦那と二人の半次は調子に乗って飲み直すが、気づくと勘定は412文。
3人そろってほとんど持ち合わせがなく、しかも、金の調達に出ていった鷲津の半次は戻ってこない、兵庫は仕方なく、居酒屋のオヤジに隣町の伝助と知り合いだとデタラメを言うと、それが実在の人物、ツケ馬のオヤジを連れて二人はとぼとぼと隣町に。
しかし、幸運なことに伝助は旅に出たばかりで、3日は帰ってこないと言う。明日の仕入れの金にも困っているオヤジは、気を失う。
二人が出かけている間に鷲津の半次は戻って来たが、金の調達に失敗した上、さらに酒代を重ねて別のツケ馬を連れていた。
こうなっては、鷲津の半次が仇と追っていた賞金のかかった柳川の伝蔵とオヤジたちを苦しめている三度笠の源八一家を懲らしめるしかない。
3人は無事、悪者を退治し、居酒屋のオヤジは、賞金の5両をそっくりもらえると知り、又気を失う。
<見どころ>
ちなみに、もう一人のゲストの居酒屋のオヤジ(中村是好は、客に代金を踏み倒されては腰を抜かすという設定で、劇中、半次はしょっちゅうオヤジをおんぶしていました。品川さんはさぞ疲れただろうと思います。 (キンちゃんさま 2005年5月29日)
同じ名前で同じく正義感の強い二人なのに、性格はまったく反対の半次同士の喧嘩は、双子の喧嘩のように優劣がつかない。
鷲津の半次を金策を待つ旦那と半次の会話や表情も面白い。
居酒屋のオヤジに「払ってくれ」と迫られる二人、兵庫がこの宿場に伝助という半次の知り合いがいると、口から出任せを言い、実際にその人物がいることに驚く二人、そのために伝助宅まで行くことになるシーン、オヤジに泣きつかれて困っているときに目に入った浪人の路上パフォーマンスにヒントを得て、目隠しして大根を縦3つに切り客寄せするシーン(しかし金にならない)など見どころ満載!

<半次の帯>
『兵庫2』をじっくり観ていて気付いたのですが、29話辺りから後半まで半次がずっと着用していた菱形模様が並ぶ帯って、あれ、サイコロの模様だったんですね。白いだけでなく何か模様が入っているとは思っていましたが、腰がアップするシーンがあって、サイコロの1から6までの目が並んでいました。半次にぴったりの柄ですね! (2011年11月23日 トプ・ガバチョさま)



「馬子唄だけが知っていた」 (第二シリーズ 第30話)

馬子が山で金塊を見つけ、はからずも兵庫らが大泥棒逮捕に一役買う。

飯塚くん(飯塚真英)は、子供ながら親が病気のために、代わりに馬子をして家計を助けているという、しっかり者の少年です。苦しくても明るく、口が達者で、例によって半次をおちょくったりします。半次をおじさん呼ばわりするという、お決まりのパターンです。
その彼が、遊び場にしている洞穴で、盗賊たちが隠してあった大金を発見します。兵庫が、取り返そうとする盗賊一味から少年を救う、というのが大筋です。覚えている兵庫のせりふは一つだけ。
「お役人殿。見てのとおり、俺たちは盗賊を八人斬った。」てなわけで、今回兵庫が相手にしたのは八人でした。ちなみに、このエピソードは、「少年現代」連載の、漫画「素浪人月影兵庫」で漫画化(さつま隼人・絵)もされています。(キンちゃんさま 2008年1月12日)


「男の骨が泣いていた」 (第二シリーズ 第31話) 

<キャスト> 姫ゆり子=女ばくち打ち、実は大岡忠相の隠し目付 新井茂子 須藤健 酒井哲 倉田和美 楠義孝  
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=脇武夫 照明=松井薫 録音=小金丸輝貴 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=桧垣久恵 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=草川啓 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
兵庫が見つけた野ざらしの骨のそばにあったたばこ入れには、何も書いていない紙切れが入っていた。実はそれは、その男が書き残した絹糸を巡る不正の事実、その紙切れを巡って正体不明の女博徒が半次につきまとい、甲賀忍者と絹を扱う役人たちが二人に襲いかかる。
<あらすじ>
半次が「兄さん、こっち」と呼び込まれた先は、掘建て小屋の博打小屋。
そこで、半次はいかさま女ばくち打ちにしてやられ着物まで取られるが、女ばくち打ちはなぜか半次が気に入ったらしく、着物を戻し、半次について回る。
一方兵庫は、雨宿りのお堂に、殺されたと思われる野ざらしの骨を見つけ、役人に届ける。そこには、三度笠や合羽とともにたばこ入れが。たばこ入れの中にはないも書いていない1枚の紙切れが入っていた。
その日のうち、兵庫が死体を見つけたことを聞きつけ、おみよという娘が兵庫の元を訪ねる。おみよは兵庫が見せたたばこ入れが間違いなく自分が”あの方”に買ったもののだと涙ながらに確認するが、それ以上話そうとはしない。なにやら訳ありの様子で帰っていった。
が、たばこ入れに興味を持っているのはおみよだけではなかった。
兵庫と半次が落ち合った晩、二人の寝ている部屋に忍者が忍び込み、たばこ入れを盗んでいく。
隣の部屋では、その様子を息を潜めて伺う女ばくち打ちが。
幸いたばこ入れの中の紙は、兵庫が持っていたが、どうやら、いろんな人物がこの紙切れをねらっているようだ。
さらに翌日、今度は兵庫に、覆面の侍たちが襲いかかる。峰打ちで倒したその中の一人は、昨日兵庫が死体を届け出た役人だった。
この何もかかれていない紙切れに何かがあると睨む兵庫は、おみよの働く居酒屋の主人に話を聞く。おみよは、ここで働きながら、行商の途中病に倒れた養い親の島蔵の看病しているのだが、おみよには、島蔵のあとを追って旅に出た、藤太郎という行方不明の恋人がいることが分かる。兵庫が見つけた骨は、藤太郎に違いなかった。が、そのことを知った兵庫は、忍者に襲われ、腕を撃たれて池に飛び込む。
その頃半次と女は、街道で倒れているおみよを見つけ、旅籠に連れて行き介抱する。おみよは、父親の薬を買いに行く途中で、それを知らせに半次はおみよのうちに向かうが、布団に島蔵の姿はなかった。
それを聞いたおみよは急ぎうちに帰るが、そこに元気な島蔵の姿が。島蔵とおみよは江戸にすむ甲賀者だったが、島蔵は病身を装い、この藩の絹糸に関する不正を調べていたのだ。
自分たちの正体が知られることを恐れ、おみよの止めるのも聞かず半次と女を呼びだし消そうとする島蔵。あわやの時に兵庫の小刀が飛んでくる。
兵庫には、全て判明した。島蔵は、その不正を江戸に知らせず、おみよの留守に逆に役人とグルになって不正の甘い汁をすすっていた。追調査にきて事実を知った同じ甲賀者の藤太郎を殺したのも島蔵だったのだ。藤太郎は最期に不正を紙に記したが、それが分かったのは、兵庫がずぶぬれの紙を火にさらして乾かしている時だった。
島蔵は、娘の前で兵庫にすべてを暴かれ自害する。
そこに兵庫が呼び出した役人たちが。半次の横から女が出てくる。「神妙におし!」女は、大岡忠相の隠し目付で、絹糸の不正を調べに来ていたのだ。
<見どころ>
このころは、まだご病気ではなかったようで(あるいは軽かった?)、このちゃんの動きは身軽だ。殺陣以外の動きでも、ひょいとジャンプしてよけたり走ったり。これが本来だったんだろうなあ。
忍者に盗まれたたばこ入れの中身を抜いていた兵庫に、「旦那見かけに寄らず神経の細かいとこあんな」「おまえ友達の間でも言っていいことと悪いことがあるぞ。こんな優男を目の前にして」「優男ってどこに?どこ〜?」「おめえの目の前にいるじゃねえか」「あきれて口もきけねえや」と、こんな気軽な口の効き方が兵庫と半次の会話の魅力だ。
(以上 じゅうよっつ)
最近とみに兵庫と半次の掛け合いが板についてきたんでますますノリが良くなってきて、プラス「つけ馬の腰が抜けていた」はゲストキャラとシチュエーションの可笑しさ、「男の骨が泣いていた(当話)」は話自体の複雑さと謎解きの妙でそれぞれ魅せてくれた・・という感じっす。もちろん身軽な近衛さんの殺陣も堪能できて毎度ながら幸せなひとときでした。そうそう、女賭博師こと大岡様の隠し目付の姉御が、仕事が終わったら2人と一緒に旅しようかな・・なんてことを言ってたと思うのですが、個人的にはまさにこういうタイプの女性が大吉達に加わってくれるのなら(「素浪人 花山大吉」79話以降)OKだったんですよ。まぁ、純粋に好みの問題なんですが・・お咲ちゃんの代わりにこの姉御だったら・・と、ちょっと想像して楽しんでました(爆)(南まさとさま 2009年5月24日)


「お酒に刀が浮いていた」 (第二シリーズ 第32話) (小唄の師匠との話だけ)(4回)(thanks南まさとさま)

<キャスト> 神楽坂はん子=小唄の師匠・はん(thanks トプ・ガバチョさま) 朝海千景はんの妹  高橋とよ=はんの元にばあやとしてもぐりこんだ鬼姫のお杉 藤尾純=口入れ屋・富田屋の主人 穂積隆信=役に立たない役人 入江慎也=はんの(近々結納が予定されていた)弟子の父親 松浦武男=はんの弟子の(娘だけが生きがいの)父親  堀内一市=はんの妹の旦那  新屋英子=はんの弟子の(娘だけが生きがいの)母親 新海なつ=はんの(近々結納が予定されていた)弟子の母親 波千鶴=はんの弟子の娘(クレジットから推測) 崎山かず美=はんの弟子の娘(クレジットから推測)
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=結束信二 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=藤井光春 録音=小金丸輝貴 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=宮内喜久子 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=草川啓 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=佐々木康

<大筋>
小唄の師匠のうちに入った泥棒を捕まえたお礼に、二人は師匠にたんまり酒をいごちそうになるが、翌日二日酔いの頭で目覚めた時には、師匠も弟子も、ばあやもいなくなっていた。そこに突然役人らがやってきて、二人を拐かしの犯人だと決めつけ牢屋にぶち込む。二人がぐっすり寝ている間に師匠らは拐かされ、ばあやが「客の二人にやられた」と書き残していたと言うのだ。二日酔いが醒めた兵庫が、”役に立ない”の役人に代わって犯人を推理し、見事、真犯人はとらえられ、師匠たちは無事に救い出されるのだが・・・。
<あらすじ>
「行き倒れか?」とざわめく人だかりをかき分けると、そこには、半次が寝ていた。
博打ですっかりすった腹いせに、しこたま飲んでこの始末。恥じ入った半次は、「当分酒はやめようかな」と反省するが、兵庫は、「そう思いつめることもなかろうが、向かい酒一杯行くか。一杯きりだぞ」と半次を誘って向かい酒に。
一杯どころか、二人はぐでんぐでんになるまで飲み、夜の宿場の片隅で眠っていた自分に気づく。
そこに、泥棒が二人、現れるが、さすが兵庫、酔っていながらも酔い覚ましにその二人を捕まえ、通りかかったおこもに役人に知らせるように頼む。
泥棒に入られたのは、小唄の師匠・はんの家だった。師匠は、兵庫と半次を手厚くもてなし、神楽坂出だという師匠と兵庫で神楽坂の話が進む。
「升の屋の常連だった」「ウキちゃんは元気かしら?」「ああ、元気、元気、俺に惚れていたんだ」「冗談ばっかり」「人なつっこい子だし」「だからかわいさが増すってもんだ」「寝ているとすぐお布団に潜ってきて」「え?そうだったかね??」「子供をたくさん生んで困ったことがあったっけ」「??」「やっぱり三毛は三毛の子をうむんですねで」実は、ウキはネコだったと分かり、兵庫は頭を抱え、半次は上機嫌。
しかし、二人が酒を飲み過ぎてぐっすり寝込んだ翌日、起きてみると、師匠もお弟子の娘たちも、ばあやもいない。
そこに、役人らが入ってきて、二人を捕まえる。おはんの生家は資産家なのだが、その妹が今朝来てみると、ばあやの「客の二人にやられた」」という書き置きとともに、この家の者全員が拐かされたと言うのだ。
牢屋の中で、元はと言えば旦那が酔っぱらうからだぞ、先に酔っぱらったのはおまえだぞと、言い合いが始まり絶交、二人は、”独り言”で話す状態。
そのころ、師匠の妹の元に、「今夜一千両を天神杉におくべし、役人に知らせると命は危ない」という脅迫状が届く。しかし、妹の主人が役人に知らせたため感づかれ、取引はチャラに。困った役人は、どうやら犯人ではないらしいと思われてきた兵庫と半次を牢からだし、「俺はもう手がかりをつかんでいるだぞ」という兵庫の知恵を借りることに。
犯人は、師匠の妹が資産家であることを知っており、しかも、普通なら女ばかりの所帯に浪人と渡世人が泊まっていれば敬遠するところを、その二人が酔っぱらって用心棒としては役に立たないことも分かっていて、師匠たちが二人がいることで安心して寝ていることも知っている人物・・・ばあやであることを突き止める。そして、そのばあやと連絡を取っていたのが、つい最近このばあやを世話した口入れ屋の主人、、泥棒が入った夜におこもの格好をしていた男であることが判明する。
無事、口入れ屋・富田屋の連中をとらえて、師匠たちを助け出そうとすると、そこに、ばあやこと、鬼姫の御杉が短筒を持って構える。
女を相手にはできず、兵庫と半次は「よせ、危ない」と言うばかりだが、御杉は「撃つよ」とやる気満々。
と、そこにクモが・・・ぎゃあと逃げ出したのは半次のみならず。鬼姫の御杉もクモが苦手だった。気を失った御杉の元から師匠らを無事救出した。
「なんと御礼を申し上げたらいいのか」と礼を言う師匠に、「礼なんかいらんよ、くさやの干物かなんかでいっぺえやりてえだけだ」
翌日、気持ちよく酔っぱらって師匠らに見送られた兵庫、人だかりの向こうに酔っぱらって寝ている半次を見つける。
「あんだけ深酒はいけねえと言っていたのに、おい半の字」「つい役人にすすめられちまってな。こりゃいけねえ。よしきっぱり酒やめちまうぞ」「そう思いこまなくてもいいだろうが。向かい酒一杯行くか、すっきりするぞ」「そうだな」「一杯きりだぞ」
<見どころ>
とにかく面白い!エンドレスなお話が面白い!よくお話ができていて、クモやネコの使われ方も気がきいている。
「神楽坂のネコを抱いているから」と何かにつけて責められる兵庫、最後のばあさんの短筒に危機一髪で出てくるクモ、短筒を取ろうとしてその上にのっかるクモにぶっ飛ぶ半次兄さん。
お話中、ほとんど酔っぱらったままの二人の、酔っぱらいの理論整然としたつもりの会話が面白い。
兵庫が、神楽坂出身の師匠と話を合わせて「松田屋の常連だった」「旦那とは縁がなさそうですが。あそこのお芋はおいしかったわ」とウソがばれそうな会話を横で半次が面白そうに聞いていたり、三毛ネコの話を娘の話だと思いこむ兵庫に、テレビを見ている方は「あ、ネコのはなしになるぞ」と思っているとやはりそうなって兵庫が頭を抱えたり(たぶん、子供の当時も笑っただろうなあ!この姿)。
半次の夢で小唄の師匠の歌を聴いてよく分からないのに手を叩いていると、「さあやってごらんなさい」と言われ歌い始める半次。見ている方はきっと下手なんだろうと期待すると、これがうまい!ほうに期待はずれ。もっとも途中から調子はずれになる。
(以上じゅうよっつ)
「冒頭のつかみのテンポの良さ。「一杯だけだぞ」と言って次のカットのべろべろ状態。いい演出です。
しかも兵庫のそのべろべろぶりは、まったく半次にいさんに目が行かないほどのふっ切れた演技です。それを追うドーリーショットがやけにおかしい。
そしてさらにその後のだらしない寝っぷり。刀がだらしなさ過ぎ〜。笑いが止まらんです。これこれ、これが「素浪人月影兵庫」ですよ!
ホントに、剣豪スター近衛十四郎が良くココまでやりました。(大地丙太郎監督 2007年8月13日)
期待に違わず面白かったです。特に「お酒に刀が〜」は最高!!兵庫はきっと、あれからもしばらくは、寝ている自分の懐に入ってくるウキちゃんの悪夢に悩まされ続けたに違いないっすね(笑)それにしても、兵庫は剣の達人なので、「夜中ぐっすり寝込んで気がつかなかった」というシチュエーションを成立させるには、よっぽどの理由がなければいけないですよね。ところがそれがよりによって猫!!でも、それで「あれじゃあ飲み過ぎもするわな」と視聴者が笑いつつすんなり納得してしまえるというのがこの作品の凄いところで、当時大人気だったのもよく分かるなぁ・・と、見ていてつくづく感心したのでした。(南まさとさま 2009年5月31日)
<迷子のお話>にも少しあります。


「鏡の中に俺がいた」 (第二シリーズ 第33話) (半次の物まね)

<キャスト> 岸本教子=辨吉の恋人・おかよ 小林重四郎=鬼熊一家の熊五郎 海老江寛=茶店のじいさん 沢淑子(→任田順好)=辨吉の借金を半次から取り立てた飲み屋の女将 有川正治勘定奉行・キジマ子飼いの浪人・キュウゾウ(久蔵?) 市川男女之助=田川藩勘定奉行・キジマ(鬼島?) 遠山金次郎=子分4人と茶店にのりこんだ鬼熊一家の代貸(?) 三田一枝=茶店のばあさん 牧淳子=おかよが働いている居酒屋の女将(?) 江上正伍=鼻血を出したり蹴っ飛ばされたり、散々な眼に合わされる藩士 江上正伍=鼻血を出したり蹴っ飛ばされたり、散々な目に合わされる藩士 泉好太郎(NC)=半次が茶店に入るのを見ていた鬼熊一家の子分 井上茂(NC)=茶店にのりこんだ鬼熊一家の子分 たぶん志茂山高也(NC)=物陰から様子を覗った藩士 藤沢徹夫(→藤沢徹衛)(NC)=鼻血の藩士と一緒にいた藩士 たぶん平河正雄(NC)=兵庫に首根っこを掴まれた藩士 藤本秀夫(NC)=鬼熊一家の用心棒 不明男33−1(NC)=半次と兵庫の刀を拾い上げた鬼熊一家の用心棒 池田謙治(NC)=酒蔵の入り口にいた鬼熊一家の子分 川谷拓三(NC)=キュウゾウに会釈をした鬼熊一家の子分
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=林春海 録音=渡部章 美術=塚本隆治 編集=川上忠 記録=野崎八重子 衣装=荒堀実秋 美粧=林三郎 結髪=浜崎喜美江 装飾=関西美工 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
半次そっくりの酔った男・弁吉を介抱した兵庫と、茶屋で弁吉に間違えられ恋人まで現れた半次兄さんが、自分の勤める作り酒屋の不正と勘定奉行との密着を町奉行に訴えたために恋人の命が危険にさらされ、町を去らざるを得なくなった弁吉を救う。
<あらすじ>
酒を水増しして利益を得んとする悪徳酒造商で働く男(品川二役)が半次とウリふたつだったことから、兵庫と半次は事件に巻き込まれてしまいます。
ある宿場でぐでんぐでんに酔った男を見つけ、半次・・とおもって兵庫が一晩介抱すると、それは半次そっくりだが礼儀正しく控えめな男・弁吉だった。
その数日後、茶店にやってきた半次は、茶店の主人に、鬼熊一家にみつかったらどうするとあわてて奥へ通され、2年もあえなかったと恋人のおかよと言う娘に、涙ながらにすがりつかれる。そこに半次を弁吉と間違えた鬼熊一家がやってくるが、正義感から半次は、連中を懲らしめ、そこにやってきた兵庫の話で、やっと事情が飲み込める。
二人は、辨吉が宿場を出る原因を作ったらしい鬼熊一家の様子を見に行くことにする。
宿場にはいると、今度は、勘定奉行の手下が半次を辨吉と間違えて捕らえようとし、おかよの勤める居酒屋に行くと、おかよは既に鬼熊一家にとらえられていた。田川藩の勘定奉行・鬼島は、鬼熊一家の後ろ盾、これは何かある。
兵庫と半次は鬼熊一家に乗り込んで大暴れしますが、小林重四郎が演じる一味の親玉に南蛮渡来の短筒をつきつけられ、逆に捕らわれてしまいます(←短筒は出てなく、おかよが刀を突き付けられているのを見て、刀を捨てたとのこと
thanks A師匠さま)。ところが、二人が押し込められた場所はなんと酒蔵!早く脱出せねばと気をもむ半次をよそに、兵庫は所狭しと並んだ酒樽に舌なめずり。早速かたっぱしから飲み放題。たちまち目は三白眼、ろれつが回らなくなり「黒田節」までうなりだす始末。
挙句の果てに「なあ半の字、俺あ今まで酒の風呂に入ったことがねえんだ」といって、人間の背丈よりも大きな酒樽に梯子をかけて入ってしまう。半次はあきれてしまうが、実はこれ、兵庫の策略で、酒樽の中に隠れたわけ。そして見回りにきた敵の見張りを酒樽の中からニューッと上半身だけだして素手でポカリ。こうして脱出に成功しますが、兵庫はこのとき飲んだ酒が水臭かったことから、事件の真相をつきとめます。
辨吉は、自分が宿場を出たことについて固く口を閉ざしていたが、兵庫に死んだつもりで俺にかけろと言われ、町を出ることになったことの次第を話し出す。
鬼熊一家の熊五郎の営む酒屋の酒は、勘定奉行の肝いりで田川藩にすべて買い入れられていたのだが、熊五郎が酒の量をごまかしたうえ酒の質を落としていることを知った辨吉は、町奉行に訴えでた。困った熊五郎は、おかよの命が大事ならと脅し、訴えは間違いだったと一筆書かせ、辨吉には宿場から出ていくように求めたのだ。
「辨さん、これでどうやら、どぶさらいができそうだ」
あとはラストの立ち回りとなるのですが、この殺陣がまたスゴイ!敵側のすご腕の用心棒との対決シーンはファン必見です。
いきなり斬り込む用心棒3人。と、兵庫がクルミを空中へ放り上げます。舞い上がるクルミ。そして左右から激突。
落ちてくるクルミを兵庫が左手でハッシと受け止めたとき、敵はすでにバッタリと倒れているのでありました。てなわけで、剣と推理と笑いの娯楽編なんですよう。(キンちゃんさま 2003年2月27日 一部じゅうよっつ加筆)
<見どころ>
いつもの正義感が強くておっちょこちょいで面白い半次兄さんと、真面目で礼儀正しくおとなしめの、正反対の辨吉を演じる品川さん。半次を見慣れた者にとっては、品川さんってこんなに男前だった!?と改めて見直してしまう(品川さん、失礼!)。あまりに二役の落差があるので、なんだか錯覚を覚えるほどの演技、さすが〜(再びご無礼!品川さん)。目で芝居をすると仰る品川さんだが、ほんとだ、2役ではまったく目が違っていた。
捕まって放り込まれた酒蔵で酒を食らってのんきに寝ようとする兵庫に、頭に来た半次は「にゃ〜お」。兵庫があわてて飛び起きる。(以上じゅうよっつ)
のした役人につまずいてすっ転ぶ兵庫。サイコーです!何度巻き戻して腹抱えたか。「あいちゃあちゃいちゃ!」って言いながら、あの転びっ。あっはっはっはっは!
しかも、起き上がってもうひと蹴り。なんちゅう主役なのに品がないんでしょう。これが「素浪人月影兵庫」ですよ!はまるわけだ。
それにしてもこのすっ転びっぷり、ぜひ巻き戻して、しかもスローで見て下さいよ。見事です!「花山大吉」では大吉は滅多に走らなかったですからね。
記憶では、一度、左時枝が斬られた時に駆け寄ったくらい。でも、兵庫は本に若々しいんですよ。(大地丙太郎監督 2007年8月13日)

勉吉(品川二役)をシゲシゲ見ながら言う兵庫のセリフ「世の中には瓜二つの人間がいるというが、こうも似ていると気味がわるいなぁ」というのを聞いて、思わずニヤリとしましたね。まさか自分にも花山大吉というソックリさんがいるとは、このときの兵庫も知らなかったでしょう。(キンちゃんさま 2007年10月8日)
<旅の場所>
田川(って福岡の?)


「一発屋が待っていた」 (第二シリーズ 第34話)

腹の黒い奉行一味に命を売った男が兵庫らのあとをつけてくる。

兵庫の衣装ですが、まず、最もお馴染みの衣装は、背中に「月」左右の袖にそれぞれ「雪」「花」と染め抜いたヤツでしょう。襟と袖が白っぽい色(金色?)で、全体の地の色が黒っぽいというアレね。そして、袴は襟と同系統の色。これを仮にAタイプとしましょう。
もうひとつが、襟が黒っぽく、地の色が灰色っぽいもので、袴は黒。いや、カラーでないので、実際は茶色か紺色かもしれない。これをBタイプとします。
月影第2シリーズの兵庫は、この二種類の衣装で登場しました。大半はAタイプで、月影兵庫というとこのAタイプ衣装がすぐに想起されるくらい、イメージが強いのです。それに対して、Bタイプ衣装は、もっぱらオープニング用に用いられました。シリーズ前期の、神社の境内バージョンも、後期の夜の宿場町バージョンも、ともにBタイプ衣装です。本編でBタイプを着用していたエピソードは、第一話「みんなが待っていた」「御用の風が呼んでいた」とあといくつかあっただけです。(OPの着物は、この2話の中で着ていた着物より薄い色ではないか?というトプ・ガバチョさまのお話が続いて下にあります)
ところで、面白いことがひとつ。実は、月影で、唯一、兵庫がAタイプでもBタイプでもない衣装で登場したエピソードがあるのです。それは、「一発屋が待っていた」です。つまり、この回、なぜか兵庫は、Aタイプの着物に、Bタイプの袴をつけて登場したのです。理由は不明ですが、何かとてもアンバランスだった印象があります。そりゃそうでしょう。プロ野球の選手が、ホーム用とビジター用と両方のユニフォームを上下取り替えて
着用したようなもんですから。ま、衣装部さんでアクシデントでもあったのでしょうかね?
「一発屋」そのものは、水準作ですが、ただ、この作品、おそらくシリーズ中もっとも下品な作品でしょう。ゲストの桑山正一さん扮する浪人は、お人好しの善人なのですが、ところかまわず強烈な屁をたれるという設定で、もとはれっきとした武士だったのが、主人の前で一発やってしまい、切腹になるところをば出奔してきたのです。ラストの殺陣では、もちろん兵庫の剣が冴えるのですが、立ち回り半ばにして、突如、全員が固まってしまいます。兵庫も半次も悪人たちも、一瞬凍りついたように動かなくなるのです。続いて半次の顔がムズムズ。続く場面で、なんと桑山正一浪人が、お尻を突き出してよろよろ歩いているではありませんか。そうです。ラストの見せ場で一発放屁してしまったのです。その場の全員がガス中毒に!
てなわけで、「一発屋が待っていた」は、作品の出来は普通クラスなのに、兵庫の衣装がいつもと違ったことと、内容が下品だったこととで、強烈にインパクトのあったエピソードです。(キンちゃんさま 2005年5月3日)
素浪人ノートの着物の話に出ていましたが、兵庫の第二シリーズオープニングでのグレーの着物は、本編ではほんの数回だけで、あまり使われていませんよね。
ほとんどが「雪月花」の黒っぽいやつですが、「御用の風が呼んでいた」やその次の回での着物はグレーっぽく見えました。でも、オープニングのとは違って、黒っぽいものに白っぽい点々がたくさん撒かれたような柄のものですね。離れたところから写している画面では結構暗いグレーに見えます。オープニングのやつは明るいグレーですから、着物はいつもの「雪月花」とあわせて3バージョンなのでしょうか?(トプ・ガバチョさま 2011年9月24日)
「星の数ほどふられていた」での兵庫の袴ですが、あれもいつもより暗い色のものに見えました。他は例の「雪月花」の時は黒に近い着物と、明るいグレーの袖や襟の、中間的な濃さの袴をはいていますよね。「星の数ほど…」では、これが結構暗い色でした。最初の方の、フンドシの首吊りシーンでは、日中ですが強いライトを当てていて、腰の辺りがちょっと明るく見えますが、居酒屋の中や浪人親子の家の周辺では、明らかに濃い色の袴だと分かります。
ワテは袖や襟の色と比較してましたが、実はこの着物も別バージョンがあったかも知れませんね。あの袖の色がとても明るい色の時が多々ありましたもん。ちなみに「星の数…」では、あそこが絹なのか、光の加減で光るように見えますね。
モノクロだから分かりませんが、ひょっとしたら色が異なるものがあるのかも(←妄想中^^) (トプ・ガバチョさま 2011年9月27日)


「もぐらは空に消えていた」
(thanks 相談屋さま) (第二シリーズ 第35話) 

<キャスト> 御影京子=火の番(おやじ)の娘 清水一郎=火の番(おやじ) 金井大=代官の手代・安藤孫兵衛 高木均=ケチな代官 柳川清=旅籠・鶴屋の主人 畑中伶一「あの浪人、逃げた〜」鶴屋の番頭 朝永桐子=消去法で代官の嫁さん(奥方) 不明男35−1(NC)=半次が障子の穴から覗いた、男女の連れ 不明女35−1(NC)=半次が障子の穴から覗いた、男女の連れ 前川良三(NC)=兵庫から火の番小屋を尋ねられ、火事と勘違いした男
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=結束信二 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 挿入歌=クラウン・レコード 「一品どっこ」 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 歌・品川隆二 音楽=阿部皓也  撮影=玉木照芳 照明=藤井光春 録音=小金丸輝貴 美術=寺島孝男 編集=川上忠 記録=宮内喜久子 衣装=上野徳三郎 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=草川啓 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=佐々木康

<大筋>
宿場に毎夜現れるもぐら小僧に刀と着物を盗られた二人だが、それが、目の見えない娘の治療のために金を稼ごうとした火の番のオヤジの仕業だと分かり、兵庫の機転で、事件は無事迷宮入り、娘の治療費まで捻出する。
<あらすじ>
夜、その宿場では役人が大勢出て、もぐら小僧を捜していた。
”もぐら小僧”とは、毎夜徹して宿場の役人が探しても見つけだせずにいることからついた”稀代の”盗人の名。
騒ぎを出入りと勘違いして騒いだ半次と、そのおかげですっかり目が覚めた兵庫は、役人の指揮をとる代官の手代・安藤相手に、推理し、ケチで嫁さんに頭が上がらない代官の話なんかのんびりとしている間に、刀と着物を盗まれる。
二人は、手がかりを得ようとするが見つからず、火の番あけのオヤジに出会っただけで、、そのうち夜が明けてしまった。
宿屋では、昨夜懇意になった安藤が、なんとか二人の宿代を工面してくれようとしていたが、宿代だけならまだしも、兵庫は大量の酒、半次は大量の料理をとっていたためにさすがにチャラというわけには行かなくて、その日から水くみ、薪割り、洗濯と、働いて返すことになった。
兵庫はクルミをならしながらふと思い出す。そう言えば、あの火の番のオヤジは、半次が身ぐるみ剥がされたと言っただけなのに兵庫の刀が取られたことまで知っていた。あわてて宿屋を出て火の番のオヤジのうちへ向かうが、そこには、オヤジはおらず、目の見えない娘が一人留守番をしていた。
夜、兵庫は火の番に出かけるオヤジのあとを追ってみる。ネコが出てきたためにオヤジは見失ったが、代わりに火の見櫓から、盗まれた刀や着物が見つかった。戻ってきたオヤジはすぐに観念、しかしオヤジの盗みには理由があった。
オヤジは盲目の娘の目の治療のために盗みをしたのだ。娘は代わりに自分を捕まえてくれと、兵庫に頼む。困った兵庫だが、娘の目が、代官の屋敷に勤めていた頃まかれた虫除けの花薬が目に入ったために見えなくなったと知り、解決策を思いつく。これで、代官に残業代無しでこき使われる役人たちも、オヤジたちも救われるはずだ。
代官に面会し、娘の治療費に「大負けに負けて20両」と兵庫は談判する。怒った代官は、家来どもを呼ぶが、誰も来ない。代官がけちで、誰も働かないのだ。そこにやっと安藤が現れるが、既に兵庫と口裏をあわせている安藤は「浪人の申すこともっともです、されどお代官さまのために20両を少しでも安くいたしたく」と値切り役に回る。
最終的に13両2分が手元に入り、10両は娘の治療費に、3両2分は残業した役人たちのうどん代になることになった。「しかしあんた、もぐら小僧に逃げられてしまって、残念でしたな」「いやいや手柄を立てても褒美が出るわけじゃなし、それより夜ゆっくり休める方が嬉しい」「でしょう。今夜から間違いなくゆっくり休める」
薪割りに励む半次にも、着物が戻ってくる。「旦那がもぐら小僧を捕まえたのかい?」「なあに。もぐらはどっかに飛んでいったよ」「ええ?」
兵庫と半次を見送る火の番のオヤジと娘は治療のため長崎へ。
目が見えたときには恩をもらった兵庫はおらず、顔を見ることができないのが心残りだという娘に兵庫は、「俺の顔か。あんたの目が治る、そして幸せになる、そのうちすばらしい旦那さんと所帯を持つ、その旦那さんの顔が俺の顔だと思ってればいい。達者でな」二人は旅立つ。
「旦那、分かったよ。」「何が?」「もぐらは空に消えたんだってね」「ははは。そうさ、それでいいだろうが」「まあな」
<見どころ>
似たもの同士の兵庫と半次。
手当はもらえるんですか?とか、けちで嫁さんに頭が上がらない代官の話を、役人・安藤としていた兵庫を、野次馬だなあと半次にけなされて口げんかを始めたところ、宿屋の主人にいなされ「おれは元々育ちがいいんだ」と二人とも。主人に「お二人様ともそのようにお見受けしておりました。」と言われ気分良く部屋に戻っていく。そして、「一ぺんくらい盗まれてみたいよ」と言って戻ると、実際に盗まれている。
半次がまず騒ぐ、それをあきれて兵庫が、「たいして入ってないんだ。騒ぐことない、静かにしてろ」と部屋に戻ると、今度は兵庫があわてて出てくる。「オヤジ刀がないんだ、やられた!質屋に持っていけばだまって5両貸してくれる、そう言う刀なんだ。」とおろおろ。「どうして静かにできないんだろうね、この旦那」と今度は半次があきれる。
はじめから半次の金を宛にして泊まっていた兵庫、刀以外は盗まれなかった兵庫の財布を宛にする半次、二人とも宿屋にはらう金がない。「どうすりゃいいんだ」とあわてる半次に、「困ってりゃいいんだよ。なあ、半の字」「あ?」「困ったなあ(しみじみと)」「ああ困ったね・・発展しねえねまったく」
火の番が怪しいとあわてて出ていく兵庫を見て、宿屋の者は兵庫が逃げ出したとあわてる。さらに、宿屋を出て「火の番はどこだ?」ときくと、聞かれた者は火事かと勘違いし、宿場中が「火事だ!」と騒ぎになる。
他にも、番頭さんをおだててなんとか酒をもらおうとする二人とか、火の番のあとを追ってるときにネコが現れ騒いだため、もぐら小僧かと間違われ役人に追いかけられる旦那、「旦那に盗人が捕まえられる訳がない」と寝ようとする半次の目の前にクモ。「でたあ」の声を聞き、「もぐら小僧はどこだ」と役人が集まってしまう。
最後に娘が幸せになればと告げて別れる兵庫が、やたらかっこいい!これだけ三枚目でずっこけたあとの、この二枚目ぶり、たまらない。やたらもぐら小僧のことを聞こうとはしない、旦那の気持ちを察した半次兄さんもいい!(以上じゅうよっつ)
このエピソードの中で、兵庫は一度も刀を抜いていません。怪盗もぐら小僧に刀を盗まれてしまうからです。結局、火の見やぐらのてっぺんに隠されてあったのを兵庫自身が発見して、刀は無事に兵庫の手に戻ります。もぐら小僧と間違われた兵庫が、捕らえようと向かってくる役人たち2、3人を軽く素手であしらう程度の立ち回りしかありません。(キンちゃんさま 2003年3月7日)

リアルタイムで見たとき、殺陣シーンがないのと極悪人が登場しないのとで、コドモゴコロには面白くありませんでした。ところが、大人になった現在、四十年ぶりに見てみると、なんと面白いことか。これならベスト5に入るくらいです。殺陣がなくてもこんな面白い時代劇が作れるんですね。なんといっても兵庫と半次のコンビの絶妙度がマックスに達しているし、脇役のキャラも立ってるし(かつてシリアスな舞台で毛沢東の役を演じて絶賛された金井大さんの同心がバツグン)、ストーリーは面白いし、まさに頂点に達したかという感があります。それから、この頃の兵庫、わざと(?)オーバーなアクションもしています。たとえば、短筒を突きつけられたとき(「お酒に・・・」)や、怪盗と間違われて取り方に囲まれたとき(「磔柱が・・・」)など、両手をばたばたさせて「あ、危ないからよせっ」「違う違うお役人殿!」なんてとてもヒーローとは呼べないうろたえようです。けれどもこれを見て「なんだ兵庫って情けないな」てなふうには視聴者は見ないですよね。むしろピンチに立っても、余裕があるというふうに見えるくらいです。それは近衛が演じているからでしょう。我々は既にこの時点で、兵庫を、陽性の剣豪と認識しているからだと思います。(キンちゃんさま 2007年8月21日)
ラスト、御影京子に話す兵庫のセリフ、とってもいいですねぇ。納得、納得。これ以上の返事はないです。さわやかぁ。十四郎様が言うから、そのシーンが、また良いのかなぁ〜。(中村半次郎さま 2007年8月15日)

「父よあなたは弱かった」 (第二シリーズ 第36話) (2匹)

<キャスト> 三原葉子=芸者・照葉、本名・お艶 宮地晴子=”月さま”お付きの芸者 千葉敏郎=郷士の手下の浪人 加島こうじ 新宮寺寛 柳川清 畑中伶一 朝永桐子 
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 挿入歌=クラウン・レコード 「居酒屋小唄」 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 歌・品川隆二・北城弓子 撮影=柾木兵一 照明=林春海 録音=渡部章 美術=塚本隆治 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=荒堀実秋 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装飾=関西美工 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=林伸憲

<大筋>
襲われているところを助けられたお艶は半次にぞっこん、二人は所帯を持つ約束をするが、実はお艶は過去4人の亭主と一人の許嫁(+その子供たち5人)がいて、そのいずれもが短期間で不審な死に方をしていた。お艶には死に神がついていると言われていることを知り、尻込みする半次だが、死に神の正体は、お艶に片思いし振られ続けていた豪士で、思いを遂げるために亭主らを殺し、ついには、お艶をも殺そうとするのだった。
<あらすじ>
半次は、侍らに無理矢理連れ去られようとしている女を助けようとするが、おもいほか手こずり、そこに居合わせた兵庫の助けを借りる。その兵庫に「命の恩人」としての恩を着せられ、ちょうど賭場で大当たりした半次は、小料理屋に誘う。
ところがそこに現れた町一番の売れっこ芸者・照葉が、半次が助けた女・お艶で、お艶は、半次を見るなり、ぞっこんになった。
もちろん、半次もべろべろ、二人厠に行ったまま帰ってこないと、兵庫らが”心配して”のぞきに行くと、二人は幸せそうにもたれかかりあっている。
兵庫らが我先にとのぞき見したために外れた障子にも、「頭の上にも幸せがとまってる気がするよ」「あたしもそんな気持ちになってきたわ」と、気づかない様子。
翌朝、夕べ二人でじっくり話し合ったと言う半次は、いつもとは違う改まった口調で、これまでの礼を言い、兵庫に仲人を頼み、これから祝言をあげることになったという。
しかし、兵庫が髪床に言っている間に、一足先にお艶の家に向かった半次は、そこに出てきた5人の子供に仰天。しかも、お艶には過去4人の亭主があり、そのいずれもが結婚してまもなく死んでいったことから、お艶には死に神がついていると噂されていた。
すっかり尻込みした半次は、お艶のうちを飛び出し、旦那の元へ向かう。兵庫も既に髪床でその噂を聞いていた。
そこへ、子供の一人が、お艶が侍たちに殺されると助けを求めてくる。不承不承向かうと、それは逃げ出した半次を取り戻すためのお艶の狂言で、兵庫を前に、昨日半次が、お艶に事情を話す間も与えずに、「どうか」と手をついて夫婦になってくれと頼んだことなどあかす。「それは半の字が悪い、逃げ出すのはいかん」と半次の分は悪い。
しかしそこに今度は本物の侍たちが入ってきた。昨日の男たちだ。兵庫と半次が男たちを相手にしている時、一人の男が様子をうかがっていた。その男は、昨日も物陰から様子をうかがっていたのだ。
兵庫が手裏剣で逃げ道を奪い、お艶に目通しさせる。それは、お艶に思いを寄せて今までもお艶に恋文を渡しては拒否されていた郷士・赤江だった。
この男は、お艶の亭主となった男を次々、川にはめたり毒殺したりして何とかお艶を自分に向けようとしたが、お艶の気持ちがいっこうに変わらないため、ついにはお艶を殺そうとしていたのだ。
豪士もいなくなったあと、お艶は、半次に「お願いがあるんだけど」と寄る。戦々恐々の半次にお艶は、「勝手言ってすまないけど昨日の話はなかったことにしておくれ」「え?」「今はとても結婚する気になれない。これからどうして生きていくのがいいか考えてみたい」と半次に夫婦になることを断ってきた。ほっと救われた半次が踊り出す。「バカだなこいつ、踊ってるヤツがあるかよ」
<見どころ>
半次は、お艶にもてもて。料亭で再開した二人、「半さま、こちらは?」「月影の旦那と言ってな、こんなむさいのほっといていいんだよ」「こいつ好きなこといってやがるな」「そう。そう言えばこちらに比べて半さまの方がずっといなせで素敵。お艶は半さまのような方に助けていただいて良かった」二人はすぐに、屏風に隠れて熱々になる。旦那のからかいにも、二人はめげない。
厠に立ったまま帰ってこない二人を見に行こうと誘うお艶以外の芸者たち。のぞきはいかんと言いながら気になる兵庫が、厠を口実にちょうどあいていた障子の穴から覗いていると、そこに芸者たちがやってくる。「(芸者に引っ張られて)何するんだい」「おまえあっち言ってろ」というような会話がすべて、口ぱくとジェスチャーで行われる。そしてとうとう障子の穴の取り合いで障子が外れ、そそくさと皆して逃げるが、半次とお艶は「幸せがお祭り騒ぎしている」というまったく気づかない熱々ぶり。すっかり当てられて行こうとする兵庫の目の前にネコがいて大騒ぎしたため、のぞきが見つかる。(以上じゅうよっつ)
まさか、十四郎様まで「しあわせだなぁ〜」と小鼻をかいていたとは・・・。宮地晴子さん・・・「月さま」と兵庫を呼ぶ芸者さんですが、懐かしかったです。
半次兄さんが「半さま」と呼ばれるたびに、ドキッとしてしまいました。
次回の予告編のナレーターの「かわい子ちゃん」の言葉にも、そうそうそんな言葉もあったわねぇと、今日は当時の香りがいっぱいでした。(中村半次郎さま 2007年8月15日)


「身投げ娘が笑っていた」 (第二シリーズ 第37話)

ある街道筋を通りかかった半次は、町はずれの川でまさに身を投げようとしている娘おはまを助ける。
重い眼病におかされた父を助ける為の金に困り身を投げようとしていたという。これを聞いた半次は早速身ぐるみ脱いで三両の金を娘に渡した。人助けをしてご機嫌の半次、とある酒場で出会った兵庫に得意げに語る。
ところがそこへもう一人、身投げ娘を助けたという商人太助が入ってきて、半次は不審に思う。
太助と半次は連れだっておはまの家へ出かける。そこには確かに目の悪い五兵衛がふせっていた。
そこへおはまが息せき切って駆け込んできた。手には仏像一体、川でカモを待っていたおはまに侍に追われた旅僧が預けていったという。その仏像を見て、五兵衛の目が開いた。彼は身投げ娘の狂言で稼ぐしたたか者だった。
あっけにとられた半次と太助はあきらめて帰るが、その夜五兵衛が兵庫を訪ねてきた。(ひろちゃんさま 2002月2月21日)

「もてた筈だがひどかった」 (第二シリーズ 第38話) (←いれずみ)

<キャスト> 宮園純子=「月様」と呼ぶ美人の一人・お夏 加川淳子 鶴田桂子 小倉康子 高木二朗=お焼き芋の用心棒・大熊団右衛門(thanks トプ・ガバチョさま) 浜崎憲三 東光男 滝恵一 有島淳平 五十嵐義弘 乃木年雄 大東俊治 伝法三千雄 千葉保 新海なつ 梅井茂子 河合百合子 細野明子 
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=結束信二 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=柾木兵一 照明=林春海 録音=渡部章 美術=塚本隆治 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=荒堀実秋 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装飾=関西美工 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=林伸憲
<大筋>

兵庫がもてると半次がふくれ、旦那がふられると半次が喜び、半次がもてると旦那が面白くなく、またまた旦那がもてたかと思いきや、結局は最後まで、もてたつもりなだけで、ひどい目にあっていたというお話。
<あらすじ>
酒代を稼いで兵庫の待つ居酒屋に戻ってきた半次は、兵庫が、二人のかわい子ちゃんの用心棒となって出ていったことを知らされ、面白くない。そうはいってもきっと不細工な女に違いないと、後を追い旅籠に着くと、旅籠の主人に、思った通りの不細工な女二人連れの部屋に通され、喜ぶ。しかも、旦那は”お焼き芋”を買いにやらされていると知り、ちょっと驚きつつ旦那を待っていると、やくざらしい男たちが部屋に押し入ってくる。兵庫の相棒として一応、男たちを懲らしめることになった半次、相手をしている時に別の部屋に入り込んでしまうが、そこにいたのが、兵庫とかわい子ちゃん2人。先ほどのお多福女二人についていたのは兵庫ではなかった。兵庫の助けもあって、男たちは追い払ったが、当初の噂通り、やはり兵庫がべっぴんのお春とお夏に囲まれ、しかも「お兄さま」「月様」とちやほやされているのを見て、半次は再び面白くないことに。
しかし、兵庫たちが追い払った男たちは、やくざではなく、大店の大蔵屋が差し向けた男たちで、半次が兵庫の雇い主と間違えた女たちは女盗賊だった。女たちは大蔵屋の前で行き倒れのふりをして上がり込み、大蔵屋の金を盗んでいたのだ。
そしてその一味と思われた半次と兵庫も、役人に連れて行かれ、役人のご機嫌を損ねたりとったりしながら、牢屋で一晩を過ごす。
翌朝、ようやく無罪放免となって、お春、お夏の待つ旅籠へ戻った兵庫だが、女たちが別の用心棒(=昨夜、女盗賊に雇われていた浪人・大熊)を雇ってさっさと旅立ってしまったことを知り、今度は兵庫が面白くない。茶店で女たちは、楽しげに新しい用心棒を「おじさま」「おおさま」と呼び、もはや兵庫のことはどうでもいい感じ。すっかり頭に来た兵庫、浪人が食べていた安倍川まで気にくわなくて、近頃の若い娘は・・と憤慨。若い娘が足をくじいて困っている所に遭遇するが、介抱する半次を置いてさっさと先に行ってしまう。
ところがその先の宿場ではその日、宿屋はどこもふさがり部屋がなかった。兵庫が困っているところに、半次が先ほどの娘を背負って入ってくる。なんと娘はその旅籠の娘、半次は、座敷にとおされ娘から「お兄さま」と呼ばれてもてなしを受け、半次の口添えで兵庫は布団部屋に。
翌朝、おもてなしのために眠れなかった半次と、ノミと格闘して眠れなかった兵庫が、旅籠でつくってもらった弁当を広げる。と、半次の弁当は白飯に梅干し、兵庫のは卵焼きや照り焼きととりどり様々。兵庫が、やはり旅籠の主人は兵庫に気を使ったのだと喜びかけると、その弁当には娘が半次に宛てた手紙がついていた。なんのことはない、二人の弁当が入れ替わっていただけの話だった。
ますます面白くない兵庫、先の宿場で例のお春、お夏が、男たちに絡まれているが助ける気はない。雇われた用心棒は、ほんとは弱かった。「粋な旅人のお兄さん」とよばれて気持ちよくした半次が助け始めるが、かしらの鬼の権蔵が、「泣く子も黙るこの刺青をみろい」と片肌脱いで脅す。そこに刺青はない。「どこにあんだよ」「ここ、ここ」「ほくろじゃねえか」「よく見ろ」肌のしわに隠れた小さなクモの刺青が。ぎゃあと旦那に助けを求める半次、兵庫も、これでは助太刀せざるを得ない。
お夏とお春が御礼にと、居酒屋へ二人を連れて行く。「やっぱりお兄さまじゃなくちゃ」と再びもてる始めた兵庫は、悪い気はしない。
しかしそこに、2人の亭主と名乗る二人の男が現れる。2人は、亭主が商用から帰ってくるのが待ち遠しくて、来るなと言われていたのに、迎えに来ていたのだと分かり、すっかりしらける兵庫。
再び、二人っきりになった兵庫と半次が酒を酌み交わしていると、居酒屋のオヤジが二人に頼みがあるという。
若い娘が、一人旅は不用心なので、一緒に旅して欲しいと行っているのだそうだ。見ると、若いかわい子ちゃん。
しかし、兵庫が喜んだのもつかの間。娘の膝には、かわいい子猫が!わ〜っネコはいかん!と兵庫は走り去っていったのだった。
<見どころ>
べっぴんのお夏に、「私、月様とお呼びしようとおもいましたの」と言われ「なんだか雨が降りそうだな」と、草を傘に見立て、雨を見る仕草(「月様、雨が・・」のシーンだとおもう)が、様になったりする。
半次が旦那の後を追って行く途中、「強そうな男で、ウソかほんとか美人2人を連れている浪人を見かけなかったか?」とすれ違った侍に訊く。侍も、兵庫のもてようを目の当たりにしてが面白くなかったので、「美人?とんでもない、大変なお多福揃いだったな」「でしょうね。このあっしがもてないのに、あの旦那がもてるわけがないんだ」「当然だろ、あの浪人がもてるくらいならワシの方がもてていいはずだ」「ちげえねえ。近頃の娘はまったく人を見る目がないんでねえ」「同感、同感、それに必死にお世辞を使いおって、まるでともざむらいだな」半次はすっかり嬉しくなって、旦那の後を追う。それを見送った侍「言い過ぎたかなあ、まあ良かろう、ほんとはもててるんだから、あ〜あ、うらやましいな」そして旅籠に着くと、間違ってとおされた部屋の女盗賊二人を見て、やっぱりね、と嬉しい半次。
役人に捕まった兵庫は、早く娘の元に帰らねばと焦る。焦って役人に、どう見ても相手をした連中はやくざに見えたとさんざけなすと、それがその役人の従兄弟で、「しばらくはいっておれ」と、役人の機嫌をすっかり損なわす。旦那とは反対に、半次はのんびり構えて「すっかり心象をわるくしたねえ」「従兄弟同士だなんて俺の知ったことか」「そりゃ旦那の言うとおり」「迷惑だなあ、ちょっと調べればすむことをこうしてる間も、お春とお夏が・・」「ぐうぐう寝てんだろうね」「寝てなんかいるもんかよ、心配して俺の身を気遣って、胸を痛めているんだ。3人で楽しく遊ぶはずだったのに」「へえ、何して遊ぶの?おはじき?お手玉?よかったね。へへへ」そこに役人が再び来る。「おい旦那、とにかくご機嫌をとって」という半次の助言通りに、「いやあ只今は知らぬこととは申せ、全く申し訳ない」、ご立派、えらい、、心より敬服しますぞ、武士のかがみと、手を返した兵庫の態度。それが功を奏して釈放となるが、最後に名前を確認すると、「月影兵庫」が「兵五」となっていたことから、書き役にただすことになるが、書き役は嫁さんが産気づいていない。「惜しかったねえ、旦那」二人は牢屋で夜を明かすことになる。まんじりともせずに待っていると思って、足早に宿屋に戻ると、そこにはもうお春もお夏もいなかった。
他にも間違えた弁当のおかずについてのやりとりや(半次宛と知らずに読み始めた兵庫、だんだんとトーンが落ちてくる)、旅籠でもてなしを受けている半次を障子の向こうで立ち聞きするシーンなど、面白いシーンがいっぱい!
このごろの作品は、どれでもそうだけれど、脇役のかた方とお二人の絡み、脇役同士のシーンにもちょっと笑いをとるシーンなんかがあって、隅々まで楽しめる。ネコとクモの出方にも、ちゃんと意味がある。兵庫が半次と同じように(というより今回は、兵庫のほうが大いに)失敗し、喜び、又失敗する。見ている方は、それが嬉しい。(以上じゅうよっつ)
すこぶる面白い抱腹絶倒編だったので印象は強く残っているのに、なぜか題名が不明なのです。あらすじは、兵庫と半次が女性にモテモテになったり、それが勘違いだったり、というドタバタ編です。「もてたはずだがひどかった」というタイトルが、この内容に当てはまるかな、とも思ったりするのですが・・・。覚えてる場面は、兵庫が女性から「つきさま」と呼ばれるところ。ヤクザにからまれて、「つきさま、お刀を」「なあにこんな奴らをやっつけるのに刀なんか要らんよ」そしてコマ落とし撮影で5、6人をアッと言う間に片付けます。さらに、兵庫と半次が女性の作ってくれた弁当を野原で広げる場面。半次が先に弁当を開けると、中身は握り飯にタクアンのみ。「なんでえ旦那〜。わりとシブイんだな〜」苦笑いしながら兵庫も開けてみると、なんと兵庫のほうはふた重ねの重箱。「おおつ!はんのじ〜これを見ろ〜うおっほっほ〜卵焼き、貝の佃煮、俺の好きなものばっかりだ〜」「あれれれっ。これ、この〜奈良漬まではいってやがんの」(そう言って半次は奈良漬をパクッと一切れ口へ入れます)
ふと見ると重箱の下に手紙が。「手紙まで付けてくれてるのか。どれどれ」兵庫はゴキゲンで声に出して読み始めます。ところが、途中で声の調子が急に変わります。「おいっ、半の字、こりゃお前への手紙だ」半次は続きを読みます。そして二人の弁当が、あべこべだったことが判明します。たちまち形勢逆転。「フンッ。俺の嫌いなものばっかりダ」兵庫は半次から握り飯をふんだくってヤケクソでかぶりつきます。腹の皮がよじれるくらいの可笑しさでした。近衛さんとても楽しそうに演じているんですよ。
(キンちゃんさま 2003年4月11日
あかん・・勝たれへんわ・・無茶苦茶おもしろい 今のテレビドラマのどれをもってきてもあのなんとも言えない、絶妙なやりとり、そこここに入る小さな芝居の自然さに勝てるものはない、画面の隅々までたまらん面白い!本当に居たんじゃないのこの二人って思える。(のりりんさま 2007年8月23日)
大事件はなかったけれど、小事件がうまく使われていて、ストーリーがないような感じでちゃんとお話になっていて・・・・。
最後のほうの蜘蛛の登場の仕方、もう傑作、最高、しゃれていました。旦那の嫌いな猫の出方もいいけれど、いまいち蜘蛛の出方がひねりが利いているように思えます(中村半次郎さま 2007年8月23日)


「貴様と俺とはバカだった」 (第二シリーズ 第39話) 

<キャスト> 原健策=前田家目付・岡部主水、実は大泥棒の頭 山口朱実 高橋芙美子 丘路千 古閑達則 川谷拓三=前田家家臣、実は大泥棒の一味 平沢彰=修験者のリーダー格 北上弥太郎=殺し屋、実は幕府の隠し目付
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=柾木兵一 照明=林春海 録音=渡部章 美術=塚本隆治 編集=川上忠 記録=高木弘子 衣装=荒堀実秋 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装飾=関西美工 助監督=山村繁行 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=林伸憲

<大筋>
酔っぱらった兵庫と半次が寝に潜り込んだ先は、なんと前田家の本陣。首を斬られる代わりに、この一行をねらっている殺し屋を斬る条件をのむことに。
しかし、旅が進むに連れ、殺し屋はタダの殺し屋でなさそうだし、一行の様子もおかしいことに気づいてくる。
やがて、次の本陣についた時、殺し屋が再び現れるが、そのころには兵庫は、かごの中身が3日前に絹糸問屋から奪われた2万両であると察しがついていた。実は幕府の隠し目付だった殺し屋とともに、お国入りの一行に化けてまんまと2万両を運ぼうとしていた大泥棒の一味を退治する。
<あらすじ>
腕の立つ1人の浪人が、大勢の修験者に囲まれるのを目撃した日、兵庫と半次は、「ほどほどに」を合い言葉に飲んだ。
しかし、案の定、3日前の絹糸問屋で起こった2万両強奪事件のことなど話しながら酒は進み、兵庫は「ほどほどの酒ってヤツは足をとれらていけないな」と、眠りこんだ半次をつれて間近の宿屋に転げ込む。
しかし、朝起きてびっくり。宿屋と思ったそこは、越前少将前田家お綾の方様の本陣だったのだ。二人はこっそりその場を離れようとするが、クモが出て半次が大騒ぎしたため捕まってしまう。こうなっては打ち首も覚悟だったが、なぜか、前田家目付・岡部主水と年寄り・吉野は、お国入りするお綾の方の命をねらっている殺し屋を斬ることを条件に罪一等を減じると言う。
一行の供をすることになった二人は、しばらくして、後ろからつけてくる怪しい修験者の一団に気づく。昨日浪人を襲っていた修験者たちのようだ。しかし、目付・岡部が斬れと命令したのは、一行の行く先にいた一人の男、昨日の腕の立つ浪人だった。
兵庫の問いに、殺し屋は、たしかにかごの主には「大いに興味がある」と笑って答えるが、どう見ても悪人には見えない。目付との約束通り殺し屋と刀を交わすが、兵庫の刀が落ちたところで、殺し屋は、またの機会に勝負を預けると立ち去った。
兵庫はなんだかおかしな雰囲気に気づき出す。一行と、先ほどの修験者たちは顔見知りのようだし、お綾の方は、休憩の時さえもかごから出てこない、お女中にさえ姿を見せないのだそうだ。
そして、一行が次の本陣についたところに、再び殺し屋が現れる。
兵庫は、殺し屋に言う。「俺にはいろいろと分かってきたよ。」どうやら、殺し屋も兵庫と同じ、かごの中味が生糸問屋の強奪事件と関わり合いがあると考えていたようだ。「俺は興味のあることはこの目で確かめる男だ」兵庫がかごを開けると、そこにいたのはお綾の方ではなく千両箱だった。荷馬車の中身も千両箱だ。生糸問屋で2万両を強奪した泥棒が、お国御前の一行に化けてまんまと金を運ぼうとしていたのだ。
殺し屋は、実は幕府の隠し目付で、この一行を怪しいと疑っていたのだが、万が一本当の一行であった場合を考えて下手に近寄れず、騒ぎに乗じてかごを開け証拠をつかもうと、わざと、兵庫との勝負をこの場に持ち込んだのだった。
無事泥棒たちを退治し、隠し目付が兵庫に礼を言う。「おまえさん、さっきは勝ちを譲ってくれてすまなかったな」「え?じゃあ旦那あのとき刀落としたの、あれ芝居だったのか」「はじめっからただの殺し屋とは思わなかったが、あんたが目付役とは知らなかったよ」「しかし旦那、たまげたねえ、まんまと俺たちをだましやがってよ」「まあ言うなれば、貴様と俺とはバカだったっていうわけだ」「ちげえねえ」
<見どころ>
本陣からこっそり逃げ出そうとすると、期待通りにクモが現れ大騒ぎして二人は捕まる。そして入れられた蔵で、「夜中に本陣に紛れ込むなんて、旦那の巻き添えだ、俺はかわいそうな男だ」「おまえだって覚えがなくなるまで酒を食らったんじゃないか」「その酒食らおうと言いだしたのは旦那じゃないか何十本も銚子並べやがって、悪いのは旦那だ」「その何十本の銚子を生意気に一緒になって飲んだりしたからおめえはへべれけになったんだ。迷惑なのは俺だ」と堂々巡りの言い合いが始まるが、ふと兵庫が緊張する。「待て半の字。えれえもんが飛び込んできやがるぞ、こりゃ」にゃ〜んとネコの声「おお、いい勘してやがんな」「半の字、何とかしろ。俺は縛られてんだぞ」どこから現れるか戦々恐々の兵庫と、どちらかというと面白がっている半次。そして・・
背中合わせに繩で縛られている兵庫と半次のそばにネコが・・・悲鳴を上げて暴れる兵庫、痛いと怒る半次・・・(久米仙人さま 2003年2月26日 じゅうよっつ加筆)
北上弥太郎の剣の腕を目の当たりにした兵庫、「直心影流、見事だ」とうなります。半次は例によって「旦那とどっちが強い?」と単細胞的な質問をするのですが、それを兵庫はさらりと受け流します。ここが兵庫のすごいところです。兵庫は(たぶん大吉も)、こと剣に関しては絶対に冗談のタネにしません。「ふぁっはっはっは、決まっとろうが、この俺に勝る剣の腕を持った侍なんか唐天竺まで探してもいねぇよ」などというジョークを言ったら剣豪失格です。女性に関しては、たとえば「もてた筈だが・・・」や「やぶれかぶれで・・・」では盛んに冗談めかしてブチあげていました。自分がいかに女性にもてるかということを憎々しい口調で半次に聞かせて怒らせたりしています。しかし、これは「冗談」であることがわかるような口ぶりで、確信犯的です。けれども、兵庫はたとえ冗談でも、「自分の剣がすごい」ということを絶対に口に出さないのです。いや、事実、兵庫は自分の剣が最高とは思っていないのです、ここに私は兵庫の、武士としての慎み深さを見てとるのです。十剣無統流の達人でありながら、なお天狗にはならず、おごらず、謙虚である。最高ですね。「タカがトンビを・・・」でも同じような場面がありました。月形龍之介に対して「俺など足元にも及ばん」とまで言っています。強さだけが侍を表現するものではない。兵庫のように、おごり高ぶらず、謙虚でつつましいのも侍なのだ。てなことを教えてくれた「月影兵庫」でした。
それにしても、北上弥太郎さんとの殺陣は迫力ありましたね。北上さんって、イメージとしては、なよなよっとした優男だっかのですが(事実そんな役が多かった)、ひげなんかはやして無頼っぽく演じておられました。やっぱり俳優さんて、どんな役でも演じられるんですね。殺陣がスローモーションだったのは、ひょっとして北上さんの殺陣の下手さをカヴァーするためだったのかな?(キンちゃんさま 2009年6月7日)
兵庫は、本陣に連れてきたのは自分だ、半次は助けてくれと目付役の岡部に頭を下げる。しかしもちろん半次も、死ぬなら一緒だと譲らない。
殺し屋こと幕府の目付と1対1で戦うシーンは、さすがの迫力!しゅっと水平方向に刀を前に切る姿には思わずかっこい〜い!
最後の泥棒をやっつける殺陣のシーンでも、さえてる〜!
遠景の殺陣までちゃんとこのちゃんがやっているところが、大吉の時と違ってお元気な証拠ですね〜!


「おヘソが苦労の種だった」(第二シリーズ 第40話) 

<キャスト> 永井柳太郎能書きが多い(1万石を拝領する殿に仕える)寄合用人・青江若三郎(thanks トプ・ガバチョさま) 中村是好=自称名医の榊原順庵 大川栄子=青江の娘・郁乃or幾乃 島村昌子=へその緒の小箱を持ち去ったお香 阿波地大輔吉沢一派に雇われた浪人のリーダー・松田 脇中昭夫(→堀田真三)=源之進を斬って小箱を奪った浪人 大月正太郎=元持源之進(もともちげんのしん)。吉沢一派(演:脇中昭夫)に斬られ、半次に遺言を託し果てた 小島慶子=消去法で居酒屋の仲居(?) 志茂山高也=半助が来てるとお香を呼びに来た賭場の男 島田秀雄(NC)=松田が登場した時、一緒にいた浪人 北川俊夫(NC)=松田が登場した時、一緒にいた浪人 不明男40−1(NC)=青江を背負って順庵の元へ運んだ男 不明男40−2(NC)=居酒屋のおやじ 不明男40−3(NC)=世継ぎを毒殺せんとした、「青江が仕える藩」の家老・吉沢 白川浩三郎(→白川浩二郎)(NC)=吉沢と共に現れた吉沢配下の家臣 不明男40−4(NC)=吉沢と共に現れた吉沢配下の家臣
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=羽田辰治 照明=林春海 録音=渡部章 美術=塚本隆治 編集=川上忠 記録=森村幸子 衣装=荒堀実秋 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=関西美工 助監督=尾田耕太郎 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=荒井岱志
<大筋>
さる1万石で起こった相続争いで、養子をたてる家老一派の刃から生まれたばかりの実子を守るため、別々にへその緒を同士の元へ届ける老侍、若侍、娘。そのうち2つはおとりの偽物。兵庫と半次はひょんなことからこのへその緒に関わることになり、へその緒を守る。
<あらすじ>
浪人たちに斬られ、懐から何かを盗られようとしている老侍・青江若三郎を助けた兵庫は、「名医」と自分を売り込む医者に連れ込むが、その医者がテンでダメで、代わりに治療し、青江に丸目宿まで小箱を届けてくれるように頼まれる。
一方半次も、同じようなガラの悪い浪人にたちに襲われている若い侍(元餅伝之進)を目撃、侍は斬られたうえになにやら胸元から包みを奪われ、半次が抱き起こした時には「青江殿、役目は果たしましたぞ」と言い事切れた。
兵庫と半次の二人は居酒屋でであって、兵庫の預かった小箱を前に、それぞれが経験した出来事を話すが、どうも、この2つは関連がありそうだ。と、居酒屋の前を杖をつきながら、さきほど治療したばかりの青江が歩いていこうとしている。兵庫は大けがをしている青江を止めるが、元餅が切られたことを聞き、自分が小箱を丸目宿へ持っていくので返してくれと言う。なにやらよほど大事な小箱のようなので、兵庫は老人に小箱を返すことにするが、懐にない。「半の字、小箱はどこだ?」「ああ、置いてきた」しかし、居酒屋にもない。老侍はあわてる。「今奪われては早すぎるのじゃ」
もし先ほどの浪人たちが持っていったのなら気づくはずだが、そんな男たちは通っていない、そう言えば、二人の横に座ってこちらを気にしていた女・お香がいない。二人はお香を探しだし問いつめ、兵庫の持っている小箱を摺るようにお香に頼んたのだという松田という浪人の住まいに向かう。しかし浪人はおらず、元餅と青江の持っていた2つの小箱が開けられて放ってあった。あれほど執拗に浪人たちが追っていた筈の、その中に入っていた、へその緒も一緒に。
兵庫にはぴんと来るものがあった。元餅の最後の言葉、青江の「奪われるのが早すぎる」という言葉から、おそらく、二人ともおとりとして、このヘソの緒をもって丸目宿へ行く使命を受けていたのだろう。そうすると、本命のへその緒を持っている者がいるに違いない。
そこに、あの同じ浪人たちが、若い娘を襲っている場面にでくわす。娘は先刻、兵庫が医者に連れ込む青江を心配そうに見ていた。兵庫が声をかけると避けるように行ってしまった娘だ。浪人らを追っ払って、兵庫は、娘が持っていると推測し本物のへその緒の入った小箱の無事を聞こうとするが、しかし娘は知らぬ存ぜぬで、立ち去る。しかし、小箱は、しっかりと半次の懐の中、半次に倒れかかった振りをして、半次の懐に小箱を入れたのだ。もはや自分では丸目宿まで持ち込めまいと悟った娘は、自分はおとりとなり、浪人たちに気づかれないように二人に小箱を託したのだった。
今度こそ、小箱の謂われを聞かなくてはと、二人は青江の元へ行く。
「俺たちは話さえ分かれば一肌も二肌も脱ぐ」と言う言葉を信じ、青江は話し出す。
小箱は、分家1万石の殿様にやっと生まれた男の子のへその緒だった。殿様は子供に恵まれず、万が一跡取りが生まれない場合はと言う条件で養子をもらっていたのだが、男の子が生まれ、殿様はその後すぐに死去したため、養子を跡目にたてようとする家老の吉沢がその子を毒殺しようとした。そのため、世継ぎを隠し、殿直筆のへその緒書きの入ったへその緒を誕生の証拠として、同士の元・丸目宿へ届け、さらに本家に願い出ようとしたのだ。
「これを丸目宿へお届けくだされ」と頼む老侍。
しかし、その必要はなかった。もう吉沢一派と、その雇われ浪人たちが娘を人質に、ここまで来ていた・・・・。
礼を言う老侍と娘。「ご老体、あんたにそう頭を下げられるとヘソがむずがゆくなってくるよ」「旦那、なんだか俺もヘソがむずがゆくなってきたよ」
<見どころ>
兵庫が青江を連れて行った医者は、「ワシは榊原順庵というて近在では聞こえた名医でしてな」と売り出すのはいいが、致命傷ではないのに、傷を診るやいなや「これはひどい、腕が切れているではないか。」と当たり前のことに尻込みし、「もはや薬石効なくご永眠願うより道はない」とすぐにさじを投げる。「あんた何を言ってるんだよ、名医なんだろ」「それはたしかに名医じゃ。子供の引きつけ、胃痛の手当など天下一品じゃが、このような外傷は苦手中の苦手じゃよ」とのたまう。そして、焼酎で消毒し順庵に代わって手当をする兵庫をみて、「あんたうまいもんじゃな。つかぬ事を伺うが、あんたご同業かな?以前どこかの藩で藩医でも?」「ああ、俺は月影兵庵と言ってな、以前は名医と騒がれたもんだよ」「月影兵庵、う〜ん、たしかに聞いたことがある」「あんた調子のいい名医だな」「調子のほうは天下一品での」兵庫は笑うしかない。
殺陣がスピーディ!居酒屋の狭い中で、ぶつからずに素早く何人もの敵を相手に立ち回る。もちろん、外に出てからはもっとアクションのある殺陣に。
どんなにスピーディーでも、刀の重さがしっかり出せるのは、このちゃんの特許かも。(誰にもまねできない)(以上じゅうよっつ)
神社の境内かどこかで、阿波地大輔さんに襲われた娘を半次が助ける場面。刀を振り回して度胸剣法で奮戦する半次。「野郎、やりゃがったな!」という半次のアップ。と、はるか遠くの方を、スカート姿の女性が歩いているのが映り込んじゃってます。(キンちゃんさま 2007年9月10日)


「女房の尻に敷かれていた」 (第二シリーズ 第42話) 

<キャスト> 河上一夫お勝の気の弱い亭主・藤助 関山耕司=白石藩13万石の御用を任されている新田一家の親分 汐路章新田一家の元女衒で、おさきの亭主・金六 岡田千代金六から逃げ出した女房・おさき 結城哲也(→ゆうき哲也)=藤助を捕えた新田一家の子分 鈴木金哉(→鈴木康弘)=新田一家の用心棒  藤本秀夫=新田一家とグルの宿役人 丸平峰子(→丸平峯子)=居酒屋ひさごの酌女3人のひとり、最後に猫を抱いてきた 林三恵=居酒屋ひさごの酌女3人衆のひとり、半次の盃を茶碗に取り換えた 星野美智子=居酒屋ひさごの酌女3人衆のひとり恐らく星野美恵子の誤植 桜町弘子=居酒屋ひさごの女将・お勝 高並功(NC)=白石の城下で半次が「離婚」について尋ねた3組めの侍 加藤匡志(NC)=藤助を捕えた新田一家の子分 江上正伍(NC)=藤助を捕えた新田一家の子分 藤長照夫(NC)=新田一家の子分
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=松村正温 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=玉木照芳 照明=林春海 録音=渡部章 美術=塚本隆治 編集=島村智之 記録=亀倉正子 衣装=荒堀実秋 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装飾=道畑真二 助監督=古市真也 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登
<大筋>

白石城下のある宿場では、離婚は相成らぬとの殿様からのお達しが出ていた。
その宿場で、女房の稼ぎで博打を打つ女衒あがりの亭主・金六から逃げ出した女・おさきと、女房・お勝の尻に敷かれて逃げられず死のうとする男・藤助を二人が助けたことから、このおきての真相をあばき、宿場で女房を食い物にしている新田一家を懲らしめる。
<あらすじ>
白石藩では、殿様が見た夢のお告げのために、離婚は御法度だった。
その街道で兵庫が助けたのは、おさきと言う女。稼ぎを巻き上げるやくざな亭主・金六から逃れようとするおさきは、十手を預かる新田一家に捕らえられるところだった。
同じ頃、半次は、川辺で今にも身を投げようとしている気の弱そうな男・藤助を助ける。女房が怖くてしょうがないが、逃げ出すこともできず、新しくできたおきてのために、もはや別れることもできないので、身投げを思い立ったという藤助に、自分が意見してやると息巻いて、その女房・お勝が経営する居酒屋・ひさごに向かう。
しかし、お勝はおらず、いたのは、飲んべえの酌女ばかり。藤助は酌女にまでこき使われている。おまけにクモまで出てきて居酒屋を逃げ出したところで、兵庫と出会う。兵庫は、助けたおさきが働いていた居酒屋ひさごに、女将に会うべく向かう途中だったのだ。
「クモのことが気がかりだが、まあいいや、出たら出たで、でけえ声だして旦那に頼むか、な(カメラ目線)」と半次もひさごへ戻る。
亭主の藤助の言い分に反して、女将のお勝は、亭主に何とかしっかりしてもらおうと、ついきつい言葉の一つも出てくるらしいが、しっかり者のいい女将だった。おさきにも同情的で、離婚はならぬと言う無謀なおきてを何とかしようとする兵庫と半次にも協力的。新田一家の男たちは皆、女房を食い物にしているとのだそうだ。
そこに、新田一家とおさきの亭主・金六が、おさきを隠したのはお勝に違いないと押し掛けてきた。兵庫がいたためにあえなく追い払われたが、それであきらめるはずはない。今度は金六が、まだ女房と別れたいとぐだぐだ言っている亭主の藤助を呼び出し、気の弱さにに目をつけ、女房から逃げられるように新田の親分に目こぼしを頼んでやったと、強引に去り状を書かせる。しかし、もちろんそれは罠。藤助は新田に捕まり、店に連れ戻され、亭主ははりつけだとお勝を脅す。
女房のお勝は、先刻追い払われた腹いせに来たのだと新田の意図を見抜き、いくら欲しいと取引を持ち込む。新田にこの店だと言われ、意を決して好きにしてくれとお勝。
それを聞いた藤助は、ようやく、お勝がしてきたことはすべて自分のためだったのだと分かる。
そこに酌女の一人から助けを求められてやって来た兵庫が、金六の顔に刀を突きつける。
そのころ、半次は城下で聞き込みをしていた。このおきては、女房を食い物にする新田が、役人とグルになって考えだしたものではないかという兵庫の推理の裏を取っていたのだ。そして、グルの役人を見つけだし戻ってくるが、そのときにはもう、兵庫が新田一家を片づけていた。
「旦那、俺の留守の間に片づけちまったのかよ、俺を差し置いてなんてことすんだよ。」
もはや、お勝の気持ちを知った藤助も、仲良く酒の用意をしている。そこにおさきも戻ってくる。
機嫌良く酒を飲んでいると、さらにネコを拾ってきた酌女も。「半の字、おい、おい」「こっちこい、こっちこい」
<見どころ>
居酒屋で半次と、まだ女房と別れたいとぐだぐだ言っている藤助の会話。「女房が怖い怖いと言うが、あの女房のいってえどこが怖いんだ」「そんなこと言ったって、そらちょっと説明できかねますよ。親分さんだってクモが怖いと仰いますが、いったいクモのどこが怖いんです?」「いや、あのねえ・・」「あたしゃクモなんかちっとも怖くありません。だからあたしが女房を・・」と、やりこめられそうに。「女房とクモと一緒にするヤツがあるか」と、やっとやり返す。
聞き込みに走る半次と相手のセリフはすべて口ぱく、セリフを想像してしまう。
最後の新田の用心棒との対決は、刀と刀をぶつけたまま力の戦いになり劣性、やられそうな気配に迫力がある。
(以上じゅうよっつ)
居酒屋の中での兵庫の殺陣シーンで、関山耕司が鈴木金哉を誤って刺してしまうのですが、そのとき勢いあまって竹光がグニャリ。NG出なかったのですね。「燃えよ剣」でも亀石征一郎さんがこれと似たことやってました。(キンちゃんさま 2007年9月10日)


「空前絶後の敵だった」 (第二シリーズ 第43話) (化けネコ人形の頭)

<キャスト> 大村文武殿のお部屋様が居る深山御殿の留守居役、青木兵助(ひょうすけ 橘ますみ青木兵助の妹  朝海千景=お部屋様 桜田千枝子=眠り薬入りの酒を出した腰元 毛利菊江お部屋様お付きの老女・楓 川浪公次郎(NC)=お家乗っ取りをたくらむ一派の、最初に兵庫に斬りかかった藩士 江上正伍(NC)=お家乗っ取りをたくらむ一派の、半次に酒を吹きかけられた藩士
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=結束信二 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=羽田辰治 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=塚本隆治 編集=島村智之 記録=高木弘子 衣装=荒堀実秋 美粧=上田光治 結髪=森井春江 装飾=道畑真二 助監督=尾田耕太郎 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=荒井岱志

<大筋>
10年前江戸の道場で兄弟子だった兵庫は、今はこの国でお部屋様の屋敷を預かる青木兵助を訪ねる。兵助は、屋敷で起こる妖怪騒ぎに悩んでいた。気の迷いだと、その夜の番をかって出る兵庫だが、その妖怪が化けネコとしり、とたんに尻込み。しかし、化けネコの正体が、跡継ぎ争いにからむ一派がお部屋様を苦しめるための仕業とわかり、元気を取り戻し、眠り薬で眠らされていた半次ととともに、悪者退治する。
<あらすじ>
とあるお城に仕える忠義な侍、青木兵助(大村文武)は、近頃城内に夜な夜な「もののけ」が出没するという噂が飛び交っていることを憂慮します。このままでは、お家騒動にまで発展しかねません。そんな折に、偶然、町で兵庫と再会します。兵庫とは江戸時代の兄弟弟子なのです。兵助の悩みを聞いた兵庫は、もののけ退治を引き受けてしまいます。話はトントン拍子で進み、早速お城の中にある、もののけが出るといわれている屋敷に泊まり込むことになりました。そこで兵庫は、もののけというのが、化け猫であることを初めて聞かされます。今さら引っ込みがつかなくなった兵庫は、腹をくくって決死の覚悟で化け猫に挑みます。夜、兵庫がガタガタ震えながら、必死で化け猫の恐怖と闘う一人芝居の場面は大いに笑えます。「く、来るなら来いッてんだ」「な、なんだ、ネコの一匹や二匹」などとブツブツ独り言を言いながら、誰もいない室内で、空手の型(?)をしたり、体操をやったり。
しかし、兵助の妹が差し入れを持って屋敷に入ったとき、屋敷裏にいつになく大勢の侍がいたという話を聞き、兵庫はははんとくる。「化け物の正体がみせてやれそうだ」と、妹をそっと帰し、兵助を呼ぶ。
兵庫がお付きの老女・楓の部屋へ行くとそこはもぬけの殻。寝た形跡もない。そして、さらに奥の部屋では、お部屋様が死んだネコと女中の夢を見てうなされている。布団の上には、鉛の入った着物が掛かり、これは明らかに、老女がかけたものだった。「こんなもの胸の上におかれては誰だってうなされる」お部屋様は老女から、自分の可愛がっていたネコが井戸に入り、それを救おうと飛び込んだ女中共々死んでしまったのだと聞かされていたのだ。
宿直室に戻り半次をおこした時、部屋の外に気配を感じる。ようやく起きた半次「化け物は出たか?」「今大勢来るよ」「ネコの化け物なんか怖いもんか、見て見ろ、これが化け物だ」外にはお家乗っ取りをたくらむ一派が兵庫たちを囲んでいた。
もののけは、この一派が流したデマで、家中を混乱させるためのものだったのです。化け猫の正体は大きなかぶりものでした。正体さえ分かれば怖いものなしの兵庫、例によって、悪人どもを斬りまくり、エンドとなります。ラストで、兵助の妹とお部屋様が「こんなのをかぶって、化け猫のふりをしていたんですって」といいながら、大きな怪猫の着ぐるみ(頭の部分)をかぶっておどけるシーンがあります。
そのかぶり物のネコを見てあわてて逃げ出す兵庫。
このエピソード、半次は出ていたはずですが、ほとんど記憶にないですねえ。すみません。(キンちゃんさま2003年4月5日、じゅうよっつ加筆)
<見どころ>
妖怪が化けネコと聞いて、落ち着かなくなる兵庫、半次に当たったり、そわそわしたり。
「旦那、知ってる?鍋島のネコ騒動」「しらん、しらん」「「絵双紙で見たんだけどよ、すげえなあ、夜中に女があんどんの油をなめるんだよな」「の、の、のどが乾いてたんだろ、きっと」「ネコって油好きなんだな」「しらん、しらん」「化けネコが敵とはえらいことになってきたぞ」
半次が席を立った間にネコの声。「気のせいだ。しかし、相手はネコだ、しかも化けるって言う、まさに一世一代の強敵だ、むむむ・・」と体操をする。
半次が、屋敷で出された眠り薬の入った酒を飲んで眠ってしまったのを見て、「兄さん、寝るなよ!・・・まったく・・意外とと大胆不敵だな、こうなったら俺もちょっと反省の必要があるぞ、こりゃあ」と、今度は空手の練習。ネコが相手なので落ち着かず、普段なら気づくはずの眠り薬に気づかない兵庫、でも、その酒を飲もうとすると、何か気配がしたりで、飲まずにすむ。気配は差し入れを持ってきた兵助の妹だったのだが、その際寝ている半次兄さんにけつまずいしまったり、反省したり。
兵庫の昔の話も聞ける。
兵助が兵庫を接待して昔のことを話す。「剣術だけでなく酒のほうの指導も厳しかったですなあ。道場の老先生はほとんど寝たっきり。だから師範代筆頭だった月影さんが一喝すると何百人もの門弟が震え上がったもんですよ」「へえ、旦那もそのころはてえしたもんだったんだな」「その代わり稽古がすむとみんなをいろんなところへ連れて行ってくださいましてね、楽しかったですよ、いい先輩でした」「兄上は月影様からお小遣いまでいただいたそうで」
宿直室で「化けネコなど怖くない」と半次に強がりながら兵庫が話す。「おれが十剣無刀流の筆頭師範代の部屋はもっとりっぱだったぞ」「師範代の筆頭だぞ。俺のしたに師範代が15人いたんだ。そのしたに師範代の助手が十何人もいたんだ、そのしたに並の門弟が百何人もいたんだぞ、それが4段階に分かれていてな、一番上を目録と言ってな、普通のヤツは入門してから目録取るのに10年もかかったんだぞ。目録とらねえうちは、俺の稽古をつけてやらないことになっていたんだ」「えらかったんだね、旦那」「ああ、まあな」とちょっとお茶目な目になる兵庫。
ちなみに、ガキの頃「小笠原流・・じゃなかったな・・池坊でも・・、ああ、思い出した金太郎流!」の隣にいた浪人にやっとうを習ったというのは半次の弁。(以上 じゅうよっつ)

面白すぎ!!兵庫だけが妖怪変化が何であるかを知らないまま、まるまるBパートラストまで引っ張るなんて凄いっす。それまでの間は兵庫の態度がいつも以上に剛胆なだけに、見ているこちらも、いつ化けネコが相手だと知ることになるんだろう?という期待が加わってドキワク状態で、より話を楽しめたように思います。それにしても兵庫の、化けネコに怯えきっている時と、お部屋さまを安心させようと優しく言葉がけしているときの落ち着いた態度の落差は凄いっすよね。ていうか前者はらぶり〜で、後者はめちゃめちゃ格好いい!!(^_^)しかもラストはネコオチなのかと思ったら、さらにも1つオチがあったんですね。いゃあ本当に楽しかったです。(南まさとさま 2009年6月28日)
なかなか面白かったし、兵庫の魅力たっぷりでした。ただ、あの最後の猫のかぶり物は怖い!私が兵庫でも逃げ出します。あんなのを持ってにこにこしている兵助の妹が信じられな〜い。それと・・・・あのかぶり物を見て、お咲ちゃんのぬいぐるみを思い出したのは私だけでしょうか?あのかぶり物、ぬいぐるみの素材っぽかったですよね・・。やっぱり江戸時代としては違和感が・・。(鈴雪さま 2009年7月3日)
<コメント>
この回の予告編から、音楽、写真が変わる。(詳細はこちらへ)



「かけた情けが仇だった」 (第二シリーズ 第44話) 

<キャスト> 伊沢一郎=代官・信夫雪之進 八代真矢子 尾上鯉之助=諸口陣九郎 小田部通麿=兵庫に殴られて歯が三本欠けた雲助 林彰太郎=浪人・的場 寺下貞信 大滝瑛子 石丸勝也 西山清孝 若水淳 平沢彰(NC)=最初に的場ら浪人が代官所に来たときに左にいた浪人
<スタッフ> 原作=南條範夫(東京文芸社刊) 脚本=森田新 主題歌=唄・北島三郎 作詞・結束信二 作曲・阿部皓也 クラウン・レコード 音楽=阿部皓也 撮影=玉木照芳 照明=松井薫 録音=渡部章 美術=塚本隆治 編集=島村智之 記録=亀倉正子 衣装=荒堀実秋 美粧=林三郎 結髪=森井春江 装飾=甲田豊 助監督=福井司 擬斗=谷明憲・土井淳之祐・東映剣会 進行主任=中久保昇三 現像=東洋現像所 制作=NET・東映京都テレビプロ プロデューサー=上月信二・宮川輝水 監督=小野登

<大筋>
兵庫は道ばたで病に苦しんでいた女・雪乃を助けるが、雪乃は、兵庫を、7日前に太郎宿の代官に手紙を届けに家を出た夫・吉岡彦三郎だと思いこみ、頼まれた残りの金15両を渡し、事切れる。しかし、肝心の彦三郎は行方知らず、太郎宿の代官・信夫雪之進はそれについて言葉を濁す。
兵庫と半次は、何かあると調べ始めるが、代官にまとわりつく浪人・的場ら、公金横領でつい最近代官所を首になった侍・諸藤と、怪しい面々が浮かび上がる。
<あらすじ>
兵庫が街道を歩いていると、女が苦しんでいる。しかしこれは、修行中のスリの女、逆に、兵庫が素寒貧なのをぷんぷん怒って去っていった。
しばらくすると又、兵庫の目の前に、苦しんでいる女・雪乃が現れる。又か、と通り過ぎようとするが、今度は本物らしい。凄い熱なのにどうしても太郎宿まで行って夫に会わなければならないと言うので、かごを雇い、夫の待つ旅籠まで同行することに。
しかし、夫・吉岡彦三郎は昨夕から宿におらず、雪乃は、病の熱で兵庫を夫と思いこみ、彦三郎が7日前に家老の手紙をもって太郎宿の代官所へ向かったこと、その後、彦三郎が30両送るように飛脚をよこしたが15両しか都合がつかなかったこと、家財を売り払って残りの15両を作り、病身を押して夫の元にその15両を届けに来たことを話し、兵庫に金を渡すと事切れる。
太郎宿の代官・信夫雪之進の話では、彦三郎の行方はつかめてないらしく、二人は、自分たちで彦三郎を捜すことにする。半次は、彦三郎は商売女を身請けするために30両送れと言ったに違いないと”げすの勘ぐり”をするが、どうやら、違った。雪乃を乗せたかご屋仲間の情報に従い宿場はずれの辻堂に行くと、そこには、彦三郎の斬殺死体があり15両もなくなっていた。
兵庫には彦三郎が手紙を渡して使命を果たしたはずなのにその後3日もこの宿場に滞在していたことが解せない。しかし、代官の信夫に彦三郎の死を伝えに行っても、代官は、詳しくを話したがらない。30両の話もしらないと通す。帰り際兵庫は、代官に面会を求めてきた的場というたちの悪そうな浪人らに出会い、彼らが夜、代官と会う約束を取り付けたのを聞く。
一方半次は、おととい、彦三郎と食事をした諸口陣九郎という侍がいて、しかもこの男が公金の使い込みで代官所を辞めたことを突き止め、兵庫を誘い諸口を調べに行く。しかし、諸口は、失態を起こしたために親友の彦三郎の葬式にも出られないと泣いている。それを見た半次は、諸口は自分の首をかけても絶対犯人じゃなかった、と反省するが、実はそうでもなかった。居酒屋へ行くと、あの浪人たちが飲んでいる。そこに、修行中の女スリが諸口に追いかけられて逃げてきて兵庫に助けを求める。女は、諸口から財布を摺ったものの、観念してそれを返したのに、諸口は執拗に追いかけて女を斬ろうとしたのだ。しかも女の話で、財布には手紙しか入っていなかったと知り、諸口が居酒屋の浪人たちを顔見知っていたことをあわせると、おぼろげに事件の全容が見えて来る。
夜、兵庫と半次は、代官所の庭で、再び代官を訪ねてきた浪人らと諸口の会話を聞いていた。
彦三郎は、家老から預かった手紙を落とし、落とした手紙を拾った浪人たちは、彦三郎をにそれを30両で買わせようとしたのだが、15両しか用意できず、無理を通そうとして彦三郎は斬られたのだった。そして今度は諸口と浪人たちは、代官にそれを買わせようと来ていたのだ。代官が、諸藤の公金使い込みにもっと厳しい処分をしているか、彦三郎が無くした手紙を金で取り戻そうとしたことを黙認しなければこんなことは起こらなかった、すべては代官の温情が裏目に出たというわけだ。
代官は情をかけたことが却って吉岡夫妻の命を奪ったことを反省し、今回のことをすべて家老に報告すると約束する。
「旦那、話はみんなついたか?」「ああ片づいた、あとはおめえの首をもらうことだけだ」と兵庫は刀を半分抜く。「それは勘弁してくんなよ」
<見どころ>
かご賃を、ちょうど行った先の宿屋に泊まっていた半次に払えと言う兵庫。「払ってやれって、俺、駕籠なんかのってないよ」「ばかだなあ。乗った女が苦しんでるんだぞ、気の毒だとおもわんのかよ」「そりゃあ気の毒だけどよ」「だったら文句言わずに払ってやれよ」「しかし俺なんの関係もないんだぞ、旦那が払ってやればいいじゃないか」「おめえ俺に対して良くもそんなことが言えるな。俺が数々のはた迷惑を目をつぶってものすごおく無理してつきあってやってるって言うのに、まだ俺が崇高な精神の持ち主で、はしたねえ金を一銭も身につけん男だと言うことがわからんのかな、まったく頭の悪い男だなあおめえは」「ちぇっ。何が崇高な精神の持ち主だ。結局は素寒貧だってことじゃねえか」結局は半次が払うことに。
(以上 じゅうよっつ)
話自体は結構シリアスなんですよね。ラストで代官に意見するところは流石の貫禄なのに、半次との会話は相変わらずでいいですね〜。亡くなった吉岡夫妻は本当に気の毒だったけど、少なくとも雪乃さんは、夫が来てくれたと信じて逝ったので幸せだったんじゃないでしょうか。それにしても、いくら熱に浮かされているとはいえ、兵庫を夫と見間違えるということは、さぞかし本物の夫も男前だったんでしょうね(笑)(南まさとさま 2009年6月28日)
<コメント>
今回から、OPのシーンが夜の宿場のチャンバラに、CM前後の音楽と写真が変わった。
今回からスタッフに”現像”が加わった。


「宿場の鬼はなぜ泣いた」 (第二シリーズ 第45話)

この作品はわたくし的にちょっとホロリとなったエピソードであります。開巻「音楽の111番」とともに、木場を背景にしてサブタイトルが出ます。舞台となるのは、やくざが支配する海辺の宿場町。牛耳っているのは、なんと女親分。これが藤純子さんみたいな女侠客かと思いきや、ものすごい女傑。女だてらに(女性差別的な言い回しですみません。ほかに言葉がみつからなくて)大勢の子分を束ね、男どもをあごでこき使う男勝りの女性です(演じている女優さんは、見慣れない方です)。「宿場の鬼」と恐れられているわけです。しかし、この女親分は、本当は人情家で、親分(夫ですな)なきあと、よそ者からこの宿場を守っているのです。鬼と呼ばれるくらいの強引な行動は、女だと思ってなめられないように、精一杯強がっていたのです。ところが、子分たちの中に、権力と結託して親分の座を奪おうとする集団が現れます。兵庫と半次は女親分を助けて、その悪徳分子をたたきのめします。女親分は兵庫に諭され、素直な心を取り戻し、宿場を守るのは力だけではないことを悟るのであります。で、女親分が、信じていた子分たちに裏切られたことを知り、号泣する場面があります。この場面が強烈にインパクトがあったのです。私はこれまで若くてきれいな女優さんが泣くシーンはしょっちゅう見たことがありましたが、オバサンくらいの年齢のこわそうな女性(ゲスト女優だから今にして思えばきれいな方だったのでしょうが)が身も世もなく泣き崩れるのを見たのは初めてだったからです。
殺陣がまた印象的でした。悪い子分達は、兵庫が女親分の味方になったので思案します。なんとかしたくても兵庫が凄腕なのでうかつに手出しできません。居酒屋で作戦会議をしていると、隅っこのほうで一人の浪人(演じまするは「飛ばない前から〜」などでおなじみ大城さん)が酒を飲んでいるのが目に留まりました。よく見るとその浪人、小鉢に盛られた酒のさかなの煮豆を一粒ずつ空中に放り投げては、つまようじをシュッと投げ、豆を突き刺すという芸(?)を、退屈そうに片手でやっているのです。それを見るや子分達、その浪人にかけよって「旦那・・・。」ここでこのシーンはカット。つまり、悪人たちがその浪人を助っ人に雇ったということですね。
さあ、次のシーンではいよいよラストの大立ち回りです。最初に斬り込んできた相手の刀を、兵庫は刀を鞘から完全に抜かないで、半分くらい抜いて受け止める、という手を見せてくれます。大吉ではさかんにやってましたよね。で、悪人どもをばったばったと倒して、最後はくだんの煮豆突き刺し浪人との対決なのですが、実はこれがあっけなく終わっちゃいます。意外に弱い!煮豆浪人!あの芸当は何やったんねん。(キンちゃんさま 2008年7月20日)


「あなたと呼べない仲だった」 (第二シリーズ 第47話)

用心棒で稼いだなけなしの金で病気の娘と母親を救う兵庫と半次。

岩村百合子ちゃん、「淡路島〜かよう千鳥の恋のつじうら〜」と切ない声で、寒い夜の町をさまよってました。辻占売りは外国ではマッチ売りの少女みたいなもの。時代劇で不幸な少年だと「蜆売り」、不幸な少女ならたいていこの「辻占売り」でした。
ある寒い夜、ばくちでスッテンテンになった半次は、「淡路島〜かよう千鳥の恋のつじうら〜」と切ない声で町をさまよう一人の少女に出くわします。少女は病気の母親の薬代を稼ぐために毎晩流しているのです。父親は行方知れずだと言います。辻占を買ってやりたくても半次は一文無し。そのまま別れますが、しばらく行くと、屋台のそば屋にいる兵庫の旦那を見つけます。「おお、半の字か」「なんだい旦那、こんなとこにいたのかい」と、目の前に兵庫の注文したソバが。それを半次は横からサーッと掠め取ってしまいます。「おい、半次、俺が頼んだソバだぞ。どうしようってんダ」「まま、いいからいいから」半次は走って今さっき別れた少女を探します。ソバを食べさせてやりたかったのですね。ところが、少女はすでに他の場所へ立ち去ったあとでした。ドンブリを持ったまま、立ち尽くす半次の表情。胸が痛くなる場面です。屋台へ戻ると、ドンブリのおつゆはすっかりこぼれてソバだけになっていました。そこへまた二杯目のソバが。するとそれはおつゆのみ。「なんでえ旦那、汁だけかよ」「俺も素寒貧なんだハッハッハ」「じゃこっちのソバにこっちの汁をこう・・・そんでもって唐辛子なんかポッポッポーのポーなんて」とまあ、これがオープニングの場面です。
この後兵庫たちは悪辣なヤクザの賭場に乗り込んでサイコロを振るや「今のは誰がなんと言ってもイカサマだ。俺たちがこらしめてやる」と言いがかり(としか思えない)をつけ、大暴れ。全員たたきのめし、大金をせしめます。お金を届けたときに、少女は風邪をこじらせ寝込んでいました。兵庫を本当の父親だと信じ込んでいる少女は「ねえ、お父ちゃん。お母ちゃんの手を握ってあげて」と訴えます。少女のために兵庫も一世一代の芝居をうちます。「う、うん」少女の隣りに臥せっている母親の手を強く握る兵庫。「お母ちゃんを抱いてあげて」(文字通り、抱きしめると言う意味デス)「う、うん」事実を知っている母親の目に涙が。そばで正座して見ている半次も、拳で涙をぬぐいます。ヤクザから巻き上げたお金を少女の家に置いて二人は去っていきます。「お父ちゃんはまた出かけなきゃならないんだ」寝たままでニッコリ微笑む少女。お金を置いてきたことで、薬が買えて少女も母親も助かるということを暗示しこの物語は終わります。ラストシーン。日本晴れの田舎道をいく二人。「腹がへったなあ。
どっかで朝飯食っていくかあ。」「えっ旦那、だってカネ全部置いてきちまったぜ」「なんだよ、すると俺たちまた素寒貧かあ。ふぁっはっはっはー」「ええっ、うっひゃっひゃっひゃー」というわけで、金がなくてもこの豪快さ。これぞ素浪人シリーズです。
演じた岩村百合子ちゃんはいつも口を少し半開きにして、目のクリッとした女の子です。 不思議なことに、「新撰組血風録」の「あかね雲」でも薄幸の辻占売りを演ってます。「俺は用心棒」の「蒼い獣たち」にも似たような役で出ています。不幸にくじけることなく健気に生きる薄幸の少女。
まさに岩村百合子とくいの役どころであります。
(忍者ハットリくん」(実写版)でケン一くんのガールフレンド役、「パルナス」(CM)で「ねえ、今日は何の日か知ってる?」と尋ねまくっていた女の子)(キンちゃんさま 2003年3月1日、26日)


「反省したけど無駄だった」 (第二シリーズ 第50話)

剣道指南役の登用問題で2つの道場が対立。一方の道場の卑劣なやり方に兵庫は憤る。


「おモチが取り持つ縁だった」 (第二シリーズ 第52話)

ある宿場を通りかかった兵庫と半次、たまたま人相の悪い連中に取り囲まれている娘おみつと弥助を助けたお礼にと酒を振る舞われる。
ふところの寒い兵庫と半次は、年を越す金を稼ごうと、飲み屋の主人善助の口利きでモチつき屋のアルバイトを始めた。
ところがうすを真っ二つに割ってしまい兵庫は善助になんと断ろうかと思案する。
そこへ、善助の家から、朝、命を助けたおみつが出てくる。彼女は善助の娘ということで、ことは丸くおさまり、翌日はおみつの奉公先である土地の成金、成田屋へモチつきに出かける。
だが、モチつきの最中に成田屋の蔵が襲われ、千両箱が盗まれる。この盗みはどう見ても老練な錠前破りが居ないとできない仕事だ。
その人物こそ弥助だった。弥助と善助は兄弟。前科者の弥助は娘おみつを弟善助に預け、ひっそり暮らしていたのだが、昔の仲間久七に脅され泣く泣く盗みの片棒を担いでいたのだ。事情を知った兵庫と半次は久七一味と対決する。
コメント:剣の達人がモチつきすると、力余ってうすがわれるんだわ〜などと納得してしまったのを覚えています。
(ひろちゃんさま 2002月2月20日)

「お餅が・・・」は、私も好きなエピソードのひとつですが、この作品を思い出すと、そのとき一緒に見ていた姉が、「今日の兵庫は腹立つワ」と文句を言ったことをいつも思い出てしまいます。
餅つき屋として、町中を流す場面。重たい臼を半次に背負わせ、兵庫自身は軽い旗しか持っていません。半次はフラフラです。
つまり、姉が言うには、半次にばかり辛い思いをさせて、兵庫はひどいというのです。ま、姉は普段、裏番組の「コント55号の世界は笑う」を見ていたので、月影の世界は理解できなかったのでしょう。(キンちゃんさま 2005年5月3日)







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